【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

47 / 177
47 ダブルスーパーイナズマキック(パンチ)

 

 

 

「携帯が圏外だ……情報関係はすべて遮断されちまったらしい」

「マジかよ」

「エレベーターも反応ないよー!」

「マジかよ!」

「爆発物が設置されただけで警備システムが限界になるなんて……考えづらいわ」

 

 俺たちはロビーで状況把握に努めた。

 携帯を試したが使えず。エレベーターも動かない。

 メリッサさん曰く、この程度で警備システムがエラーを起こすとは考えづらいとのこと。

 

 つまりこれはテロなのだ。それも相当大規模な。

 恐らくはこの島全体に混乱が広がっているのではないだろうか。

 状況を把握も出来ず、俺達にも混乱が走ろうとしていた。

 

「幾野くん……パーティ会場にオールマイトがいるはずだ」

「ああ。今ウォールハックで見てるが……」

「なんだオールマイト先生いるのかよ! なら心配いらねぇな!」

 

 しかしここには俺がいる。

 耳郎ちゃんか障子でもいれば音による索敵が出来たが、俺はウォールハックで直接見ることができる。

 この異常事態の原因を調べるために、まずオールマイトの状況を確認して、そして。

 

「……拘束されちまってる。パーティ会場の客を人質に取られたっぽいな。会場にも銃を構えたテロリストがかなりいやがる」

「そんな!?」

「オールマイト……!!」

 

 オールマイトすらも捕まってしまっている現状を確認した。

 この時俺は口にこそ出さなかったが、オールマイトのマッスルフォームの稼働時間を知った今、かなり状況がまずいことを察する。

 無茶な動きをしていないから時間はまだ持つだろうが……これ以上時間を無駄にしても事態は好転しない。

 

「悪いみんな、ちっと待っててくれるか。俺、潜り込んでオールマイトの元に向かう」

「幾野くん!? それは危ないんじゃ……!?」

「いえメリッサさん、俺は絶対大丈夫です。ただ……」

「オールマイトの拘束を解いたとしても、客が人質になってるんじゃ幾野くんでも……どうするつもりなの、幾野くん?」

 

 俺が続けようとした言葉を緑谷が引きついでくれた。

 そう、俺一人だけならパーティ会場にバレずに移動して、オールマイトの拘束を解くことだって可能だろう。

 しかしそれをやったとしても、パーティ会場にいる人質が問題だ。あれを全員一瞬で救出するのはいくらオールマイトだって厳しく思える。

 だがそれをするつもりはない。

 

「安心しろ、無茶するつもりはねぇよ。今考えるべきは人質の安全第一……オールマイトに俺達の状況を伝えて、どうしたらいいか聞いてくるだけ」

「む、そうだな……オールマイト先生ならば僕達がどうすべきか適切な指示をくれるだろう。幾野くん、頼む」

「おう。この周囲にテロリストっぽい姿は見えないから大丈夫だろうけど、万が一の時は緑谷、轟、飯田。任せた」

「うん」

「ああ」

「わかった!」

 

 俺はその言葉を最後に床にずぶりと潜り込んで、オールマイトの元へ向かった。

 

 


 

 

(オールマイト、オールマイト)

(む! 幾野少年か!?)

 

 俺はオールマイトが拘束され横たわっている壇上の、その床下に潜り込んで周りから見えないオールマイトの後頭部付近から指先だけを出し、ちょんちょんと頭に触れて小声で声をかけた。

 これ俺がいてマジでよかったな。パーティ会場は吹き抜けのガラス作りで、上の階を歩いてたりしたらバレる所だった。

 オールマイトもすぐに俺だとわかってくれたようで、小声で状況を説明してくれる。

 

(聞こえるか……ヴィランがタワーを占拠、警備システムを掌握! 島の人々が全員人質に取られた! ヒーローたちも全員囚われている! この部屋だけならばどうにでもなったのだが……!)

(マジすか……!?)

(危険だ! すぐにみんなを連れてここから逃げなさい!! 私がきっと何とかする……!)

