【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
ここはミスコンの控室の別室。
俺はもう間もなく始まるミスコンのスタンバイをしていた。
「別室を準備されているのに配慮を感じる」
「まぁ向こうの本控室で着替えしてるからね他の女子。イクノがいたらヤバかろ」
「むしろ運営委員のご厚意に感謝するべきだと思うぜオイラ」
「ミスコンに参加する男子はセンちゃんが初めてだもんね」
そして部屋の中には俺のほかに三人。芦戸ちゃんと峰田と透ちゃんがいた。
この三人は俺がやる出し物のお手伝いをしてくれる。
こんなことをやりたい! と峰田に話したところ、俺にしてはまともな提案に「良いんじゃね?」と言ってくれたのでそれを手伝いOKの返事と捉えて強制参加させ、そのほかに動きのキレのよい二人をバックダンサーにお願いしたところ快諾してくれた。
ありがてぇ限りだ。芦戸ちゃんなんかダンス隊のリーダーもやってくれてたのにその上で俺の練習にも付き合ってくれたのは感謝しかない。
まぁミスコンの演技の時間は一人3分だからそこまで長くやるってわけでもないし、透ちゃんも芦戸ちゃんもダンスセンス抜群だからすぐ覚えてくれた。
さて、俺がミスコンでやろうとしているのはどんなことか。
「うん、センちゃんの衣装似合ってるよ!! クラシカルな雰囲気バッチリ!」
「二人のスーツもバッチリだよ。いいね、やっぱ美少女に男装のスーツは似合うな。後で写真撮ろうね」
「緑谷にクビを宣告した時の衣装をまさかまた使う機会があるとは思ってなかったよね! ヤオモモに作ってもらったやつだけど割と愛着わいてきたわ」
「実際芦戸も葉隠も似合ってるぜ。女子の男装っていいよな……」
まず俺が白のタキシードの様な服に身を包み、そしてバックダンサーを務める透ちゃんと芦戸ちゃんは黒スーツ。それぞれがトレモント・ハットをかぶっている。
男装やんけ!! ってなるけどまぁその通りだ。俺は俺のやりたいことをやることにした。
ミスコンって盛り上げりゃいいんだろ? 知ってる知ってる。
さて、じゃあどうやって盛り上げるのかという所なのだが……まず俺という存在が現在どのように見られているのかを考える必要があった。
雄英高校で一気に俺の名前が売れたのは体育祭。
あの時の俺は可愛さ全振りでチアガールをしており、スカートで戦ったことから、まぁ男なのに可愛いエロを前面に押し出したところがある。
で、その後のステイン事変の動画でも俺はヒーロースーツだった。体のラインを出して偽乳もつけて、ここまでは俺の印象は完全にメス男子としての魅力を押し出してきたと言えるだろう。
逆に言えば、メスな俺の魅力についてはみんな既に見ているからこれ以上重ねても新鮮味がないという事だ。
というわけでここは一転、男性的なカッコよさを見せることでさらに脳を破壊しようと試みたわけである。
はっきり言おう。
俺がミスコンで何をするかというと、ポップダンスだ。
何でその発想に至ったのかというと、答えは単純。
俺たちA組が出し物を決める時に、ふと俺がダンスの動画を多順で動画サイトで調べた時に出た、100年以上前の個性がない時代のダンス動画。これが俺の脳を焼いたからだ。
あの場では出し物決める流れだったのでしっかり視聴しなかったのだが、部屋に戻ってから改めて履歴からダンスの参考になればと動画見たらもうね、あれです。
ドハマりしました。
見て……いいからマイケルジャクソンのダンスの動画見て……。ググれば出てくるから……。
マジでヤバイから。ヤバイ。ヤバイとしか言えない。
ダンスのキレがマジでヤバい。ムーンウォークとかゼロ・グラビティとかもそうなんだけど、まずそもそも足さばきがヤバイ。何だあの摩擦を無視してるとしか思えない動き。
体のキレッキレな動きもヤバいし、見てるだけで「あ、ヤバい」ってなるタイプのヤバさだった。
これで個性使ってないとか嘘でしょ……? 人間ってこんな動きできんの……? ってなって、俺もやりたくなったというわけだ。
ダンスもなんていうか、カッコよさと色気がミックスしたような……アレ見てアガらない人いないと思う。
あとマイケルの歌声がね。すっげぇよくて。
