【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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60 見せな……てめーの……『部屋コーデ』を……

 

 

 さてエントリーナンバー1番、緑谷の部屋から。

 

「オールマイトだらけだ!! オタク部屋!」

「憧れなんで…………恥ずかしい……」

 

 緑谷の部屋の中を見れば、前にお邪魔したときと同じくらいオールマイトだらけだった。

 いったん出して仕舞ってしてるから多少これでも整理されてるな。自宅の時はもっと雑多に本とかあったしな。

 俺は当然のようにしゃがみ込んでベッドの下にエロ本を差し込む。

 

「呼吸するように僕のベッドの下にそういう本忍ばせないで!?」

「え……前と同じように何冊かないと落ち着かないかと思って……ってか見つけたんか緑谷、前に俺が隠してたやつ」

「母さんに見つけられて家族会議になったよ……! まぁ幾野くんが置いてったって言ったら納得されたけど」

「引子さんも俺の事をよく分かってらっしゃる」

「罪深い」

 

 結局エロ本を仕込むことは失敗。

 そして今後俺は絶対にベッドには近づかないように釘を刺された。なんで。

 

 

 次はエントリーナンバー2、常闇。

 

「フン、下らん……ッ待て幾野!! 貴様個性を悪用して部屋に忍び込もうとするな止まれ!!」

「えー? 駄目ー? 俺常闇くんの部屋見たいなー♥」

「遠慮を覚えろ……!!」

 

 俺が強引に突破しようとしたら常闇が観念して扉を開けてくれた。押しに弱いよね常闇クン。

 そして中に入れば黒い。暗い。そして呪術的ななんかかっこいい服が置いてある。

 

「男子ってこういうの好きなんね」

「カッコイイ……」

「分かるな。ロマンあふれてるよこの部屋。俺的には高得点」

「このキーホルダー俺中学ん時買ってたわぁ」

「出ていけ!!」

 

 常闇はシャイだね。雰囲気好きだけどなぁ。その剣と盾とかどこで買ってきたんだよお前。

 いつまでもこの少年心を忘れないでいてほしい。

 

 

 次、青山ハウス。

 

「まぶしい!!」

「ミラーボールが二つある部屋初めて見た」

「何気にベッドの向こうの甲冑すごくない? 高くないあれ??」

「ノンノン! まぶしいじゃなくてま・ば・ゆ・い☆!!」

 

 青山の部屋はとにかくキラキラしててさっきの常闇の部屋とは対照的だ。

 足して2で割れんか?

 でも一番気になったのが部屋の奥にあった甲冑だよ。ガチめのやつじゃん。

 これを見て想定の範疇を出ないって言える芦戸ちゃんはすげーよ。

 透ちゃんも思ってた通りって言うけど割とびっくりしたよ俺。みんな部屋に好きなモン置きすぎだろ。

 

 

 次、2階の最後の峰田ハウス。

 俺は親友の部屋だとしても躊躇いなく突入するぜ。

 

「峰田くんの部屋かぁ! やっぱエッチな本とかあるんかな?」

「幾野の部屋よりは大人しいと見た」

「ケロ……常識外れだったらリフォームしてあげるわ」

「まぁ入れよ……すげぇの見せてやんよ……」

 

 謎の自信にあふれた峰田の部屋にお邪魔する。

 まぁ俺は中学時代から何度も遊びに行ってるんで大体中は知ってるんだけどね。

 

 さて、入ってみればまず壁の一面にめっちゃ引き延ばしたグラビア写真(非R18)。

 本棚には愛読してるグラビア雑誌と、俺らで補修したリバイバルエロ本。

 ベッド下は語るまでもないだろう。女子は見ない方がいいぜ。

 

「「「エロ部屋!!!」」」

 

 女子たちからまぁ想定通りのリアクションが来るよね。

 

「想像通りと言いますか……いえ、でも男子ですからこれくらいは普通なのでしょうか?」

「ウチらの基準が幾野と峰田のせいでおかしくなってるところあるかもね。こんくらいならまぁ……とかちょっと思っちゃったもん」

「ってか18歳未満なのにエロ本置いといていいのかよ」

「これはオイラとイクノで河原で拾ったやつだからセーフ判定」

「……え? こんなに綺麗な状態なのに落ちてたの……?」

「あー、それは補修したんだよ。後で動画見せてやろーか? SNSでちょっと前にバズったんだぜ俺らのエロ本補修動画」

「響きが面白過ぎてズルいわ」

 

 普段から俺が下ネタをぶちかまし、峰田がブレーキになっていることでA組のエロ耐性がレベルアップしていた結果、峰田のこの部屋もまぁ生暖かい目で見られる程度に落ち着いたようだ。

 ま、補修した本以外は男子高校生としちゃ普通の部屋の範疇に収めてるしな。真のエロは表に見せるものではない。

 エロ本補修動画を見てみんなをウケさせてると、壁に貼られたグラビアポスターを見てぽつりと緑谷が意見を零した。

 

「……この女の人、髪は短くて胸は大きくて、腰以下はほっそりしてて身長低いね……」

「急にソムリエになるじゃん緑谷」

「いや……なんか……幾野くんと真逆だなぁってちょっと思って」

「ゥンッフ……あー……」

 

 その言葉を受けて峰田がとても悲しい顔になった。

 

