【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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62 物間ァ! お前は俺のスペアだ!!

 

 

「なるほど……幾野くんはずっと発目くんのアイテム開発に付き合っていたのか! 流石の面倒見の良さだな!」

「ホントやってることはマトモやなセンくん!」

「尊敬できる点と尊敬できない点が同居しすぎてるよ幾野くん……」

「いつもイクノさんには助けられてます!! 今日もベイビーの試運転に付き合ってもらっていいですか!?」

「訓練終わってから顔出すよ発目ちゃん。今はとりあえず俺のダイブワイヤーの巻き取り速度の調整と……この3人の話、聞いてもらっていい? サポートアイテムでどうにかならないか悩んでてさ」

 

 開発室に入るが、お互いに自己紹介などは不要だろう。I・アイランドでもう顔合わせしてるし。みんな体育祭で決勝トーナメントにいた仲だしな。

 緑谷にはI・アイランドの件で話してたが、俺が発目ちゃんのアイテム開発を手伝っていたことで仲良くなっていた理由を飯田と麗日ちゃんにも説明した。

 

「ふむ!! 私はベイビー開発で忙しいのですが!! イクノさんの紹介となれば話は聞かなければならないでしょう!! どんなベイビーをご所望ですかお三方!!」

「発目さんが素直に話を聞いてくれる……!?」

「ケケ……発目がここまで話聞くのは幾野くらいのもんだ。マジで助かってるよ」

 

 俺のダイブワイヤーの巻き取りの調整を依頼してから、発目ちゃんに3人のサポートアイテムの相談に乗ってもらうようにお願いした。

 もうずいぶんと信頼度稼いでそろそろカンストしそうだからな。パワーローダー先生かそれ以上に信頼を得ている自覚はあります。

 俺も無視という個性をもっと掴んでから、また新しいベイビーの開発をお願いするかな。どんなのがええやろ。

 

「あ、じゃあ僕は……パンチだけじゃない必殺技になりそうな何か、アイデアがあれば」

「僕は脚部の冷却機の強化が出来る様なコスチューム改造を!」

「私はもっと酔いが抑えられるようになりたいんよ。浮いたときの機動力とかも……」

 

 それぞれが相談に入り、時々暴走する発目ちゃんを俺が抑えながら即座にアイテムが開発されて作られて行く。

 発目ちゃんマジで天才だよな。こんなに早くアイテム開発できる人見たことない。いや発目ちゃんとパワーローダー先生しか見たことねぇんだけどさ。

 飯田のコスチュームに改造が入り、緑谷がキックを武器にすることなどを思いつき、麗日ちゃんは手首に重さを無視できるからこその軽量ワイヤー射出巻き取り機構などの開発を提案されたりと、色々話が進んでいきながら。

 しかしここで俺は飯田の顔を見て一つ思い出し、その話題を出すことにした。

 

「そういえばさ発目ちゃん。前に開発してたアレ、形になってる? 飯田に見せてやろう」

「む、アレですか!? 女子のスカートを捲る様な風を自動的に生み出すサポートアイテムですね!?」

「ゴメンそれじゃない」

「なんてものを開発させているんだ幾野くん!?」

「冗談で言ったらマジで作るんだもんこの子……ってか、そんな話じゃなくてさ」

 

 俺の言葉が悪かったです。アレで全部通じるほど発目ちゃんと試したアイテムの数少なくなかったわ。

 あのアイテムは後で峰田にあげるとして、今回話したかったのは飯田の()()()()の件だ。

 

「ほら、パワードスーツを試験したときに話したじゃん。介護用の補助スーツに出来ないかってアレ。どう?」

「ああ、その件ですね!! もちろん開発済みですよ!! 実験はまだですが動かすだけならいくらでも!!」

「……? 何の話だ?」

「いやさ、飯田……俺の方で頼んでたのよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の開発」

っ!? な、んだ、って……!?」

 

 以前たまたま装着したパワードスーツが、筋肉の収縮や本人の意志だけで体が動く機構だったことから、飯田のお兄さんのように下半身不随の怪我を負ってしまった人用の生活介助用のスーツとして流用できないか相談していた。