 

 小声でオールマイトから聞いた情報は余りにも衝撃的な内容だった。

 確かにこのタワー内は占領されているとはっきりわかる状況だったが、しかし島全体まで囚われてるとは思わなかった。

 マジかよ歴史に残る大事件じゃねーかこれ。

 

 俺は潜行で一旦みんなの元へ戻り、オールマイトから聞いた伝言を伝える。

 

「やべぇよ緑谷……!」

「オールマイトからのメッセージ……くっ! 僕は雄英高校教師であるオールマイトの言葉に従い、ここから脱出することを提案する!」

「飯田さんの意見に賛同します……! 私たちはまだ学生、ヒーロー免許もないのにヴィランと戦うわけには……」

「ん……なら脱出して外にいるヒーローに伝えれば!」

「いえ……脱出は難しいと思うわ。ここはヴィラン犯罪者を収容するタルタロスと同レベルの防犯設計で建てられてるから……」

 

 上鳴の言葉に続くメリッサさんのその一言で、みんなの視線が俺に向く。

 ……わかるよ、みんなの言いたいことは。

 

「俺だけなら脱出はできます」

「幾野くん? ああ、いえ……でもさっきの個性なら……?」

「タルタロスだろうが何だろうが俺は止められない。けど……俺さっき、パーティ会場の状況も確認してきてさ。ちょっと考えてたんだよね」

 

 注目を集めたついでに、俺の考えをみんなに伝える。

 

「俺も基本的には飯田と八百万ちゃんの考えに賛成。ヒーロー資格もない俺らがヒーロー活動はできない。けど……状況が切羽詰まってる。オールマイトは島全体が人質にされているから動けない。で、この塔の最上階付近……流石に遠くてしっかりは見えないけど、ヴィランが集まってる。メリッサさん、ここの最上階には何があります?」

「最上階にはI・アイランドの警備システムがあるわ。そこを占拠されたとなると……かなりまずいわね」

「やっぱり。となると事態は一刻を争うと思うんです。警備システムを完全に占拠されたとなれば、俺達や……今はまだ捕捉されてない爆豪ちゃんと切島が歩けてるのがおかしいはず。多分まだ仕組み解析しきれてないんじゃないかなって」

「そうね……勿論最高のセキュリティが組まれてるからパスワードも多いわ。まだハッキングが終わってないのかも」

 

 俺は30階くらい上のあたりを歩いてる二人を望遠鏡で見上げて言う。

 アイツらマジでどこまでも上に登ってんな。バカと煙のバカの方か? 降りろよ階段でよ。

 

「完全に警備システムのコントロールが乗っ取られたら、それこそヴィランの目的が達成されちまう。人質を取ってる以上殺戮が目的じゃない。このI・アイランドでこんなことを起こす以上、多分技術とかサポートアイテムなんだろうけど……つまりは、時間がたてばたつほどヴィランに有利になっていく。危険度も上がる。目的を済ましちまえばこのタワーごと爆破したっておかしくない」

「……イクノ、お前……」

「で、今この建物の中で動けるのは俺らだけ。仮に俺が外に脱出して助けを呼んだとして、それこそタワーがタルタロス並みのセキュリティなら意味がないわけだ、再突入できないから。悔しいけど、俺らが何とかするしかない……って、俺は思ってる」

 

 ある程度話を述べたあたりでみんなの顔色をうかがう。

 本音はマジで戦いたくない。みんなを無事に逃がして、オールマイトや人質も逃がせるような手段が他にあるなら、俺はそっちに全力出したっていい。

 でも、俺の頭でこれ以上どう考えても事態が好転しない。俺らが何とかするしかないのだ。

 俺だけ逃げるなんてことは選択肢にはない。

 やるしか、ない。

 

「……行こう」

 

 そして、まず緑谷が呟いた。

 

「緑谷?」

「幾野くんの言う通り……状況が切羽詰まっててオールマイトも動けない。僕達しかできないなら、出来ることをしたい! 僕達で助けよう!」

「緑谷……」

 

 最初に声を上げるのは、思えばいつだってコイツだ。

 こいつの本質がヒーローであることを証明するかのように。

 

