【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
「「「お世話になります!!」」」
インターン初日。
俺たち6人はチームラーカーズの3人のヒーローと顔を合わせ、みんなであいさつした。
「よろしくね! じゃあ早速だけど、幾野くんと峰田くん以外の子たちはまずこの二人のパトロールに同行ね!」
「書類で個性は確認したが、実際にどれほど動けるかを見たい。パトロールに同行する中で力を見せてもらうぞ。渋谷で事件が起きないと思うな、この町は毎日が事件だらけだ」
「仮免とはいえ、街に出ればお前らはヒーローとして見られる。油断するなよ、我々も厳しくいくぞ」
「「「「はい!」」」」
そして今日の業務の指示が入る。
まず俺ら以外の四人、透ちゃん、瀬呂、上鳴、心操はシンリンカムイとエッジショットのパトロールに同行することになった。
まぁ初対面でまだヒーローたちもみんなの力を把握できていないしな。当然っちゃ当然だ。
緑谷とか他のインターン参加メンバーもまずパトロールへの同行から始まったって言ってたし。受ける側もそういうテンプレあるんだろな。
「頑張れよみんな。俺らでやってきた訓練思い出せばいけるいける。焦らず落ち着いて、でも無理はしないでね」
「オイラ達から見てもみんな動けるメンバーだと思うんで。色々よろしくお願いします、シンリンカムイ、エッジショット」
「ああ。お前ら二人の推薦であればよほどの間違いはないだろう」
「前の事件では世話になったな、イグジスト、グレープジュース。午後のパトロールはお前たちの力も借りるぞ」
「幾野と峰田が既にプロからすっごい評価されてる……!」
「日頃のエロバカ男子っぷりで勘違いするけどこの二人確かに訓練でもいつもトップクラスだもんなー」
「前の事件では二人が一番活躍したって言っても過言ではないわ。アンタたちも負けないように頑張んなさい!」
「おー! やったる!!」
「やれることはとにかくやりますよ。幾野たちに置いてかれたくねぇんで」
八斎會の事件の時に俺と峰田の実力はシンリンカムイもエッジショットも見ている。
シンリンカムイの『ウルシ鎖牢』よりも早く峰田がもぎもぎで拘束したり、エッジショットの『千枚通し』による超音速の移動よりも速く峰田が地下道で跳峰田スクランブルで高速機動したりしてたので、峰田への評価がバカ高くなっていた。
まぁ狭い道だと峰田が最強だからな。二人もそれぞれズルい個性だと思うけど。
いやズルい云々の話するなら俺は人の事欠片も言えないけど。
「ところで俺気付いたことがある」
「どうしたイクノ」
シンリンカムイが瀬呂と心操、エッジショットが透ちゃんと上鳴とパトロールについて打ち合わせをする中で俺は一つ新しい発見をした。
改めて確認するために、俺は二人の名前を呼ぶ。
「透ちゃん」
「ん、なーに? センちゃん」
「マウントレディ」
「ん? 何よ?」
マイ大天使の透ちゃん。そしてマイお姉さんのマウントレディ。
二人がこっちを向く。
そしてその─────
「この二人めっっちゃ声似てる!!」*1
「おん? ……あー、そうな。確かに似てるかも」
「だろ? どう思うね声のプロの心操くん」
「俺が二人の声を真似るなら同じ周波数でイケるな」
「えー? そうかなー? そんなに似てるー?」
「んんー……正直そうでもないって私は思うけど。自分の声って自分では分からないわよね」
「ですよねー?」
「……確かに似ているかもしれん」
「チームアップする時はどっちの声か気をつけねばならんな」
そっくりだってことに気付いた俺の指摘でみんなも改めて聴き比べして、やっぱりめっちゃ似てるという評価だった。
似てるよ。あれもしかしてこの声俺に特効か?
