【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
時は流れて俺と峰田のインターン初日の朝。
俺たち二人は学園の駐車場で迎えに来てくれた人と対面していた。
「貴方たちが幾野くんと峰田くんね。迎えに来たわ、初めまして。バブルガールです」
まさか学園までバブルガールが迎えに来てくれるとは思わないじゃん?
おいおい青肌下乳ドスケベヒーローと朝から出会えるなんてよォ!! 最の高かよォ!!
「サイン貰っていいスか!? オイラ達バブルガールの大ファンです!!」
「え、やだ私のファンなの? 嬉しい! いいわよ、事務所着いたらね!」
「身長167cm……ヒーロー名鑑情報では好きなものはお風呂……」
「詳しいわね!?」
「いつか下乳に顔から飛び込ませてください」
「初手で下ネタ!?」
「オイラは一緒にお風呂入ってくれればいいです」
「君も!?」
俺の方からあいさつ代わりにジャブを入れたら中々反応が良かった。
なるほどね。弄られて悦ぶタイプね? 相性よさそう。
とりあえず連絡先は速攻で交換してもらって、んでサー・ナイトアイ事務所に向かうのだが。
「それじゃ乗って乗って。途中で休憩とか入れるからね、高速使って一時間半くらいで着くかしら」
「車で送迎されるとはオイラ思ってなかったっス」
「マウントレディから話来た時はびっくりしましたが……今回、俺がナイトアイ事務所にいることはあんまりバレない方がいいんですよね」
「ええ。幾野くんは特に目立つから……ごめんなさいね、貴方を呼んだと相手にバレれば警戒されかねないから」
電車での移動ではなく、バブルガールの運転する車での移動なのだ。
これには理由があり、なんか今回サーのほうで俺を呼び出す動きを相手に気取られたくないとのこと。
緑谷とかミリオ兄さんと違って、俺の顔はちょっと売れすぎてるしな。目立つし。
そんなわけで電車で移動ってなるとファンのSNSとかの呟きで場所バレの可能性があるので、そこを対策してバブルガールが車で送迎をしてくれるという話になっていた。大変ですね。
「ちゃんと変装グッズも持ってきてるんで、向こうじゃ主に俺はそれでいるようですかね」
「悪いわね。顔を売るのがヒーローの仕事の一つでもあるんだけど……今回、幾野くんには捜査への協力をお願いしたいの。詳細は事務所についてから話すわ」
「オイラは?」
「峰田くんは書類仕事とパトロールね。マウントレディからどっちも有能だって聞いてるわ、よろしくね」
「うっす!」
俺たちは荷物を入れて車に乗り込んで、バブルガールの運転で事務所に向かうのだった。
「ところでバブルガール。ちょっと気になるんで聞いていいですか」
「……な、何?」
「緊張すごい」
「バブルガールって21歳でしたよね。お若くて……その、お車の運転とか慣れてるんです?」
「………………ペーパー」
「オート個性常時発動ヨシ!」
「跳峰田装備するぜ!」
中々スリリングなドライブだったな!!
さて、やってきましたサー・ナイトアイ事務所。
無事到着できてよかったね。
応接室に俺らとサー、バブルガールにマウントレディ、ミリオ兄さんが集まっていた。
「招集に応じて頂き感謝する、マウントレディ。そしてインターン生の幾野潜と峰田実。私がサー・ナイトアイだ」
「私はオマケみたいなものでしょう? まぁいいけど。二人とも、ご挨拶して?」
「幾野です。バブルガールを俺にください」
「結婚の挨拶!?」
「峰田っす。バブルガールをオイラにください」
「君も!? 二股したの私!?」
「……ふっ、ははっ。合格だ。初対面でまずジョークを言える胆力とユーモアはよい。貴様たちはユーモアの大切さを分かっている様だな」
「笑顔の女性ほど素敵なものはないっすからね!」
「笑顔ってのは尊いもんスから……」
「いいこと言ってるように見えてただのエロガキなのよね……」
「センも峰田くんもいつも通りだね! まぁ二人ともサーが気に入るとは思ってたよね!」
「マウントレディ、この二人強い……強くないですか? よく手綱握れてますね?」
「慣れたわ」
サーと初めて会い、挨拶がてら俺と峰田でジャブを繰り出したら気に入ってもらったらしい。
ユーモアは大切だからな。ミリオ兄さんだっていつも言ってるし。俺も峰田も笑ってる女性が一番かわいいって思ってるし。
