【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
「それじゃ撮るよ……!」っっっ(←汗の表現)
「いえーい!」
「ぴーす!」
「葉隠の顔を写した貴重な一枚か」
雄英の建物を模した顔ハメ看板で記念写真を撮る俺と透ちゃん。
もちろん透ちゃんは俺が個性を無視させることでバッチリ可愛いお顔が見えるようになっている。
たまたま近くにいた常闇と口田にお願いしてパシャリと写真を撮ってもらってお礼を言いつつスマホを返してもらった。
「二人とも顔がキレイだから撮るこっちがテレちゃったよ……」っっっ(←汗の表現)
「へへ、サンキュ。口田も常闇も撮るか? 俺とのツーショット♥」
「葉隠さんに悪いから」
「謹んで遠慮する」
「テレなくてもいいのにー! 少しくらいなら貸すよー?」
結局写真は撮らずに逃げるように二人とも走り去ってしまった。寂しい。
まぁそんなわけで俺は透ちゃんとのデートを満喫している。
心の底から楽しいよね!! 彼女とのデート最高よ!!
ちなみにエリちゃんのリンゴアメだが、ミスコンの前に緑谷と共に作り終えて寮の冷蔵庫に入れてある。そういうのテキパキやるから俺。体育館の掃除を一瞬で終わらせたぶん自由時間増えてたのが良かった。
「えへへー、次はどこ行くー? 写真撮れたからあとはセンちゃんの行きたい所でいいよ!」
「いいの? それじゃ……そろそろサポート科の発表時間だから発目ちゃんの発表見に行きたい」
「あー、そういえば飯田くんのお兄さんも来てるんだっけ! よっしゃー行こー! 発目ちゃんの一世一代の発表だもんね!」
「うん、そんじゃ行こうか」
透ちゃんと手を繋いで発目ちゃんの発表会を見に行くことにした。
今回の発表の中では様々なサポートアイテムを発目ちゃんが各企業に向けてプレゼンするのだが、その中には飯田のお兄さん……インゲニウムさんが実際にパワードスーツを装着して歩くのも演目に入っているのだ。
事前に飯田を通じてインゲニウムさんにも何度か雄英に足を運んでもらい、俺も発目ちゃんも顔見知りになっている。挨拶に行きたい所だった。
ちょっと透ちゃんに発目ちゃんの事で嫉妬されないかドキドキしてたけどそういう気持ちで行くわけじゃないしな。理解ある彼女……やはり大天使……。
さて発表会場に着いた。
色んなサポートアイテムが展示されている中で、ちょうど発目ちゃんが先日開発してたベイビーをプレゼンしているのを見つけた。
普段つけてるゴーグルも外して、制服で身綺麗にしてるな。ちょっと新鮮だ。
俺が発目ちゃんと会う時は大体タンクトップのいつもの作業着だったり、あとはI・アイランドでの私服だったからな。
体育祭でもジャージだったし、制服姿の発目ちゃんを見たのは何気に仮免試験以来かもしれん。そういや発目ちゃんも仮免取ってるわけだけどヒーロースーツとか開発してんのかな。
「……おや、イグジストじゃないか! さっきのミスコン見てたぞ、盛り上がってたな!!」
「あ、インゲニウムさんお久しぶりです! 見てくれてたんすか、テレますね!」
「幾野くんらしい楽しいダンスだったな。葉隠くんもバックダンサーお疲れ様だ」
「センちゃんと踊るの楽しかったよー! お兄さんのスーツのお披露目はこれから?」
「ああ。このあとさ。最後のトリに持ってこられて恥ずかしいよ」
そして車椅子に座っていた飯田のお兄さん、インゲニウムと、その車椅子を押す飯田を見つけて合流した。
なるほど、これから発表なわけね。良かった間に合って。これだけは評価を見たかったからな。
インゲニウムさんとも雑談を交わしつつ、そうして発目ちゃんから合図が送られて飯田が車椅子を押してプレゼンの場に向かっていった。
「では最後に、私の新たな発明についてプレゼンさせていただきます! 資料の48ページをお開きください!」
「お、ちゃんと資料使ってくれてるな。手伝った甲斐があったぜ」
「この資料作るのセンちゃんが手伝ってたの?」
「うん。俺も発目ちゃんにサポートアイテムの勉強させてもらいながらね。こういう裏方仕事ってヒーロー活動でも必須の技能だし……得るもんあったよ」
「相変らずマメなんだからー。そういうとこだぞ! ……発目ちゃんもそりゃ惚れちゃうよねぇ。やっぱハーレムかな……」
「んん。ゴメン、最後なんて?」
「ひーみつっ」
透ちゃんが急に小声になったもんだから聞き取り切れずに聞き返したが教えてくれなかった。なんや。
まぁいいか。さて、そして共同開発した介護用のパワードスーツだが、とにかく使いやすさと利便性、メンテナンスのしやすさと安価な素材、といったところに重点をおいて改善され、以前の形状とは全く別物になっていた。
以前は飯田のヒーロースーツみたいにホントにロボットの中に乗り込む様なゴツゴツしたものだったが、介護用への改造に伴い軽量化が施され、圧縮素材のコンデニウムなしでもかなりの軽さを誇る。
装着も座ったままで簡単に服の上から装着可能。頭に脳波を読み取るヘッドセットをつけるだけで、筋肉への命令信号を読み取って、さらに実際に筋肉の電気信号を読み取って……深い所は俺もわからん!
