【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!   作:そとみち

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84 アァーイ……キャーン……フラァーーイッ!!

 

 

 マウントレディと共に俺と峰田は渋谷の街並みをパトロールしていた。

 

「キタコレ」

「キタコレ」

「今日もキタコレ族は元気だな。ファンサのウインクあげちゃう♥」

「平日でもカメラ構えてるけどあの人たち普段どんな仕事してるか気になるなオイラ」

「そこは触れてはいけないところよ」

 

 まぁさっきの生放送の影響もあってファンからの視線が痛いのなんの。

 元々職場体験の頃に俺らで回ってたしな。マウントレディと俺ら二人でずっこけトリオみたいに思われてる節があります。

 たまにサインとか書いたりしつつ街中を歩いていると……しかしそこで、俺ら全員がつけてるインカムに緊急コールが入った。

 何かしらの緊急の要件の時だけに入るコール音。

 俺たちは一気に気を引き締める。

 

「──こちらマウントレディ。どうしたのシンリンカムイ」

『大きなヤマだ。渋谷駅前の銀行本店で銀行強盗発生。複数人のヴィランを確認した』

「っ。現状は!」

『銀行ロビーにいた客や銀行員が人質にとられている。エッジショットにも連絡済みだ。そちらも現場に急行してくれ』

「了解! 位置情報を俺のスマホにお願いします!」

 

 事件発生。複数人のヴィランによる駅前の巨大ビルにある銀行への強盗事件。

 俺はダイブセンサーをバイザーモードで起動し、スマホと連動して画面を表示して現場確認。ここからは1キロくらい離れているか。

 一刻の猶予もないだろう。ここまで大きなビルを狙うということは相当に用意周到な襲撃のはず。

 急いで現場に向かう必要があるな。

 

「跳峰田装備するぜ!」

「ここからだと巨大化して急ぐにも道が狭いわ! イグジスト!」

「分かってます! マウントレディ、失礼っ!」

 

 俺はマウントレディの腰のあたりに腕を廻し、片腕で彼女の体を持ち上げて、お姫様抱っこのように抱え込んだ。

 マウントレディからも俺の首に腕を回して落ちないように体を密着させてくれる。

 周りから黄色い歓声が上がるが今は無視。キタコレ族が撮影した画像を後でファンサイトで見るんだな。

 しかし……ふむ。

 マジで54kgだったか。

 このおっぱいで54kgは誇っていいと思います。

 

 さて、悠長にふざけてなんていられない。俺はもう片手、自由に動かせるほうのダイブワイヤーを起動。

 同時に、『無視』の個性をフル活用する。

 まずマウントレディの重さを無視。負担がほぼゼロに。

 同時にマウントレディを少しだけ自分の体に潜り込ませて離れないように。

 さらに空気抵抗も無視。これでダイブワイヤーの加速度が増す。

 超高速の空中機動が出来る準備を整えた。

 

「保須市の時はこれはできなかったわね。頼んだわよイグジスト!」

「抱えながらですから地中や壁は無視できないけど……渋谷は高い建物いっぱいあってワイヤーアクションやりやすくていいっすね!」

「おっしゃ行くぜェェェ!!」

 

 俺はマウントレディを抱えたまま、ダイブワイヤーで渋谷の街並みをワイヤーアクションで飛び回った。

 その下を峰田が跳峰田でついてくる。

 現着まで30秒もかからないだろう。事件解決の為に俺たちは極力急いで現場に向かった。

 

 


 

 

 現場に到着した。

 ビルから少し離れた死角にシンリンカムイと瀬呂と心操が待機しており、その横にマウントレディ抱えたまま飛び降りてすとんと着水。同時に峰田も現着する。

 

「お待たせしました! マウントレディは大丈夫でしたか?」

「スリル半分、爽快感半分ね。で、状況は?」

「あまりよくはないな……応援が来るまで突入は控えていたが、ヴィランが何人いるかが読めん。姿を見せるなよ」

「まだケガ人は出てねぇようだけどどうにも力自慢の個性っぽいやつらがロビーに4~5人いやがる!」

「ビルの中や野次馬の中にも仲間がいるかもな。警察も来てるが……人質の無事を確保するのが最優先か」

「となればまずは俺の出番っすね。()()()よ」

「頼んだ、イグジスト」

 

 ダイブセンサーをヘッドギアモードに切り替えてビルの中やその周辺を確認する。

 …………ふむ。

 まず人質が集まるロビーに5人。力自慢が集まってる感じかな。

 で、周りの野次馬に紛れて、インカムをつけて明らかに小声でやり取りしてる監視役が二人。俺らはビルの傍に隠れてるからまだ見つかってないっぽい。よかった現場前で集まらなくて。