男の声なんだけど高い声も低い声も自在で、あと声色が奇妙に色気があるんだよね。歌うとエロい声になる俺ならこれイケるんじゃね? となり、出し物でやることにしたのだ。
このキングオブポップを知っている耳郎ちゃんと芦戸ちゃんに相談して、歌の雰囲気とかダンスとか指導指摘してもらいながらも形にして、ついでにバックダンサーとして透ちゃん芦戸ちゃんも一緒に踊ってもらうようにして。
で、発目ちゃんにもお願いして曲を流したり演出として煙とかホログラフとか発生させるベイビーを作ってもらって、それは峰田に操作してもらって。
俺は芦戸ちゃんと透ちゃん二人のバックダンサーと共に、ショートバージョンのマイケルダンスで魅せることにした。
そんなわけでA組のダンスから俺は変わらず男装の化粧です。ここにもちょっとネタ仕込んでるけどな。
「幾野くん、次出番です。準備お願いします」
「おー、了解っす。俺の前は拳藤ちゃんだっけ。拳藤ちゃんのドレスも見せてもらったんだよな。パイオツがよかった」
「北半球と肩丸出しが最の高。拳藤は普段あんま露出多くないからああいうの新鮮でよかった」
「相変らず性欲丸出しなーおヌシら」
「センちゃんと峰田くんらしいね!」
今回は俺だけの出し物だから特に緊張とかはないかな。リラックス全開だ。
完全に俺がみんなと楽しむだけだしな。失敗したって怖いもんなんもない。
俺がアピールするのは、楽しそうに踊る俺。
俺の笑顔でみんなを笑顔にしてやるぜ。
「さ、んじゃ楽しんできますか!」
「オー!」
「ワクワクしてきたねぇ!」
「演出はミスらねぇようにするからよ。頑張ってこいな」
俺たちは控室を出て、ミスコンのアピール会場へ向かった。
【side 緑谷】
僕はミスコンの観客席で、A組のみんなや通形先輩、エリちゃん、天喰先輩たちと共にミスコン参加者の演技を観覧していた。
「ケンドーの演武よかったなー!」
「フフン!! 強さと美しさの見事なバランスだったと表現できるだろう!! これは拳藤が一番を取ってしまってもおかしくないんじゃないかなァァ!?!?」
「物間が相変らず発症してるな」
「ゆうえいのふのめん……」
「アハハ! 次に出てくるのも負の面なんだけどね! センのやつ何やってくるか結局教えてくんなかったんだよね!」
「もしとんでもないものを出して来たらエリちゃんの目を閉じてあげましょうね先輩」
僕の隣でエリちゃんを肩車した通形先輩も期待と不安が入り混じったような表情だ。
実を言うと、僕たちA組も幾野くんが何をするのか知らされていない。
時々耳郎さんや芦戸さん、葉隠さんや峰田くんが練習に付き合うと言って共同スペースにある一室を使ってたりしたんだけど……それ以外の人には秘密、と言って教えてくれなかったのだ。
今朝初めて、Aバンドで幾野くんがやってた化粧をそのまま使うってことは知ったんだけど……ううん。不安だ。
また際どい女装なんてしてくるんだろうか。Rが18を超える事だけはないと信じたい。
『さァでは続いての演技は雄英の大問題児! ヒーロー科一年A組幾野くんが雄英史上初の男子としての参戦です!!』
アナウンスが響き、観客席が期待と恐怖でざわ……!と騒めきだした。
ううん……エリちゃんの教育に悪くないレベルにしてね幾野くん……!!
「……お?」
「お。花道から煙出てきた」
「早速演出入れて来たねぇ幾野くん! だが拳藤には及ぶまいよ!」
「峰田が一人でめっちゃコントローラー弄ってるじゃん」
さてそしてアピールタイムが始まれば、ステージに続く花道の脇からシューっと煙が出て、そこを歩く人の姿を隠すように煙幕が生まれた。
飛び出てくるつもりかな幾野くん。ううん、せめて露出がI・アイランドの時のドレスよりは落ち着いてますように……──────!?!?
「んなァァ!?」
「フツーに男装してきた!?」
「いや待て他にも二人いるぞ!?」
「えっ待ってマジでカッコいい!!」
「キャーーーーーーーーーーー!!!」
「ウソでしょ顔が良すぎるわ!?」
「イグジストーーーーー!!!」
えっ。真っ向からかっこいい系でキメてきたよ幾野くん!?
赤い長髪を結い上げるのはAバンドのダンスと同じだけど、白いタキシードが長い脚にこの上なくマッチして、男としてのカッコよさと同時に奇妙な色気すら感じられる。
女装してではなくて男子としてのカッコよさで攻めてきた……!!
