【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
「帰って来た!! あいつら帰って来たぞ!!」
寮に帰ってきたのが午後6時。
腹ペコになりながらもみんなで戻ってきたところで、寮のみんながわっと集まってきた。
心配かけたかな。すまん。
「大丈夫だったかよ!?」
「めっちゃニュースになってたぞ八斎會の事件!!」
「怪我とかしてねぇか」
「センちゃーん!! 大丈夫だったー!?」
「大丈夫。俺たちみんな無事だよ」
にわかに寮のロビーが騒がしくなる。
俺の胸元に飛び込んできた透ちゃんをぎゅっと抱きしめつつ、それぞれがみんなに無事の帰還を報告する。
「怪我したのは僕くらいで……僕も個性の自爆だったし、リカバリーガールに治してもらったから」
「そうは言っても緑谷お前いっつも無茶するからよォ!! ホントお前デカい事件に巻き込まれてんな!?」
「ケッ! デカいヤマにばかり当たりやがってデクが……! こっちはエンデヴァーが全部解決しちまってまだ何にもできてねェってのによォ……!」
「まったく君たちは! いつもいつもとんでもない事件に巻き込まれる!! ニュースを見て本当に心配したぞ!!」
緑谷を心配する男子たち。上鳴の言葉が全てを語ってんな。
この事件の発端は緑谷がエリちゃんとたまたま最初のパトロールで遭遇したことから始まっている。コイツマジでトラブルに引き寄せられ過ぎだろ。引子さんにも後で俺からも無事だったってラインしとかなきゃ。
「麗日も梅雨ちゃんも大丈夫だった?」
「うん、なんとか。ありがと響香ちゃん」
「私たちは突入班じゃなくて周辺の避難とかが主だったから……センちゃん達に負担をかけてしまったわ」
「それでも無事で何よりだよホント……」
女子陣は麗日ちゃんと梅雨ちゃんの二人を心配していた。
二人は邸宅に突入する部隊じゃなかったからな。実際に戦闘に参加はほとんどしていない。
が、それでもきっちり周囲の市民の避難をしてくれたことで被害を抑え、最後緑谷が躊躇いなくスマッシュできたという事実もある。
作戦に参加するみんなが頑張ってくれたからこその勝利だったんだぜ。偉いよ二人とも。
「何で言ってくれなかったんだよ切島ー! あんなデケー事件だったなんて俺たちマジで仰天だよ!!」
「カンコーレーしかれてたンだよ! 俺だって昨日初めてこんな事件だって知ったわ!」
「……切島────大丈夫?」
「…………まだまだだわ。幾野の索敵と周りのヒーローにおんぶにだっこ……次はもっと、俺の出来る事やらねぇとよ」
「そっか」
切島に瀬呂がぐわっと肩組んで心配してたところで……なんか芦戸ちゃんが同中のよしみか労りの声をかけていた。
ん? ……んん?? なして芦戸ちゃん男子勢で切島にだけ声かけてんの?
「匂うな」
「匂うね」
俺と、俺を抱きしめて離さない透ちゃんの思考がシンクロする。
これは……恋の香りじゃな?? そういうの俺わかっちゃう。おっとぉ~? 意外な組み合わせですね。
しかし恐らくはお互いに全く自覚のない芽が出た程度の状態ですかねコレは……青いですね……見守ってやりたくなりますねぇフフフフフ。
絶対どっかで茶化そう。だが今はまだその時ではない。
「イクノさんは無事だとは信じていましたが、峰田さんも……大丈夫でしたか?」
「ん、ありがと八百万ちゃん。それなりに頑張ったよ俺」
「オイラも。無事じゃなかったのは相澤先生だけなんだよなぁ」
「あ! そういや相澤先生だよ!! 送られてきた写真見たけどどうしたんだよアレ!?」
「みんなでびっくりしすぎて漫画みてーに目ん玉飛び出たわ!」
「轟も数秒フリーズするレベルの衝撃写真だったわどうしたアレ!?」
八百万ちゃんが俺らの心配をしてくれて、それに俺は軽く微笑んで返す。
当然だけど箝口令しかれてるからね。事件の詳細は話すことはできない。エリちゃんに起きてたことなんて、話せるはずもない。
みんなも深入りはしないでくれていた。配慮助かる。
透ちゃんの髪を手でしゃなりと梳きながらメンタル回復させていると、しかし話はとうとう相澤先生のことに。
「うん……まぁ、色々あってね……」
「ちゃんとした説明は相澤先生が明日言ってくれるだろ。オイラも確認したけど教師は続けてくれるってよ」
「マジか! よかったー! そこが一番心配だったんだよ!」
「……ヴィランの個性によるものなのかな☆」
「そこは喋れねーからあんま突っ込まないでくれな。後で相澤先生に聞いてくれ」
「ウィ☆」
「……で、先ほどから幾野が随分と顔色が悪いが……どうした? 大丈夫か?」
「大丈夫だ障子。俺は言霊について勉強して十全な知識をつけようと考えているだけだから」
「犯人が凡そ特定されたぞ。幾野、貴様また
「鋭いねシャーロック=トコヤミ」
相澤先生の件は俺の中で何ていうか……微妙な感じになっててぇ……。
俺の責任割合が大きいから責任感じてるのが5割。見た目で死ぬほどからかいたいという悪戯心が5割。心が二つある~!
