【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
ヒーロー仮免許取得試験当日。
俺たちA組と発目ちゃんはバスで試験会場である多古場競技場にやって来た。
バスを降りて見渡すが、みんな少し緊張してるかもな。俺も例に漏れない。
してないのは発目ちゃんくらいだ。この子のマイペースさは見習うところあるな。
「緊張してきたぁー……」
「がんばろ、耳郎ちゃん!」
「試験って何やんだろ。はー……」
「事前に知らせちゃ公平性保てねぇもんな。個性で何とかなる試験ならいいけど」
「私のベイビーが活かせる試験だといいですね!! 燃えてきましたよフフフフフ!!」
峰田の呟きに応えつつ発目ちゃんの手はいつもの如くしっかり握りしめている。潜行時代の感覚を活かして前のエキスポの時のように離さない構えである。逃がさんお前だけは。
さて、試験だが……俺だけの話をすれば、タイマンの試験とかなら敗北はないだろう。期末試験のように俺だけハンデを、なんてこともないはずだ。他の人が合格できるものを俺が合格できないってことはまずない。
しかし、俺にだってできないことや苦手なこともある。これまでにもプールや林間合宿などでも不覚を取っている経験もあるんだ。油断はできない。
「この試験に合格し仮免許を取得できれば……お前らタマゴは晴れてヒヨッ子、セミプロへと孵化できる。頑張って来い」
先生の激励を受けて俺たちも改めて心を引き締める。
相澤先生、良いこという時はホントいいこと言うんだよな。ギャップ萌えショタを早くこの世に生み出すためにもセミプロにならねば。
「っしゃあ! なってやろうぜヒヨッ子によぉ!!」
「だね! 頑張ろう!」
「いつもの一発決めていこーぜ!!」
「よし! 円陣を組んで元気に行こう!!」
ノリ出した男子に女子も加わり、全員でテンションを上げながら飯田委員長が締めて、俺ら雄英高校のいつもの決め台詞で一致団結することとした。
「せーのっ!! プルス──────」
「「「ウルトラ!!!」」」 「ウルトラ!!」
何か混ざった。
誰だよテメーは。いきなり現れて勝手に混ざってんじゃねーぞ。
「誰ぇ!? コイツダレーっ!?」
「おいイナサ……勝手に他所様の円陣に加わるなよ」
「ああしまった!! どうも大変!! 失礼!! 致しましたァ!!!」
狂ってんのか?
謝罪まではいいとしてコイツ思いっきり地面に頭ぶつけたぞ。えっ怖い。謝り方もなんかヤクザっぽい。癖が強すぎるわマジ。
ノリと勢いだけで世の中歩いて行けると思うなよ?
「何だこのテンションだけで乗り切る感じの人は!?」
「幾野と幾野を足して二乗して性癖を除算したようなヤツ……!」
「何で俺で例えた???」
俺はいつだって世界の平和を願いながら思慮深く生きているというのに。失礼な奴だな瀬呂。
「ん……待って、あの制服」
「あ! 見たことあるかも!」
「アレじゃね? 西の有名な!!」
なんか周りの学校の奴らが相手の制服を見てざわつき始めた。
でも制服って言うけど学帽以外は割とドノーマルなワイシャツと学ランスカートでは??
え、帽子だけで判断してんの? ウチの特徴あるこの制服と随分違くない?
分からねぇよ他校の文化が……!!
「東の雄英、西の士傑。数あるヒーロー科の中でも雄英に匹敵する難関校か」
「あれ、爆豪ちゃん詳しいね。知ってたん?」
「当たり前の知識だろボケが。テメェは妙な所で知識に抜けがありやがんな」
爆豪ちゃんの説明にほえーっと納得する。
中学時代の進路相談なんて峰田と一緒の雄英しか考えてなかったからな。静岡よりも西にある高校なんて候補にも挙がってなかったわ。
「一度言ってみたかったっス!! プルスウルトラ!! 自分雄英高校大好きっス!! 雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス!! よろしくお願いします!!!」
出血しながらキマり気味の目で叫んでくるコイツ怖い。
いやまぁ目は生まれつきだろうからいいけど様子がコワイ。言ってることは真面だけど。
変な薬とか……やってないです?