 そのほか、ビルの2Fに二人。スタンバイしてたのか、ビルの屋上にも双眼鏡で周囲を観察しているのが二人。

 他には……近くにはいないか。今いるヴィランは計11人か。

 

 それぞれの個性はまだ未知数だが……こんな徒党を組むような奴らだ。圧倒的な攻撃力や防御力を持つ個性はいなさそうだ。

 一応ボスっぽいデカいのがロビーにいるけど、せいぜいこないだの八斎會事件の活瓶*1くらいの体格って所か。

 銃の携帯もなし。銀行員に銃を構えているのが何人かいるが、スキャンすれば実弾の入ってないただのモデルガンだ。

 速攻決めりゃなんとかなるか。

 

『……配置はこんな感じすね。ただ個性使われると人質がケガする可能性があります。やるなら一瞬での捕縛、若しくは気絶か行動不能……個性使い慣れてる相手だろうから気絶がベスト』

 

 ここまで俺が調べた時点でエッジショットと透ちゃん、上鳴も合流したので、俺は個性で距離を無視してみんなの耳にだけ聞こえるように話していた。

 無いとは思うけど、集音のアイテムとか個性とか持ってる奴がいたら厄介だからな。俺の声を周りに聞かせることもない。

 

「ならば俺とシンソーがロビーにいる5人を担当する。フォローは俺がする、行けるかシンソー」

「3人までなら()()で行けます。残り二人はお願いします、エッジショット」

 

 そして口元をマスクとペルソナコードで隠してるエッジショットと心操が小声で話し、ロビーヘの突入班に名乗りを上げる。

 心操は返事さえ引き出せればこういう場では必殺だ。エッジショットは音速で己の体を薄く引き伸ばし、相手の体内に侵入して弄って気絶させることも出来る。攻めるという点ならば全く問題ないだろう。

 

「俺とインビジブルガールは同行してビル内のヴィランを叩きます。インビジブルガールだけは俺が触ってりゃ敵の攻撃無視できる。透明化で不意打ちも出来るし。グレープジュースとセロファンは野次馬の中にいるヴィランの仲間を捕縛。そいつらの顔と位置は今俺の背中に映してるんで覚えて。シンリンカムイは周囲への被害を抑えてもらって」

「……いや覚えたけど背中見せつけてくんのやめろ」

「罪深い」

「フォローは任された。お前らインターン生の力を見せてみろ」

「マウントレディはチャージズマと一緒に後詰め警戒お願いします。何かあったら頼ります」

「了解よ。悪くない力配分だと思うわ」

「パトロールでちっと充電使っちまったからなー俺」

「ん、マジか。じゃあ……」

 

 その後軽く突入の打合せをして……俺達チーム・ラーカーズは事件解決の為に状況を開始した。

 

 


 

 

【side ヴィラン】

 

 

 銀行強盗を目論んだヴィランたち。

 この日の為に犯行計画を練りに練り、朝から現場近くにスタンバイして、そして銀行が昼休憩を終えて人質となる客が入ってきた時間に計画を実行に移し、無事成功した。

 今は銀行員に金をバッグに詰めさせている。これが終われば2階に配置した仲間がビル内に仕掛けた爆薬で爆発を起こし、それで集まっている野次馬や警察をパニックに陥らせたところでロビーの部隊が脱出。

 金は屋上にスタンバイしている仲間が運搬系の個性と飛行系の個性の持ち主で、二人は空から金を持って脱出。

 後は顔を隠して県境を越えてから裏でルートを廻して海外に逃走。金はロンダリングする筋も準備してある。勿論、突入班は全員マスクを装備しているから顔もバレていない。

 

 問題ないはずだった。休日の渋谷は人が多い分、人質を取るのも逃げるのも容易い。群衆に紛れればいいのだから。

 だからこそこの日を選んだ。渋谷にはヒーローが多いが、それゆえ縄張り争いも激しく、かつ大きなヤマになれば木っ端のヒーローは出張ってこない。

 大物が来る前に逃げ切れれば作戦は成功だ。

 そもそもヴィラン仲間がこれほど集まっている時点でいくらでもカバーしあえる。それぞれが己の力に自信はあったし、そこら辺のヒーローであれば勝負になると自負していた。

 

「オラァ!! 早くカネ詰めろってんだよ!!」

「は、はい! 急いで!!」

「チッ、もたつきやがって……!!」

 