とにかく便利さを追求したモノになったという形だ。実際に飯田がお兄さんを車いすに座らせた状態でテキパキと装着していく姿を見て、企業の担当者が感嘆の声を上げていた。
ふふん。発目ちゃんの開発力はすごいだろう。俺も後方理解者面でご満悦である。
「……このように、手間なく装着が可能!! 装着後はヘッドセットのボタンを押すことで、健常者と全く変わらずに立ち上がり、動くことが可能です!! ではインゲニウムさん、お願いします!!」
「うん、それじゃあ……よっと! ……いやぁ、本当にね。下半身不随になった時には健康であることがどれほど幸せな事なのかと噛み締めたけど……再びこうして歩けるようになると喜びもひとしおだね!!」
スーツの装着も終えたインゲニウムさんが発目ちゃんの合図でひょいっと車いすから立ち上がり、その場で歩いたり、しゃがんだり、軽くジャンプなどしてみて……本当に健常者と変わらないような動作を見せる。
これには企業の皆さまも拍手喝采だ。スーツの支援といってもロボットのように歩くのか、とイメージしてた人もいるだろう。だが俺が見ても全く普通の健常な人と変わらない動きが出来ているように見える。
「コスト面で言えばまだ原付バイクくらいの原価ではありますが、今後は更に素材を改良して安価、安全に使えるように考えています! バッテリーはフル充電で24時間の稼働を実現!! もちろん用途によってバッテリー容量は交換できますし、上肢のマヒに対応した形のスーツも既に草案はできています!! 多くのスポンサーについていただければ早速生産ラインに流してもよいでしょうフフフフフ!! このベイビーが四肢麻痺などの重い障害を抱える方への福音になることを願っています!!!」
ちょっと途中で発目ちゃんスマイルが零れたが、おおよそ俺が作った台本通りのセリフを読み上げ、その心意気に再び企業の皆さまから拍手が送られた。
このパワードスーツは売れるだろうなぁ……どう考えても売れる未来しかない。麻痺障害を抱える方への福音になるだろう。
ヒーロー社会になり、残念ながらヴィラン被害による重傷者も珍しくない中で、これほど安価で安全で使い勝手のいい介助スーツが売れないはずがない。
俺も鼻が高いよ……いや俺は試用試験付き合って案を出しただけなんだけどさ。
さてそうしてようやく発表も終わったところで、発目ちゃんが企業の皆さまへの挨拶もそこそこにして俺の方にスタコラサッサと近づいてきた。
大型犬みたいな愛らしさがある。おっぱいは大型なのは確定的に明らかなんだけど。
「イクノさん!! 私の発表見てくれましたか!! 作っていただいた台本とても助かりました!!」
「うん、ばっちり。いい発表だったよ、企業の人もすごい褒めてたし。よかったね発目ちゃん」
「有難うございます!! お手伝い頂いて本当に感謝ですよフフフフフ!!」
「お世話になってるのはこっちもだから。ミスコンの演出アイテムもありがとね、大成功だったよ!」
「おお! それは何よりでした! 後で映像で是非拝見させてもらいます!! カッコよかったでしょうね!」
「自信あるよ。それより発目ちゃん……企業の人がすごい名刺渡したそうにしてるけど。そっちのお相手してあげなくていいの?」
「いいのです!! 何故ならもう限界なので後はお任せしますから!! ではおやすみなさい!!! Zzzzz!!」
「えっ」
そして発目ちゃんは謎の限界宣言をして、急に俺の胸に飛び込んできた。
えっちょっと? 隣に俺彼女いるのにちょっとかなりまずいですわよ? ヘイ発目ちゃん???
