【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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49 時速3kmで山の中歩くだけでも相当だぞマジで

 

 

「バスは一時間後に一回止まる。その後はしばらく……」

 

 バス車内で相澤先生がこれからの道のりをアナウンスするが、それを聞く者は誰もいない。

 なんてったって車内にいるのは夏真っ盛りの高校生だ。

 

「音楽流そうぜ! 夏っぽいの! チューブだチューブ!」

「席は立つべからず! べからずなんだみんな!!」

「ポッキーちょうだい」

「しりとりのり!」

 

 まぁもうそれぞれがわいのわいののすんごい事になっている。

 俺は緑谷の隣の席で自分の髪を指先でくるくると巻いていた。手持ち無沙汰ってやつ。

 

「枝毛なし、と……」

「幾野くんの髪、癖がなくて綺麗だよね。僕は結構くせっ毛だから羨ましいや」

「サンキュ。一番気ぃ遣ってるところだからな。使ってるシャンプー教えてやろっか?」

「…………純粋に聞いてみたい僕と、幾野くんとお揃いのシャンプーになることを恐れる僕が脳内で戦ってる」

「がんばれ♥がんばれ♥俺とお揃いのシャンプーになろ♥?」

「恐れる僕が勝ったよ」

「残念」

 

 まぁ緑谷のくせっけも愛嬌ある感じで悪くないしな。俺は無理強いすることはしなかった。

 そのかわりわしゃわしゃと緑谷の髪を弄ったり、周りのやつらとだべったりして過ごしてると、一時間なんてあっという間に経っちまうもんだ。

 

「おしっこ……おしっこ……!!」

「ん、ヤバそうか峰田?」

「チャージ率95%……!!」

 

 バスを降りて一息ついたところで峰田が股間を押さえながら内股になっているのを発見。

 流石にここで茶化すほど俺も人でなしではない。

 峰田は体のサイズが5歳児並。当然にして膀胱も小さいので、トイレが近くなるのは必然というものだ。

 

「じゃあ……つってもトイレねぇな。休憩所っつうか見晴らし台みたいな感じで……なんだここ?」

「パーキングじゃなくね? なんだぁ?」

 

 あたりを見渡しても公衆トイレのような物はない。

 景色はいいが、これを見せるためだけに休憩させるか? この相澤先生が。

 

「何の目的も無くては意味が薄いからな」

 

 あ、嫌な予感。

 相澤先生のその一言を聞いて、俺は一先ず峰田の襟首をつかんで咄嗟に動けるようにしておく。

 

 その後、置いてある車から二人の女性ヒーローと一人の少年が出てきた。

 名乗りを上げるプッシーキャッツのお二人。流石に二人とも知ってるよ女性ヒーローだもん。逞しいおみ足が素敵ですわよ。

 しかしさらに嫌な予感がしてきたな。

 前に緑谷ん家でプッシーキャッツの活動や個性について聞いたけど、確か二人って……

 

「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね。あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」

「「遠っ!!」」

「え…? じゃあ何でこんな半端な所に……」

「バス……戻ろうか? な? 早く……」

 

 俺はそーっと相澤先生にばれないように移動して、先生の後ろに立った。おしっこを堪える峰田も一緒だ。

 

「12時半までにたどり着けなかったキティはお昼抜きね」

「悪いね諸君─────合宿はもう始まってる」

 

 相澤先生のその一言で、ピクシーボブが地面に手をついて個性を発動。

 

「「「わあああああああああ!?!?」」」

 

 土石流が生み出され、A組のみんながそれに流されて行った。

 のを、俺は個性でスルーしながら棒立ちで眺めていた。

 

 相澤先生の後ろのあたりはやはり被害が少なく、片手に抱える峰田もそこまで土石流を受けることなく何とか流されずに済んだ。

 そろそろ事前の説明ってのを覚えませんか相澤先生???