「夜嵐イナサ……」
「ん。先生あいつ知ってんすか」
「ああ。ありゃあ強いぞ。嫌なのと同じ会場になったな……夜嵐、あいつはおまえらの年の推薦入試でトップの成績で合格したにもかかわらず何故か入学を辞退した男だ」
「え!? じゃあ一年生!? っていうか推薦トップの成績っていうことは実力は轟くんや八百万さん以上……!?」
すると相澤先生からまさかの情報が零れた。
へー。推薦で合格するほどの実力者だったんか。それは普通にすごい。まぁ試験会場にいるんだからすごいのは当然っちゃ当然だけどさ。
しかし推薦トップか。それを聞いて緑谷がなんかビビってるけどお前の良くないとこ出てるぞ。思い込みが割と激しいんだコイツ。
「アホか緑谷。試験内容にもよるだろそんなの。俺が体力テストで実力出せなかったように……心操がヒーロー科入試合格できなかったように、個性にゃ得手不得手あるんだからよ。ライバルの事自分の中で勝手に大きくしすぎんな」
「あっ……そうだね、うん。僕の悪い癖出ちゃったな」
「それな。ってか轟、推薦の入試で会ってんじゃねぇか? アイツどんな個性だったんだ?」
「いや、さっきから思い出そうとしてんだけど思い出せねぇ。あの頃周り見れてなかったからな……」
「あー……そりゃ仕方ねぇな。八百万ちゃんは?」
「恐らく私は試験会場ごと別だったかと思いますわ。轟さんもそうでしたし……あれほどのキャラクターなら忘れるはずがありませんもの」
「だよね。うーん情報ゼロ!」
結局よくわからんという所に落ち着いた。
雄英大好きとか言ってた割に入学は蹴ってるし。厄介ファンってやつか? 雄英が好きすぎて入学することすら躊躇われたみたいな? アイドルの握手会に来たはいいけど好きすぎて辛くて帰っちゃうタイプの奴か。
ま、相澤先生が言うように、変だが本物なのだろう。マークしとこう。
「……お! イレイザー!? イレイザーじゃないか!!」
そして今度は相澤先生にお客様だ。
声のした方を見れば、そこには何とも笑顔が素敵で巨乳なお姉さんがいらっしゃった。おいおい先生の知り合いかよこの美人さん……いやあれミスジョークか。巨乳のヒーローだから見覚えあったわ。
「テレビや体育祭で姿は見てたけどこうして直で会うのは久しぶりだなー!! 結婚しようぜ!!」
相澤ァ……!!
「しない」
「わぁ! そーいう関係!?」
相澤先生がそっけなく求婚を突っぱねて、芦戸ちゃんがそれ見てコイバナモードを発動しかけた。
ってかこんな美人に求婚されて断るとか何様だよ相澤(呼び捨て)
お前これが最後の結婚チャンスになるかもしれねぇのによ。今だけは敬意も何もねぇよクソ野郎が。
しかたねぇ俺ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!!
「しないのかよ!! ウケるー!!」
「大丈夫ですよミスジョーク。相澤先生の職員室の机の上に貴女のお写真あったの俺見てますから」
「えっ……? え、キミ確か幾野くんだよね? えっ、ま、マジ?」
「幾野の言葉は嘘だ。そして幾野お前合格しなかったら除籍な」
「小粋なジョークだったというのに俺にだけ試練が!」
「ウソかよ!!! あっははは!! 何だコイツ初対面でおもしれー!! イレイザーお前どういう育て方してんだよー!!」
「雄英の恥だ」
「ひっでぇ!!」
「ブァハハハハハ!!!」
やらしい雰囲気にはできなかったようだな!!