 ロビーを占拠してからもうすぐ5分という所か。

 警察も呼ばれたようだが、あれくらいならボスヴィランのパワーで何とでもなる。

 見張りのほうから先ほどヒーローが集結し始めていると報告があったが、しかし未だに突入してこないとなれば手をこまねいている様だ。応援を待っているのだろう。

 ちんたらはしていられない。早急にカネを持って逃げる必要がある。場合によっては人質もろとも爆発すると脅したうえで動くべきか。

 

「脱出の準備しとけよ。おう、外のやつらから連絡はねぇか」

「今聞いてみます! ──おう、サツとヒーローに動きはねぇか。……おい?」

「どうした」

「返事がねぇ……」

「……なんだと?」

「なんだ。何かあったのか!?」

 

 仲間に外の状況を確認させてみると、しかし、そこでなぜか外のやじ馬に混ざってる奴らから返事が来なかった。

 そしてそれと同時に、ロビーの入り口付近から響く叫び声。

 

「やべぇぞ!! 噂の変態ヒーローのイグジストが来てやがる!! 一人やられたぞクソ!!」

 

 先程インカムで返事がなかった仲間の声だ。

 慌てて飛び込んできたのか声が震えている。

 そして言葉の内容が、余りにも衝撃的であった。

 思わず()()をしてしまう。

 

「マジかよ!? あの無敵のっ────」

「なんで今日に限っているんだよ!? そんなっ────」

「ちくしょう、どうしてっ────」

「……オイお前ら?」

 

 その叫びに反応して声を上げたヴィランの3人が……急にふらりと、全身の力が抜けたかのようにモデルガンを落とした。

 ボスヴィランはその光景を見て思わずぽかんとしてしまう。

 その一瞬が隙だった。

 

「────忍法『千枚通し』」

 

 声の主である……シンソーと共に突入してきたエッジショットが己が個性を万全に活用し、体を瞬時に引き延ばして意識を失わなかったヴィラン二人の体を貫通。

 そこから体内に忍び込み、内臓を弄り激痛を齎して気絶させた。

 

「……っふぅ。やっぱ幾野の話題は無敵の会話デッキだな」

「声帯模写も見事なものだ。やるなシンソー」

「ども。でもまだ気ィ抜けねぇっす。……ヴィランは制圧しましたがまだ仲間がいるかもしれません! 落ち着いて、そのまま待機願います!」

「我々はチームラーカーズ。どうか今しばらく耐え忍んで頂きたい。すぐに事態は終息するだろう」

 

 洗脳、気絶したヴィランを捕縛布や『紙肢』の個性で束縛しつつ、残りの味方がヴィランを捕えるのを待った。

 

 

 そして、ここは銀行のビルの2F。

 北側と南側にそれぞれ離れて、爆発の準備を進めているヴィランがいた。

 爆薬は設置し終えて、後はいつでもスイッチを押せば爆発が出来る状態だ。下からの合図一つで爆発できる。

 後は一階にいる仲間たちと合流するだけなのだが……その合図が来ない。

 

「……おい、どうした? 合図はまだか? ……おい?」

 

 不審に思った一人がインカムに手を当てるが、返事がない。

 どうしたのかと首を傾げた、次の瞬間。

 

「ガッ…………!?」

──『無音暗殺ネックストーン』。お前はもう死んでいる……なんちて!」

 

 首の後ろにトン、と透明の手刀が突き刺さり、意識を飛ばされた。

 インビジブルガールによる奇襲だ。

 彼女は友人である拳藤一佳より意識を落とす手刀の打ち方を学んでおり、職場体験先のガンヘッドの元で学んだガンヘッド・マーシャル・アーツも加味し、近接戦闘における奇襲術を身に着けていた。

 イグジストと共に2Fに潜行して突入したのち、2人のヴィランの距離が離れているから各個撃破の指示を受け、それを見事に果たしたというわけだ。

 

「ん、流石透ちゃん。お見事」

「センちゃん! やったった!」

 

 そんな彼女のもとに、ダイブワイヤーで簀巻きにしたヴィランを引きずって彼氏がやって来た。

 こちらは一瞬のうちにダイブワイヤーによる電流で意識を飛ばしたのだろう。この男にとっては朝飯前と言ったところか。

 

「爆弾はタイマー式じゃないの確認してるから、一先ずはヴィランの全員束縛が先だな。行こう」

「ん!」

 

 イグジストが体内に潜り込ませて持っていたもぎもぎをいくつか取り出してヴィランたちを床に接着し、身動きを取れなくしてからインビジブルガールがその体にそっと抱き着いた。