 

「……で、幾野に峰田。お前らなんでまだここにいるんだ」

「すごいね、流石は噂の無敵の個性。地面からひっこ抜いたつもりなんだけどねぇ」

「いや、峰田がしょんべん我慢してまして。せめてトイレだけ済ませてから行かせてやってくんないすか」

「オイラもちゃんと森抜けるのは参加するんで……おしっこだけは……!!」

「んー、しょうがないにゃあ」

 

 相澤先生が俺たちの存在に気付き、ため息と共にピクシーボブに目配せ。

 ピクシーボブも別に男子高校生の失禁に興奮する難儀な性癖を持ち合わせていたわけでもないらしく、土を弄って簡易トイレを作ってくれた。

 

「エネルギー充填120%……!!」

「波動砲かよ。周りにまき散らすなよな」

「済ませたらお前らもとっとと行ってこい。昼飯抜かれたくないだろ」

 

 そして無事用を済ませた峰田と俺は相澤先生に促され、揃って崖を飛び降りてクラスに合流するのだった。

 

 


 

 

 森に降りた所、ちょうど緑谷と爆豪ちゃんと轟と飯田がなんか魔獣っぽいのをぶっ潰したところだった。

 

「お、それが敵キャラって感じ?」

「幾野くん!? 姿を見ないと思ったら……上にいたんじゃないの?」

「いや、峰田がトイレ済ませるまで付き合ってただけ。俺らもちゃんと走れってさ」

「お前らを見捨てるつもりはないからなオイラも。とっとと行って飯食おうぜ」

 

 とりあえず緑谷に簡単に話を聞けば、この魔獣はピクシーボブが作った土でできた存在らしい。

 で、口田の個性も効かない。となると純粋な物理で壊さなきゃならないわけだ。

 俺の個性は撃破には向かないか。索敵の方で頑張る事にしよう。

 

「あー……大体宿泊施設までは10km強ってところだったな、上から見ると。んでその間にこんな感じの魔獣がいっぱいいると考えると、リソースの割り振りが重要だな」

「だね。I・アイランドでもやった……誰がどこで動くかが求められると思う」

「幾野くん、作戦はあるか?」

「んー」

 

 こうして団体行動での訓練とかってなると、どうにも俺に判断を委ねられることが多い気がする。

 まぁみんなで練習する体育館とかだと俺が施設借りたりする都合で仕切ったりするし、みんなの個性についちゃ俺が一番把握してるところはあるからな。

 これもまた適材適所か。ざっと今の攻撃を見て考える。

 

「魔獣は結構もろいように見えた。さっきはファーストエンカウントだから火力トップ4で一気に攻撃したけど、あれなら誰か一人でもアシストあればいけるだろ。一匹に火力集中させすぎず省エネで行こうぜ」

「ケッ、あの猫ババァは3時間っつったか……そんだけ個性使い続けりゃパンクするやつが出てくらぁな。獣道なら猶更だ。山ァナメてっと死ぬぞ、気張れやクソ共」

「爆豪ちゃんの言う通り。なんで火力を分けます。幾つか班を作ろうか」

 

 山登りが趣味なだけはあり、爆豪ちゃんが適切に体力配分の難しさを見抜いていた。

 俺はそれに同意を示し、一旦クラスのみんなを集めて作戦会議を開く。

 

「緑谷中心の3人チーム、飯田中心の3人チーム、爆豪中心の3人チームでまず9人。あと上鳴、常闇、切島、尾白で1チーム、この4人ならチームで息合わせれば魔獣をやれる。索敵出来る口田と障子と耳郎ちゃんと俺は各チームに配置。基本は3チームで戦闘、1チーム休憩で回していく」

「………これで17人か。他には?」

「まず峰田は殿な。後ろから迫ってくる奴の脚をもぎもぎで止めろ。山の中だからな、得意フィールドだろ?」

「余裕だぜ」

 

 ぱっぱと決めてしまおう。どうせ進んでいくうちに改善点が出て逐一変更していかなければならないだろうし。

 とりあえず瞬間火力に長けた3人にサポートの二人をつけてメイン火力となる3チーム。女子は大体ここに割り振る。A組の女子は火力に秀でる個性がいないからな。

 で、中火力広範囲持ちの上鳴常闇をセットにして一撃がある切島尾白と組ませれば魔獣の対処は可能と判断。

 それぞれのチームに索敵できる生徒をセット。不意打ちを防ぐ。

 

 殿は峰田一人で事足りるだろう。俺と3年間鍛え続けてきた山の中だぞ?