でも相澤先生も気にするなって言ってくれたしな……つまり先生的には俺が余り責任感じすぎず俺らしくいてほしいって思ってくれてるんだよな……(希望的観測)
よっしゃ! 切り替えよ! 明日から茶化したろ!!
反省は十分にしたしな! 次は油断しねぇ!
「よし! 積もる話もあるが一先ずは夕飯にしよう!! 6人ともお腹が空いているだろう!」
「食後にはデザートと、ラベンダーのハーブティーを準備しておりますわ。心が安らぎますの」
「助かる。昼は食ったけどまぁ疲れたのか腹は減ってるんよ」
「お腹と背中がそろそろくっつくわオイラ」
「ご飯食べてお腹いっぱいになって寝りゃ大体の事はなんとかなる! 食おうぜ!!」
しばらくロビーで話した後、みんなで夕食を取り、俺達は久しぶりに落ち着いた雰囲気で食事をとった。
明日からまた授業があるのでみんなも夜更かしせずに早くに寝た。
まぁ俺は透ちゃんと日が変わるくらいまでいちゃいちゃしてたが。めっちゃ捗ったが。
透ちゃんのおっぱいに顔を埋めてると大体の悩みはなんとかなる。大天使の癒し最の高。
────完璧ではなかったけれど。
俺たちは取りこぼさなくて済んだ。手遅れになる事は無くて、命を失わずに済んだのだ。
この経験をさらに糧にして、前に進もう。
【side 相澤】
「ブワァーーーーーーーーーーッハハハハハハ!!! イレイザーお前ェェ!! こんなに小さくなっちまってダハハハーーーーーーッハハハハハハ!!!」
八斎會の事件について遅くまで打合せし、深夜に職員寮に帰り、そして翌朝の職員室の朝礼前。
縮んだ俺の姿にさっきからマイクの爆笑が止まらず、俺は顔をしかめていた。
「喧しいぞマイク……中身は変わっていないんだ。気にすることでもないだろ」
「んなわけあるかダハハハ!! ヒゲもスッキリしてお肌ツヤツヤになっちまってよォ!! アハハハッハハー!! ヒィーーーー!! 腹いてぇぇぇ!! ペイン死するゥーーーっ!!」
「とっとと慣れろ」
全くコイツは……本当に気を遣ってきやがる。
俺が若返ったことを気にしていないと伝えて、それを確認してから大笑いをしはじめた。
自分が笑うことで、周りにも気を遣わせまいというコイツなりの気配りだろう。そういうヤツだと俺は知っている。
昔から……学生時代からそういう配慮ができる奴だった。
……いかんな。体が若返ったからか、どうにもあの頃を不意に思い出す。
マイク……山田と、俺と、■■がいたころを。
あの頃の俺よりも経験は積んでいるが、体はそれよりも随分と戻ってしまった。
あの頃の俺に追いつくのが当面の目標か。
「にしてもホントに若返ったわねえ、
「……
「ん? ……ふふ、ごめんねイレイザー。あの頃の貴方たちを思い出しちゃってね」
「すぐに元通りですよ、どうせ。鍛え直しますから」
「あら、それだって若さはあるじゃない? 羨ましくないって言ったらウソになるわね!」
「あの子の個性はこんなことに使うもんじゃないです。いずれコントロールできるようになったら、この学園の第二のリカバリーガールになってもらうんですから」
「あはは、それはいいわね! リカバリーガールも後継者候補ができて喜ぶわ! ……ところでイレイザー、気付いてる?」
「なんです?」
「貴方こそ、
「……っ!? ……失礼。体に引っ張られてたようだ。これまで通り頼む、ミッドナイト」
「……~~~っ! イレイザー、ねぇ……今夜ちょっと大人のデートしない……♥?」
「塚内警部呼ぶぞ」
続けて声をかけて来たミッドナイトと話していたが……やはり若返ると精神も引っ張られる部分があるのか、かつて彼女の後輩だった頃の口調に戻っていた。
向こうはそれで喜んだようだが心まであの頃の未熟な俺に戻るつもりはない。俺はA組の担任なのだから、大人であり続ける必要がある。
そして口調を戻せば今度は向こうの性癖に直撃したのか目が危うくなった。
頼むから犯罪者になってくれるな。
「オホン、では朝礼だね! 相澤くん、話をするといいよ」
「はい、校長」
職員室に集まった教員たちの前に出て、俺は自分の体の事を改めて説明する。
保護した少女の個性の影響で若返ったこと、記憶と伸ばした個性はそのままだが筋力が若い頃に戻ってしまっていること。