「私なら最上階に行ってシステムを元に戻すことも出来るわ! 私も行きます!」

「けれど最上階にはヴィランが待ち構えていますわ! 戦うことに……」

「俺の方でウォールハックで周囲を全力で索敵しながら行く。戦いは出来る限り回避する。俺もこんなくだらねぇ事でみんなを危険な目に合わせたくないしな」

「イクノがいてくれりゃ何とかなるぜきっと」

「それに峰田のもぎもぎで行動不能にしまくれるから峰田がいれば何とかなるだろ」

「オイラにだけ信頼が重い!!」

 

 少しずつ、方針が決まっていく。

 

「システムさえ戻せば、オールマイトや人質が解放される! そうなれば状況は一気に逆転するはず!」

「緑谷くん……!」

「デクくん、行こう! 私達に出来ることがあるのに、なんもしないでいるのは嫌だ!」

「センちゃん、私も行く!! センちゃんと一緒なら怖くないもん!」

「幾野、緑谷……俺も行く。とっとと片付けちまおう」

「そういう事であれば私も!」

「よっしゃ俺も!!」

「……これ以上いけないと判断したら引き返す! それでいいなら僕も行こう!」

「ああ、飯田が俺たちの安全弁になってくれ。頭冷えたお前の判断なら必ず従う。けど、出来るところまでやってやろうぜ」

「あークソ!! こんなこと言って一番暴走すんのがイクノなんだからよォ!? オイラがストッパーにならねぇといけねぇよなぁ!!」

「信じてるぜ、峰田」

 

 クラスの皆がそれぞれ最上階奪還の意志を固める。

 最後にメリッサさんもついていくことになった。緑谷が彼女が無個性であることを理由に残っているように言ったが、そもそもこの作戦はメリッサさんを最上階に連れていくミッションなんだからな? 俺らじゃ操作できねぇんだからよ。

 

「道中は足手まといにしかならないけど……私にも、みんなを守らせて! お願い!」

「わかりました……行きましょう! みんなを助けに!!」

 

 緑谷の答えに俺達も頷く。

 今はやるしかないんだ。マジでやりたくないけど、状況がそれを許さない。

 俺は再び最上階を見上げて、そこにある目的地までのルートを探り始めた。

 

 


 

 

 非常階段を上っていく前に、俺は八百万ちゃんに指示を出す。

 

「八百万ちゃん、小型のインカム人数分プラス3つお願いしていいかな」

「はい! ……3つはなぜ?」

「2つは上にいる爆豪ちゃんと切島用。あいつ等もあのままじゃあぶねぇから途中で拾っていく。んでもう一つはオールマイト用。耳元に埋め込んでくるわ」

「なるほど! オールマイトに状況を伝えながら行くわけだな幾野くん!」

「ああ、反対はされるだろうけど俺らしか動けないことはオールマイトもわかってるはずだ。とりあえずそういう動きしてることだけは俺が伝えてくる」

「幾野くん、オールマイトによろしくね!」

 

 作ってもらったインカムを3つ体内に潜り込ませて、緑谷の言葉に頷いて俺は潜行を開始。

 みんなには非常階段を上ってもらって、パーティ会場にいるオールマイトの床下の耳元に移動して話し始める。

 

(オールマイト、俺ら最上階のセキュリティ奪取して来ます)

(何!? それは危険だ幾野少年、逃げなさい!)

(俺以外は逃げられそうもないんですよ。それに一刻を争うことはオールマイトもわかってるはず……止められても行きます。インカムだけ置いてくんで状況は逐一それで。奪取して島を解放出来たら後は任せますよ)

 

 長話もしていられない。俺はオールマイトに用件だけ伝え、パーティ会場にいるヴィランの恐らくはリーダーなのだろう、仮面の男の顔を一睨みして移動した。

 非常階段を走り抜けるみんなを追って壁の中を垂直に駆けあがった。

 

 俺だけならエレベーターのワイヤーでも伝って最上階に行くことは簡単なんだけどな。

 メリッサさんをどうやって最上階までエスコートするか、それが問題だ。

 出来る限り接敵を避けて楽なルートを選び、爆豪ちゃんと切島を回収し、全員で登りたい。

 

「ただいま」

「どわっ!? 幾野くん!?」

「急に前に出てくんなよイクノぉ!?」

「悪い。……しかしこのタワーの高さだよ。メリッサさん、最上階って何階です?」

「はぁ……はぁ。……200階よ!」

「200!?」

「マジかよ!」

 

 クソバブリーな建物がよぉ!!