天使の声……エンジェルボイスか。今度二人に左右の耳でASMRとかお願いしてみようかな。
「まぁそれはそれとして。今更だけど心操、お前のヒーロースーツめっちゃかっけぇな」
「仮免取れてから速攻で被服控除申請出したからまだ細部詰めてねぇけどな。でもサンキュ」
「いいセンスだ。忍びの血筋を感じる……お前もまた忍を求める者か」
「ある意味では。俺の個性は前に出るタイプじゃないから出来る限り目立たないようにデザインしたんで」
「あー、だから黒が基調なのか」
「幾野と並ぶと黒白でめっちゃ映えそう」
「それな。んじゃ初インターン記念で並んで自撮りとろっか心操くん♥」
「早く出発しましょうシンリンカムイ」
「うむ」
「なんで」
心操のヒーロースーツ、黒を基調としてメッシュ生地やプロテクターを纏ったそれを褒めた上でチェキお願いしたら何故かシンリンカムイと急いでパトロールに出発してしまった。寂しい。
今更だけど心操のヒーロー名どうなってんやろ。聞き忘れたな。後で聞いたろ。
そしてエッジショットも続いて二人を連れてパトロールに出発。
みんな頑張って来いよー。
「……で。俺らは今日は何やるんですかマウントレディ」
「事務仕事スか? バッチリ書類ブチ殺しますよオイラ達」
「うん、それも後でお願いしたいんだけどね。今日はちょっと特別な仕事になるわ。別室を準備してるからそっちで説明するわね」
そして俺と峰田はマウントレディから本日の業務の指示を仰ぐ。
前の事務所から移転して、チームラーカーズの本部になっているこのビルは結構部屋も借りてるようで、俺たちはマウントレディに促されるままに別室に移動した。
中に入り、そこに待っていたものは。
「……まずパソコン。ウェブカメラにピンマイク」
「椅子が三つ。ブルーバックのカーテン。そしてなんかお洒落なデスクとチェア」
「そう! 貴方たちにはチーム・ラーカーズの紹介動画の収録に付き合ってもらうわ!!」
完全に生主用の配信部屋だった。
ええ。これは予想外。
「出来立てのチームだからねー、有力ヒーローが組んでるとはいえ、もっと世間に名前を売りたいのよ! で、こないだ動画サイトにチャンネル登録してね、登録者を増やすためにここで一発いい感じの紹介動画を撮る! で、それを貴方たちにも手伝ってほしいのよ!」
「なるほど。バズるために俺の美貌が欲しいというわけですね」
「このクソみてぇな自信よ」
「まぁ歯に衣着せずに言うとそのとおりね。インターンにイグジストが来てるって噂になればさらにラーカーズの話題性は上がるわ。そういう所でも力になってもらいたいワケ」
マウントレディがたまーに見せる卑しさ全開の笑顔を浮かべつつ趣旨を説明してくれた。
なるほどね。まぁどんなヒーローも名前を売る、顔を売るというのは必須の仕事だ。
事件解決率や支持率ももちろん大切なんだけど、ファンサしてこそのヒーローである。その辺はオールマイトもそうだし、エンデヴァーも積極的ではないにせよCMとかにも出ている。
まぁそういう話であれば俺に断る理由はなかった。
「で、オイラはどうすればいいんスか。動画編集?」
「え? 峰田くんも普通に動画に出てもらうわよ?」
「オイラも!? なんでぇ!? オイラそこまで顔に自信ないっすよ!?」
「いやお前には愛嬌あるじゃん。ヒーロー殺し事件でニュースの映像にも流れてるし。さらに人気出るチャンスだろ、頑張れよ」
「美少年・美女・コミカルでバランス取れてるじゃない。キレのあるツッコミ期待してるのよ?」
「どうしてオイラこんなに信頼されてるか分からない!!」
峰田が何故か遠慮してるけど椅子もマイクも3つあるし、俺としても全然一緒に動画混ざってもらっていいと思う。名前が売れるのはいいことだろーが。
マウントレディに話を聞けば、この動画は俺とマウントレディがレギュラーになって、時々他のヒーローやインターン生なども混ぜてのトークなどを今後は考えているらしい。
ええね。俺はラーカーズの人気にあやかれるし、ラーカーズは俺の人気にあやかれる。winwinな提案ですな。
「じゃ、私はちょっと化粧整えてくるから……録画準備しといてくれる? 実は私あんまりパソコン詳しくないのよ。できるでしょ?」
「雑な信頼を感じる。まぁ出来るんすけど」
「前にエロ本修復動画作った時に一通り映像編集技術学んだしな。準備しときますよ」
「ものっっっすごく聞いてみたいワードちらつかせるのやめなさい??」
そして動画を撮る準備を始める。
最初の動画は取り敢えずチームラーカーズの紹介動画ということで、チームの三人のヒーローの紹介をするらしい。ほへー。
台本みたいなのも渡されて、俺達がそれに目を通している間にマウントレディはお顔の化粧を整えてくるとのことで一旦部屋を出ていった。
小じわ隠すのも大変ですね(嘲笑)。
「……ふむ。流れは理解」
「速読は基本スキル」
俺らは渡された台本をざーっと読み終えた。一分もかかっていない。
そして内容を見て俺らの感想。
「つまんね!!」
「欠片も遊びがねぇわ。バズる要素どこ……? ここ……?」
つまんね! この台本つまんね!!