鍛え直す必要があるのと、エリちゃんの監督が俺と幾野くらいしか今は安全にできないこともあり……それらに時間を頂くことになるので、授業の割り当ては減らしてもらう事。
みんなにご迷惑をおかけするが、すぐに教職にも戻れるように鍛えるのでお目こぼしいただきたいこと。
「……そんな感じです。プロヒーローとして応援要請が来たら勿論参加しますが、基本的には暫く自粛です。以前の動きを取り戻すために放課後に生徒達と一緒に鍛える。同時に監督も出来るから合理的です」
「事件ノアラマシヲ聞ケバ相当危険ナ状態ダッタトモ聞ク。無事デアッタノハ何ヨリダ」
「最近は特に一年生が真剣に自主トレに励んでますからね。俺だけでは中々監督がしきれなかったところだ。助かりますよ」
「ハッハー!! 相澤が鍛えるってんなら俺も様子見に行ってみっかァ!? 懐かしいモン見れそうだしよォ!!」
「………………」
おおよその教員からは好意的な返事が返ってきた。有難いことこの上ない。
気遣いに応えるためにも、すぐに体を仕上げ直す決意を固めつつも皆の顔を見ていると……何故か13号が震えていた。
どうした。
「……13号、呑み込めないところもあるだろうが……すまん、出来る限り迷惑はかけないようにするし、俺もすぐ復帰できるように」
「話しかけないでください先輩」
「どうした急に」
「先輩が……先輩が悪いんですよ……。大人で……僕より背も大きくて……いつも僕を助けてくれた頼れる先輩が……こんなに小さく可愛くなってるなんて……!!」
「マジでどうした??」
「なんですかそのヒーロースーツ! サイズ変わってないから袖がダダ余りじゃないですか……!! 誘ってるんですか……!?」
「正気に戻れ13号!?」
「僕は今……冷静さを欠こうとしています……!!」
「朝のHRに遅れるので失礼ッ!」
俺は猛ダッシュで職員室を飛び出し、朝のHRの為にA組に向かって駆け出した。
どうにも今朝は同僚の女教師の様子がおかしかった。いきなりで混乱しているんだろう。そうだと信じたい。
もし今後もこれが続くようなら幾野をけしかけて何とかしてもらうしかあるまい。責任とれよ幾野。
さて、そうしていつも通り朝の始業のチャイムと共に教室に入る。
「おはよう──────オイお前ら」
調教した甲斐もあって、全員きっちり始業時間には自席に座っていたのだが……しかし今日は普段と様子が違った。
全員がうつむき気味に顔を伏せて、肩を震わせているのだ。
蛙吹が写真を既に共有していたからな。くそ。予想はできたがこのまま俺の顔を見れないままでは授業が円滑に進まない。不合理の極みだ。
……仕方ない。こうなった原因は全て俺にある。
病室では釘こそ刺したが、今回の件は幾野には一切の責任はない。むしろ俺からしたらエリちゃんと幾野こそが命の恩人なのだ。
いや……幾野なんかはUSJ襲撃に続いて二度目か。他にも林間合宿の時や、神野に向かおうとするバカ共を止めたり、先日の緑谷と爆豪の喧嘩でも……結局のところ、俺もあいつに甘えている。
であれば、ここで俺がすることはコイツらの感情の否定じゃない。
いいさ。俺だってお前らに感化されてるんだ。
付き合ってやる、ヒヨッコ共。
「……ひとつ許可を出してやろう。今日一日だけは、俺の顔を見て笑っていい」
俺のその一言で、全員が顔を上げた。
ヒヨッコ共の顔を見て、俺は若い頃に苦手にしていた笑顔を作る。
今でも似合わんと言われるそれだが、そんな顔を作ってみんなを正面から見て────
「「「だッははははは!!!」」」
クラス全員からの爆笑をその身に受けた。
肩を竦めて苦笑し、甘んじてそれを受けとめる。
これからは教師としてだけではなく、共に鍛える仲間として。
俺もお前らと一緒に歩んでいこう。
「先生!! ミッドナイト先生と13号先生はどんな様子でしたか!? 昨日写真送ったんですけどショータ先生!!」
「幾野は補習二倍だ」
「ナンデ!?」
「清々しいほどに自業自得だろイクノ」
本当にこの馬鹿は。
その後、笑いが一通り落ち着いてから今後は放課後の訓練にも参加することを伝え、俺に負けるなと全員に発破をかけてやった。
これも受難であるならば、いくらでもプルスウルトラしてやるさ。