【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
服飾や演出の美しさの組み合わせ次第で『芸術』と呼び賞賛するらしいな……。
だが芸術という概念は絶対的多数の中にしか自分を見い出せない者のたわ言だ……。
己に自信を持つ者はそんな戯言に惑わされることはない……。
この俺が────そうであるようにな!
「楽しい演舞のやり取りの後に立っているのは『性別』という地獄を搔い潜ってきた真の『鬼』のこの俺だ」
「大丈夫か幾野くん。とうとう狂ってしまったのか」
「フィールオーライ」
脳内でミスコンに参加したときの演技を想像してキマってた俺を委員長が呼び止めてくれた。助かる。
しかし文化祭か。
ミリオ兄さんから聞いたことがある……文化祭は他の科が主役のお祭りであると。
それぞれのクラスが出し物をやったりしてストレス発散などをすると。
相澤先生の説明でも大体そんな感じだった。特に今年は寮制などを始めとしてヒーロー科主体の動きにストレスを感じている者も少なからずいるため、自粛とするわけにもいかず、例年と異なりごく一部の関係者を除いて学内だけでの文化祭になるそうだ。
ふむ。ヒーロー科が主役というわけじゃないということだ。
それはそれでとてもいいと思う。他の科にいる生徒だってみんなが一人の高校生なんだもんな。
俺らヒーロー科だけを優遇し続けるってのは学校としても健全じゃない。
隣にいてやりたいという俺としては全然OK。なんなら他の科の支援に回ったって構わないくらいだ。
だがミスコンには参加させてもらう……!!(鬼)
「決まりとして一クラス一つ出し物をせにゃならん。今日はそれを決めてもらう」
だいぶサイズがぶかぶかになった寝袋にぬくもり、部屋の隅で横になるショータ先生。
これミッドナイト先生か13号先生が見つけたら事案になりそうだな。寝顔普通にショタ味ある。キケンです。
「ここからはA組委員長飯田天哉が進行をつとめさせていただきます! スムーズにまとめられるよう頑張ります!!」
さてそうして教壇に飯田委員長と八百万副委員長が上がり、文化祭の出し物を決める流れとなった。
「まず候補を挙げていこう! 希望のあるものは挙手を!」
委員長のその言葉でクラスのみんなが勢いよくハイハイハイ!! と手を上げ始めた。
相変らずクラスのみんなのやる気はすげーや。まとめるのも大変だな。よかった俺委員長じゃなくて。
「よし、ではまず上鳴くん!」
「メイド喫茶にしようぜ!」
「メイド……奉仕か! 悪くない!!」
この意見に悪くないと言える委員長はすげぇよ。
俺がメイド服になるんだぞ??
絶対客足止まらなくなるわ。しかしインパクトがまだ足りないな。
「フン! ぬるいわ上鳴!!」
「では峰田くん!」
そして勢いよく峰田がそれに続いた。
「───オッパブ!!!」
そこには梅雨ちゃんに吊るされる峰田の姿が。
「重りになるものあるかしら……」
「バケツ使うか?」
教室に常備されてるロープとズダ袋に包まれて逆さづりにされる峰田。ウケる。
まったく上鳴も峰田もまだまだ甘いな。
メイド喫茶など過去の歴史から使い古されたネタだ。新鮮味のかけらもない。
峰田のオッパブは透ちゃんが提供側に回るとしたら俺が泣くしそもそもクラスの女子のおっぱいを他科の奴らに味あわせるはずがない。
愚かなやつらめ。斬新で、露出もあり、かつ奉仕もする……そんな案ならばいいのだろう!!
「まだ甘いな。じゃあ俺が」
「む! 幾野くん!」
「───逆バニー喫茶!!!」
そこには透ちゃんに吊るされる俺の姿が。
「みんなを巻き込むのは違うよねー? そういうのは二人きりの時にやろうねセンちゃん?」
「咎人が二人……」
「お前ら仲いいなアホな方向で」
どうして……どうして俺も吊るされてるんですか?
俺は女子たちの魅力を最大限に生かす露出と俺の趣味を両立させようとしただけなのに……。
絶対斬新だから客が来るし女子に紛れる俺を見せて脳破壊が捗るのに……!!