バブルガールとマウントレディという優秀なツッコミ役の女性が二人もいるんだ。実家の様な安心感。
ダブルで挟んでくれねーかな。
「では早速だがこれからの仕事についてだ。バブルガールとルミリオンと峰田……グレープジュースは市街のパトロールを」
「はい。今日は事務所の南側を回るから、よろしくねグレープジュース」
「うっす!」
「峰田くんがいるなら心強いよね!」
「センチピーダーは事務所で待機だ。情報が入ったら逐一連携」
「かしこまりました」
「そしてマウントレディと幾野……イグジストだが。私と共に八斎會の事務所の調査に向かってもらう」
「わかったわ」
「了解す。……八斎會?」
「そこは詳しく説明しよう─────」
それぞれの仕事を確認しながら、俺はサー・ナイトアイからの詳細な説明を聞く。
要約すると話はこうだ。
以前よりサーは八斎會とかいうヤクザ事務所をマークしており、限りなく黒に近い灰色だった。
で、先日緑谷がインターンに行ったときに、ミリオ兄さんと緑谷が街中で八斎會のトップである治崎と接触した。
その時に明らかな虐待が疑われる少女が脱走しているような状況を確認し、その証拠がはっきりすれば令状が出せて一気に乗り込める。
被害者もいるからもう一刻の猶予もなく、ミリオ兄さんと緑谷の推薦で俺を呼んだ、という話だ。
「……なるほど。で、俺のウォールハックでその八斎會とかいうヤクザ事務所の中をスキャンしろってことですね」
「その通りだ。それで中にいる組織構成員の動きからヤツらの悪事が零れるようなら私の方でその者の未来を見てもよし。建物内の構成や人数まで分かれば突入の際の情報にもなる」
メガネをクイッしたサーが俺の話に同意を示した。
俺のウォールハックは望遠鏡とかを使えば半径1kmくらいまでなら見える。先日のI・アイランドでも全長1kmのタワーの屋上まで見えてたしな。
そうすりゃ中で何やってるかなんて丸裸だ。その幼い女の子が虐待を受けているかもしれないという情報も聞いたので、俺もこの仕事の迅速さと重要さを改めて認識する。
「俺がセンを推薦させてもらったんだよね! 他にも感知系や捜査系の個性のヒーローもいるんだけど、そういう人は名も売れてるし……対策もされる!」
「音の感知系ならジャミング音波を流すことで防がれることもあるし……透視系の能力者は広範囲を確認できる個性はかなりレア。そう考えるとジャミングすら『無視』できる幾野くんのウォールハックは破格な性能よね」
「イクノのウォールハックはここ最近さらに精度高まってるんで割と唯一無二ッスね今や」
「マジで? ミリオン*1といい今どきの学生さんってこんな強い子ばっかなの……?」
そして峰田が言う通り、今の俺のウォールハックは『無視』の精度も上がって余計なものは見ないようにできている。
ジャミング系の個性も『無視』できるので、俺の前で隠せるものはない。強力な武器だ。
ミリオ兄さんが俺を頼ったのは当然の判断と言えるだろう。むしろナイス。
正直ヤクザのシノギとかはあんまりピンとこない世界だが、小さい女の子を虐待するなんてのは言語道断だ。俺も許せん。
「分かりました。出来る限り精密に見るようにします。今の時点で分かる八斎會のメンバーリストとかありますか? 身長とかのデータや顔写真ついてるようなの」
「そこは既に準備している。マスクを被る者も多いので見分けはつかないかもしれないが……ああ、いや。それも透視できるのか」
「余裕ですね。顔まで変えられてたら分からないかもですが。何人いるかくらいは完璧に把握して見せますよ」
「気概はいいが焦るな。まずはできる範囲でいい。他の地区にも事務所があるので今日一日で終わるモノではないと考えている。後詰めで私の未来視もある……作戦の成功率を引き上げる一助だと思ってもらいたい」
サーは少し落ち着けというがこれが落ち着いていられるもんか。
この近くの事務所にいなければそれこそ一日中全国を飛び回って視たって構わないくらいだ。
その子を見つけたら俺の個性で救出できるようなら先に救出したっていい。流石にそこは指示を仰ぐが。
「ヤクザの事務所なんて見ていても気持ちいいものではない。マウントレディ、そこのケアは任せたい」
「保護者枠、ってことね……まぁ街中で私の個性使ったら一発でバレるから仕方ないわね。目立たない服装で来た甲斐があるってもんだわ、まったく」