 で、勿論天才の発目ちゃんの事である。ばっちり開発済みだったようだ。

 

「安全装置とかもお願いしてるから危険なものにはなってないはず。だよね、発目ちゃん?」

「ええ、イクノさんの体で何度も試させていただきましたからね!! 身長も200cmから140cmまで対応可能!! いずれあらゆる方が装備できるようにしますよフフフフフ!!」

「なっ……君は……君たちは、なんと……っ!!」

 

 俺たちの言葉に、飯田がそれはもう驚いたようで、涙すら零してしまっている。

 うん、ドッキリさせてやろうと思って今まで一言も話してなかったが驚かせすぎたか。その涙に喜びの色が混ざっているのを見て、俺はにっかりと笑ってやった。

 

「前に飯田ん家に遊びに行ったときにお兄さんにも挨拶したけど……テスターになってもらえればと思ってさ、インゲニウムさんに。それで有用性が証明されれば開発ラインにも乗って、四肢不随に悩む人々が助けられるかもじゃん? そういう、障害に苦しむ人たちを救うヒーローの在り方もありなのかなって。まぁこの辺は勿論お兄さんにも相談しないとだけどさ」

「あとはあくまで現時点では私が開発したものなので、仮免がないままでは民間用としての実用化手続きができないのです!! そういう意味でも仮免の取得は急務ですね!! 試験は全てお任せしましたよイクノさん!!!」

「勿論尽力するけど発目ちゃんも頑張ろうね? ……ってわけでさ、飯田。発目ちゃんも一緒の仮免試験だけど、頑張ってみんなで合格しようぜ!」

「ああっ……ああ!! 有難う幾野くん、発目くん!! なんという朗報だ……!! 無限にやる気が湧いてくるというものだ!!」

「よかったね飯田くん!! これは僕も負けてられないぞ……!!」

「センくんも発目さんもニクい事してー! そういうとこだぞホント!!」

 

 飯田のお兄さんに関する朗報だ。緑谷と麗日ちゃんの顔にも笑顔が浮かぶ。

 発目ちゃんが仮免を取れれば、お兄さん相手に起動試験が出来る。それで日常生活の介助に有用って証明できれば、元ヒーローの知名度も相まってアピールができて、四肢麻痺などの障害のある方への福音になるだろう。

 お兄さんも助かる。発目ちゃんも世間にアピールできる。どこまでもwinwinな発想だ。

 そのためにも発目ちゃんにも仮免を取らせてやらないとな。俺も腕がなるぜ。

 

「よし!! ならば委員長として一層の尽力を!! クラスのみんなで必ず突破するぞ!!」

「おうよ!!」

「訓練に戻ろう!! 僕も蹴り技を鍛えなきゃ!」

「ワイヤーロープの使い方、コツつかまんとね!!」

「頑張ってくださいね皆さん!! 他にもベイビーを所望する方がいればお呼びください!!」

「ケケ……プルスウルトラしてんじゃねぇか。気張れよ、卵ども」

 

 更なる奮起をして、俺達は訓練に戻るのだった。

 

 


 

 

 さて、その後はまぁ訓練に精を出した。

 緑谷はアイアンソールという新武器で蹴り技を習得。シュートスタイルと名付けたらしい。脚の方が力入るからフルカウルではこれを主にして、拳は腕が壊れない20%程度の力で切り札とした。腕の負担を減らすサポーターも装備したようだ。

 飯田は排熱機構を強化して更なる速度の上昇。麗日ちゃんは無重力状態での機動力をワイヤーを用いて確保。

 他の生徒でも、切島、上鳴、轟、耳郎ちゃん、口田あたりは新たにサポートアイテムを開発してより出来ることを増やした。

 B組の練習にも積極的に参加した。勿論B組側もA組の練習時間に参加したりして、結局は全員が午前から午後まで訓練するような事態になり、リカバリーガールに骨を折ってもらっていた。

 

「違う会場になってしまったからねぇ!! 直接手を下せないのが残念だよA組ィ!! どうせ僕たちが勝つのにねェェ!!!」

「相変らず発症してんな物間は」

「L5症状と名付けよう」

「狂ってんじゃねーか」

 