「では次、麗日くん!」
「おもち屋さん」
「温かいな! 次、切島くん!」
「腕相撲大会!」
「熱いな! では葉隠くん!」
「ビックリハウス!」
「わからんが面白いんだろうなきっと! では次──」
その後クラスのみんなからそれぞれ意見を出し合って、それを八百万ちゃんが板書にまとめていった。
「何気にオイラ達の案もちゃんと板書に残しておいてくれてるの優しいな」
「それな」
何故か上下逆さまになった視界で電子黒板を眺めつつ峰田と愚痴をこぼしてたところ、漸く意見が出そろったらしい。
「ふむ……一通りみんなからの提案は出そろったかな」
「不適切、実現不可、よくわからないものは消去させていただきますわ」
「あっ」
「無慈悲」
「は?」
「オゥ」
「ハナから聞くんじゃねーや」
そして八百万ちゃんの手で無慈悲に消される俺と峰田の案。どうして。
逆バニーダメかなぁ……絶対似合うと思うんだけどなぁ。うちのクラス巨乳多いし。
それに逆バニーは貧乳でも映える衣装なのだ。だから俺も耳郎ちゃんも映えるし。
どう思う耳郎ちゃん? と口には出さない理性がまだ俺にもあった。
その後飯田の案である郷土史研究発表も地味だという総意で削除。
八百万ちゃんの勉強会もいつもやってるという意見で削除。
その後わいのわいのと相談したが……まぁみんな自分の意見中心でガンガン押していくので話がまとまらん。
うちのクラスのいい所でもあるけどまとめられないと大変だよね。
「静かに! 静かにィ!!」
「まとまりませんですわね……」
委員長と副委員長もお困りの様子だ。
時間ももう間もなく。うーん、これは大変かもな。
「……イクノさん。先ほどから意見を出されていませんが、何かご意見はございませんか?」
「ん」
したら八百万ちゃんから話を振られる。逆さ吊りのままだけど、確かに俺は黙ってみんなの意見を聞いてるだけだった。
まぁ俺なりにどうすっかなと考えてはいたんだけど。
そして何故かみんなが俺に話を振られたらスンッと静かになって俺の方を向いてくる。
なんでや。お前ら俺に期待しすぎだよ。大した事言えねぇぞ。
「……あくまで俺なりの意見ね。さっき相澤先生が、文化祭ではヒーロー科が主役じゃなくて他科が主役だって言ってたじゃん。ヒーロー科の色んなそれでストレスたまってるところに、俺らだけが楽しむ様な何かってなるのはよくないなーとは考えてた」
「む……確かに、大いに一理ある」
「となると、わたくしたちの出し物を見て……もしくは参加して楽しめるものがよいのでしょうか?」
「とは思うね。周りを虐げる……とまではいわないけど、いつまでもヒーロー科が主役面して負担掛けてりゃ周りも気持ちよくないよな。だからその視点で改めて考えてみる時間も必要かなって。……でももう時間ないや」
「……確かに」
「そう言われるとそうだな……俺達が楽しいだけでは彼らに申し訳がない」
「他科へのサービスという面も考えるべき、ということか。しかし確かに時間がない……やむを得ない! 相澤先生!!」
「なんだ」
「大変恐縮ですが明日の朝まで期限を延ばさせていただいて構わないでしょうか!! A組の総意を纏めきれなかったことは慙愧の念に堪えませんが、よりよい出し物を決めるためにも猶予を下さい!!」
「構わないよ。だが明朝までに決まらなかった場合は……公開座学にする。いつまでも決められないのは不合理だからな」
「この委員長、必ずや総意をまとめて出し物を決定いたします!」
寝袋からもそもそと起き上がった相澤先生から、明朝まで猶予を伸ばしてもらう約束を取り付けられた。
うん。俺の意見要らなかったな。余計に時間取っちまった。すまんこ。
けど俺が言った内容自体はそれなりにクラス内でも考えを深めたようで、それぞれがどうやって喜んでもらえるのかを考えるきっかけになったようだ。
「今日は早めに自主練切り上げて寮の共用スペース集まって、改めてみんなで相談しようぜ」
「そうだな。みんなには申し訳ないがその日程でお願いしたい」
全員から納得の返事を受けて、その日のHRは終わりを迎えた。
さてその後、放課後を経て寮のロビー。
各々がソファや椅子に座って、改めて出し物について相談を進めていた。
なお緑谷切島麗日ちゃん梅雨ちゃん常闇は平日のインターンの影響で補講を受けているのだが、俺と峰田は事前に学習範囲の追試で100点叩き出して相澤先生から合理的判断で補講をほぼ免除してもらっている。予習しといてよかった。
轟と爆豪ちゃんは休日だけのインターンなので補講無し。エンデヴァーの息子への配慮感じるところあります。
「先程幾野くんが言ってた通り……他科のストレスを発散する一助となる企画を出すべきだと僕は思う」
「そうですわね……ヒーローを志す者がご迷惑おかけしたままではいけませんもの」