 そうして二人とも全てを無視する個性を共に張りながら、屋上に向けてダイブワイヤーを投擲したのだった。

 

 


 

 

【side 上鳴】

 

『すんません! 一人空飛んで逃げた! 西南西の方角です!』

 

 突入組を見送って1分ほどしたころ。

 俺と峰田、瀬呂、マウントレディが外にいたヴィランの仲間を束縛したところで、幾野から個性による連絡が入ってきた。

 おお。わりとびっくり。

 あいつでもミスることあるんだな……なんて、気楽に構えてもいられない。今は事件の真っ最中。

 そのミスをカバーしてこそチームアップってもんだ。

 こうなった時のケースは先ほど打ち合わせてある。

 

「チャージズマ!!」

「分かってます! お願いしますよマウントレディ!!」

 

 こうなった時には、俺とマウントレディの出番になる。

 俺はヒーローコスに装備した新アイテム……ポインターシューター()()()()、もう一つの装備を取り出した。

 それは腰に横に提げていた、発目が開発してくれたスケボーのような形状のアイテム。

 これを使って空中を飛んで逃げるヴィランを捕まえる。

 

「セロファンとグレープジュースは俺に続け! チャージズマが堕としたら我々で束縛だ!」

「了解っす!」

「逃がさないぜェェ! 隙があればオイラも地上からもぎもぎ投げつけてやるっ!!」

 

 飛んで逃げたヴィランを見つけ、すぐさまその方向へ飛び出していく3人。

 そして俺たちはどうするかというと……まず、マウントレディが巨大化する。

 スケボーを脚に装着した俺を、その大きな手で持ち上げて。

 

「爆豪くん投げた時を思い出すわ」

「え。……ああ、神野の時すか」

「あの子の時よりも手加減はするから、落ちないで───ねっ!!」

 

 俺をヴィランに向かって、()()()()()

 純粋な巨大な力による遠投だ。初速がとんでもなく、見る見るうちにヴィランとの距離を詰めていく。

 

「っなぁ!? バカが、ガキが落ちて死ぬだけだ!! ヒーローが人殺しするなんて物騒な世の中だなァ!!」

 

 だがそんな俺の姿を捉えたヴィランは当然にして軌道を修正。俺に捕まらないように逃げようとする。

 まぁそりゃ当然。これが仮免試験前の俺だったら、このままなすすべもなく地面に叩きつけられてベリージャムになるんだけどさ。

 まさかそんなことも考えずにただ投げられたとでも思ってんの?

 

「へっ……キメてやるぜ! いっくぜェ!! 『ライトニングボード』ッ!!」

 

 脚に固定したスケボーの様なアイテムに電力を注ぎ込む。

 これは発目に作ってもらった俺の機動力を補うサポートアイテムだ。

 某名探偵漫画を読み、電気の力で走るスケボーなんてあったら面白いんじゃね!? という発想で開発を頼んだところ、なんとあの天才ボインちゃんは()()()()までつけてきやがった。

 びっくりしたよなマジで! 聞いたらI・アイランドで見たビークルを参考にしたとか言ってたけど、それだけで空飛べるボードって開発できるもんなんだな!

 消費電力が激しくて、ウェイ一歩手前になると自動で地面まで降りる安全機能もついてるけど、今は大丈夫だ。

 

 なにせ、この作戦を開始する前に幾野のワイヤーから()()()()受けてるからな。

 電力満タン。そうっとう速度出せるぜ今の俺!!

 

「……んなァ!? 飛べんのかよそのスケボー!?」

「逃がさねぇよ!! 空中なら電気ブチかましても周囲の被害は考えなくっていいからなァ!!」

 

 俺は空に電撃の軌跡を描き、イナズマのような軌道でボードを操りながらヴィランに接近。

 空中戦闘になれば向こうに分があるかもしれないが、そうならないように遠距離攻撃手段も備えている。

 シューターからポインターを放ち、ヴィランにくっつけてロックオン。

 終わりだぜ。

 

「ターゲットエレクト─────シュートッッ!!