「イクノと長い事付き合ったせいでよぉ……オイラ長髪モノとか高身長モデル体型に中々興奮できなくなっちまってよ……」

「……あー……いや峰田、俺らはそれ笑わねぇよ。気持ちわかるぜ」

「うん……大変だったね……」

「咎人たるは幾野なり……」

「お前はすげぇよ……こんなのと三年間も付き合ってよ……」

「……ケロ。峰田ちゃん、長い髪好きじゃないのかしら……」

 

 男子陣がみんな峰田を慰めてた。なんやなんや。

 お前らの将来の姿だぞ。お前らも性癖歪むんだぞ。俺が歪ませる(決意)

 梅雨ちゃんがなんか小声でつぶやいてたような気もしたけどよく聞こえなかった。まいっか。

 

 

 はい、そんで峰田の部屋は終わって3Fへ。

 まずトップバッターは尾白。

 

「ワァー普通だァ!!」

「普通だァ! すごい!!」

「これが普通という事なんだね……!」

「言うことないならいいんだよ……?」

「テーブルにまずティッシュが置いてあるのが準備の良さを感じさせるよな」

「無理に変なこと言おうとしなくてもいいんだよ幾野??」

 

 正直ツッコミどころに欠ける部屋だった。

 でも机の上に櫛とティッシュが置いてあるのは俺の部屋と同じだな。櫛は尻尾用なんだろうけどさ。

 すっきりして生活感に溢れてたのは好印象ですね。

 

 

 次、飯田。

 

「難しそうな本がズラッと……流石委員長!」

「峰田くんの部屋のようにおかしなものなど何もないぞ」

「オイラの部屋がおかしなものしか置いてないみたいな言い分じゃねーか」

「それは事実よ峰田ちゃん」

 

 なんつーか……縦線と横線が多い部屋だった。

 ベッドまでそんな模様があるのが流石だわ。黄金長方形探し出せそうこの部屋の中。

 

「メガネがクソある!! あははは!!」

「何が可笑しい! 激しい訓練での破損を想定して準備してあるんだ!!」

「いや準備するにせよ棚に飾るのはおかしいだろ。空気に触れてレンズが劣化しちまうぞ」

「……幾野くんにストレートに正論を吐かれるとは思わなかったがその通りだな!」

 

 机の上、壁に棚を作ってありそこに眼鏡が陳列されていた。麗日ちゃんがツボってウケてた。

 眼鏡市場かよ。しかもそのまま置いてあるってどう考えても痛むだろレンズ。

 それを指摘したら普通にド正論だったので後で布をかけておくとの事。うん、物は大切にしような。

 

 

 次、上鳴ルーム。

 

「チャラい!!」

「手あたり次第って感じだナー」

「多趣味というよりはとりあえずはやったり話題に上がったもの全部買った感じあるね」

「パソコンあるじゃん。後でエロサイト巡りしようぜ上鳴」

「絶対に幾野がいる時にはやらねぇからな!? せいぜい峰田までだぞ許せるの!?」

 

 何でもあるって感じだ。バスケットボールにスケボー、小物類にマウンテンシューズ、ダーツに……うん、ドンキに全部売ってる感がすごい。ザ・ドンキと名付けよう。

 でもパソコンがあったからそこは偉い。俺の部屋にもあります。

 

 

 次、口田ルーム。

 

「ウサギいるー! 可愛いぃぃぃ!!」

「あー……そっかその着眼点はなかった。アパートの一人部屋って基本ペット禁止だけどここはそういう縛りないもんな。やるじゃん口田」

「うん……実家にいた子なんだけど連れてきちゃった。これまでの一人暮らしだと中々飼えなかったから」

「ペットはズリィよ口田ー。あざといわぁ」

「わー、かわいい!」

「いいですわね、ペット」

「今の所ここが一番かなー。他の男子部屋は一味足りない感じ」

 

 整頓された部屋という意味では尾白にも近しいものが在ったが、何とウサギが住んでいらっしゃった。

 ペットNGじゃないアパートなんて珍しいもんな。いやこれは発想の勝利。

 でもペットがいるとなると掃除は大変そうだ。口田はその辺マメだから大丈夫だろうけど。

 口田が長期不在にするときはみんなで持ち回り世話してやるか。

 

 

 次は4Fなのだが、ここで男子陣から意見が出てきた。

 

「釈然としねぇ」

「ああ……奇遇だね。俺もしないんだ釈然……」

「そうだな」

「僕も☆」

「男子だけが言われっぱなしってのは変だよなァ? 『大会』っつったよな? なら当然! 女子の部屋も見て決めるべきじゃねぇのか!? 誰がクラス一のインテリアセンスか全員で決めるべきなんじゃねぇのかぁ!?!?」

 

 どうやらこれまで女子側から雑に評価を受けていたことが逆鱗に触れたようだ。

 勝負は剣でも鉄球でもなくインテリアセンスで決める様だ。当然だな。

 ってか。

 

「いや普通に寮長としては女子部屋も回るつもりだったんだけど?」

「先に言えよ幾野!?」

「え、だって……ねぇ透ちゃん? 男子だけってのも変な話だもんね?」

「うん、フツーに女子の部屋もこの後回るつもりだったよー」

「え」

 

 俺は普通に男子の後は女子の方回るつもりだったんだけど。

 透ちゃんだってそのつもりだっただろう。男子の部屋だけ女子が見て、女子の部屋を男子が見ないってのもおかしな話ではないかね?