「八百万ちゃんのタートルネックいいよね……」
「いい……」
「イクノさんも峰田さんも真面目に話し合いに参加してくださいませ!!」
「ごめん。……まー俺もあの後考えてたんだけどさ。まず動物園は口田には悪いけど衛生面と管理面で厳しいと思う。どうやって動物集めるんだってところあるしな。個性使うにせよ口田に負担掛け過ぎるし」
「うん、それは僕も思ってた。大丈夫、ボツでいいよ」
「すまんな。あとメイド喫茶が上鳴の案として残ってたけどぶっちゃけ使い古しなネタだし食事面じゃランチラッシュのご飯に慣れてるみんなの舌を満足させるのは厳しいかもだし。微妙かもな飯系は。作るのも大変だしな」
「あー……確かに。A組に飯とか
「あとゴメン透ちゃん。ビックリハウスなんだけど、俺今日心操と話してさ。普通科でアイツのクラスお化け屋敷やるらしいんだよ。あっちはもうそれで決まったらしくてさ。本質は違うけど驚かせる系で被るし、俺らが普通科の出し物に被らせるのはアレだと思う……いやほんと申し訳ないけど」
「そーなんだ!? んー、でも心操くんが頑張ってるなら仕方ないかー! 許したろ!」
「ごめんね。……なんかさっきから否定的な意見ですまん」
「いや、理由と根拠のある内容だからやむを得ないだろう。候補を絞れていけているのはよい事だ」
とりあえず考えてた理由でメイド喫茶、動物園、ビックリハウスは厳しいことでボツとなった。
透ちゃんの意見を否定するのは心苦しいがしゃーない。A組の出し物を決めるわけだから、みんなの納得が得られるものじゃないとな。
俺も部屋からノートPCを持ちだして、動画サイト眺めてなんかいいネタはないか探している。
クソッ普段の検索履歴のせいでコスプレ動画とエロ系ASMR動画ばっかり出てきやがる!
「みんなで踊ると楽しいよー……」
「ダンスか。……良いんじゃねぇか?」
「おおトドロキー!? 超意外な援軍が!!」
そして脚をぱたぱたさせてダンスへの愛を零していた芦戸ちゃんに意外や意外、轟が援護の構えを見せた。
ふむ? 轟からダンス推しの話が出るとは思わなかった。
「ぶっちゃけ俺はそういう盛り上がる系の趣味は全然わからねぇんだが……」
「自覚あるのは偉いけどちょっと悲しいセリフだぞ轟」
「まぁ聞け。そんな俺でも……こないだ教室で芦戸と幾野がダンス見せてただろ。ああいうの見てすげぇなって思ったし、ワクワクした。体動かして歌ってバカ騒ぎするのって誰が見ても楽しめるんじゃねぇか」
「なるほど……いや、確かに」
「んー。こんな動画みてーな感じか」
轟の言葉にはみんな反対意見はなかった。
ダンスや歌ってのは原初のそれだからな。楽しく盛り上がって歌って踊ってりゃ確かに楽しさはすごい。
俺も動画サイトで視聴数順でダンス動画なんて調べてみて一つ盛り上がってる奴を再生。
100年以上前、個性すらなかった時代の伝説のダンサーの動画だ。今でもムーンウォークなどが語り草になっている。ポップの王様とまで呼ばれたダンサーの伝説の映像。
画質こそ荒いが、その楽しさは時代を経た今見ても楽しさが伝わってくる。
「いや幾野、この動画は次元が違うから。神様の動画だからこれ」
「そーなん?」
「この人馬鹿にしたらダンスと音楽やってる人からキリングだよイクノ」
「そうなんか……」
その動画開いたら耳郎ちゃんと芦戸ちゃんに凄い顔で釘を刺された。
でもまぁ、やっぱこういう動画っていつ見たって楽しいもんだ。
いい案じゃねぇか? クラスのみんなでこういうのやるってのもさ。
……しかしこの動画おもしれーな。後でまた見よ。
「あえて言うけど素人芸ほどストレスなもんはねぇぞ!? 俺らそこまで行けるのか!?」
ダンスに方針が向いたことで瀬呂が当然の危惧を述べる。
それはそう。芦戸ちゃんやセンスで頑張れる俺はともかく他のメンバーがどこまで……
「私が教えられるよ!!」
「ツーステップ☆」
と、そこで芦戸ちゃんの指導演技可能のアピールがあり、昼に軽くダンスを教えてもらっていた青山が見事なステップを繰り出していた。
おおマジか。青山のステップ俺が見た時は奇怪な動きだったのに。一日でそこまで行けんのか。
「奇怪な動きだった素人が一日でステップをマスターした! 芦戸の指導は確かだ!!」
「体の動きとか自体は日ごろの訓練で鍛えてるしな! いけるか!?」
「待て素人共!! ダンスとはリズム!! すなわち『音』だ!! パリピは『極上の音』にノるんだ!!」
「音楽といえばぁ…………!!」
徐々にテンションが上がっていくロビー内。
ダンスの懸念が薄れて次の懸念は音。音楽。
最高の音を生み出せる逸材が果たしてA組の中に───いますね。
「え!? 何!?」
耳郎ちゃんがおるやんけ!