でもアイスブレーキングはできたようでOK。ってか気のいい人だなミスジョーク。うん、ママみあるわ。
好きだなーこういう人。意中の人に冗談交じりに好意を伝える乙女心がきゅんきゅんしますね。
「透ちゃん、透ちゃん。センくん止めんでええの?」
「あーいうところ好きになったから」
「強い……」
なんだか女子組がこっちを見て小声で話してますが何ですかね。いつも通りの俺やで。
「しかし……お前の高校もここか」
「そうそう。おいでみんな!! 雄英だよ!」
相澤先生の言葉にミスジョークが自分が受け持っている高校の生徒をお呼びした。
ふむ。イケメン1、カワイ子ちゃん1、かっこいい異形型仮面が1、ちょっと眼付と性格悪いロン毛が1。
夏場だからポロシャツなんだな。そこはちょっといいな、通気性よさそうで。
「おお! 本物じゃないか!!」
「すごいよすごいよ!! テレビで見た人ばっかり!! ってかあれイグジスト!? やだホントに可愛いー!!」
「可愛い子に可愛いって褒められるのめっちゃ嬉しい。もっと仲良くなりません?」
「彼女出来たのにナチュラルにこのセリフが出てくるイクノの罪深さ」
ミスジョークの学校、傑物学園高校の2年生らしい。
当然にして試験じゃライバルなんだけど、だからって仲良くなっちゃいけないルールなんてないしな。
向こうも同じ気持ちらしい。イケメンなほう、真堂ってのが早速緑谷の手を取って至近距離で挨拶している。
「俺は真堂! 今年の雄英はトラブル続きで大変だったね!」
「えっあっ」
「緑谷、相手はキス待ちだ。抱きしめて熱いヴェーゼで返してやりな」
「絶対違うよね!?」
「キミはホントに選手宣誓通りなんだな!?」
悪いが俺は男と見たらからかうよ。ツッコミも出来るタイプらしいのであなたも俺のおもちゃです。
つってもすぐに切り替えて眩しいくらいのさわやかイケメンを繰り出してきた。A組にいないタイプだわ。
爆豪ちゃんにおべっか言って握手を向けたところで断られてた。ウケる。
「アドレス交換しませんか? そちらの先輩のお姉さんなんかぜひ」
「えー! マジ!? いいの!? 轟くんと一緒で幾野くんのサインとかも欲しかったのに連絡先まで交換してもらえるのー!?」
「ミーハーな中瓶に特効だなイグジスト……」
「サインももちろん書きますよ。轟も書いてやったら?」
「練習してねぇ」
「ぶはっ、ウケる! 真面目だなこの子は!!」
わいわい盛り上がったところで、相澤先生からとっととコスチュームに着替えて説明会に向かえとお達しが出たので俺らは返事をして向かうことにした。
「なんか外部と接すると改めて思うけどやっぱ有名なんだな雄英って」
「特に幾野がマジで日本中で顔売れてんのが分かるね」
「それな。コイツばっか狙われてくんねぇかな」
「むしろ望むところよ。俺を狙うイコール不合格という理不尽の塊になってやるぜ」
「マジでやれそうだから怖ぇよな」
「イクノさんは私をちゃんと合格させてくださいね!! お礼にベイビーいっぱい作ってあげますから!!」
先生とも別れ、俺達はみんなで更衣室に向かった。
俺にだけ個室用意されてた。
ヒーローコスチュームに着替え説明会場に集まった。
人の数すんごい。
「多いな……!」
「多いね……!」
これは雄英A組のみんなの呟き。
「ヤバいな……!?」
「あれが噂のイグジストか!?」
「マジでおっぱいついてるぞ……!?」
「背中ガン空きじゃねぇか!?」
「嘘だろ……綺麗にも程がありすぎるだろ」
「全国の女子高生に失礼だよねあんなスタイル……!!」
「俺……もう男でもいいかな……」
「正気に戻れ!?」
これが他の学校の皆さまの呟き。
「ふっ……どこにいても目立っちまうってのは辛いぜ」
「何名か性癖が終わってしまった方の呟きも見られますわね……」
「普段の様子知らないとああなっちまうんだろうな」
「罪深いね☆」
「どうしよ、幾野のせいでウチ逆に緊張ほぐれたわ」
「俺らも逞しくなったもんだよな……入学初日が懐かしいぜマジで」
なんやなんや。俺はただそこに在るだけやぞ。イグジストしてるだけやぞ。
まぁ苦笑浮かべつつでもみんながリラックスしてくれんのはいい事だけどさ。
『えー……ではアレ、仮免のヤツをやります。あー……僕はヒーロー公安委員会の目良です。好きな睡眠はノンレム睡眠。よろしく』
壇上の公安の代表者から挨拶があり、試験の説明が始まった。
疲れてんなこの人。ちゃんと寝る前にシコってる?