「俺が辛くなったらいつでもマウントレディの胸に飛び込んでいいってことですね。準備いいな」
「人の胸でメンタル回復しないで!?」
「オイラも辛くなったらバブルガールの胸に飛び込んでいいって事っすか? 助かる」
「この二人性欲に素直すぎない!?」
「ごめんなさいね!! 身内の恥だねアハハハハ!!」
「余裕があるな。いい事だ……ではヒーロー活動を開始する。各自励むように」
サーの言葉でそれぞれが自分の仕事に向かった。
さて、そして俺(変装のすがた)とサー(スーツ)とマウントレディ(私服のすがた)で八斎會の事務所に向かった。
「幾野くん、そこまで地味になれたのね……驚いたわ」
「目立たなくするだけですからね。大したことでも」
俺はできる限り目立たなくなるように、長い髪は大きめの帽子に入れて隠し、顔は逆に不細工風味になる様に化粧を施し、体はできる限り腰から尻のラインが出ないようなゆったりした私服を選んで、変装をした。
どう見ても一般市民Aのカッコだ。女だと思うこともないだろう。いや元々女じゃないんだけど。
コツは顔の化粧を躊躇わない事だ。マジでモブ顔になる様にめっちゃ化粧してある。
「今回の様な事件でなければ、いるだけで目立つ顔だ。その上で無敵ともくれば君の力はこれからのヒーロー業界に大きな影響を与えるだろうな……どうだ。卒業後は私の事務所でサイドキックとして働かないか。ミリオもいるぞ」
「ちょっとサー? 私がツバつけた子に真横からヘッドハンティングなんていい度胸ね? この子と峰田くんはウチに来るのよ?」
「俺の体が狙われている」
サーからもなんか誘われちった。うれしい。ギャングオルカにも誘われたり俺の体を狙うヒーローが多いな。
まぁ俺の個性は喉から手が出るほど欲しいって人多いだろうしな。チート個性は辛いぜ。
「……さて、まず八斎會の事務所はここだ」
「でっっっけ。ヤクザ事務所ってなんかこう、屋敷みたいなイメージあったんすけどね。普通にコンクリ製の建物だ」
「金があるのね。羨ましいわ」
遠目にまず対象の事務所を確認した。
なんか……病院みてーだな。建物と建物を繋ぐ通路みたいなのもあるし。こんなにでけー組織だったんか。
こりゃ悪い事いっぱいやってそうですわ。建物のマッピングも大変だぞこれ。
「少し離れたビルの一部屋を借りている。そこで見てもらうぞ。ここでずっと立ちっぱなしで見るには時間がかかり過ぎるだろう」
「了解です」
「飲み物とか軽食とかも買っていきましょうか。これだけ広いと長丁場になりそうだわ」
その場でのウォールハックは多分集中してしまうので一度我慢し、サーが準備してくれていた一室へ移動。
近くの5階建てのマンションの空き室だ。借りたのかな。
八斎會の事務所が住宅街のど真ん中にあるのでそこまで高い建物もあまりないような感じだ。ま、ウォールハックで見る分には全く問題ないけどね。
部屋の中に準備されていたソファに座って、俺はまずウォールハックの準備をする。
「それにしても早速この新しいアイテムが活かせるとは思わなかった」
「あら……また新しいのを作ったの? 前に移動用のワイヤーを装備したってのは聞いてたけど」
「ええ。サポート科に才能ある友達がいましてね。その子にお願いして作ってもらったんです。驚きますよ」
俺は私服で隠してた首元にあるリングを見せる。
見た目にはただのチョーカーのように見えるそれだが、ここには新機能が詰まっているのだ。
かちりとボタンを押せば、俺の後頭部からカシャン!! と音を立てて装置が飛び出し、薄型のバイザーが俺の目を横切るように覆った。
イメージ的には……何ていえばいいんだろうなコレな! 言葉で説明するの無理!!
「わ!? 頭からなんか生えてきたわよ!?」
「近年開発された最新の圧縮素材、コンデニウムを使ったアイテムか? いや、それだけでは説明できない……まさか。そのアイテム、
「大正解っす。質量も重さも全部無視して頭から肩のあたりまでパーツ埋め込んであります。デカい分超高性能ですよ……そしてさらにもう一段階ある!!」
俺はテンションを上げつつさらに目元のボタンをぽちり。
するとバイザーを中心にさらにガシャガシャシャキーン!! と流線型のフォルムのパーツが組みあがり、頭部を完全に覆うマスクタイプのヘッドギアに変形した。
こういうの男のロマンだよな!! カッコいいだろう!!(ギャキィ!!)