 そして全員で切磋琢磨する中で相変らずの様子の物間を見つけて、そういえばと思いついて俺は物間に声をかける。

 

「物間」

「ん。なんだい幾野くん」

「ほれ」

 

 俺は物間に対して片手を差し出した。

 体育祭の時とは逆だな。その手を見て、物間は驚いたように目を見開いた。

 

「僕の股間を触ろうというのかい?」

触られたいの? いいよ、物間なら 気持ちよくしてあげよっか♥」

「君に口で勝とうとした僕が間違っていたよねぇ!? 頼むから口を閉じてくれ!!」

「幾野のカウンター強すぎるわ相変らず」

「彼女出来たって聞くけどマジで変わんないねー幾野」

 

 物間とジャブの掛け合いで俺が勝利したところで拳藤ちゃんと取陰ちゃんがツッコミを入れてきた。

 なんや。物間とはこれくらいの距離感で付き合うのが一番ええんやぞ。

 俺がいなければただの皮肉マンになるけど俺というジョーカーがいることで強制的に落ち着けられるのだ。褒められたっていいと思う。

 

「はぁ……それで。()()()()()()?」

「ああ。B組は別会場だって聞くからな。ちっとでもお前が強化されるのはB組や心操の為になるだろ」

「ふむ。有難くて涙が出てくるね」

 

 で、俺が握手しようとした理由がそこだ。

 こいつに俺の個性をコピーさせておけばこいつは5分間無敵になれる。

 時間は限られるが十分に有用だろう。個性解除の瞬間だけ気を付けておくように言わねぇとな。仲間の体に潜ってる時に解除なんて最悪の事態にはならないように。まぁコイツ頭は悪くないから大丈夫だと思うけど。

 ……いやコイツ赤点だっけ。あぶねぇな。拳藤ちゃんにも伝えておこうその辺は。

 

「個性伸ばしをしておいてよかったよ。体育祭の頃はまだ人に触れてから5分までしかその個性を使えなかったからねぇ」

「……え、マジ? ここで俺の個性をコピーしてもすぐ使えなくなるって事?」

「伸ばしたって言っただろう? ストックできるようにしたよ、3つまでね。無敵の能力、有難くコピーさせてもらうさ」

 

 話を聞けば前はコピーする対象の人に触れてから5分までしか個性使えないって話だった。

 マジかよ。良く個性伸ばしてたな物間。えらい。後で自撮り送ってやろう。

 さて、そんなわけで俺は物間と握手をして、限定的に物間の個性を『無視』することを解除して、コピーをさせる。

 こういう微調整が上手くなってきたな。全身に張ってるオート個性は維持しつつ、指定の個性は無視を解除する。マンダレイやラグドール相手にやった調整が活きてるな。

 

「……うん、コピー出来た。なるほど……『無視』か。とんでもないねやっぱり。何ができるかがすぐに理解できないよ、やれることが多すぎる」

「あ、やっぱり? 俺もその辺感覚でしか掴めてねぇけど、何でも手が届きそうで届かない感じっつーか」

「僕の場合はコピーでいろんな人の個性を使っているからねぇ、そのあたりの分析力は僕の方が上かな。さて……早速試してみるか」

 

 コピーは無事成功したようだ。

 物間いわく、とんでもない個性だと表現された。だろーな。俺だって使いこなせてる感じないもん。

 俺は個性解除の瞬間のリスクについても説明し、その点は物間も厳粛に注意することを約束してくれた。「上書き」は余りにも破壊に彩られてるからな。対人で利用すれば基本的に殺すことになる。危険性はコイツも理解してくれた。

 

「まずは君のように、床に潜るところから始めてみようか。床を『無視』……っと。なるほど、ここの調整は簡単だね」

「俺もガキのころはそこからやってたしな。意識すれば物に潜り込む透過率とかも調整できるけど」

「以前にも潜り込むタイプの個性を使ったことがあるからね、それと同じ感覚で行けそうだ。悪くない」

 