俺は咄嗟にいつも開発室に来る時にやってたノリで抱きしめ返してしまうが、流石にこれはあかんって。
隣に透ちゃんもいるし、何より企業の人がこちらを見て…………って。
「……発目ちゃん寝ちゃってる?」
「マジか。……ええ、俺どうすればいいの」
「────あー……悪ィな幾野。発目のやつ、ここ3日くらい完徹しててよォ」
見れば発目ちゃんはぐっすりと目を閉じて深い呼吸をしていた。完全に寝てますわコレ。
そして困った顔をしていたらそこに現れるパワーローダー先生。助けてください。
「発表が終わったら36時間くらい寝ますから、とか言ってたが……ここでガソリン切れちまったか。幾野に抱かれて安心したかな、ケケケ」
「今俺隣に彼女いるんすよパワーローダー先生……!!」
「ふっふっふ、私は懐の深い女なので全然気にしないのです。発目ちゃんも頑張ってたしこんくらいは許したろ!」
「大天使……!!」
「すまねェな、別室にソファあるんでそこに横にしといてやってくれ。企業の相手は俺がしとくよ」
透ちゃんからお許しのお言葉を頂けて俺はひっそりため息をついた。
いや……違うんすよ。確かに俺は発目ちゃんのおっぱいも性格も好きだし発明への熱意も敬意しかないんだけどそういう関係じゃないんすよ……!!
発目ちゃんも純粋に俺の事を便利な個性持ちで助かってるって意味の信頼だと思うし。そういう恋とかにうつつを抜かすくらいならベイビー開発してそうだし。
とりあえず透ちゃんに誤解されなくてよかった。嫌われたら俺泣いちゃう。
「……よし、と」
俺はそのまま発目ちゃんをお姫様抱っこで抱えて別室のソファに寝かせておいてあげた。
おやすみ発目ちゃん。お疲れ様。
「……天哉、イグジストはあの見た目で意外とプレイボーイなのか?」
「幾野くんは余りにも人を惹きつけすぎるんだよ兄さん。まったく、葉隠くんの苦労が偲ばれるというものだ」
「ちょっと否定できなくてつらい。ごめんね透ちゃん……浮気じゃないんよ……!」
「私はセンちゃんがセンちゃんらしくしてるのが一番好きー! だから全然オッケーです!!」
「大天使……!!」
透ちゃんマジで大天使……すき……いつも自由にさせてもらって本当にありがてぇの極みです……!!