こんなの動画にしてもどうやってもバズんねぇわ! つまらん!! この台本を作ったのは誰だぁ!!
だが俺達に課された課題はこのチャンネル、ひいてはチームラーカーズをバズらせることだ。
チームラーカーズの一員として、このチームを世間に知らしめて更なる人気を獲得するのが俺たちに求められている役割。
となれば……プルスウルトラするしかねぇよなぁ!!!
「……ウォールハックで確認ヨシ。化粧の工程からしてマウントレディが戻ってくるまであと15分くらい」
「チャンネルアカウントログイン済ヨシ。生放送できるわ。10分後に配信開始でいいか?」
「かまわん、やれ」
「了の解」
「Zwitterのラーカーズ公式アカウントはどうだ?」
「パスワード自動保存してたんでこっちもログインヨシ。つぶやけるぜ」
「よし。俺がマウントレディから貰った自撮り画像加工してサムネ作るわ」
「タイトル入れてまず生放送ページ作っとく」
「『マウントレディ』……『まさかの生放送ドッキリ!?』……っと」
「設定で生放送遅延30秒入れといた。緊急停止はクリック一つでいけるから」
「さす峰。よしサムネできた。Zwitterで告知つぶやき……サムネヨシ。生放送アドレスよし」
「とりま配信画面の概要欄に企画説明文入力っと」
「『マウントレディがラーカーズ紹介動画を作成する様子を生放送! ただし生放送していることをマウントレディは知りません!!』」
「『そして今回のゲストは雄英のインターン生! まさかのあの二人! センシティブヒーロー「イグジスト」とマスコットヒーロー「グレープジュース」が参戦!』」
「『生放送と知らないマウントレディの素の姿を大公開!!』……っと。これでヨシ」
「ヨシ」
阿吽の呼吸で準備を進めていく。
パソコンに映る画面はあたかも録画をしているように見せて、俺と峰田のスマホでコメント欄が見れるようにしておいて。
そしてマウントレディが戻ってくる5分前くらいに、生放送が始まった。
「お、始まったな。はろはろー? みんな見てるー?」
「ガチ恋距離スタートかよ」
「生放送待機してくれた人にウインクしちゃお♥」
「罪深い」
『はじまた』
『なんかはじまた』
『なんだなんだ』
『ラーカーズのズイートから』
『ズイートから』
『!?』
『イグジスト!?』
『うわあああああああイグジストだあああああああ!?!?』
『近い!! 近い近い!!』
『これで男ってマジなのかよ!?』
『えっこれ生放送!? マジで!?』
「俺は男でーす……♥安物マイクでごめんなさーい……♥」
「マイク二つ使って疑似ASMRすんのやめろ」
「でへへ。……さて。今日はチームラーカーズのインターンに来てて、紹介動画をマウントレディと一緒に撮ることになったんですがぁ……台本がちょっとインパクト足りなかったのでぇ……ドッキリしちゃいまーす!」
「マウントレディには特に何も伝えてないっス。後で動画編集するって形で収録してマウントレディが素の表情を見せるシーンを皆様にお届けしたいというオイラ達の熱い思いで急遽企画しました。ヤバい発言出たら緊急停止出来るようにちょっと遅延噛ませてます」
「サムネは俺が3分で作ってます。この後マウントレディが部屋に入ってきたら企画スタートです」
「最終的にオイラ達でドッキリ公開するまでが企画なんでそこんとこよろしくっす」
「バズりたいからみんないっぱい呟いてね♥タグは『#ラーカーズ』『#Mレディドッキリ』つけてね♥」
「目指せトレンド一位」
『うわぁぁぁ!!』
『耳が!! 耳が幸せになる!!』
『落ち着け目の前の女は男だ!』
『she is he』
『Nooooooooooooo!!』
『もう男でもいいよね』
『これはひどい企画』
『草』
『自由過ぎて草』
『既に爆笑してる』
『つぶやきまくったわマジで』
『ものすごい勢いで視聴者増えてて草』
『イグジストの初生放送とか見るしかねぇじゃん』
『Zwitterのアカウントも鍵垢で見る専だったもんね』
『ファンサイトのどこ見ても本人への連絡手段無いですって書かれてたもんな』
『パンツ何色?』
『ラーカーズ噂には聞いてたけどどんな感じなのか知らないから生放送助かる』
『早速NGコメ出てきたな』
「あ、当然だけどNGフィルター強で設定してるんでセンシティブなコメントはNGでーす♥」