 何故か耳郎ちゃんが聞いてない! みたいな顔するけど男女平等参画社会だぜ昨今の世の中は。

 LGBTQを体現する俺が寮長をやってる以上、この寮内で男女の格差は許しません。

 

「ってわけで峰田の案の通りインテリアセンス大会を実施します! 勝者には俺の際どい自撮りが」

「自撮りはいらねぇ」

「幾野が関わらない何かで頼む」

「彼女出来たんだからもうちょっと落ち着いてくれ」

「んにゃぴ……」

「私はセンちゃんの自撮りも欲しいけどなー」

「この彼女ブレーキになってねぇぞ!?」

 

 大会の開催を宣言したけど自撮りはNGをくらった。

 んもーみんな遠慮しちゃって。仕方ないわね。

 

「じゃあ夕食の献立を好きなメニューで決める権利×3くらいにしとくか。早速男子部屋廻ろうぜ」

「それならまぁ」

「メシ関係も20人分ってなると大変だよな。頑張れ寮長」

 

 賞品は落ち着けたもので決めて、4Fに移動した。

 

 

 さて、まずは爆豪ちゃんの部屋なのだが。

 

「爆豪くんは?」

「『くだらねぇ先に寝る』っつってもう寝た。俺も眠みい……」

 

 アイツとっとと先に寝やがった。

 まぁええやろ。まだ疲れが残ってたりするのかも知んねぇしな。消灯時間は12時だからそれまでに寝る分には文句は言いません。

 それにだ。

 

「今日俺が部屋見せてもらったけどまー普通の部屋だったよ。オールマイトのトレカが机の上にあるくらいで。尾白といい勝負」

「そーなん? 意外ー……でもないか? バクゴー物欲あんまりなさそーだし!」

「激辛系の調味料とかいっぱい並んでるかと思った」

「かっちゃんのお母さんがしっかりしてるから割と部屋は綺麗にしてるんじゃないかな」

「あー、爆豪らしいかも」

「口で損してるよなマジでアイツ」

 

 

 ってなわけで爆豪ちゃんルームは未公開。

 次は切島ルームだ。

 

「よーしじゃあ切島部屋! ガンガン行こうぜー!!」

「どーでもいいけど多分女子には分からねぇよ……この男らしさは!!」

 

 入って一言目の素直な感想な?

 漁師か?

 

「……うん」

「ゴメン切島、俺もこの男らしさは分からない」

「エロ本がない部屋に男らしさなんて単語は似合わねぇぜ」

「なんで大漁旗……?」

「サンドバッグで部屋のスペースだいぶ削れてるな」

「彼氏にやってほしくない部屋ランキング2位くらいにありそう」

 

 透ちゃんのコメントが全てだよ。これは女子呼べる部屋じゃねぇわ。

 俺にもちょっとよくわからなかった。ごめんな切島。否定はしないが理解も出来なかったよ俺にはお前の男らしさは。

 毎週ジャンプ買ってるのは分かったからそれだけ後で読ませてくれ。

 

 

 さてでは次、障子ルーム。

 

「何も面白いものはないぞ」

「面白い物どころか!!」

「最低限オブ最低限で来やがったな」

 

 なーんもない。

 机。座布団。布団。クーラー。カーテン。以上。

 服とか他のものはクローゼットにしまってんだろうな。シンプルでいいな。男子で集まる時この部屋使うか。

 

「ミニマリストだったのか障子」

「まァ幼いころからあまり物欲がなかったからな」

「こういうのに限ってドスケベなんだぜ」

「仕方ねぇな……後でエロ本仕込んどいてやるか」

「峰田と幾野は出禁でいいか」

「ごめん」

「めんご」

 

 冗談かましたら怒られました。

 まぁ障子くん優しいから冗談だったけどね。俺も怒らせるつもりはないよ。エロ本仕込むのは緑谷の部屋だけで十分だ。

 

 

 はいでは男子の最後、5Fに上って瀬呂ルーム。

 

「おお!! エイジアーン!!」

「ステキー!」

「瀬呂こういうのこだわる奴だったんだ」

「へっへっへ。ギャップの男瀬呂くんだよ!」

 

 アジアン風の家具で揃えてやがった。

 いや……いやこれ普通にセンスいいな? びっくりしちまった。物も多すぎないしかなり高得点。

 わー。マジでギャップの男だな瀬呂。はー。女子も素直に誉め言葉ですわ。

 逆に言えばようやく部屋のセンスで勝負できる奴が出てきたという事だ。口田はペット込みの評価だしな。

 

 

 はい次、轟ルーム。

 まぁ俺は内装手伝ったんで知ってるんだけどね。

 

「さっさと済ましてくれ……ねみい」

「……え!? 和室だ!!」

「造りが違くね!?」

「実家が日本家屋だからよ。フローリングは落ち着かねぇ」

 

 俺が荷入れめちゃくちゃ手伝って妥協せずに完成した部屋がこちら、和室。

 個人的にこの部屋も高得点だよね。望むものを作る意志の強さだよ。

 

「当日即リフォームってどうやったんだお前!?」

「幾野に手伝ってもらった」

「俺の個性なら畳も障子も余裕で部屋に入れられるしな。今や重さも無視できるし」

「何だよコイツら!?」

「イクノの個性がどんどん便利になってんだよなァ!?」

 

 この部屋が優勝したら俺も鼻が高いよ……(後方彼氏面)。

 