赤い長髪は後ろから流れるようになっていてまぁかっちぇえのなんの!! デザインを突き詰めるのに時間を要したまであるよね!!
バイザーだけの状態でも色々機能が使えるんだけど、真にこのアイテムの力を発揮する時はこのヘッドギアの形にする必要がある。
もっともこの状態にすると見える情報が多すぎて、戦闘中とか俊敏な動きする時には向いてないんだけどな。今みたいに情報集める時専用だ。
頭の中と肩まで埋め込むサイズのため、凄まじい性能を誇っている。全部盛りだ。
俺の頭の周囲、空中に浮かぶウインドウをいくつも表示させながら俺は能力を説明する。
「機能は68種類。熱源感知から音から暗視から、インカム受信も盗聴からだいたい何でもできます。ウォールハックでできることもあるけど……何が凄いかって言ったら、このバイザーによる機能が
「……え? ……え!? すごい事じゃないの!?」
「君の見ている光景がこれに表示できるという事か……?」
「そういう事っすね。ここまでできるのは体に埋め込んで質量無視したうえでコンデニウム使って圧縮してるからであって、他の人に同じ装備はできないですね。俺専用装備っす。ダイブワイヤーと同じで」
「とんでもない性能じゃない! えっヤバい。学生が持っていい機能じゃないわよコレ!?」
「よほど優秀な開発陣が関わっていると見た。これほどのサポートアイテム、そう簡単に作れるはずが……」
「あ、一人で作ってました」
「どゆこと!?」
「君の友人は国の宝なのか?」
そりゃ驚きますよね。発目ちゃんがどれだけ天才かって話よ。俺なんか普段から接してるから感覚バグるけど一瞬でサポートアイテム開発するあのスピードと発想のとんでもなさはマジで天才という言葉では表し切れないほどだ。
話聞いたら、前にI・アイランドに行った後にメリッサさんと連絡先交換した後にお互いに驚くほど情報提供しあってめちゃくちゃできることが増えてしまい、だからこそ仮免が必要になってしまったのだとか。
そりゃあね。これほど規格外なものを開発するんじゃ資格も必要になるわな。
因みに俺のこの新装備『ダイブセンサー』は、発目ちゃんが仮免を取った後に一番最初に開発してくれたベイビーだ。
かなり希少な素材も使って俺専用のワンオフとして作ってくれたとのこと。
特別にバッテリーなども最新式のを組み込んでてくれてて無駄遣いしなければ一週間はもつとか。ヤベーな。
同じものを開発するにはもう素材が足りないとか言ってた。
いつも世話になってる御礼ということで俺の我儘を優先してくれる発目ちゃん優しい。すき。
「そんじゃ早速見てみましょうか。俺の方で見た映像は録画されますし、ダイブセンサーで間取りの長さとかも詳細に測れるから建物内部の図を作るのは事務所に戻って映像見ながらでいいと思います。構成員の人数とか、エリちゃんがいればその様子見たりとかですね」
「やってくれ。こちらにも映像が見えるのはありがたいな」
「個室でよかったわね。ヤクザがどんだけ儲けてるか見てやりましょ」
俺は改めてダイブセンサーを起動し、サーモセンサーや暗視センサーなども起動しながらウォールハックを発動する。
さあ八斎會を丸裸にしてやるぜ、と事務所の方に目を向けて、精査を始めて。
──────吐き気を覚えた。
※ロボデザインセンス0のためラフで誤魔化したダイブセンサーイメージ図
【挿絵表示】
ガシャコガシャコシャキーン!! って感じで展開するイメージです。
遠隔で落ち着いて精密調査する時は一番右のヘッドギアモード。
戦闘中にウォールハックと連動させるときは真ん中のバイザーモード。
バイザーモードの時点で性能の半分は引き出せます。デザイン力が欲しい。
因みに本編中では描写しない設定として、ダイブセンサーに使われてる圧縮素材コンデニウムの量がヤバいことになってます。
オールマイト経由でI・アイランドからパワーローダーに技術提供されたコンデニウム素材の70%をぶち込んでいる。
発目ちゃんがそんな狂気の設計図作って、パワーローダー先生も幾野が使うなら日頃の礼もあるしOKと許可を出してしまい、世界に一つのワンオフアイテムになってます。
緑谷の100%スマッシュに数発耐えられるガントレットを生成するパーツが手首につけて収まるサイズになるコンデニウムを、頭から肩までガッツリ埋めるほどの質量が贅沢にぶち込まれた一品。
センちゃんはそんな価値あるものだと知らないです。罪深い。