【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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今更ですけど峰田の出身地が千葉になってます。細かい事は気にするな。




58 これはもう同棲と言って過言ではないのでは?

 

 

 俺たちは地元である千葉に向かう新幹線の中にいた。

 

「お、神野の悪夢の被害情報まとめが出た。……死亡人数0かよ、マジか……!」

「流石オールマイトだよね! 重傷者はいても、戦闘中のあの一瞬で助けられる人を助けた!」

「力を引き換えにしたことは疑いようのない事実……しかし、最後までナンバーワンヒーローだった、ということか……」

「なぁイクノ? んなことよりよぉ……ヤッたのか? なぁヤッたのかよお前? ヤッたよな??」

 

 隣に座る峰田が童貞特有の荒い息で問いかけてくるが俺はそれを無視しつつニュースサイトを見ていた。

 先日の神野の悪夢の被害詳細がニュースサイトに流れており、なんと死亡者0名との発表。

 ベストジーニストら、ヒーローの中にも大きな怪我を負った人はいるが、命を失った人はいなかった。

 あの最後に使ったサポートアイテムの成果だろう。あの力を使い全盛期の力を取り戻したオールマイトが戦闘の合間に人々を救出したからこそ。

 マウントレディも今はすっかり回復したと先日聞けてホントに何よりだ。爆豪ちゃん助けたのもマウントレディだったらしく、後日に御礼の連絡と自撮りを送りつけておいた。

 

「しかし、事件の影響で全寮制になるとはびっくりだったね」

「俺たちはみんな一人暮らしだから正直影響はそこまで大きくないよね! 俺と環は殆どインターンで学校にも家にもいない事が多いし」

「夏のうちに家族の元に帰り、今後活発になると予想されるヴィラン連合の脅威に対し……家族間で話し合うという目論見もあるんだろう」

「んー、それでもオイラ雄英でやってきたいッスけどね。せっかく首席で入学したのにもったいねぇぜ。かわい子ちゃんのダチも増えたってのによ」

 

 駅弁をみんなで食べながら、雄英からの案内プリントに目を通す。

 それは『全寮制導入検討のお知らせ』と書かれたものだ。

 どうやら雄英高校は今回のヴィラン襲撃を受けて、現状の通学形態では生徒の安全を守れないという面と、全寮制でより学校に密着した生活様式にすることで学習密度を高めるという面で、全寮制に移行するらしい。

 でも今からすぐそれにするってなかなか大変じゃない? 寮とかすぐ準備出来るもんじゃ……あ、いやセメントス先生がいるか。一人建築革命。あの人がいれば何とでもなるのか?

 

「ま、俺とセンは間違いなくOK貰えるだろうからね! 余りそこは悩んでないかな!」

「だね。4カ月ぶりに叔父さんと叔母さんに会えるから近況報告しなきゃ」

「俺も問題ないだろうな、仮免もあるし。……しかし、幾野の入学してからの暴れっぷりはおじさん達も心配しているだろう。よく話して来い」

「オイラの親からもイクノくん大丈夫? って結構心配の連絡来てたからな。目立ちすぎだよお前」

「にへへ。悪いね。峰田んちにも後で挨拶行くわ」

「ん」

 

 どうやら俺の暴れっぷりは天喰先輩や峰田のご両親にまで伝わってしまっているらしい。

 まぁなぁ。USJの件はともかくとしてまず体育祭で大暴れして、ヒーロー殺し事件で全国に俺の正論パンチが流れ、I・アイランドでも俺の写真撮られたのがなんかネットに上がってたし、林間合宿でもぶっ倒れた側だし。

 有名になればなるほど心配をかけてるのは申し訳ないとも思いつつ、ヒーローってそういうもんだとも思う。

 心配されないくらい強くならないとな。そのためには仮免をとっとと取って、ヒーロー活動の実績を上げていかなければ。ミリオ兄さんや天喰先輩がそうであるように。

 この二人はインターンでも活躍しているからこそBIG3の称号を与えられている。

 

「ん、そろそろ着くな。静岡から千葉はまだ近い方だよなー」

「障子とか口田は大変だよな、福岡に岩手だっけ」

「どうやっても一人暮らししなきゃならないお家もあるよね! そういう人にとっては全寮制で家賃免除になるから渡りに船かもね!」

「共同生活になるところだけが不安だ……」

 