で、試験内容は受験者1541人で一斉に勝ち抜けの演習とのことだ。
ヒーローの在り方についての説明も入るが、ようはヒーローが切磋琢磨しあった結果レベルが上がってきてて解決まで迅速な対応が求められるのでこれからヒーローになる者にはスピードが求められると。
だからこそ、先着100名までが合格者っていうね。
はっはっは。中々無茶振りしてくれやがる。
「100名!? 5割どころじゃねぇぞ!?」
「マジかよ……!!」
周りからは色々と声が上がる。先日のオールマイト引退発表とかも絡んで厳しくなったってことか。やむなし。
その内容にA組の皆も少し動揺するが、落ち着けって。
「余裕だな」
「幾野、お前なら余裕だろーけどよぉ……これ相当だぞ?」
「何言ってんだ上鳴、俺ら雄英生だぞ? 倍率300倍の雄英の入試を合格してんだぞ? この程度で何ビビってんだよ。たったの倍率15倍じゃん」
「あ? あー……マジだ! なんだ余裕じゃねぇか!!」
「でもお前の場合余裕出したらポカしそうだから真面目にやれな」
「上げて下げんな!?」
上鳴のケツを叩いて気合を入れてやる。
そもそも俺らは頑張れてるんだ。油断はしちゃダメだけど、自信は持とうぜ。
この5ヶ月でやれることやりきってきたじゃねぇか。相澤先生じゃないけど、全員で合格するんだよ。そうできるように俺は頑張る。
さて、話は進んで演習内容の説明。
自分の体にターゲットマークを3つつける。そしてそれにぶつける用のボールを6つ。
相手のターゲットの3つ目を当てた人が倒したことになり、二人倒した者から勝ち抜き。
「……入学試験と似てるかも」
「でも対人と対ロボじゃまるで話が違うね」
「ボール所持数は合格ラインピッタリだが……ボールを投げずに流用すればその枠には当たらないか」
「投げるのはオイラ以外やめとけ。小さい的に当てるなんてよっぽどじゃねぇと出来ねぇよ」
みんなが小声で話すが、その表情に油断は見られない。真剣だ。
そして追い詰められているようなこともない。これまでに積み上げた力を自信として、冷静に戦略を練れている。
問題ないだろうな。投擲のプロである峰田が根本の戦術についても言ってくれたが、これはボールを投げあう演習じゃなくて、いかに相手を無力化するかが問われるものだ。
なら、俺らA組がやることはシンプルだ。
『えー……では展開後にターゲットとボールを配るんで、全員に行き渡ってから一分後にスタートとします』
最後のアナウンスが入り、俺らがいる試験会場の壁と天井が音を立てて開いていく。
するとそこには大きな試験会場が。地形も色々あるな。ビル街、山岳地帯、工業地帯……USJや訓練場γで見た地形だ。
なるほどね。俺らに分があるな。
「……よし!!」
俺はぱちんと頬を叩いて気合を入れなおす。
やるぞ!! じゃあまずは俺ら全員の連携の為に────
「インカムを配ります!! 必要なときに連携を!!」
──八百万ちゃんにインカムを作ってもらおうとしたけど自分から作り出してくれた。
ううん、じゃあ次は───
「先着で合格なら同校の潰しあいは無い!!」
「チームアップだな!!」
「魔獣の森を思い出そう!!」
「緑谷、飯田、爆豪、轟を中心にして4組5人!! 索敵は各チーム一名!! 発目は幾野について!!」