 この場で仮に今すぐ全員でガチバトルしたら峰田が絶対勝つレベルだわ。俺を除いてだけど。

 

「で……轟、八百万ちゃん。この二人は遊撃にするけど、出来る限り個性使わず頑張ってほしい」

「なんでだ? 俺も魔獣は潰せるぞ」

「私もお力になれると思いますが……」

「ちゃうねん。これ3時間って話をさっきしてたけどさ、山の中ってめっちゃ歩きにくいのよ。魔獣を潰しながら時速3キロが出せるかって言ったらかなり際どいとも思うんだよね、勿論目指すけど。だから……途中で絶対、休息が必要になる。そん時に二人の出番ってわけ」

 

 俺は二人に予測を説明する。

 山の中で何時間も動くなんて経験は俺と峰田以外は中々やったことないだろう。ああいや爆豪ちゃんも登山が趣味か。

 まぁとにかく山の中ってのは歩くのが大変なのだ。今回は舗装されてない道で襲撃されながらの強行軍と考えると、3時間ってタイムは結構際どい。

 チームごとにローテーションを組むにせよ、どこかで必ず一回はしっかり休憩をとる必要がある。

 で、その時に氷を炎で溶かして水分を生み出せる轟と、軽食なら創造できる八百万ちゃんの力が必要なのだ。なんなら八百万ちゃんの余剰カロリーは全部みんなの食べ物に使いたいくらいだ。

 

「……なるほどな。確かに水なしで3時間ダッシュはきちぃか」

「了解ですわ。消化によく、水分も多めの食べ物を考えておきます」

「うん。あの相澤先生の事だしね、普通に3時間で簡単に行けるとは思わずに動こう」

「確かにあの先生なら実は10時間かかる訓練でした!! とかやっても驚かねぇよなー」

「ケロ、日頃の行いね」

 

 俺の発言でみんなが苦笑を零す。

 マジであの先生どんでん返しが好きすぎるからな。

 教師として尊敬はしてるけど教え方としてはどうなん? ってなること多いです。

 

「先生の鼻を明かしてやろうぜ。俺は出来る限り全体を見てるから、適宜修正あったら連携する。A組20人でやるんだぞ? できないことなんてなーんもない。いつもの訓練思い出して頑張ろ」

「幾野がめっちゃ頼れる……!」

「真面目なときは本当に真面目だな幾野」

「常にこう在ってくれと心から祈願する所存」

「ホントにね☆」

「お前らひどない?」

「センちゃんのいい所だと思うよ! どっちも!!」

 

 俺がちょっと真面目なことしたらすぐお前ら褒めてくるよね!!

 それだけ普段の言動がアレだということだろうか。うーん反論できない。

 簡単に各班を振り分けて、準備は完了。

 

「うし、じゃ作戦会議終了! 委員長! 締めろ!!」

「ああ!! それではA組、行動開始!! 一気に行くぞ!!!

「「「「おおーーーーーー!!!」」」」

 

 魔獣の森に俺達の鬨の声が上がり、目的地へ向けて駆けだすのだった。

 

 


 

 

「嘘でしょ?」

 

 3時間後。

 俺達A組20人は無事魔獣の森を突破して、全員で宿泊所に到着した。

 それを出迎えたピクシーボブの一言目がコレである。

 

「絶対3時間で来るとは思ってなかったでしょ……あーつっかれた!! シャワー浴びたい!!」

「最後の方の魔獣ラッシュマジで勘弁しろよって感じだったな……」

「途中で休憩入れといて正解だったね……」

「ピッタリ体力も個性も使い切った感じあるわ」

 

 全員が肩で息を切らせて、ぜぇぜぇと荒い呼吸を零している。

 8キロくらいは結構スムーズに行けて、そこで一度大きめに休憩をとったうえで飯も水も腹に入れてからラスト2キロを突っ走ったのだが、そこで急に魔獣の数が増えたもんだからマジでビビった。

 殿役の峰田も前に出してもう全員が全力で連携しつつ突破した結果の3時間だ。

 ふざけんなよマジで。これで昼飯抜きだったら暴れる自信ある。

 

「やー……3時間って私達ならって意味で言っててさ。マジでこんな時間で来るとは思ってなかったんだよね」

「ねこねこねこ……正直10時間かかると思ってた」

「ほら見ろ俺の言った通りだ。これだから相澤ティーチャーはさぁ!!」

 

 マンダレイとピクシーボブが述べた内容に俺たちはだーっと呆れた。

 だと思ったよね!! 明らかに密度がおかしかったもん!!

 A組で集まって何度も訓練しててマジでよかったわ。連携とかもできてたしな。I・アイランドの経験も活きてる。俺偉い。誰か褒めて。

 

「私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら……特にそこの5人」

 

 ピクシーボブが舌なめずりして指さすのは緑谷、飯田、爆豪、轟、峰田だ。

 轟も節約してたとはいえ最小限の氷で魔獣を潰してたし、キルスコアなら後続の敵全部足止めした峰田が一番だったからな。さもありなん。

 こういう火力が必要な敵の場合俺は余りにも力になれん。個性解除は奥の手でやりたくないし。

 

「三年後が楽しみ!! ツバつけとこーーーーーー!!」

 

 事案発生。もしもしポリスメン???