 

 さて。

 男子部屋の最後は俺である。

 

「センくんのお部屋……想像がつかん!」

「峰田ちゃんの部屋よりもひどい可能性もあるわね、ケロ」

「エロ本で埋もれてても驚かねぇよ」

「いや女ものの服で埋もれてるかもしれん」

「掃除好きだから整頓されてんのか? やっぱ」

「私は一度行って見てるんだよねー」

「オイラも見慣れてるわ」

「ネタバレ禁止ね。そんじゃどうぞ」

 

 ドアを開けて中にみんなを案内する。

 まずベッド。勉強机にPC。ちゃぶ台にティッシュ。

 壁の一面に大きな鏡。その前にヨガマット。窓際にアロマポッド。

 

 以上。

 

「……お? 意外とすっきりしてんな?」

「鏡があるけど……幾野くん、これ自撮り用?」

「大正解」

「大きさじゃあ負けたね☆ 鏡の数では僕の部屋の方が多いけど☆」

「アロマポッドがあるからか甘い香りすんなこの部屋」

「あー……まぁでもそれ以外はなんつーか、意外と普通?」

「そう思うやろ? そっちのクローゼット開けて見な」

 

 そして俺が指差す先、部屋に共通で設置されているクローゼットにみんなの視線が向く。

 代表して轟がそれを開けると、中には。

 

「「「女物ォォ!?!?」」」

 

 俺の衣服が大量に収納されていた。

 服はね。めっちゃこだわるから。

 制服にジャージ、下着類のほか、私服の各季節のコーデにコスプレ衣装も勢ぞろいだ。

 しかしそれだけの量の服は普通はクローゼットに入らない。なので個性を利用している。

 具体的には服同士を無視させて、二重で服をしまっている。はた目には異様に服がごっちゃりしているように見えるが、実は皺がつかない程度の丁寧な収納となっている。

 

「え……すごい状態になってる!? これどうやって服取り出すの!?」

「ハンガー掴めば取れるようになってるよ。俺にしか取り出せないけど」

「生活に便利すぎる個性……!!」

「あとエロ本やら生活用品は床や壁に全部埋め込んである」

「潜行時代からそういや体から櫛とか取り出してたもんな……マジで万能だな幾野の個性」

「センスって意味じゃあんまりだけど暮らすのは楽そうだね!!」

 

 まぁ……正直センスとか分かりませんし……。

 中学時代は体と個性鍛えるのと、あとエロ本集めるのに夢中だったから部屋のコーデとかぶっちゃけよく知らん。整理整頓してればええやろ状態だ。

 正直自分でも瀬呂や轟のセンスには負けたと思ってる。仕方ないね。

 

「なぁイクノ。オイラ一つだけ聞きてぇ事があるんだけどよォ……」

「ん、何だ峰田」

 

 最後に峰田からツッコミがきたので素直に答えてやることにする。

 なんや。

 

「オイラが前にお前んち行ったときには……ベッドは普通のシングルサイズだったと記憶してるんだよなァ……?」

「するどい」

「何でセミダブルサイズになった?? なぁ???」

「ノーコメント」

 

 なおベッドはセミダブルサイズです。脚には防音処理の綿挟んである。

 広い方が……ほら……寝やすいやん。どう寝るかは想像にお任せしますわ。

 女子のみんなは無言で透ちゃんの方を見ないでください。照れてるから。みんなには見えてないけど。

 

 

 

 はい、そんじゃ男子は以上。

 次は女子棟ですな。

 

「小腹減ってきた」

「な。今日は流石に準備出来てねーけど……夜食食えるように今後常備しとくか」

 

 なんてったって我ら学生だからな。正直夕飯だけでハイおしまいだと腹が減る奴も出てくるだろう。

 インスタントラーメンとか冷凍焼きおにぎりとか、パッと食えるのは準備しとこ。寮長の務めだね。

 

 

 さてでは3Fの女子フロアから。

 まず耳郎ちゃんね。

 

「マジで全員やるの……? 大丈夫?」

「大丈夫でしょ多分!」

「ハズいんだけど……」

 

 あんまり乗り気じゃない耳郎ちゃんだが、俺は楽器を持ち込むの手伝ったので中は見せてもらっている。

 すごいよ。

 

「思ってた以上にガッキガッキしてんな!?」

「うおー! 耳郎ちゃんはロッキンガールなんだねぇ!」

「天井までしっかりと装飾されてますわね……」

「これ全部弾けるの!?」

「まァ一通りは……」

 

 うん。耳郎ちゃんらしさが出てるいい部屋だと思うね。

 壁に黒板かけて「DEEPDOPE」って書かれてるのがハイセンスだなって感じました。ゴメン元ネタ知らない。

 

「女っ気のねぇ部屋だ!」

「ノン淑女☆」

 

 女子の部屋を見てここぞとばかりに酷評した上鳴と青山には耳郎ちゃんのイヤホン爆音が捧げられていた。当然です。

 

 

 さて次は透ちゃんの部屋だ。

 

「どーだ!」

「おお……フツーに女子っぽい! ドキドキすんな!」

「ピンク色が可愛いね!」

「カーテンにチェリー……机にハートマーク……ベッドに薔薇……」

 

 うん、透ちゃんらしい可愛い部屋ですね! 最高ですよこの部屋は!!