 1階あたり5mでも1kmか。登山でもキツい高さだ。

 俺達ヒーロー科なら体力は持つだろうが、メリッサさんが間違いなくキツい。

 

「メリッサさん、マジで少しでもきついと感じたら言ってください。意地張らないで。貴女が倒れたら俺達全員が動く意味がなくなる」

「はぁ……はぁ……まだ、大丈夫だけど……わかったわ」

「麗日ちゃん。麗日ちゃんの判断で無重力化してあげていいからね。他の事はみんなでやれる」

「うん……!」

「そん時は私が背負うー! 戦闘じゃあまり力になれなさそうだし! 潜入はセンちゃんができるし!」

「お願い、葉隠ちゃん。全員の出来ることを出来る限り出していこう。いつもの訓練と同じだよ」

 

 俺達が体育祭以降に放課後集まって訓練する時、チームアップして複数人で動く練習もしてきた。

 俺のその一言で少しは緊張も解れたか。この調子でベストを出していきたい。

 

「非常階段は少なくとも今見てる限りじゃヴィランはいない。一気に行くぞ!」

「ああ!!」

 

 俺たちは非常階段を駆け上がり始めた。

 

 


 

 

 それは80階に近づいた時に起きた。

 

「まずいな。爆豪ちゃんと切島がこのままだとヴィランに接触しそうだ」

「何やってんだアイツら!?」

「ってかなんで迷って80階まで登ってきてんだよ!?」

 

 二人が何故かバカと煙のバカの方を一つ覚えにやり続けた結果、俺らより早く80階に到達し、そこで警備に引っかかったのか俺らが昇る非常階段のシャッターが閉まったのだ。

 

「非常階段のシャッターも閉まっちまった……メリッサさん。ここのシャッターって手動で開けられます?」

「厳しいわ。IDカードの認証が必要で……今は持ってきていないの」

「成程。んじゃルート変更ですね。このタワー、逆側にも同じタイプの非常階段ありますよね? そっちはまだシャッター閉まってない、そっちに行こう。ついでに道中で爆豪ちゃんと切島拾ってく」

「わかった!」

「なにやってんだかっちゃん……!」

 

 俺が周囲をウォールハックで調べて、シャッターがまだ閉じてないルートを選定する。

 まだ大丈夫だ。向かい側の非常階段に向かう廊下もシャッター閉まり切ってないし、そっちに走ればいいだけで……って、おい。

 

「爆豪ちゃんと切島がなんか植物生えてる広間に出ちまってる……あいつ等自由過ぎるだろ」

「方向音痴のプロかよ」

「植物プラントね。あそこに今から行こうとすると電子ドアを開かなきゃいけないから、最上階に開閉データが飛んでしまうわ……」

「っすよね、あー……まじぃな。エレベーターでヴィランが二人上がってきてる」

 

 多分あの二人、もう最上階で見つかってるんだろうな。全然監視カメラとか考慮しないルートで登ってきてたし。

 まぁあの二人なら爆豪ちゃんもいるしヴィランに対処は出来るだろうが、しかしそもそもテロが行われてることを知らない可能性もある。

 戦闘は出来る限りしたくないが背に腹は代えられん。こちらから応援兼回収役を派遣しねぇとな。

 

 さて、そうすると誰がいいかな。

 広間なので峰田はNG。

 飯田か緑谷か轟だが、ここは轟か。

 広ければ広いほどコイツの個性は活きる。爆豪ちゃんの個性との噛み合いも〇。

 

「轟」

「おう」

「単騎で植物プラントに突入して爆豪ちゃんと切島に合流してくれ。二人に事情話して、エレベーターで上がってきたヴィラン2人を速攻で無力化して、10分でこっちに戻ってきてくれ」