 もうすぐ地元の千葉が近づいてきて、俺達は降りる準備を始めるのだった。

 

 


 

 

「お帰り、ミリオ、セン。元気そうで何よりだ」

「おかえりなさい、二人とも」

「ただいまだよね!」

「ただいま。叔父さん、叔母さん」

 

 通形家に帰って来た。

 俺が中学一年の時に移り住み、三年間を過ごした家。

 ミリオ兄さんが雄英に入学してからは、叔父さんと叔母さんと俺の三人で暮らしていた。

 俺の、今の家族。

 

「ミリオもセンも活躍していると聞くぞ! 特にセン、入学して数日で朝のニュースに出てた時はまぁ笑ってしまったな!!」

「俺可愛すぎるからね、しょうがないね」

「変わらないわねセンは。逆に安心してしまうわ」

「自撮りを俺に送るのはそろそろ飽きてほしいんだよね!! クラスメイトに見られかけて社会的に終わりそうになったからね!!」

 

 叔父さんも叔母さんも、俺の事は何でも知っている。

 悲しい過去と、そこから救われてヒーローを目指したあの日、涙を流して喜んでくれた3人。

 俺の性格から性癖から、なんでも受け入れてくれている。これほど有難いことがあるだろうか。

 

「あんまり峰田くんに心配ばかり掛けるなよ? 峰田くんのお父さんから今でもたまに相談を受けるんだ」

「大丈夫大丈夫。あいつも変わってない……いや、前より強くなってるし。学校じゃ女の子にも結構モテるんだぜアイツ」

「あら、本当? よかったわねぇ、二人でよく彼女欲しいって言ってたものね」

「そういうセンはもう彼女出来たみたいだけどね!! 早すぎるんだよね!?」

「おお!? そうなのかセン!? どんな子だ!?」

「ひみつ。でもすっごいいい子だよ……こんな性格と外見の俺の事、受け入れてくれる子」

「あらあらまぁ……でも駄目よセン? ちゃんと避妊はしなさいね?」

「どうしてヤってる前提になるの?」

「センが我慢できるはずもないと俺も思うんだよね!! 学生の間は節度を保ってね!! デキたら色々困るからさ!!」

「んにゃぴ……」

 

 理解が早すぎる。そんなに信用がないか俺の下半身。

 まぁヤッたのは事実なんだけどさ。ちゃんと避妊はしましたよ。流石に俺も透ちゃんもまだ赤ちゃん欲しいの♥の時期じゃないってわかってるもん!

 しかし家族とこういうネタで話せるのはありがたい。やっぱ通形家はいいお家ですわ。

 

 その後はミリオ兄さんのインターンの話や俺の体育祭の話などで盛り上がり、久しぶりに家族4人の時間を過ごして。

 翌日、家庭訪問に相澤先生とオールマイト先生、3年担任としてスナイプ先生が来訪され、家族全員で円満に全寮制への意向に賛成した。

 

「幾野」

「ん、なんすか相澤先生」

 

 先生たちの帰り際、俺にだけ相澤先生が声をかけてきたので近寄って答える。

 なんか言われることあったっけ。

 

「……病室での件は切島から聞いた」

「ん。そうでしたか。……その、あん時はみんな色々混乱してて視野狭まってたんです。誰も実際には行きませんでしたし、寛大な処置でお願いしたいと……」

「わかってる。切島にも口頭指導で済ませた。今回の件は俺たち雄英側に全ての責任がある。止めてくれて助かった、という話だ」

「そっすか。なら俺からは何も」

 

 どうやら病室での一件は切島本人の口から相澤先生に報告したらしいな。

 律儀な奴。まあ頭冷えて大いに反省してたし、爆豪ちゃんも助かったからきっちり筋は通そうとしたんだろうな。

 そこから特に話も広がらず、俺たちは先生方を見送った。暑い中お疲れ様です。

 

 そしてその後はもう一日を実家で過ごし、みんなで俺の両親の墓参りをして、峰田の実家にも顔出して挨拶して、俺らはまた静岡に戻って。

 

 8月中旬に、俺達はアパートを引き払って雄英の寮に引っ越す事となった。

 

 


 

 

 雄英敷地内、校舎から徒歩五分の築三日。

 一人建築革命セメントス先生の頑張りにより建てられた寮『ハイツアライアンス』の前に、俺達A組は集まっていた。

 