 峰田は逐一柄を気にするんじゃありません。何も意味深なものはねぇだろ。

 

「……あっ、ベッドのサイズ……」

「セミダブル……やね……」

「……ケロ」

「そ、そこはあんまり気にしなくていいんじゃないかなー!? 大きなベッドの方がいいって親にねだっただけなのー!!」

 

 こっちの部屋も大きめのベッドでした。

 何でって? 俺に聞くなよ。当然の如くベッドの脚部は防音処理がされてるよ。

 ハイハイおしまい!! 俺の彼女の部屋に今後一切男子は踏み込むんじゃねぇぞ!!

 

 

 さてでは次4F。まず芦戸ちゃんの部屋から。

 

「じゃーん!! カワイーでしょーが!!」

「おォ……」

「色合いが芦戸ちゃん! って感じするな。ハイセンスだわ」

「統一感あるね」

 

 女子らしさも入れつつ、色合いで攻めてきたな。成程な……部屋をデコレするには色を整えるのが重要なのか。

 俺も部屋一面ピンク色にするべきかなぁ? うーん……でも服は女子コーデする分にはともかく、別に俺自身は感性は男だからな。参考にしとく程度にしよう。

 

 

 次、麗日ちゃん。

 

「味気のない部屋でございます……」

「おお……!」

「初日にして生活感に溢れてるのすごい」

「メタルラック万能だよね……」

「エアコンあるのに扇風機?」

「いやそこはむしろアリだろ。俺も床下に扇風機埋めてるぜ」

「埋めるな」

 

 女子力という意味ではそこまででもないかもだが、清潔感と整った雰囲気は割といいな、これ。

 なんか……生々しい。ここで住んでるんだなってのがすごいわかるというか。妙なエロスを感じるのは俺だけか?

 生活感というか。セミの鳴き声と洗濯機の音が似合いそうな部屋です(風評被害)。

 

 

 次は5Fに移動だ。

 移動中に男子から何だか感慨深い話が零れ始める。

 

「なんかこう……あまりにもフツーにフツーの女子部屋見て回ってると背徳感出てくるね……」

「禁断の花園……」

「まぁ男子はこれ以降そんな女子棟に出入りすることはないだろうしな……俺以外」

「強調してきたね幾野くん!?」

「節度は保ちたまえ!!」

「寮長としてっていう意味で受け取って?」

 

 いや変な意味合いではないし。寮長として見回りとかするかもしれないし。

 一応全部屋のマスターキーも預かってる身ですし。

 みんなのプライバシーを侵害するつもりも一切ないよ。さっきみんなの前で宣言したけど寮内でウォールハックも基本的にしない約束もしてる。

 みんなの部屋は絶対に覗かない様に調整出来るようになったから。覗くつもりも一切ない。そこはしっかりしている。

 もちろん透ちゃんの部屋に行くのはバレないようにする。

 

 

 さてじゃあ5F、梅雨ちゃんの部屋から。

 

「ケロ。みんなにはちょっと合わないかもしれないわね」

 

 扉を開ける梅雨ちゃん。それに続いてみんなが中に入って一言。

 

「「「暑い!!」」」

 

 あっつ!!!

 30度近いか? 湿気も相当だ。

 各部屋にはエアコンが設置されており、今は真夏だがそもそも館内にも軽めに冷房が効いているのでみんなも快適に過ごせていたのだが、梅雨ちゃんの部屋はうん、暑い。

 

「なるほどね……梅雨ちゃん個性的にあったかい部屋の方がいいんだっけ」

「寒いの弱いって前に言ってたよねー」

「寮長としては週に一度は窓開けて乾燥させることを提案します」

「そうね、それは守るわ。私もカビが生えるのは嫌だから」

「でも暑さを考慮しなけりゃキレーでセンスいいな!! お洒落だぜ梅雨ちゃん!」

「ありがと峰田ちゃん」

 

 しかし内装は随分とこじゃれてお洒落な感じだ。カエルマークのベッドが梅雨ちゃんらしくてかわいい。

 色合いも薄緑で清潔感があり、色と見た目だけなら涼やかさすら感じられる。

 冬場とかはこの部屋は重宝しそうだな。暖房だけじゃ絶対乾燥するし。

 

 

 さて最後に八百万ちゃんの部屋です。

 

「それが……実は見当違いをしてしまいまして。皆さんの創意あふれるお部屋と比べて少々手狭になってしまいましたの」

 

 そんなことを言いながら遠慮がちに開けた扉の先には部屋の大部分を埋める天蓋付きの特大ベッドが。

 何人お抱きになるおつもりですか???

 

「でけぇー!! 狭!! どうした八百万!!」

「私の使っていた家具なのですが……まさか部屋の広さがこれだけだとは思っておらず……」

「セレブやろがい!」

「ってかコレだけのベッドどうやって部屋に入れて……って、あっ」

「八百万ちゃんの家具の大半はワシが育てた」

「本当に助かりましたわ、イクノさん」

 

 ベッドだけではなく机や棚も巨大サイズだったため、俺の助けが必須だった。

 俺がいなかったら全部創造で作り出そうとしてたらしいが、こんな高級品を世に二つ三つと増やすもんじゃありませんよ。貨幣経済が崩れるでしょ。

 でもベッドだけはちょっと使ってみたかったかな……とは口に出さない理性がまだ俺にもあった。

 

 

 はい、では爆豪ちゃん除いて全員のお部屋のお披露目終了。

 早速ベスト部屋大賞決める投票しまーす。もう慣れたもんだよね俺もこういう投票仕切るの。

 

「っし! それじゃ爆豪ちゃんを除いた第一回部屋(キング)暫定一位の発表です!!」

「ドキドキしてきた」

「上位陣割と接戦じゃね? 気になるなー」

 

 俺の方で票を数えて発表する。

 第一位は!!

