【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
【side マウントレディ】
作戦開始まであと1時間。
襲撃予定地点の近くで集まるヒーロー達の中からいったん離れてスマホを開き、幾野くんとの昨日のやり取りを確認する。
例の雄英の合宿襲撃事件があった翌日。
私はもちろん、以前うちに職場体験に来てくれた二人に心配の連絡を送った。
幾野くんはかなり無茶したようで、重傷で入院したとのこと。今はリカバリーガールのおかげで治ったと聞いて一安心だけど、あの個性でそこまでとなると、どんな個性の使い方をしたのかしら、あの子。
峰田くんは無事だったようで本当になにより。あの子も優秀な個性の使い手。
ぜひインターンでは二人ともまたうちにきてほしい。
将来的に私のサイドキックになってくれればさらに私の人気につながるだろうし。
さて、しかしそんな二人の内、幾野くんの方は真面目なときにはかなり頭がキレる。
だからこそ、私は幾野くんにひとつ、ラインで質問した。
『大変だったわね。ヴィランに攫われた爆豪くんってどんな子なのか詳しく聞いていい?』
この一つの内容で、彼なら恐らくすべてを察するだろう。
既読がついてから僅かな時間ののち、幾野くんから帰ってきたメッセージがこれ。
『何でも教えますけど、このやり取りは後で削除したほうがいいっすか?』
……流石ね。
わかったのだろう。私が爆豪くん救出の、ヴィラン連合への襲撃に参加することを。
その上で、彼の身近にいる友人である幾野くんに、少しでも情報を求めたことを。
しかしこれは実はあまりよろしいことではない。
襲撃の予定が漏れる可能性があるからだ。そもそも、まだ学生である幾野くんに事件と今後の予定について詳しく伝えられるはずもない。
でも、少しでも救出できる可能性が高まるならば、情報を集めることを躊躇いたくなかった。
だからこそ、この会話の中で私は何も明記しない。でも幾野くんならば察してくれるだろうと信じられる。
きっと彼ならば、私がこの襲撃作戦に参加することを周りに漏らさないだろうと信頼して。
『明日には削除しておいて。為になりそうな情報教えてちょうだい?』
『りょ。とりま爆豪ちゃんはツンデレロリ巨乳です』
『男の子よね!?』
『冗談っす。外見は体育祭で見てますよね。性格はクソ下水煮込みみたいなやつなんですが芯はあって─────』
そうして合間合間に冗談やら自撮りやら送られてきたが、必要な情報は集められた。
爆豪くん。性格はかなり粗野な所があるが、決して悪ではない。仲間想いな一面も。ツンデレという表現でツン9割。
そして、個性は爆破。最近は伸びが著しく、攻防に優れて……そして、以前よりも高速で
冷静かつ迅速な判断力もあり、切り替えが早い。自分が何をするべきなのかは常に理解している。
他人の話でも、筋の通った話なら受け入れて従う素直さもある、と。
もちろんこの情報は作戦に参加するヒーローたちにも共有済み。
体育祭の様子だけじゃ分からないこともあるからね。あの時に爆破の衝撃で跳ねてたのは見たけど、長距離も飛べるとわかったのはデカい。
もしもの時は飛んで脱出するのを援護するという手も使えるからだ。
そして、最後に。
『─────ダチなんです。マウントレディ、どうかよろしくお願いします』
『もちろん。私達を信じなさい』
幾野くんから絞り出すような願いの言葉を受けとって、通話履歴を削除した。
自分達で救えなかった悔しさを、それでも堪えて、ヒーローたちに託してくれた幾野くんの想いを背負った。
「……頑張らなきゃね。私も……って、あら?」
そんな彼からつい今しがた、新たなメッセージが送られてくる。
何だと開けばそこには綺麗なおへそを見せた幾野くんの自撮りが。
「おバカ!! ホントあの子おバカ!!!」
いや入院着で自撮りって。それでも私より可愛いの頭来るわ。
職場体験以降たまに冗談で自撮り送ってくるのよね。対抗して私も自撮り送り返してるんだけど。カメラ映りがここ最近で成長したわ図らずも。
「……ふふっ、ホント、変わらないんだから」
あの子のいつも通りの様子に、安堵で苦笑を零してしまった。
あんな事件があっても、幾野くんは変わっていないのだとわかったから。
だから、あの子たちの日常を取り戻すためにも。