「おー、でけーな!」

「恵まれし子らのー!!」

「建物に1-Aってバリバリ書いてあるけどこれ来年は2-Aになんのか?」

 

 どうでもいい事に突っ込みつつ、みんなが集まってくるのを待つ。

 その中には透ちゃんもいた。ご両親の説得も無事できたらしい。林間合宿で倒れた件もあり心配されていたとのことだが、守ってくれる人がいるから、と説得してご理解を得たようだ。

 いずれ挨拶に行かなきゃ(使命感)。

 

 そして全員が集まった時点で相澤先生も姿を現した。

 先生も無事だったか。あの記者会見では本当に大変そうだったし、もしかして……とも思っていたが、無事担任を継続できるようで何よりだ。

 

「とりあえず1年A組が無事にまた集まれて何よりだ」

 

 その言葉にみんなからも安堵の言葉が漏れる。

 梅雨ちゃんが相澤先生も無事でよかったと伝え、俺らもそれに同意した。

 いやほんと先生も一緒でよかったっすよ。素直に嬉しいわ。

 

「さて……これから寮について軽く説明するが、その前に一つ」

 

 相澤先生が手を一つ叩いて、話を進める

 

「当面は合宿でやる予定だった仮免取得に向けての訓練を再開する」

「そういやあったなそんな話!」

「色々ありすぎて頭から抜けてたわ……」

「いや仮免欲しさは俺らが一番感じたじゃん病室で。忘れんなよ」

 

 瀬呂のすっとぼけた話に思わず俺が突っ込んだ。

 あの時みんなを止めた俺が言うのもなんだが、仮免があれば俺だって止めはしなかった。

 資格がない事の無力さ、資格を取る事の必要性をみんながあそこで感じていた。

 

「その件だが……緑谷と幾野の病室でお前らが話してた内容は俺の耳に入ってる」

 

 その言葉で僅かにみんながざわつく。

 うん、そらそうよな。まぁ報告したの切島なんだけど。

 俺は家庭訪問の際に聞いてるのでそこまで驚きはなし。続く話を聞く。

 

「結果的に誰も行かなかったから不問とするが……無茶はするな。お前らにそこまで考えさせるほど俺ら教師が生徒を守れてなかったことの裏返しでもある。そこは謝罪する……危険と、心配と、迷惑をかけた。すまなかった」

「っ、頭を上げてください先生!! あんときゃ俺だけが頭に血が上ってたんだ!! 悪いのは俺っす!」

「……俺も幾野に諭されるまでは切島を止める気なかった。俺も、すみません」

 

 生徒の信頼、ひいては教師側の防衛意識の怠慢を話題に上げ、相澤先生が頭を下げる。

 切島がそれに謝罪の声を上げて、轟も続いた。みんなも頭を上げてくれるよう相澤先生を心配する言葉をかけた。

 先生方、やっぱ林間合宿の事件は相当重く見てんな。まぁそりゃ当然か。あんな記者会見まで開かなければいけないほどだ。

 悪いのは誰かって言ったらヴィラン連合であることは間違いないんだけど、それで終わりといかないのが世間というものなのだ。世知辛い。

 

「いや、何にせよお前らは止まった。そこまで思い詰めさせたのは俺達だ……だから我々教師も、これからはそんな心配をかけないように尽力する。この全寮制がその一歩目だ」

「先生……」

「全部棚上げして言わせてもらうが……これからは前以上にスパルタで行くぞ。お前たちが正規の手続きを踏み正規の活躍ができるように、さらに指導に力を入れていく。気合入れろよ」

「「「はい!!!」」」

 

 相澤先生の、いや雄英からの謝罪と、さらなるプルスウルトラを目指した言葉に俺たちは大きく返事をした。

 そう、プルスウルトラだ。どんな受難も乗り越えて、俺達は強くなるんだ。

 みんなで頑張ろうぜ。俺も頑張る。

 

「以上! さっ、中に入るぞ。元気にいこう」

「っしゃ!! やってやるぜ!!」

「俺もやるぜやるぜ。具体的には生活面でやるぜ。共同生活楽しみだね♥」

「幾野がそれ言うと怖いんだよ!?」

「俺らの唯一の不安がそこなんだよなぁ!?」

「親から幾野くんと共同生活って大丈夫なの? って素で心配されたよ俺……根はいい奴だからって説得したけど」

「優しいなぁ尾白くん! そうだね、俺はみんなの事をいつだって想ってるよ♥」

「林間合宿を思い出してもう一回言ってみろ?」

「風呂はふざけ過ぎたなと反省してるし許してくれんか。寮じゃ流石に大人しくするからよ風呂では」

「風呂以外でも大人しく出来ねぇか?」

「イクノはオイラが止めるからよ……何かあったら呼べよな……」

「ケロ、峰田ちゃんが最後の砦ね」

 

 しかし真面目な雰囲気が続くとどうしても我慢できなくなるのが俺だよね!!