 

「得票数4票!! 以下3票で同率2着が3人という激戦を潜り抜け勝利したその部屋は──瀬呂 範太ァァ!!!

 

「ウッソまじ!? 俺かよ!? うわーなんだよすっげー嬉しい!!」

「オアァァァァ!! 負けたァァァ!!」

「峰田ちゃんに勝てる要素なかったわね」

「だーあのセンスの良さは反論が出ねぇわ!!」

「ギャップがよかったよねー!!」

 

 瀬呂の部屋が一位という結果になった。

 いや俺も悩んだ末に瀬呂に投票したわ。普通にあの部屋すっごいセンス良くない? 男子で唯一こう……自分を表してるというか。すっげー雰囲気あるよね。

 後で遊びに行こ。エロ本持って。

 

「ちなみに同率二着の3人ですが、轟、口田、耳郎ちゃんでした」

「おー……まぁその三人か! ってなるなー」

「女子部屋はみんな可愛かったけどその分票がちょっとバラけたかな?」

「一番己を出してる部屋が並んだ感じだね」

「口田はペット分の投票あったかもな。あのウサギ可愛かったしよ」

「かもね、ふふ」

「ウチの部屋が女子の部屋で一番か……なんかハズいなやっぱ」

「轟の部屋も好きだったけどなー」

「部屋ごと作り替えた轟と、部屋はそのままでインテリアの枠でコーデした瀬呂の差が出たかもね」

 

 うん、順当な結果じゃないかな。

 みんながみんなの部屋を回ったことで場所とかも覚えられただろうし、学校では見れないみんなの一面も見れた。

 共同生活を今後過ごしていくうえで、きっと間違いなく俺らの距離ってのはこれまで以上に詰まっていくことになる。

 隠し事とかも無くなっていくだろう。そうありたいと俺は願ってる。

 

 だから、いつかは。

 俺の過去も、みんなに聞いてもらえたらいいな、と思えるようになってきた。

 

「……っし、じゃあこれで大会は終了!! 後は寝るぞ!! 歯磨きはしっかりして夜更かしはしないようにな!!」

「言ってることはマトモだけどお前が一番信用ねーからな幾野!?」

「節度は保て?」

「失礼な。せいぜい週に一回くらいだわ俺が夜更かしするのは」

「具体的な数字はやめたまえ!」

「葉隠も何か言ってやってくれよ!?」

「週2じゃダメかな?」

「ダメだ葉隠もブレーキ壊れてんぞ!?」

「染められてしまったのですね葉隠さん……」

「……ウチの部屋の防音もっとしっかりしとこ」

 

 けらけらと笑ったりツッコまれたりして、その後は自由解散の流れになった。

 

 うん。なんかいつものが戻って来たなって感じだ。

 きっとやっぱり、こうしてみんなで集まれるまではすごい不安で、それを拭い去りたくなって。

 だから部屋のお披露目大会なんて開いたりして、日常に戻そうと頑張ったんだ。

 

 みんなでバカ話したり、エロ話したり、性癖茶化したりして。

 んでもってヒーローとして真面目に切磋琢磨していく。

 

 そんな日常が、戻ってきた。

 







以下、感想欄で生まれた閑話。
前話でちょろっと零した、夏休み中のセンちゃん轟家訪問シーンの妄想です。






 轟家。和風の大豪邸となっているそこに、俺は夏休みにお夕飯に御呼ばれしていた。
 なお服装はどちらかといえば女に見えるかなって程度のユニセックス。初めてお邪魔するしね。ちょっと守りに入ったわ俺。

「おいっすー。悪いね、夕飯誘ってもらっちゃって。ゴチです」
「前の約束果たしてなかったからな。寮生活になると俺も家にいられねぇし……姉さんも乗り気だった」
「助かる。えーと、他のお家の方は? エンデヴァーは?」
「親父は仕事で来ねぇ。あと……姉さんの方で俺の兄さん呼んでる」
「お兄さんか。ええね、轟の学校での事いっぱい伝えちゃお」
「ほどほどにしてくれ」
「あ、焦凍くんって呼んだ方がいいよな? 焦凍くん♥」
「頼むからほどほどにしてくれ」

 轟に迎えられてお邪魔させてもらう。
 いやこれなんか……道場見たいというか。俺の実家も通形家も普通の洋式の家だったからここまで和式のお家って初めて上がるわ。
 なんか格式凄そう。高そう。門扉があった。すげー。

 そして玄関にお伺いすれば、そこにはお初にお目にかかる轟のお姉さん、冬美さんがエプロン姿で挨拶してくれた。

「あら、来てくれたのね! 初めまして! 焦凍がお世話になっております、姉の冬美です!」
「初めまして、幾野潜です。僕と結婚を前提としたお付き合いに興味はございませんか」
「幾野」
「あら、ふふっ! 本当に焦凍が言う通りの子なのね! それにこうして見ると本当に綺麗! 羨ましいわ」
「いえいえ冬美さんもとてもお綺麗ですよ! いいなぁ焦凍、お前こんな美人なお姉さんがいて」
「俺はなんてそれに返事すりゃいいんだ」
「ふふ、お母さんのお見舞いにも付き添ってくれてるって聞いてるわ、本当にありがとう。学校での焦凍の話も色々聞かせてね幾野くん! ごはんはもう出来てるから、どうぞ上がって」
「任せてくださいよ。ある事ない事話しまくりますんで! お邪魔します!」
「ない事は言わねぇでくれ」