私は全力でこの作戦を成功させる。
「……もう間もなく時間だ。先ほどの会見でヴィランを欺くよう校長にのみ協力要請しておいた! さも捜査が難航中かのように装ってもらっている! あの発言を受けその日のうちに突入されるとは思うまい!! 意趣返ししてやれ────さァ反撃の時だ!! 流れを覆せ、ヒーロー!!!」
作戦が始まった。
作戦は二面攻勢。
オールマイト率いる攻撃力と速攻性に秀でたメンバーはヴィランたちがいると思われる建物を襲撃。
恐らく爆豪くんもそっちにいると思うんだけど、私はまた別、脳無格納庫の襲撃に参加する。
私の巨体が一番活かせる、
作戦の軸は私であり、勿論それをやり遂げる覚悟があった。
(むこうはオールマイトもいる。爆豪くんも無事だといいけど……)
私の軽トラを履いた震脚の一撃でビルを粉砕し、脳無たちを全員無力化、制圧した。
既に保須市の襲撃で一度見ている、量産型脳無。あの時は建物の被害を意識しながらだったので峰田くんの援護が大変助かったが、今は破壊を気にする必要はない。私の本領発揮だ。
ベストジーニストらと力を合わせて瞬時に制圧し、ラグドールを救出した。様子が妙ではあるが、少なくとも生きてはいる。最悪の事態ではなくてよかった。
「───すまない虎。前々から良い個性だと思っててね。ちょうどいいから……貰うことにしたんだ」
「止まれ、動くな!!」
そんなときに、建物の奥から声が聞こえた。
「連合の者か」
「誰かライトを……」
「こんな体になってからストックも随分と減ってしまってね……」
「─────動くなと言ったはずだ。ヴィランには何もさせん!!」
暗闇からその言葉の主の脚だけが出てくる。
その瞬間にベストジーニストが個性で束縛した。
もちろん私もそこで油断はしない。保須市の経験で、一瞬の迷いが現場を左右することを知っているから。
あの時、幾野くんは迷わなかった。だからステインを被害ゼロで倒せている。
私だって後輩に負けてら
意識が、飛んでいた。
それに気づいたのは、全身にわたる激痛で目を覚ましてから。
(なぜ!? 急に、何が起きて……!?)
重い瞼を開けると、そこは既に地獄となっていた。
(……!! アレがさっきのヴィラン!? コイツがこれを!? 今オールマイトが戦ってる、でも……爆豪くんも!?)
訳が分からない状況になっていた。
オールマイトは別動隊としてヴィラン連合のアジトの襲撃をしたはずで、しかし今は仮面をかぶった邪悪な雰囲気のするヴィランと戦っている。
そして何故かここに爆豪くんが来ていた。その周囲には連合のヴィランたちが。
全員が、爆豪くんを捕まえようと躍起になって彼に攻撃を仕掛けている。
それを防ぎながらも戦うオールマイト。爆豪くんの動きも相当によく、なるほど幾野くんの同級生だと思わせる。体育祭の時よりも数段上の動きができている。
けれど、相手の数と質が悪かった。
(っ……爆豪くんを助けようとして、オールマイトの動きが悪くなってる……!)
救助対象の爆豪くんがいてヴィランにまた捕まえられそうになっているのをオールマイトが防いでいるせいで、攻撃に移り切れていない。
この場では、爆豪くんの存在はヒーロー側の足かせになっている。人質とはそういうものだ。
ならば、今私がするべきことは。
(───爆豪くんを逃がす!! 救出優先!!)
この場から、爆豪くんを逃がす事。
私はヴィランたちの隙を突いて個性『巨大化』を発動。
ヴィランたちと爆豪くんを分断するように、両腕を壁のようにして地面に振り下ろす。
同時にかばうようにして体を丸め、爆豪くんだけを自分の方に引き寄せるような形になった。
「んなっ!?」
「まだ動けたか!?」
「くっ、こんな腕すぐに……!!」
凄まじい衝撃で瓦礫が舞い散る中で、私の腕の内側、顔の真下に爆豪くんがいる。
影のかかる彼はこちらを見上げて、しかしやはり幾野くんの情報の通り、冷静に瞬時に判断した。
今が逃げるチャンスであると理解したのだ。
自分が今、オールマイトの脚を引っ張ってしまっていることを分かっていた。
その目を見ただけでやり取りは十分。
ヴィランたちの更なる反撃が来る前に。
あとはこの子の残りの力さえ聞けば!!
「────まだ飛べる!?」
「────まだ飛べる!!」
二つ返事で、聞きたかった答えが返ってきた。
ならOK。悪いけど、手加減する余裕ないからね!!