駄目だ!! 被害者が増える!! 通形先輩もエリちゃんもぽかんとした顔だ!!
観客の女性陣の半分くらいがすでに意識を飛ばしてしまってるよ幾野くん!?
なんてことをしてくれたんだ幾野くん!?!?
『───Foooooo───!!!』
幾野くんが、男性としての声の響きのままで高音、という器用なシャウトにより観客を沸かしてから曲が流れ始め、それに合わせて幾野くんと後ろの二人がダンスを始めた。
そのダンスがものっっっすごいキレッキレ。
僕はそれに見覚えがあった。A組でダンスを決める時に動画で見てた……かなり古い時代のダンサーのそれだったはず。
でもそのダンスが幾野くんのエロい歌声と、そのダンス自身もキレの中にエロチックな動きが醸し出され、目を引き付けて離さないような魅力が生まれている。
Aバンドでやった、みんなで盛り上がるダンスではない。
ただひたすら、幾野くんが魅せるダンスだ。
素直に────素直にかっこいい!
見てるだけでもワクワクする! なにより、幾野くんが楽しそうに笑いながらダンスをしてるのがいい!
よく見ればバックダンサーの二人は芦戸さんと葉隠さんだ!
二人もスタイルいいしダンスが上手いから幾野くんの白に添える黒のスーツがこの上なく引き立ててる!!
すごい、正面から観客にダンスを魅せにきた……!!
歌声もマイクをつけてないのに響いてる……あ、いやこれ距離を無視して声を届かせてるやつだ!
このエロ歌声でASMRは死人が出るよ幾野くん!?
ワァァァァァーー!!!!
一回目のサビの所で幾野くんが脚をぴったりステージにつけながら、45度ほど体を倒してからぬるっと起き上がるという演出を披露。
きっと個性を使っているんだろうけど、その動きの派手さ、不気味さ、そして幾野くん自身の顔の良さが果てしなく目を引き付ける。
悲鳴のような歓声が上がり、再び幾野くんはまるで滑る様に移動しながら手と腰、脚と全身を使った艶めかしいダンスを披露する。
やばい。かっこいい。これは本当にかっこいい……
……あれこれってミスコンだよね!?
ただかっこよく幾野くんが踊ってるだけじゃない!?
と、僕はそこでようやく気付いた。
確かにダンスはすごい。幾野くんが本当に楽しそうで、見てる観客全員が湧いてるけど……ミスコンとはいったい? うごご。
観客席もサビの盛り上がりを終えて少し間奏に近い音楽になったところで、あれ? これそういやミスコンじゃなかったっけ? ということをようやく思い出したようだ。
僅かなざわめき─────でも、幾野くんはやっぱりそういうところもバッチリ考えてた。
「おん!?」
「潜ったぞ!?」
「体育祭で見たやつだ!!」
最後のサビに入りそうな曲調になったところで、幾野くんが個性を発動してポーズを取ったままストンとステージの下へ潜り落ちていった。
観客が一体なんだ、と思った─────
『───Foooooo───!!!』
幾野くんが、再びステージ上に飛び出してきた。
しかも先ほどまでの純白のタキシードの様相が一切変わっている。
ああ、アレは見覚えがある───I・アイランドで着ていた
ワァァァァァァァァァ!?!?
再三の絶叫が会場を包んだ。
さっきまでかっこいい男性スタイルだったのが一瞬にしてすごくかわいい女の子になって飛び出てくるんだからそりゃ脳も焼かれるよ!!
僕はA組だったから耐えられた。A組じゃなかったら耐えられなかった。
見れば髪も解いて、男装していた化粧も落として素の顔だ。元々顔が良すぎるからあれで十分に女子に見える。
……そうか。ステージに潜った後、幾野くんはきっと個性の『無視』を使って、自分の化粧も髪結いも、上に着ていたタキシードも全部脱ぎ捨てたんだ。
で、タキシードの下に実はドレスを纏ってた。ドレスは生地が薄いからかさばらないし、もしかすると体内に潜り込ませて隠していたのかも。
だからこその一瞬のお色直し。そしてドレスになった幾野くんは、最後のサビでまたしてもエロチックなキレのあるダンスを披露。ドレスでそれやるのはヤバいよ幾野くん!!
それに歌声が……ねぇ!! これエリちゃんに聞かせていいやつかなぁ!?