いいね! 耳郎ちゃんならいけるのでは!
「耳郎ちゃんの楽器で生演奏!! 行けるよー!」
「ちょっと……待ってよ」
「何でェ!? 耳郎ちゃん演奏を教えるのもすっごく上手だし! 音楽してる時とっても楽しそうだったよ!」
透ちゃんが耳郎ちゃんに迫り、耳郎ちゃんの生演奏で音を作れるやろと推す。
確かにな。あの楽器で満ちた部屋を見れば趣味として相当入れ込んでるのが見える。
なんか透ちゃん前にギター演奏教えてもらいに部屋行ってたって話だしな。俺の彼女がギター演奏できるのはいつの日か。
「……芦戸とかはさ。ちゃんとヒーロー活動に根ざした趣味じゃんね? ウチのは本当ただの趣味だし……正直表立って自慢できるモンじゃないっつーか……」
だがそこで何故か耳郎ちゃんが自分の趣味をコンプレックス刺激されたかのような発言を零した。
なんでや。全然胸張れる趣味やろがい。
「俺の趣味は女装と町の清掃です」
「オイラの趣味はエロ探求と町の清掃です」
「そこの二人は置いといて。耳郎さ……」
こんな俺達でも胸張ってるんだから前向きに行こうぜ! と元気づけようとしたところで上鳴に止められた。
……ん!! イクノセンサー発動!!
ここは俺らは壁になる時間ですね!!!
「そういうことか、昼間のアレは!」
「上鳴……」
「あんなに楽器できるとかめっちゃカッケーじゃん!! 胸張れよ耳郎!!」
「っ────!」
ずんずんと近寄り、イケメン顔(当社比)を近づけて耳郎に向かって真正面から誉め言葉をぶつける上鳴。
墜ちたな(確信)。
あれはメスの顔してますわ耳郎ちゃん。上鳴も天然で落としに行くねぇ。やりよるわ。
よしちょっと俺やらしい雰囲気にしてきます!! と立ち上がろうとしたところでまさかの口田に先制を取られた。
お前……まさかここにきてNTR竿役としてエントリーか!?
「っ耳郎さん! 人を笑顔にできるかも知れない技だよ! 十分ヒーロー活動に根差してると思うよ!」
「むむ……!」
知ってた。
っっっ(←汗の表現)といつもの如く焦り気味の困り気味だけど、そういや口田は期末試験で耳郎ちゃんと組んでたっけ。その時になんかコンプレックスみたいなの聞いてたのかもな。
だが口田……耳郎ちゃんは恐らく上鳴にオトされちまったんだ……恋は先制有利なところあるから……!
「イクノが邪な目で耳郎を見てる」
「センちゃん?」
「違くて」
カップリングを見守る壁になってたら誤解を生んでた。ちゃうねん。
そして困って口を閉じた耳郎ちゃんへのフォローは八百万ちゃんが向かったようで、副委員長として女子を守るために行動してた。えらい。
「お二人の主張もよくわかりますわ。でもこれから先は耳郎さん本人の意志で────」
「いや……ここまで言われてやらないのも……ロックじゃないよね……」
頭の後ろに手を組んで、悩んで、頭わしゃわしゃしてから耳郎ちゃんが角度付けたテレ顔で前向きな意見を零した。
ちょろい。ちょろいよ耳郎ちゃん。何だよその小動物っぽい仕草あざといかよ。かわいい。みんなも一瞬ぽかんとしてんじゃん。
でもまぁ耳郎ちゃんからのOKも出れば話はだいぶまとまった。
ダンス指導は芦戸ちゃん。音楽指導は耳郎ちゃんで。
「じゃあA組の出し物は───生演奏とダンスでパリピ空間の提供だ!!」
ダンス披露に決まったのだった。
「ちなみに俺はミスコンにも参加するからね」
「「「それは知ってる」」」
はい。