 あれで喜ぶの峰田だけだろ。実際喜んでるわ。

 クソッ羨ましい!! でも流石に髪にツバつくのは嫌!!

 

「適齢期と言えば─────」

「と言えばて!!」

 

 そして緑谷が口を滑らせてまたピクシーボブの肉球アタックを食らってた。

 開始時点でもそうだったけどお前肉球フェチかもしかして? そんなにいいのかあれ?

 

「ずっと気になってたんですが……その子はどなたかのお子さんですか?」

 

 そして続いた緑谷の言葉に、バス降りた時にもいた少年にクラス全員の目が向く。

 ちょっと生意気そうな感じの子ですわ。マンダレイ曰く、彼女の甥っ子さんらしい。

 夏休みだから遊びに来てんのかな?

 

「あ、えと。僕、ヒーロー科の緑谷。よろしくね」

 

 そう挨拶した緑谷の股間に少年の拳が突き刺さった。

 

「きゅう」

「緑谷くん!! おのれ従甥!! なぜ緑谷くんの陰嚢を!!」

「大丈夫か緑谷? ちんちん無事か? 優しく撫でてあげよっか♥?」

「幾野を止めろ!?」

「峰田くん!! はよセンくん止めて!?」

「イクノお前よォォォ!?!?」

「冗談冗談」

 

 白目をむいた緑谷の肉体にトラウマを刻み込もうとしたが峰田によって止められた。

 なんでや。俺は親友の将来の為を想って患部を撫でてやろうとしただけやぞ。

 撫でるつもりは欠片もなかったけど。

 

「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねぇよ」

「つるむ!? いくつだキミ!?」

 

 去り際に洸汰少年がだいぶマセた発言をしていった。

 うーんクソガキ! 友のちんちんの恨みは深いぞ。

 君も性癖を破壊されたいようだね♥

 

 なんだか色々前途多難になりつつも、とりあえず俺たちは昼食にありつけた。

 準備してなかったらしいマンダレイたちに全員でブーブーとブーイングを飛ばしたらちゃんとおにぎりを作ってくれたのだ。

 なんかマンダレイもピクシーボブも……ママみがあるっていうか……いいよね。優しい。

 後でアドレス交換してもらお。

 

 


 

 

 昼食後は基礎訓練で終わった。

 マジで俺達が午後も森を突破できないと踏んでたらしく、本格的な訓練は明日からになるとのこと。

 しかしそれはそれとして山中での訓練は出来ることが多い。俺も峰田も中学時代にこういう所で鍛えまくってたからテンション上がった。

 楽しいなオイ。みんなでやる訓練はよォ!!

 

 そして日も落ちて夕飯の時刻。

 

「「「いただきます!!」」」

 

 昼は握り飯だけだったがまぁ夕飯はばっちり準備してもらえましたわ。

 うっめ!! いっぱい運動した後の飯うっめ!!

 魚も肉も野菜もバッチリそろってるやんけ。こりゃ美味いわ。

 昼飯抜いたらもっと美味かったか? いやそりゃないな。3食しっかり食べないとお肌が荒れるしな。

 

「この米美味いっすね!! 土鍋っすか!?」

「うん、炊飯器ないしね。明日は飯盒で自分で炊くんだよー」

「おお飯盒!! 面白そう!!」

「野菜もすっごい新鮮な感じ。流石自然の家ね」

「味噌汁がマジで五臓六腑」

 

 みんなで夕飯をワイワイしながら食べた。めっちゃ合宿してる感じ出てきたな!!

 あっという間にきれいさっぱり食べきってみんなでごちそうさまでした。

 

 さて。

 

「──────この後はお風呂だね♥」

 

 ぼそりと呟いた俺の言葉に、男子全員の肩がビックゥ!! と震えるのだった。

 

 






クラネスハインド様よりファンアートを頂いたので紹介させていただきます!

①ガチコーデ量産型ファッションで脳破壊するセンちゃんと物間

【挿絵表示】

センちゃんの量産型ファッションスタイルと物間を描いていただきました。
太ももに執念を感じる。こんなムチムチスタイルで男を名乗るのは各方面に失礼だよね? 謝って? 可愛いね♥
センちゃん峰田と続いていただいたファンアートの三人目が物間だと誰が想像しただろうか。俺は想像してませんでした。

ファンアート心より感謝申し上げます。有難うございました!
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