 エッッッロ。
 なんだよこれ……エロ指数20000オーバーじゃん。スカウターが壊れるわこんなドスケベ女教師はよ!
 クソッ! 透ちゃんという彼女が出来てなかった俺絶対マジで狙ったよこれ! おっぱいでけぇし! 顔は冷さんに似て超かわいいし!
 マジで……これが小学校の教師やってんの……? 性のモラルハザードかよ。
 ゴメン透ちゃん……俺今夜は冬美さんでシコらせてもらう……!!

 そしてお家に上がり、連れてこられた一室……大きな座席が準備されたそこに、また初対面の人物が。

「おー、キミが噂のイグジストくんか……ってマジで女の子にしか見えねぇな!?」
「実物の方が可愛いってよく言われますよ。……ええと」
「あ、悪い。俺は夏雄。姉ちゃんの弟で焦凍の兄貴な。フツーの大学生やってるよ。初めまして、幾野くん」
「幾野潜です! 大学生ですかぁ。夏雄さんイケメンだから彼女とかいっぱいいそう」
「いやいっぱいはいねェよ!? 彼女はいるけど!? すげえなこの顔で初手からこの会話かよ!? 焦凍お前おもしれーヤツとダチになったなぁ」
「俺もそう思う。ってか夏兄、彼女いるんだ」
「ねー。だから実家にあんまり帰ってこなくなっちゃったのかしら」

 焦凍のお兄さん、夏雄さんだ。普通にイケメン。話してても爽やかな感じあるわ。
 なるほどなー。前に焦凍に聞いた話を思い出す。個性婚の結果って話してたけど……でもなんつーか、割と普通の家族だなーって印象を受けた。
 まぁ俺もいきなりそこを話題に出すはずもないけどな。初対面のお二人ですよ。
 まずは仲良くならないとね。今日はご飯を頂きながら焦凍の話のネタを提供する日です。

「いっぱい作ったから好きなだけ食べてってね! あ、でもスタイル維持しなきゃだったりするのかしら? というかそのスタイルどうやって維持してるの? 羨ましいまであるわ」
「ゴチです! この竜田揚げめっちゃ美味いっすね!! スタイルについては毎日20キロくらい全力疾走してれば太らないですよ冬美さん」
「見た目に反してめっちゃ動けるんだな幾野くん、すげーな。流石ヒーロー科ってところか」
「学校の訓練でも幾野はいつも成績良いよ。鍛えてる」
「そんな俺よりも早く動けるでしょ焦凍くんは♥」
「ハートマークつけんな」
「この子強いな……焦凍は学校じゃどうだい? 上手くやれてる?」
「楽しそうですし、クラスのみんなとも仲いいですよ。こないだの救助訓練じゃ一番に作戦考えてみんなに一目置かれてましたし……あ、あと昼飯いつもざるそばしか食ってないっす」
「えー? こらー焦凍、好きなものばっかり食べてると栄養偏るわよ?」
「ネギはつけてるよ」
「ネギから取れる栄養素で賄えるはずがないんだよなぁ……」
「ハッハッハ! まぁウチじゃ姉ちゃんの料理ばっかりだもんな! 好きなモン食わせてやれよ」
「そうもいかないでしょー! 幾野くん、焦凍のお昼ご飯が偏ってたら見てあげてくれる?」
「任せてくださいよ。じゃあ今度俺が昼飯一緒したら俺の料理からあーん♥ってして分けてあげるね焦凍♥」
「やり方は考えてくれねぇか」
「強い……」

 まぁいつものノリでご飯のおいしさに舌鼓を打ちつつ、皆さんと歓談する。
 センシティブな話題に触れないで盛り上がるとなると焦凍くんがダシになるのは眼に見えてたからな。小さい頃の話とかも聞けないから学校の楽しかった事とかで盛り上がるしかないところある。
 会話デッキをもっと準備してくればよかったな。冬美さんの彼氏事情とか冬美さんの好きな洋服のブランドとか冬美さんの好みのタイプとか聞いてもいいだろうか。まだ早いか。

「せっかく焦凍の友達が来てくれたんだから……お父さんも来てくれればよかったのにね」
「……姉ちゃん。エンデヴァーの話は……」
「あ……ごめん」
「……」
「えっ何この空気」

 しかし冬美さんがふとお父さんの事を口に出した途端に夏雄さんの機嫌が悪くなり、冬美さんもちょっと顔が曇り、焦凍がんーっとなってしまった。
 ちょいちょい。一応我客人ぞ?
 この一瞬で理解したわ。この家族みんな不器用なんな!! 完全に理解したわはいOK!!
 エンデヴァーがぶきっちょだから冷さんもお子さんのみんなも不器用な感じが凄いします!!

 家族の仲が悪いのは俺許せないの!!
 仕方ねぇちょっと俺この空気ほぐします!!