 茶化しも入れて、肩を竦めて苦笑を零す。

 そして最後に爆豪ちゃんの頭をパシーン! と叩いてやった。

 

「ッア゛ア゛!? 何しやがる幾野ォ!!」

「いや、相変らずのツンツン頭で元気そうで何よりだと思って。見舞い行く暇なかったからよ」

「ケッ!! 俺があの程度でくたばるワケねぇだろォが!! ピンッピンしてるわ!!」

「そりゃ何より。んじゃ爆豪ちゃん復帰祝いで今夜の飯は激辛系にしようぜみんな!! 激辛耐久勝負だ!!」

「おっ、面白れーじゃねーか!!」

「買い物とか行けるかな?」

「初日から汗をかいてしまいますわね」

「甘い物も準備しよーね!」

「……チッ」

 

 うん、こいつも元気そうで何よりだ。

 A組20人が集まれたことの喜びを感じつつ、寮に入っていった。

 

 


 

 

 広っろ。

 

「右が女子棟、左が男子棟と分かれてる。ただし一階は共同スペースだ。食堂や風呂、洗濯などはここで」

「広キレー!! そふぁあああ!!」

「中庭もあんじゃん」

「豪邸やないかい!」

「麗日くん!?」

 

 俺たちは寮に入り、その広さと豪華な外観に驚きの声を上げた。

 麗日ちゃんなんかショックで倒れそうになってしまっている。

 ふむ……天井も高い……窓も多い……そして共同スペースの多さ……これは!!!

 

「聞き間違いかな……? 風呂・洗濯・食堂が共同スペース? おいおいイクノ……これはよぉぉ……!!」

「ああ峰田……こりゃあ……掃除のし甲斐があるぜェェ!!!

「そこなん!?」

「あー、センちゃんたち掃除好きだもんね」

 

 ウッヒョォォ!! 掃除し放題じゃねぇか!!

 マジかよテンション上がってくるなァ!! 河川敷でのゴミ拾いが出来なくなって寂しいと思ってたらこんな甘露があるとはよぉぉ!!

 

「……提案だが。寮長を生徒から一人決める必要があってな。委員長と兼任だと仕事が多忙になるから誰か指名しようと考えてたんだが……幾野、お前やってみろ」

「えっ」

 

 テンション上げてたら急に相澤先生から寮長の指名があった。

 えっ。俺っすか。なんで。めんどい。

 

「ウム、委員長としてもその案に賛成です。これまでも施設借用などで彼のこまめな所を見ているし、何より幾野くんは誰よりも周りを見て気を配れている。僕からも推薦する」

「右に同じですわね。委員長決めの時はまだ付き合いも浅かったですが、今ならばぜひお任せしたく存じます」

「私もセンちゃんにさんせー!! ピッタリだと思うな!! 何かあったら手伝うから!!」

「うん、僕も賛成する!」

「俺も」

「私も」

「ウチも」

「いいんじゃね? 相応の立場与えて責任持たせればブレーキにもなるだろ」

「俺も幾野ならやれると思う」

「ケッ。面倒なことはテメェがやれや」

「オイラが抑止力になるから寮の面倒なことはイクノに任せようぜ」

「大絶賛じゃん……」

 

 みんなに目を向ければまさかの全会一致で俺を推薦してくるという。

 んもー! そこまで期待されたらやるしかないわねー!!

 

「……ん、わかった。んじゃ暫定で俺が寮長ね。後で夕飯ローテとか掃除のローテとか決めていって、何か足りないものとかあったら備品買って、共用の茶菓子とかも準備したり。色々考えとくわ」

「そのテキパキさは流石だね……委員長決める投票思い出すね」

「頑張れよイクノ」

「おう」

 

 そんなわけで寮長幾野潜が爆誕しました。

 施設の説明や部屋割りを聞きながら俺はにやりと笑顔を零す。

 期待されてしまったなら頑張ってみますかね。

 

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