「はい!!」
──チームアップして、普段の練習から見た個性の噛み合いも考慮して───
「広範囲攻撃の轟チームには索敵が広い幾野がいた方がいいだろう。轟は発目も頼むぞ」
「おぉ」
「爆豪にゃ俺と上鳴がつく!! 索敵には口田頼む!」
「うん!」
「ケッ、足引っ張んじゃねェぞ」
「ウチは飯田につくよ! ウチなら地中も聞けるし攻撃にも回れる!」
「俺は緑谷にいこう。しかし複製腕は遠距離攻撃の対処には向かん。青山、頼めるか」
「ウィ☆」
「オイラは飯田につくぜ、遠距離からでもスナイプで行動不能にできる!」
「ウチはデクくんやね、連携練習の成果発揮せんと!」
「私は彼女の立場差し引いてもセンちゃんにつく! 私だけは一緒に無視できるし!」
「ケロ、なら私は爆豪ちゃんね。中遠距離なら対応できるわ」
「火力支援で俺は飯田に……」
「私は轟に……」
────組むまでもなく。
全員が全員、自分がやれること、みんなが出来ることを理解した上ですぐさまチームアップを完成させた。
「俺が出る幕ないじゃん」
「ふっ、みんな幾野くんに頼りっぱなしではいられないという事だ」
「そゆことー! いつまでもおんぶにだっこじゃいられないぜー!」
「ケロ。私たちの力、信用できないかしらセンちゃん?」
「───まさか。頼りになり過ぎるね!!」
速攻で組みあがったのが以下の4チームだ。
轟・幾野・葉隠・芦戸・瀬呂・発目。
緑谷・麗日・尾白・青山・障子。
爆豪・切島・上鳴・口田・蛙吹。
飯田・常闇・耳郎・峰田・八百万。
いいバランスだ。
轟チームは火力は轟で十分、絡め手は俺で十分。発目ちゃんのサポートは手厚く行える。
緑谷チームも遠近バランス取れている。連携が取れるメンバーで足並み揃えて進軍可能。
爆豪チームも攻撃、防御、全体攻撃・中距離支援で動きやすい。
飯田チームもスピードの飯田、万能の常闇、遠近距離対応の峰田で層が厚い。火力の薄さは八百万ちゃんでカバー。
行ける。
このチームアップなら、A組なら勝てる。
「よし!! もう時間は少ない!! それぞれが得意とする地形に移動だ!! 発目くんも含めて全員!! 勝ち抜けの控室で会おう!!」
「「「おおー!!!」」」
全員で最後に鬨の声を上げて、それぞれが得意な地形を選び走り出した。
【side 相澤】
教師である俺は、勝手についてきたミスジョークと共に観客席から試験の様子を観戦していた。
「イレイザー、チャック開いてる!」
「五月蠅い」
一席開けて隣に座るコイツからの下らないジョークに辟易としながらも、しかし最近は俺も幾野で鍛えられたのかスルースキルが上がったようにも思う。業腹だが。
さて、こうして見下ろす試験会場だが……悪くない。雄英でよく使っている地形に近い所がいくつもある。アイツらならば適切に戦闘区域を選び戦い抜けるだろう。
「しかし20人とはなぁー。お前が除籍してないなんて珍しいじゃん。気に入ってんだ? 今回のクラス」
「そうだな」
「おっ? イレイザーにしちゃマジで珍しい!! へぇ、そんなにかい!! すげーや! 付き合おう!!」
「黙れ」
ミスジョークの言葉に軽口で返す。
ここで変に否定しても五月蠅いと思ったからだ。結局肯定しても五月蠅かったので意味がなかったが。