「コイツの存在が一番センシティブ」
「やかましいぞグレープジュース。……っと、そろそろマウントレディが化粧終えて来るな」
「ん。コメントはマウントレディが見えないようにしてるけどオイラ達は確認できるんでみんな自由にコメントしてな」
「俺達もこっからあまり反応できなくなるんでよろしくでーす。……さて」
ギィ……バタン。
「ごめんね、待たせたわ」
「そこまででもないっすよ。メイクで小じわ消せました?」
「若さを武器にしないでくれる!? 小じわなんてないわよ!?」
「イグジストの顔が良すぎて全方位ミサイルになってんじゃん……あ、マウントレディ。オイラの方で機材設営しといたんで。もう録画モードになってますよ。あとで編集するんで早速収録始めましょ」
「あら助かるわ峰田くん。それじゃ始めましょうか。台本は読んでくれた?」
「ええ。全部読みました」
「いい台本でしたね! 分かりやすくて!」
「でしょー! 昨日頑張って考えたのよー!」
『マウントレディ入ってきた』
『むっ!』
『キタコレ』
『キタコレ』
『小さいマウントレディ新鮮だななんか』
『ファッションショーとかでも見る姿やろがい!』
『気さくな雰囲気いい……』
『マウントレディ普段は猫被ってるって噂がホントなのか?』
『イグジストの茶化しが無敵すぎんか?』
『顔がいい(確信)』
『あの顔でその茶化しはずる過ぎでしょ』
『マウントレディが机に座った途端にイグジストが見えない位置でフリップ書いて出すの面白過ぎる』
『「あの台本で自信あるのはアカン」』
『草』
『くっそ草』
『自信満々なマウントレディで草』
『これは……マウントレディがかわいそうで可愛い枠じゃな?』
『OK完璧に理解した』
「さっ! じゃあやっていきますか! えー……こほん! 皆さま初めまして! ご存じの方はこんにちは! チームラーカーズの紅一点、マウントレディです! この動画は、チーム・ラーカーズを世間の皆様に更に知ってもらうため」
「カット」
「声作り続けるのキツイっす」
「クソ失礼ね貴方たち!?」
「いやでも真剣な話、女声作る俺だからわかるんスけどずっとその声キープは大変ですって。普通の声だって綺麗なんだからそれで行きましょうよ」
「完全に同意」
「えー? そこまで言うならしょうがないわねー! えー、じゃあ改めて……皆さま初めまして! ご存じの方はこんにちは! チームラーカーズの紅一点、マウントレディです! この動画は、チーム・ラーカーズを世間の皆様に更に知ってもらうための紹介動画となります! 第一回である今回は私、マウントレディと!」
「インターンでお邪魔しています♥雄英高校一年生、立てばイケメン、座れば淑女、歩く姿はセンシティブ。センシティブヒーロー『イグジスト』です♥」
「人に声作るなって言っておいて幾野くんはさぁ!?」
「同じく雄英高校一年生、みんなのマスコットを目指す癒し系ヒーロー『グレープジュース』です」
「この流れのまま進めるの!?」
「まぁ後で編集できますから」
「細かい所気にしてると収録に時間かかり過ぎますし。一度とりま通しで撮っちまいましょうよ」
「えぇ……いやでも確かに、アンタたち毎日インターンに来れるわけじゃないもんね……了解。じゃ次のページ行くわよ!」
「台本ガン見じゃないスか」
「覚えてきましょうよこんくらい」
「アンタたちあの時間で覚えたの!?」
『草』
『これは大草原』
『開幕からひっでぇ流れで草』
『完全にマウントレディがおもちゃで草』
『本性……表しましたねぇ!』
『前から噂になってたマウントレディの素の姿がここまでおっぴろげられると草しか生えないんよ』
『【朗報】視聴者1万人突破【チャンネル登録者数爆増】』
『【悲報】トレンド一位が【イグジスト】』
『ラーカーズの話題をかっさらっていくイグジストで草』
『ら、ラーカーズも2位になってるから……(震え声)』
『マウントレディにとって想定外のバズりで草しか生えない』
『イグジストが強すぎる……』
『グレープジュースが常に平常心でこっちも草生える』
『有能アピールイイゾ~コレ』
『マウントレディが振り回されてて草』
『完全に悪戯好きな次女と末っ子に振り回されるお姉ちゃんじゃん』
『顔はいいからな二人とも……』
『こーれ伝説になりますわ』