 早速物間が個性を試し、まず足元がずぶりと床に埋まった。

 俺が『潜行』だと個性を勘違いしていたころ、一番使ってたやつだ。ガキのころに出来てたことで、一番負担がなくやれる使い方だろう。物間も問題なさそうだった。

 

「ふむ……幾野くんのようにオートで個性を発動できないかなぁ? あれが出来れば無敵だよねぇ」

「あー……それは難しいかもな。血反吐吐くほど特訓してできるようになった奴だし。個性許容量も常に消費する。諦めた方がいいかも」

「そうかい。じゃあ次はウォールハックを試してみるか。ええと……視界を遮るものを『無視』すればいいんだろ?」

 

 物間はオート発動も使いたいようだが、あれは多分そう簡単には習得できないだろう。峰田と3年間特訓した末に身に着けた奥の手だ。

 俺の個性を借りて使うなら、要所要所で出来ることを発動した方がいいだろうな。ウォールハックなんて最たる使い方だ。索敵で便利なことこの上ない。

 

「さて──────」

 

 そして物間がウォールハックを試し、周囲を見渡したところで。

 

「────ゲホッ!? うっ、ぇ…………!?」

 

 苦しそうに、その場にしゃがみ込んでしまった。

 

「おい物間!? 大丈夫か!? っ、八百万ちゃんバケツちょうだい!!」

「ええっ、はい! 投げますわよ!」

「助かる!!」

「ごほ……くっ、無様だねぇ……!」

 

 明らかに個性許容量の限界だ。麗日ちゃんがよくなるやつ。

 俺は近くにいた八百万ちゃんにバケツを創造してもらい、投げ渡されたそれを物間の顔の前に置いた。直後に虹色リバースしてしまう物間。

 お前もしかしてゲロフェチでもあるのか……と茶化す雰囲気ではない。

 物間の背中を叩いてやりながら様子をうかがう。

 

「大丈夫かお前……? え、何。コピーの時って許容量シビアなん?」

「……悪いね。……いや、僕のコピーは普通に個性を使う分にはそうそう限界は来ないんだよ、普通はね。B組のみんなの個性や、さっき心操くんの個性を使わせてもらった時も影響はなかった……けど、ウォールハックを発動させようと視界に映る壁を無視しようとした時点で……一気に限界が、来た……うっぷ」

 

 随分と無茶させちまったらしい。げろげろと虹色リバースする物間の様子に、俺はしかし新たな事実に気付いた。

 

「……幾野くん。キミ、()()()()()()()()()()()()()()()()んだい……? 恐怖すら覚えるよ……」

 

 物間のその言葉が全てを表している。

 どうやら俺自身気付いてなかったことなのだが……俺の個性許容量は、他と比較しても相当なものだったらしい。

 まぁ無視という個性そのものがチートみたいなもんだしな。その分使用エネルギーが大きいのは想像しやすい。大いなる力には大いなる個性許容量の消費が伴う。

 物間はこれに耐えきれなかったのだろう。他の個性は万全に使えるコイツでもなお、ウォールハックは一瞬で限界を超えてしまうほどの無茶だったようだ。

 

 だが─────俺は幼いころから常に個性を発動し続けていた。

 

 トラウマによるそれだが、しかしそれを継続していたことにより俺の個性は常に『伸ばされ』ていたということか。

 みんながこの夏合宿で今やっているように、限界を超え続けて……個性許容量が俺の知らぬ間にとんでもないことになっていたのだろう。

 そしてそれをもってなお、ワープするような距離の『無視』などをすれば限界を超えてしまう。

 とんでもねぇ燃費の悪さだったんだな俺の個性。新発見。

 

「……潜り抜けることだけに使用法は限定した方がいいねぇ、これだと。流石にあと数日でこれに耐えうる個性許容量まで伸ばせるとは思えない……」

「なんか……すまんな。俺の個性が燃費悪すぎて」

「文句を言う気力も出ないね。まったく……相変らず君はチートだ」

「悪い。なんなら俺の個性ストックすんのはやめとくか?」

「いや、それは遠慮しよう。自分の体が通り抜けられるようになるだけでも物理に対して無敵になれるんだ。それだけ使うなら限界には至らない……借りて行くさ。使いこなして見せるとも」