「わかった」

「あとインカム二人にも渡して。もし対処できない何かが起きたら俺呼んで」

「ああ。10分もいらねぇ、5分で済ませる」

 

 やだこの子頼もしすぎる。

 爆豪ちゃんも切島も事情を知れば十分以上の戦力になってくれるだろう。

 植物プラントの戦闘は轟に任せて、俺達はさらに上を目指すために反対側の非常階段にたどり着き、また駆け上がり始めた。

 

 なおその後、みんなで駆け上がりながらも轟と合流した爆豪ちゃんたち3人の様子を見ていたが、切島が気を引いてオトリになりつつ爆豪ちゃんと轟の二人でマジで瞬殺して無力化してた。

 やだこの子達頼もしすぎる。訓練の成果出てるね。

 

 


 

 

「メリッサさん、大丈夫? 無重力酔いしとらん?」

「ええ、葉隠さんが背負ってくれてるから。ごめんなさいね、迷惑かけて」

「まーったく問題なし! 全然重くないからー!」

 

 俺たちは再び非常階段を駆け上がっていた。

 メリッサさんの体力がそろそろヤバそうだったので早めに麗日ちゃん、葉隠ちゃんで運んでもらう。

 このままいければよかったが、しかし流石に植物プラントで戦闘があったから俺らの動きも最上階でバレてるかな。

 こっからはヴィランも攻撃してくる。スピードの勝負になる。

 

 道中、非常階段のシャッターが閉まっていたので俺が潜行で先行して非常梯子を下ろして登ったり、オールマイトからのインカム通信で130階までのシャッターが開いてることを聞いてそっちを走ったり、しかしその先で警備ロボが待ち伏せしてるのを見つけて別ルートを辿ったり。

 轟と爆豪たちも外壁を伝って合流し、やれることが増えて本格的に自由に動けるようになった。

 ここまで上がればあとは一気に行くか。

 

「よし。ここで二手に分かれよう」

「ここで…?」

「下から警備ロボが追ってくるなら絶対今いるここを通ってくるしかない。だからここで下からの追手を食い止めつつ暴れて目を引く囮のチームと、上に一気に攻め込むチームに分ける。麗日ちゃんは悪いけど5人無重力にしてもらいたい。いけそう?」

「ん! そんくらいならいける! いっぱい鍛えたもん!」

 

 広間の中央にあるエレベーターのドアを爆豪ちゃんにお願いして吹っ飛ばしてもらう。

 そこからまっすぐ最上階まで飛び込んでいくつもりだ。

 5人のメンバーはスピードとパワーに秀でたアタッカーで出来るだけ固めたい。

 

「まず当然メリッサさん。で、一人は緑谷」

「うん!」

「爆豪ちゃん、轟」

「おぅ」

「ああ」

「で、最後は峰田だ」

「オイラァ!? なんでだよ、火力は出ねーぞ!?」

「峰田にはめっちゃ仕事がある。ヴィランが逃げようとしたとき……多分屋上に止めてるヘリを使いそうだからさ。それをもぎもぎで飛べないように止めてもらうんだ。あと無力化したあとのヴィランの拘束もしてもらう」

「責任重大!!」

 

 俺の判断で最上階まで上がるメンバーを選出した。

 麗日ちゃんは個性使ってもらうから当然残る。上鳴は最上階で電気ぶちまけられないし、八百万ちゃんは近接戦に向かない。残りカロリーも少ないだろうしな。

 火力を出せない葉隠ちゃんと守りに適した切島も残ってもらう。そして。

 

「飯田。下から警備ロボが来たらとにかく足止めしてくれ。防衛側の要はお前だ」

「ああ! 守るために全てを果たすと誓おう! ……しかし幾野くん、君はどうするのだ。上に行くのは5人と聞いたが……」

「俺は轟の体に潜ってくから最上階組。潜る個性が活かせる場面あるだろうしね」

「あー……そっか、幾野の場合はそれやれば麗日の負担一人減らせんのか」

 

 上鳴の言葉に頷く。

 前に合同訓練で試したが、俺は誰かの体内に潜れば無重力の恩恵を受けられるのだ。

 それで麗日ちゃんの負担も減らして、一気に俺達6人で最上階に到達。

 道中で待機してるヴィラン共が最上階に合流してくる前に、セキュリティを奪い返す。

 

「ってわけで轟、悪いけど体潜るぞ」

「…………………………ああ」

「轟にしては長い逡巡」

「ドレス姿のセンくんに潜られるのは流石にあれなん?」

 

 とっとと行きますよ!!