エリちゃんも純粋にレベルの高いダンスに瞳をキラキラさせてるけど脳を焼かれてないか心配だよ僕!!
キャァァァーーーー!!!!
サビの中で幾野くんが艶めかしさすら醸し出すムーンウォークを繰り出して、観客が再び大絶叫。
太ももまでスリットの入ったドレス姿でやったもんだから際どい!! でも靴もヒールに変わってたからあんなに上手くムーンウォークはできないはずなのに……あ、いや。それこそ摩擦を『無視』してるのか。
もう……色々!! 色々ツッコミどころがあるけどカッコよすぎるしエロすぎるし可愛すぎたから僕はもう何も言えないよ!! はいはい僕の負け!! いつものやつ!!
最後まできっちり、3分というアピールタイムを使い切って踊り終えた幾野くんは、ビシッと最後にファンサービスでAバンドでやったヒーローポーズ、拳を天につき上げる構えをバックダンサーの二人と共に構えて……
ワァァァァァーー!!!!
観客からの割れんばかりの大きな拍手に迎えられ、演技を終了したのだった。
「あー楽しかった……出し切った……!!」
「賢者タイムみてぇなツラ」
「最近見慣れた顔だぁ。捗る」
「ステイ。葉隠ステイよ」
俺はやりたかったこと全部ミスコン会場でやり遂げて、達成感で天を見上げていた。
そしたらなんか天女が空を舞ってた。あ、あれねじれちゃんパイセンか。エロい。エロ天使。
おっぱいがいいですね……うん、妖精みたいだ。でもおっぱいとふとももがエロいですね。
エロさでは負けたかな。でもいいんだ。俺はやりたいことやった。
観客も楽しんでくれたし、透ちゃんも芦戸ちゃんも楽しそうに笑顔を見せてくれていた。うん。これでいいやもう。負けても悔いなし。
「いやぁ……幾野、マジでやってくれたね。アンタと波動先輩には負けた! って感じるよ」
「ワタクシよりも目立つなど許されませんわ!! ですが実際にアナタの演技は中々のものでした!! 噂に違わぬ目立ちぶりでしたわね!!」
「おー。拳藤ちゃんに絢爛崎パイセン。二人ともお疲れっした。ビックリしたっしょ?」
「ミスコンでやることじゃねー! ってほうでね! マジでもー、アンタ我が道進みすぎ」
「あ、みんなお疲れ様! ねぇねぇ私の演技どうだったー? どうだったー? イクノくんもすごかったねぇ!! 男の子になってから女の子になって不思議! 楽しかったね!!」
演技を終えた波動先輩も話の輪に混ざって、お互いにそれぞれの健闘を称えあう。
うん、やっぱこういう出し物ってやる側としてはやり切っただけですごいなんて言うか、一体感生まれるところあるよね。真剣勝負したからこその結束感というか。
ねじれちゃんパイセンも絢爛崎パイセンも決してお互いの事を悪くは言わない、ライバルとして認識してる感じあるし。さわやかな勝負いいよね……。
「結果発表は祭りの最後になるんだって! その時にまた集まろうね! 私が勝つよー勝ってるよー!」
「俺のエロさに墜ちた闇の投票の力で俺が一位になってる説」
「あの歌声とダンスは否定できないわ。ま、分は悪いけどワンチャンくらいはあるでしょ。こんなドレスまで着たんだから」
「オホホホホ!! 連覇を果たすのはこのワタクシですことよ!! 結果発表を楽しみにしていることね皆様方!!」
お互い笑顔で健闘を称える握手を交わして、着替えて。
さて、ようやく俺もフリーな時間となった。
「じゃ、色々回ろうか透ちゃん。待たせてごめんね」
「ぜーんぜん! 私も楽しめたから!! 踊ってるセンちゃんカッコよかったよー!」
「リア充爆発しろよクソがよぉ……!!」
「A組のみんなで色々回るっぽいから峰田もそっちゃ来なっせ! 楽しんだモン勝ちよ!」
俺は透ちゃんと手を繋いで、改めて文化祭を回ることにした。
エリちゃんはミリオ兄さんとデートすることになってるし、A組は割とみんな固まって動くみたいだ。
俺らは完全にカップルなので別行動。まぁどうせそこかしこでA組の奴らと出会いそうだけど。
さて、どこから行くかな。
色々呼ばれてるところもあるからな、順番に回って楽しもう。
イメージはマイケルジャクソンのスムーズ・クリミナル見て決めました。
知らない人はとりあえず一回動画見て。キレがヤバイってなるから。