 

 物間が青い顔をしながらふらりと立ち上がり、一度保健室に向かうようだ。

 俺はバケツを片付けつつそれに付き合ってやった。

 お前のその負けん気と、A組に対する克己心はマジで尊敬してるぜ。頑張ろうな。

 

 そして多少回復したのち再び訓練に戻る物間と俺。

 その後もA組B組全員で、引き続き密度の高い訓練が行われたのだった。

 

 


 

【side 葉隠】

 

 

「フヘェェェ……毎日大変だァ……!!」

「圧縮訓練の名は伊達じゃないねー」

「試験まであと一週間もないですわ」

 

 ハイツアライアンスで女子のみんなと過ごす夜。

 お風呂上がりにみんなで一息ついていた。話題はやっぱり訓練の事。

 

「ヤオモモは必殺技どう?」

「ええ……やりたいことにようやく体が追い付いてきた感じです。さらに余裕を持つためにも個性を伸ばしておく必要がありますわね」

「今日は物間クンが限界超えちゃってたもんねー。センちゃんの個性ってすごい重いんだね」

「大変そうだったね。どう、梅雨ちゃんは?」

「私はよりカエルらしい技が完成したわ。きっとみんなもびっくりよ。透ちゃんはどう?」

「えへへ、実はね……センちゃんの個性の使い方見て、新技覚えた!」

「おっ! 彼氏からいい影響受けてるー!! どんな、どんな!?」

 

 みんなでそれぞれの成果を確認する中で、私は自分の個性伸ばしの成果を発表する。

 えっへんと胸を張り、今ここで成果を見せつけちゃうことにした。

 

「いくよー、見ててね……『透明伝達クリアリング』っ!!」

「お……おおー!? 服まで透明になっとる!」

「まぁ……! もしやイクノさんのように、ご自身の物まで透明にできるようになったのですか!?」

「うん!! センちゃんが自分の物も個性の対象に出来るって聞いて、それで私もセンちゃんのモノになってー……」

「急に話のRあげてくんな?」

「で、その時の感覚をヒントにして、私もできるようにした!! これで冬場でもヒーローコスチューム着ながら透明になれちゃうね!!」

「ケロ、素直にすごいわ。ステルス性がさらに上がったわね……武器も透明にできるなら攻撃にも転用できそう」

 

 そう、私は自分の持ち物を透明にできるようになった。

 センちゃんのおかげだと言っていいだろう。私の初めてを捧げて、センちゃんのモノになった時の……個性が体を通される感覚が、私の発想を広げた。

 センちゃんができるなら、私だってできるもん。

 その一念で個性伸ばしを頑張った結果、とうとうできるようになったのだ。私えらい!

 

「センくんには伝えたん? それが出来るようになったこと」

「うん!! すっごい喜んでくれてー……あ、でもなんか残念そうにもしてた。コスチュームも普通に全身ぴっちりスーツでセンちゃんと御揃いにしたから裸が見れなくなって残念だーって」

「変わらないねーイクノは」

「煩悩の塊ですわね……」

「ふふ。でもセンちゃんにはいつでも裸見せてあげるから♥って言ったら喜んでくれたよ?」

ブレーキ。透ちゃんブレーキよ」

「彼氏に染められてんじゃん葉隠……!」

 

 私もすっかりセンちゃんに変えられちゃったと思う。特に、そう、えっちな方面。

 だってセンちゃんが気持ちよさそうな顔で、ぐっと堪えながら必死に動いてくれる表情が可愛すぎるんだもん。

 正直な所センちゃんのせいで性癖ねじ曲がっちゃったよね。

 今の私、女子もイケます。

 

「これ以上はマジでR上がるわ。話題戻そー」

「そうね。じゃあ……どう、お茶子ちゃんは? 成果は出たかしら?」

「…………」

「……お茶子ちゃん?」

「うひゃん!?」

 

 話題が戻って特訓の成果の話になり、梅雨ちゃんがお茶子ちゃんに話題を振ったけれど、どうにもお茶子ちゃんは上の空。

 梅雨ちゃんがつんって肩をつついたらびっくりして飲み物噴き出しちゃってた。

 

 む。

 これは分かるよ。私もちょっと前になってたやつだよ。

 葉隠センサーがビンビンです。これは間違いなく。

 

「最近ムダに心がザワつくんが多くてねぇ」

「恋だ」

「ギョ」

 

 恋だね!!