 

 


 

 

 俺たちはエレベーター通路を一気に無重力で飛び上がり、最上階に到達した。

 インカムに手を当てて麗日ちゃんとやり取りする。

 

「麗日ちゃん、もう重力切っていいよ。お疲れさま」

『ん! こっちも警備ロボ来たけど凌いでる! がんばって!』

「もうちょい時間稼ぎ頼むね。……中にはスーツの眼鏡かけたヒゲのオッサンと小太りのオッサン、あとヴィランが二人。一人は仮面の男で多分あれがリーダー」

「スーツのほうはきっとパパと助手の方だわ! 人質にされてる……!?」

 

 メリッサさんがパパと呼んだスーツの人だが、どうにも捕まってるとかそんな風には見えない。

 何か……スーツケースを手にしている? その中までウォールハックで見るが、奇妙な形のサポートアイテムが見えるだけだ。

 何してるんだ? ……いや、今は一刻を争うか。

 

「人質って感じでもないです。けどヴィランが離れてる今がチャンスだ……突入して速攻メリッサさんをセキュリティルームに運ぶぞ。轟と爆豪は個性でヴィラン側を牽制、そのままできれば拘束。緑谷はメリッサさん抱えて部屋に飛び込め。俺はリーダーをやる」

「うん!」

「ケッ」

「おお」

「オイラは?」

「先に屋上行ってヘリ潰しといて」

「単独行動!?」

 

 全員に指示を出し、指先でサインを作る。

 

 3。

 2。

 1。

 

「GO!!」

 

 突撃。

 

 

「なっ、貴様ら!?」

「フルカウルっ!! メリッサさん行きますっ!!」

「きゃっ!」

「てめェら全員死ねェッ!!」

「凍れっ!!」

 

 合図でエレベーターのドアをぶち破り、一気に突入する。

 俺も後詰めとして突入。仮面の男がリーダーならば、アイツの体に潜り込めばチェックメイトだ。

 

「メリッサ……!?」

「な、なにが起きてるんだ!?」

「貴様ら、どうやってこ──」

「黙ってろザコがッ!!」

 

 まず爆豪が二人いるヴィランの片方、ロン毛で片目にサポートパーツを付けてるほうを潰した。

 緑谷はメリッサさんを抱えてセキュリティルームに無事飛び込めた。

 轟がもう一人、仮面をかぶったヴィランのリーダーに氷結をぶち込み、俺もその後を追うが……しかし、こいつはやはり別格だった。

 

「くっ、ここまでやるとはな!! だが強化された俺の個性の前では無駄なことだッ!!」

「なっ!?」

「轟! 爆豪!! 避けろ!!」

「ちぃっ……!! 金属を操る個性か!?」

 

 仮面のヴィランが手すりに触れた瞬間、周囲の鉄が形を変えてうねりを上げ、俺達に襲い掛かる。

 爆豪も轟も何とか回避したが……質量といいその速度といい、余りにも暴力に溢れている。

 桁が違う。緑谷も戦線に復帰したが、しかしこれは厳しいだろう────

 

 ─────俺がいなければな。

 

「なっ!?」

「獲ったァァ!!」

 

 目の前に突き上がってきた鉄塊を潜り抜け、俺は仮面の男に腕を伸ばしてその手を取った。

 俺の存在(イグジスト)に恐怖しろ。

 俺が掴めば終わりだ。

 

「くっ……!! 死ね!!」

「物騒なモン使ってんじゃねぇよ!!」

 

 咄嗟に銃を俺の美しい顔に向けて発砲する仮面のヴィラン。だが当然、無駄だ。

 弾をすり抜けながら片手で銃を払い落とす。

 ためらいもない。俺はかつて轟にしたように、そのまま正面から頸動脈を押さえにかかる。

 