「しっかしそれなら変な話だぜ。例年形式は変われどこの仮免試験では『雄英潰し』が行われる。可愛いクラスなら言ってあげればいいのに!」
続けざまにミスジョークの語る内容は、俺も把握していたこと。
この試験会場だけではない、どこの試験でも行われることだ。雄英高校は体育祭で個性をテレビで放送される。その分、対策が立てられやすい。
純粋に雄英高校の知名度の高さがそれを行わせるという面もあるだろう。
だが、今年は特に心配がない。
「別に言わない理由もないが……結局やることは変わらんからな。ただ対処していくだけさ」
スタートの合図が流れ、同時に俺の生徒に向けて各高校から一目散に攻撃が放たれた。
─────が、あの程度を捌けない鍛え方はしていない。
「……おお!? スッゲ!? なんだあの判断力!? 個性も……!!」
「
全員がここ最近で伸ばした個性をいかんなく発揮し、初撃を対処。
さらに果敢に攻め込み、ボールを投げるのではなく行動不能にするという極めて合理的な判断で逆に周りを食いにかかる。
「先着ってことで攻めたもん勝ちな印象を受けるけどこれ違うね……違くない?」
「必要なのは団結と連携、そして情報力だ。しかしウチにとってはそれこそがストロングポイント。情報についてはインカムを全員が装備したしな、自発的に。入学してまだ5カ月だが……あいつらは強い」
「……随分上から語るねイレイザー。ヒーローを目指す子は星の数ほどいるワケで、その志の高さには有名も無名もないんだぜ? 主役面して他を見下してっと返り討ちにあうよ?」
しかし言葉選びを間違えたか、ミスジョークも僅かに剣呑な雰囲気を出して反論してきた。
いかんな、流石に言い過ぎた。俺だって決して他校の生徒を見下す意図はない。
「すまんな、誤解させた。お前のトコの生徒や、他の所が弱いとは言わない。ただ……たまたまウチには大きく全体を引き上げてくれた
「ほーん? べた惚れかよ気持ちワルー!」
謝罪と、意図を正しく伝えるために俺は自分の自信の根拠を説明する。
A組にはキーマンたる3人がいる。あいつ等の存在が切磋琢磨の砥石となった。
緑谷。
爆豪。
そして、幾野。
緑谷の分析力と著しい成長。前向きな性根が、みんなに前を向かせて。
爆豪の冷静さと一心に高みを目指すストイックさが、みんなに向上心を与えて。
幾野の優しさと、自主訓練でも笑顔を見せる気配りが、みんなに安心感を与えた。
その熱はA組に伝播して、クラスの壁を超えてB組にも伝播した。
それほどの3人が、A組には存在している。
あいつ等がいる限り、A組は強い。
俺ともあろうものが、心の底から合格を信じられるほどにな。
kabahamu様よりファンアートを頂いたので紹介させていただきます!
①通形家に伝わる伝説の必殺技を放つセンちゃん
【挿絵表示】
センちゃんがプリケツを突き出して「桃が生ってるよ♥」ってやってるシーンを描いてもらいました。
やってる。こういうのクラスメイトとの訓練の時にやってます。実際やってた。書き溜めてる話の中でやってる。
緑谷と上鳴と常闇相手に特効なので割とよく使うまである。この技はミリオ兄さんより上手です。
しかしこの桃種有りである。ぷるんって揺れてるんやろなって。筆者的にはポニテが最の高です。
ファンアート心より感謝申し上げます。有難うございました!