「エンデヴァーなら、実は俺も体育祭以降注目されてるんすよね。あの後連絡先も交換しまして」
「え、そうなの? お父さんが……?」
「一応ナンバー2ヒーローだからな。俺が仲介した」
「……幾野くん、あんまりあんなのと付き合わない方が……」
「いやそれなんすけど。実は俺もエンデヴァーに文句が一つありまして───」
「え?」


「───渾身の自撮り送っても毎回大した返事くれないんですよね!!!」


 全員が噴き出した。

「ブホッ、ゴホッ!! え、ゴホッ、自撮り……!? 幾野くんお父さんに自撮り送ってるの!?」
「ゴーーッホ!! ブホッ、ブッホ……ぶはっ、アハハハハハハハ!! 自撮り!? あのカタブツに自撮り送って!? あっ、ハ、ハハハハハハハ!!! 駄目だツボった!! アーーーーッハハハハハ!!! 幾野くんキミ最高だわ!! アハハハハハハハ!!!」
「……ゴホッ。いや、もうお前らしいとしか言えねぇよ。人の親父に何やってんだお前」
「いやぁ。喜んでくれるかなーって送ったんすよ。ほら見てこれ、夏物の新しいコーデ買ったんで着飾って送ったのに返って来た返事が『涼しそうだな』ですよ。褒めろよってねぇ! そう思いませんか夏雄さん!?」
「アハハハハ!! アハハハハハハハハ!! 駄目だもうくっそ、こんな可愛い写真送られてあの親父何やってんだアハハハハハハ!!! いいぞもっとやれ!! もっとやってもっとあのクソ親父を困らせろ幾野くん!!」
「可愛い……!! えっセンスあるわね幾野くん!?」
「幾野は女物似合うから。俺にまで自撮り送ってくるのはコメントに困るけど」
「焦凍にまで送ってんのかよ!? アハハハハハハ!! ハハハハハハハ!!」
「冬美さんにも送りたいんで連絡先交換しません?」
「ええ!? 私も!?」
「焦凍くんの写真も送りますよ」
「これ私のラインのアドレスね」
「ブァハハハハ!! 幾野くん俺とも! 俺とも交換しよ! 気に入ったわ君の事! バカなんだな!!」
「よく言われるんすよね。夏雄さんもぜひぜひ」
「……もう流石としか言えねぇよ幾野」

 エンデヴァーに自撮り送ってることをカミングアウトしたら冬美さんは大混乱、夏雄さんは大爆笑。焦凍もまぁ困った顔して苦笑いしてやがる。
 はい俺の勝ち。まずは笑顔なんすわ何事も。
 夏雄さんは多分エンデヴァーに並々ならぬ想い抱えてそうだなとは思うし、何も知らない俺がそこには口は出さないけど……次会う時があったら少なくとも茶化せるネタは提供した。
 折角家族みんないるじゃん。冷さんとも一緒にいつかまたみんなで飯食べてほしいわマジで。

 その後は再び話が盛り上がり、夏雄さんには随分気に入られてその日のご夕食はごちそう様となった。
 片付けも手伝って、改めて冬美さんには大変美味しかったことを伝えて轟家を後にする。

「駅まで送るよ」
「ん。サンキュ」

 満ちた腹をなでなでしながら轟と歩いて駅まで向かう。
 これ俺が轟の子供を授かったみたいな雰囲気ない? ないか。そうか……。

「……あんなに笑ってる夏兄見たの初めてだよ」
「そーなん? ノリのよさそうなお兄さんだったじゃねーか。俺の外見も一言も茶化さなかったし……良い兄さんだな! 冬美さんも!」
「ああ。けど……夏兄も親父に特大のコンプレックス抱えててさ───」

 そして道すがら、俺は改めて轟家の事情を聴いた。
 実は夏雄さんの上にさらにもう一人、お兄さんがいたのだと。燈矢さんというらしい。
 ただその燈矢さんは、若くしてお亡くなりになったという話で。
 それを夏雄さんはエンデヴァーのせいだと思っているとのことだ。一番懐いていたお兄さんがなくなったことがトラウマなのだろう。

 ううん。
 マジで辛いな、色々と。
 俺の家の辛さとは違う辛さだ。家族がいるからこそ、亡くなってしまったことの悲しみをみんなが抱えたままでいる。
 そしてそれをお互いに抱えるだけで、やり取りをできていない。不器用なままに生きているように見える。

 でも。

「生きてるからな」
「!」
「親父さんだって、お母さんだって……お姉さんもお兄さんも、お前だっている。今日みたいに3人で飯を食える日だってあるんだから……俺は、お互いが納得する形でどうにかなってもらいてぇなって思うよ。……無責任な立場からの言葉で悪いけどさ」
「……いや、いいよ。俺も……最近は、それを考えるようになってんだ」

 駅が近づいてくる。
 この話題に答えを出すには余りにも短い距離で、実際に答えなんて出せなくて。
 でも、それでも。
 俺はお前の隣にいてやりたいよ、轟。

「また飯、呼んでくれな。めっちゃ美味しかったよ冬美さんの料理マジで」
「ああ。……また来てくれ。寮に移ったとしても、またいつか」
「約束な。今度は緑谷とかも呼ぼうぜ」
「そうだな」

 もし俺の存在が少しでも潤滑油になるなら、いくらでも。
 俺は笑顔を轟に見せて、轟も随分と表情豊かになった笑顔で返してくれて。
 そうして分かれて、俺は電車に乗って自宅に戻るのだった。
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