私は片手で爆豪くんの体を軽く掴む。
ヴィランに追撃される前に思いっきり立ち上がって。
そしてその勢いのまま────爆豪くんをブン投げた。
警察たちが、後詰めのヒーローたちが待機しているはずの駅前の方角へ。
「行って!! 駅前に待機してる警察とヒーローに保護を!!」
返事はなかった。それはそうだろう、大遠投に晒されてすさまじい勢いでぶっ飛んでいったのだから。
これが空を飛べない他の人だったらヒーロー免許剥奪の上投獄されてもおかしくない所業だが、彼の空を飛べる個性を信じる。
遠目に見れば、私が投げた速度を殺さぬように爆破でバランスを取って目標に向かって飛んでいく爆豪くんの姿が見えた。
ああ、よかった。幾野くんから情報聞いといてよかった。
「逃がすな!! 行くわよ……反発破局夜逃げ砲!!」
「ッさせるかっつぅのぉ!!!」
「んガハッッ!?」
振り返ると、ヴィランが組み合って同じように飛び出して爆豪くんを捕らえようとしていたので、私は残る力を振り絞って飛んできたシルクハットのヴィランを手を振るい弾き落とした。
それで更に一人ダウン。
これで人質は救出できた。
今、グラントリノも増援に来て他のヴィランの意識を一瞬で落とした。
やった。
やったわよ幾野くん。
約束、守ったからね。
だから、あとは任せたわ────オールマイト。
【side オールマイト】
「ああ、流石はマウントレディだ……これで心置きなくお前を倒せる!!!」
爆豪少年を守る中でAFOの相手をするのは余りにも厳しかったところで、しかしマウントレディが見事に爆豪少年を逃がして見せた。
爆豪少年の個性は教師である私こそが誰よりも知っている。彼の個性は最近よく伸びてきて、飛ぶ速さも安定感もかなり増している。あれならば無事着地し、保護を受けられるだろう。
緑谷少年や幾野少年ならば戦場に戻ってきてしまうかもしれないが、爆豪少年はそういったところはいつも冷静だ。
大丈夫。だからあとは、AFOを再び倒すのみ。
「弔……君は戦いを続けろ」
AFOがヴィラン連合を黒霧の個性を無理矢理起動してワープさせた。
全員を逃がしてしまうのはいただけないが、今はとにかくこのAFOを倒す。
私も残り少ないOFAの力を振り絞り、何としてもここでこいつを止める。
止めなければ、ならない。
「ああ……ヒーローは守るものが多いよなぁ……」
「黙れ……貴様はそうやって人を弄ぶ!! 壊し奪いつけ入り支配する!! 日々暮らす方々を!! 理不尽が嘲り笑う!! 私はそれが許せないッッ!!!」
人々の被害を最小限に留めつつも、私は身を犠牲にしながらもAFOに拳を叩き込んだ……が、その渾身の一撃で、とうとう来てしまった。
「ふふ……衰えたねオールマイト。こんなことじゃ先代の志村菜奈が嘆くぞ」
「貴様の穢れた口でお師匠の名を出すな……!!」
私の動揺を誘う言葉とは分かっていながらも声を荒らげざるを得なかった。
しかしその瞬間の隙をついて、AFOは私の体を空高くつき上げる。
空中でグラントリノに助けられたが……着地した後に、私の後方で逃げ遅れた市民がいるのに気付いて、私はそれを守るために力を使ってしまい。
『な──えっと……何が……皆さん見えますでしょうか? オールマイトが……しぼんでしまってます……』
とうとうトゥルーフォームを晒してしまった。
恩師、親しい友人たち……そして緑谷少年と、幾野少年、発目少女にしか教えていなかったこの形態を。
報道ヘリも飛んでいる。恐らくは全世界に私の姿をさらしてしまっただろう。
「頬はこけて目は窪み!! 貧相なトップヒーローだ! 恥じるなよ、それが
煽る様にAFOが両手を広げて高笑いする。
ああそうさ。お前の言う通り、これが真実の私だ。
力も使い果たし、もはや消えかけの火を守るだけのロートルだ。
体が朽ち、衰えた。
「これも知ってるかい? 死柄木弔は志村菜奈の孫だよ。ふふ……君が嫌がることをずうっと考えてた。事実さ、分かってるだろ? 僕のやりそうなことだ」
さらに続けるAFOの言葉に私の心は揺さぶられる。
個性も使い果たし、体も衰え、力もない。
止めなければならないこの男に、立ち向かえないのかもしれない。
情けない男だ。平和の象徴などとどの口が。
最早何も救えない男になった。力もなく、戦えず────
─────そう、諦めてしまっていたかもしれない。
だが。
だが、今は違う。
そんな情けない私を信じ続けていてくれた
「……ん? 何を……?」
私はこの瞬間まで、自分の力を使い果たした瞬間まで切るまいとしていた切り札を使う覚悟が出来た。
隠し持っていたサポートアイテムを取り出す。
私が取りだしたそれは。
かつて、Iアイランドで親友が開発した、私のためだけの
「使わせてもらうぞ……
I・アイランドでAFOの手引きをしたヴィランの企みに騙され、今は保護観察処分を受けている我が友デイブ。
君が開発してくれた、個性を引き出しパワーアップさせる、特別なサポートアイテム。
しかし一度しか使えず、使えば壊れてしまうこれを、ここで使わせてもらう!