 そういうのもうわかっちゃうもん! 自分がそうなったからこそわかっちゃうよね!!

 

「な、何!? 故意!?*1 知らん知らん!!」

「恋だね、間違いなく恋ですね。私そういうのもうプロだから」

「透ちゃんが言うと説得力あるわね」

「緑谷か飯田!? 一緒にいる事多いよねぇ!!」

「チャウワチャウワ! チャウワー!」

「浮き始めちゃった」

 

 余りに動揺して自分の体を触ってしまい、ふわふわと浮き始めるお茶子ちゃんを見てみんなで盛り上がる。

 ふふー。人のコイバナ聞くのって楽しいよねぇ!

 私の場合はもう一線越えちゃったからみんなあんまり踏み込んでこないし! 私も節度は保つけど!!

 

「誰ー!? どっち!? 誰なのー!?」

「ゲロっちまいな? 自白した方が罪は軽くなるんだよ」

「違うよ本当に! 私そういうの本当わからんし……」

「ケロ、無理に詮索するのはよくないわ」

 

 三奈ちゃんと響香ちゃんが押したところで、梅雨ちゃんがお茶子ちゃんをかばうような発言をする。

 うんうん。梅雨ちゃんは優しいよね。

 うーん、でもね?

 

「梅雨ちゃんも恋してるよね?」

「ッケロ。そっ……そんなことはないわ透ちゃん」

「おおー!? 梅雨ちゃんもまさかの恋するジョシかー!?」

「気になる男子いるの!? 誰誰!?」

「違うわ、そういうのじゃないわ。親しくしてるだけで……」

「じゃあやっぱり親しい男子がいるんじゃん!!」

「えー、誰だろ? 結構みんなの事見てるもんなー梅雨ちゃん」

「私だけじゃないやん!」

 

 梅雨ちゃんも時々、じっとあの男子の事見てるよね?

 誰とまではここでは言わないけどー。そういう視線、今の私にはわかっちゃうもんね。

 面倒見のいい梅雨ちゃんだからこそ気になっちゃったのかも。私のカレと一緒で、キメるところはキメてくるもんね。

 お茶子ちゃんの想い人だってそんな感じだし。ギャップに弱いのかもね、私たち。

 

「まぁまぁ、あまり詮索はいけません。明日も早いですしもうオヤスミしましょう」

「ええー!! やだーもっと聞きたいー!! 何でもない話でも強引に恋愛に結び付けたいー!!」

「えー? じゃあ三奈ちゃん、私が話してあげよっか?」

「葉隠の話はちょっと生々しくてヤダ!!」

「恋愛って所もう超えてるもんね葉隠と幾野の場合」

「さあ、部屋に戻りますわよ。寮長に叱られますわ」

「ケロ、センちゃん寮長としての仕事は本当にしっかりやってくれているものね」

「ああいうとこだよホント」

「ちぇー! んじゃ寝ちまいますかー」

 

 ヤオモモが改めて舵を取り直して、私たちは夜更かしせずに寝ることになった。

 まぁね、もういい時間だし。私達も部屋に戻らないとセンちゃんに怒られちゃう。

 梅雨ちゃんが言うように、センちゃんは寮長としての仕事はホントに頑張ってるから、そこに負担はかけたくないもんね。

 彼女が消灯時間守らないなんてなったら示しがつかないし! そういうところはしっかりやります!

 まぁ週2でしっかりヤってるんだけど。

 

 その後、浮き上がったお茶子ちゃんも降りてきて、私たちは自分の部屋に戻って行った。

 センちゃんとの逢瀬は明後日。今日は大人しく、明日に備えてぐっすり眠ろう。

 おやすみなさい。

 

 

*1
not誤字。原作の表現です。

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