「何……!? 何者だ、貴様は……!?」

「お前に名乗る名前はねぇよ!! とっとと落ちろやボケッ!!」

 

 仮面が邪魔だが、俺にとってはそれすら関係ない。

 グッと頸動脈を首の上から圧迫する。

 

「かっ……!? ハッ………バカ、な……──────」

 

 こいつが人間である以上、どうやっても脳で思考する。

 思考には血流を必要とするため、それが止まれば意識は落ちる。

 意地汚く堪えたステインよりも簡単に、数秒で意識を落とした。

 念入りにもう少し押さえてやろ。ぐっとな。よし。

 

「やったわ!! 警備システムは正常に戻せたわよ!!」

「メリッサさん!」

「こっちのザコも意識飛ばしてる。他にクソヴィランはいねぇか幾野」

「……ああ、このフロアは大丈夫そうだ。下には結構な人数がまだ残ってるけど……」

 

 警備システムを取り戻したメリッサさんも戻ってきた。やったぜ。これで勝ったな。

 俺は改めてウォールハックを発動し、階下を警護しているヴィランを見る。

 アサルトライフル持ちに……手がドリルみたいになる個性の奴もいるな。

 あいつらまだここが占拠された事に気付いてないっぽい。

 ただ、もう勝負はついたのだ。

 警備システムを取り戻し、島全体の人質が解放された以上、後は一瞬だ。

 

 俺はインカムに手を伸ばし、言った。

 

「じゃ、後はお願いしますね───オールマイト」

 

『よくやったぞ少年少女ォ!! あとは任せたまえ!! 私が来たッッ!!!』

 

 

 

 10秒後。

 タワー内の全てのヴィランはオールマイトによって一網打尽にされ、悲劇の夜は終わりを迎えた。

 

 


 

 

「完全にオイラ無駄骨折っただけだったよなァァ!? ヘリ飛ばせないようにちゃんとしたのによォォ!?」

「すまん。俺が強すぎた」

「幾野くんの個性本当に便利だね……流石だよ」

「いや、今回は切れる手札が多かったからここまでうまくいった。俺とメリッサさんだけじゃ絶対ここまでできてない……みんながいたからこそだわマジで」

 

 事件は終結した。今は防衛チームも含めてエレベーターで最上階に集まっている。

 え、ダブルスーパーイナズマパンチはどうしたって? 知らんな。被害を最小限に抑えた結果だよ。

 USJでヴィラン取り逃がして、ステインに再び目覚められた苦い経験を味わってるんだぞ。

 仮面の奴はマジで今日は目覚めないレベルで念入りに堕として、万が一目覚めても個性が使えないように、手のひらを動かせない形で背中に束縛して峰田のもぎもぎまでくっつけてあるわ。

 マジでアイツ一日はあの体勢から動かせねぇ。警察が来てメイデンで拘束するまで絶対に動けないようにした。

 念には念を入れる。これ重要。

 

「メリッサ……オールマイト……これは……こんな、どうしてこんなことに……」

「デイブ!! 無事でよかったぜ!! 少年少女たちに感謝だな!!」

「大変だったのよ!? みんながいなかったらどうなっていたことか! でも、パパが無事でよかったわ……!!」

「違う……違うんだ、トシ……メリッサ……ああ、私は……私はなんてことを……!!」

「ああ……終わりだ……終わりだ……!!」

 

 メリッサさんとオールマイトがデイブさんと感動の再会をしているがなんか空気変わったな?