「有難う───私は、まだ戦える!! 守るものが多いからこそ負けないんだAFO!! その重みを味わうがいい!!」
頭部に着用したサポートアイテムが脳を揺らし、体内の個性細胞を活性化させる。
そして次の瞬間、私の体が全盛期の状態に戻った。いや……それ以上。
これならば─────お前を倒せる、AFO。
そして、人々も救えるのだ。
「なッ────貴様、どこにそんな力がまだ……!? かつての力すら超えて……!?」
「ようやく声が震えたな!! 刮目せよ!! 全盛期の私が────帰って来たッッ!!!」
100%の速度で飛び込んで、全力の拳を一発。
AFOの焼けただれた顔が苦悶に歪む。
かつて対峙したとき、今の数倍の個性を持っていた時のAFOとは違う。ヤツも弱体化している。
そこに全盛期の力で飛び込めば、拳を叩き込むことは容易だった。
「ああ、無論ッ!!! 助けもするともッ!! ヒーローだからな!! もう大丈夫、私が来たっ!!」
悶絶するAFOの隙を突いて、周囲の人々を一瞬のうちに救出する。
瓦礫に挟まれて泣いていた女性も、逃げ遅れた人々も全員だ。
それらを遠く、ひとまとめにしたところにエンデヴァーら他のヒーローたちも集った。
これで後は任せられる。
「こちらは任せろオールマイト!! 貴方はあの邪悪を止めてくれ!! どんな姿をさらしても、貴方はみんなのナンバーワンヒーローなんだ!! みんなあなたの勝利を願っている!!」
「ああ!! これが最後の力になるが……必ず止める! 私を見ていてくれっ!!!」
虎の激励の言葉に答え、再びAFOと対峙する。
決着の時だ、AFO!!
「煩わしいッ!! 確実に殺すためにも今の僕が掛け合わせられる最高・最適の個性たちで貴様を殴る……!!」
AFOはその右腕に、恐らく増強系の個性を重ね掛けしているのだろう。
禍々しい形になった右腕を構えてこちらに向かってくる。
それはヤツの執念の塊。
それはヤツの悪意の塊。
この一撃には、恐るべき力が込められていて。
でも、だからこそ。
私が負けるわけにはいかないのだ。
お前を倒し、そして私もまた緑谷少年を育てるそれまでは、まだ死ねんのだ!!
「フルパワー────────SMASH!!」
「個性『衝撃反転』……!!」
こちらが放った右拳はAFOの衝撃を反転する個性に捉えられ、放った力が全て私に返ってくる。
ああ、
貴様がそういうことをする男だと、私が一番知っているとも!!
だからこそ!!
「本命はこっちだッッ!!」
「ガッ!!!」
左腕でもフルパワー。
この一撃でAFOの意識を一瞬飛ばすことに成功した。
しかしやはり……私の力は搾りカスを無理矢理引きずり出しているモノ。
この二発の拳で、急激に体から力が失われて行くような感覚を覚えて。
頭に装着していた
ああ。
だが、何度でも言おう。
今度こそ、己の意志で振り絞る。
最期の力を、再びこの右腕に。
幾人もの命を救ってきた、OFAの魂を叩き込む。
「オオオオオオオ!!! 」
さらばだ─────オール・フォー・ワン。
「UNITED STATES OF SMASHッ!!!」
さらばだ─────ワン・フォー・オール。
そして─────
────────次は、君だ。
今回でそこそこ区切りが良かったのでここまでの話のあとがきみたいなものを活動報告でまとめてます。
ここすき紹介などもしてますのでよかったらご覧ください。いつものやつ。
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