「ガババババッッ!?」

 

 指向性のある電撃を叩き込み、ヴィランを撃墜する。

 煙を上げながら気絶したヴィランが墜ちていく。その先、地面にぶつかる前に……信頼できるヒーローたちが。

 シンリンカムイが一番乗りで落下地点に入り、ヴィランが落ちる前にウルシ鎖牢でキャッチ&プリズン。無事捕えられた。

 

「フ……いい機動力だ。トリを飾ったな、チャージズマ」

「何言ってんスか。チームアップの成果でしょ?」

「違いない」

 

 ニッとシンリンカムイに笑いかけると、向こうもフッと笑みを返してくれた。

 これでヴィランは全員捕縛。一歩遅れて到着した瀬呂が悔しそうな顔をしていたのがウケた。

 俺も電力は残したままで、ライトニングボードでゆっくりと地上に降りて。

 そしてそんな俺らを、市民からの歓声が迎えてくれたのだった。

 

 


 

 

「まさか屋上にいるやつが速攻で逃げを打つとは思わなかったっすね。カネも持たねぇで味方見捨てて逃げるなんてなぁ……ミスったな、くそ」

「いや、イグジストとインビジブルガールだけに2Fの制圧と屋上の制圧を一任してしまった所は我々も反省点だ。お前は何でも出来るという過信があった。潜入や奇襲ではこの上ない力を発揮するが瞬発力という意味ではイグジストよりもグレープジュースやセロファンのほうが上か」

「つってもオイラだと2Fまで行く手段が外から回ってガラス叩き割るくらいしかですし物理的な力はないっすからね。空飛ぶ個性はやっぱ逃げられると面倒スね」

「後詰めまで準備していたからこそとも言えよう。万が一爆薬の爆発ボタンを押されていたとしても、電波妨害をイグジストのダイブセンサーとチャージズマのジャミングでカバーしていた。決して大きな失敗はなく、人質や民衆、建物には一切の被害を出さなかった。それぞれがいい働きだったぞ」

「グレープジュースとセロファンも周りに一切被害を出さずに外のヴィランを捕縛したのは偉いわ。個性を上手く使えてるわね」

「一番目立たなかったのがマウントレディ説」

「んなこたないわよー!!」

 

 俺たちは事件解決後、警察にヴィランの引き渡しと爆弾解体の仕事を引き継いで、解決インタビューを受けてから事務所に撤収した。

 午前中のバズり生放送の成果もあり、まぁインタビューが盛り上がってインターン生の俺達も随分とコメントを求められた。

 インタビュー慣れしてないみんなをフォローするようにちゃんとカメラに映るポジションで性癖破壊ジャブのスマイルを見せてあげた俺優しいね♥

 

 でもって事件の報告書をみんなで作成しつつ、反省会。

 最後、俺と透ちゃんが屋上に向かう際中にインカムの返事がなくてヤバイと思った空飛ぶヴィランが逃げ出しちまったことが俺の反省点だ。

 相手がインカムで連携していることはウォールハックで見た時点で分かっていたのだから、そこも考慮して襲撃の順番を考えればよかった。先に屋上をやるべきだったな。

 この辺はやっぱ経験の差だなぁ。俺らを信頼してフォローに回ってくれたシンリンカムイとエッジショットに申し訳ないぜ。

 

「幾野……ワリ、この欄どんなこと書けばいいんだ……? 俺書類書いてるだけでウェイっちまいそうだ……!」

「そこは箇条書きで所感書けばいいよ。なにがあったか分かれば一先ずOK。ってかマジでヒーローになったらこういう書類ずっと付きまとうからな、今のうちに覚えとけよ?」

「学校じゃ二年から学ぶことだもんなー。オイラの部屋にこういう書類関係のハウツー本あるから今度読むか?」

「あ、それ俺も読みたいわ。職場体験でどんだけお客様だったか身に染みてるぜ今……」

「私も読みたいー! 実際やってみないと分からない事ばっかり……!」

「それ関係の本って学校の図書室にもあるか? 俺も借りて読んどく。普通科のみんなは流石に持ってないだろうし」

「……今年の雄英の一年生は向上心の塊なのか?」

「あ、それ私が職場体験の時に幾野くんに言ったセリフ」

「新しい世代は既に育っている、か……オールマイトが言う通りのようだ。俺達も負けてられんな」

 

 そしてその後、午後いっぱいは応援要請を受ける以外は書類仕事などもさせてもらって、みんなが四苦八苦するのを助けてやったりして。

 夕飯は初の事件解決とバズりのお祝いで飯を奢ってもらって、濃密なインターンは無事に終わってみんなで学園に帰ったのだった。

 

 

「それにしても幾野は常に変装しなきゃならねーから大変だな」

「それな」

 

 なお俺は痴漢対策&顔隠しの為に制服なのにずっと変装してた。

 有名税が俺だけ高くない?

*1
正門でパンチで出てきたデカいやつ。マウントレディに踏みつぶされてた

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