 ふとっちょの助手の人もなんか切羽詰まってる感じだ。なんだ。何かあったのか。

 

「……デイブ、何があったんだ……?」

「パパ……?」

「すまない……すまない、許してくれトシ……!!」

 

 あっなんか変な雰囲気。

 これ多分俺達が聞いていい話じゃねーな? オールマイトとデイブさんってなんか旧知の仲って言ってたし深い話に進むと例の活動時間の件とか出ちゃうかも。

 よし。最後にまた一肌脱ぐか。

 

「お話し中すみません、オールマイト」

「幾野少年? 悪いが今はデイブと話を……」

「わかってます。なんで俺たちは先にホテルに戻ろうかと。俺らがやったことも表に出過ぎたらまずいでしょ? その辺オールマイトの方で上手くやっといてくれます?」

「む……ああ、そうだな! 今日のところは褒めておこう!! よくやったぜみんな!! 君たちはホテルに戻りたまえ!! 明日また追って連絡するさ!!」

「了の解す。よし、んじゃ撤収するぞお前ら!! 明日オールマイトが高級バーベキュー奢ってくれるってよ!!」

「言ってないぞ幾野少年ンン!!!」

 

 そんくらいいいじゃんオールマイト。俺らめっちゃ頑張ったんだからさ。

 わーい!! と喜ぶ級友たちと合流し、エレベーターに乗り込んでいく。

 

「オールマイト……メリッサさん……?」

「緑谷。もう俺たちはやることやったんだ。ホテルに帰るぜ」

「あ、うん……じゃあオールマイト、メリッサさん! また明日!」

「ああ!! 緑谷少年もお疲れ様だ!!」

「みんな、本当にありがとうね!!」

 

 緑谷が心配そうに3人を見ていたが、俺は声をかけて緑谷の肩に腕を回して連れて帰った。

 あとは家族と友人の時間だぜ。俺らがいたら野暮ってもんだ。

 

 生徒の中に怪我人なし、ヴィラン全員拘束。

 この上ない結果で、俺たちのひと夏の冒険は終わりを迎えた。

 

 


 

 

 その後の顛末。

 

 まずホテルに帰ったら発目ちゃんが激おこだった。

 通信機器が乗っ取られてた時に情報収集ができなくてんがーってなってたらしい。

 でもその間にシャワーは浴びたのかワイシャツ羽織っただけの姿でちょっと甘い匂いがしてドキッとしました。

 とりあえず事件のことは話さずに明日はエキスポ一緒に回ることを約束して俺も自室に戻った。

 その夜は発目ちゃんでシコったらいっぱいでた。そしてぐっすり朝まで寝た。

 

 翌日。オールマイトから連絡が来た。

 で、今回の事件はデイブさんがヴィランに騙されて潜入の手引きをしてしまったのが発端だったらしい。

 詳細までは聞かなかったが、オールマイトにとっちゃ辛い話だな。メリッサさんにとっても。

 恐らくはデイブさんも罪に問われることだろう。たとえ騙されていたとしても、ヴィランであることは装備とかからもわかってたはず。何か裏もありそうだが、多分それは俺の領域じゃない。

 

 しかし、結果として被害者はゼロでもあったため、恩赦もありそうだとオールマイトが言っていた。

 警察によって迅速に事件の収拾もついたようで、翌日は無事にエキスポも開催。

 午前中はやっぱり来てたA組のやつらで集まって、発目ちゃんとも一緒にアイランドを回った。

 左手に発目ちゃん、右手はまたしても葉隠ちゃんが手を握ってきて、ずっと両手に花でした。

 腕千切れた(比喩表現)。

 

 で、午後にはオールマイトがバーベキューを企画。そりゃもう盛り上がりまくったよね。

 焼いた肉がうめぇのなんの。発目ちゃんはまだまだエキスポを回りたがってたが、肉串をあーんってしてあげたらお口にあったようで、その後は俺があげるお肉を食べるだけの可愛い置物になってくれた。

 そしたら何故か葉隠ちゃんからも求められたのであーんってしてあげたよね。こっちも可愛い。

 誰か俺にあーんしてくれねぇの??? 一本しか肉串食ってねぇんだけど????

 

「食べるか」

「食べる」

 

 最終的に俺は峰田にあーんしてもらえました。心の友よ……!

 

 

 

 ───で、エキスポも終わって俺たちは日本に帰国。

 明後日に控える林間合宿まで体を休めることにした。

 

 ……大丈夫かなぁ林間合宿。

 なんかまた何か起こりそうじゃない? トラブルメーカーの緑谷いるしさ。

 まぁでも俺たちなら何とかなるか!

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。