大切にしようホントに。こんな自由にさせてくれる彼女いないよ。世界で一番大切な女性といっても過言ではない。愛してます。すき。
「さ、んじゃ発目ちゃんの発表も見終わったから次にいこっか透ちゃん」
「オー!」
「僕は兄さんと一緒に色んな所を見て回るつもりだ。幾野くんたちも楽しんできたまえ! ただし節度は保ってな!」
「ハハハ! こんな問題児がクラスにいるんじゃ委員長も大変だな天哉! うん、イグジストもまたな! 良ければまたウチに遊びに来てくれ!」
「うっす! インゲニウムさんも楽しんでくださいね!」
俺たちは飯田兄弟とも別れて、再びデートに戻った。
「来てしまった……」
「ホントに大丈夫センちゃん? 怖いなら無理しなくてもいいよー?」
「いや……心操に煽られた手前、挑まないわけにはいかん……!!」
そして次にやってきたのは心操のいる普通科C組の出し物、心霊迷宮だ。
彼女連れてこいよなと心操に誘われた手前、挑まないわけにはいくまいよ。
でもすでにもう教室の外観が怖いんよ。ヤバ怖い。脚が震えています。
ぎゅーっと透ちゃんの腕を掴んでしまう俺のビビり癖よ。ホラー苦手なんだよなぁ……。
「……あれ、イクノと葉隠じゃねーか」
「あら、ホントだわ。センちゃんと透ちゃんも迷宮に挑戦するのかしら」
「あ、峰田と梅雨ちゃん……うん、心操に誘われてたから……」
「おー……ほぅほぅ」
さて挑むかと挑戦者列に並んだところで、すぐ後ろに峰田と梅雨ちゃんが並んできた。
二人も挑むのか……やるな峰田。梅雨ちゃんを誘ってビビるふりして合法的に梅雨ちゃんのケロっぱいを味わおうという算段か。
でもお前の身長だと胸まで手が届かないのでは? 狙いは腰か。
「イクノお前ホラー苦手なんだから無理しねぇほうがいいんじゃねぇか?」
「俺が恐怖で気絶したら透ちゃんが運んでくれるから……きっと……」
「男子としてその心構えはどーなん」
俺は峰田と話すことで少しでも恐怖を和らげようと試みる。
もうすでに怖いもん俺。迷宮の中から先駆者のキャーって叫び声が聞こえるたびにビビってるんだわ。
でも透ちゃんが手を掴んでるから怖くねぇし……!! ビビりじゃないし……!!
「やるじゃん梅雨ちゃん! 誘えたんだ?」
「ケロ……折角お祭りだから、ね。勇気出してみたわ」
「いいねぇ~。ふふー、楽しんでねェ!」
なんか女子たちで小声でなんか話してる。最近本当に俺に聞こえない様に小声で女子が話すこと多くない?
俺の悪口とか言われて……ないよね? いやそんな事みんなが言うはずないか。
駄目だ今俺ビビってる。このままではネガティブな方に思考が向いてしまう!
「次のペアどうぞー……あら、幾野。へぇ……心操が誘ったって言ってたけどホントに来たんだ。ビビリなのに」
「びびびビビりじゃねーし!!」
「声震えてるじゃんウケる。葉隠もよくこんなのと付き合ってられんねぇ」
「自慢の彼氏よ」
「強い。……ま、楽しんでってよ。二名様ごあんなーい!!」
受付にいた金髪ロングのC組女子、ごめん名前ド忘れしたけど彼女からも煽られてしまった。
おのれ心操……許せねぇよなァ!! 見てろよ俺はやるぞ俺はやるぞお前!!
そしてご案内され、とうとう俺は透ちゃんの腕にしがみつきながら心霊迷宮に足を踏み入れることになったのだった。
【side 梅雨】
私達ペアの前の組、センちゃんと透ちゃんのペアが迷宮に入って3分ほどが経過したわ。
\にゃあぁぁぁぁぁーーーーー!!!/
「今ので15回目の悲鳴だわ」
「ウケる」
さっきからセンちゃんの悲鳴が迷宮の中から鳴りやまないの。
峰田ちゃんも瀬呂ちゃんも言ってたけど、本当にホラーが苦手なのねセンちゃん。
まぁ、彼の過去の事は以前に聞いている。お母さんを個性事故で殺めてしまった哀しい過去を。
その時の血の色は覚えていると言っていたから……その影響でスプラッタやホラーが苦手になった、というのは分かる所ね。
峰田ちゃんもそこで煽るようなことは一言も言わなかった。優しいわ。
でもセンちゃんなら、ウォールハックを使えば驚くこともないでしょうに。そういうところが本当に律儀ね。
「……あ、終わったかな。それじゃ次のペア二名様ごあんなーい!」
受付の人が出口でスタンバイしている人とインカムで話して、どうやら無事にセンちゃん達は突破できたみたい。
次は私達の番だ。峰田ちゃんと二人きりだから、少しだけとくんと胸が高鳴ってしまう。
本音を言えば、手を繋ぎたい。
けれど私の手は女子と比較しても個性の影響で大きい。形も歪で、しっとりと濡れてしまっている。
異形であることに負い目などはなかったけれど、そこに恋というスパイスが混ざるとここまで気になるものだなんて知らなかったの。
こんな手を峰田ちゃんが掴んでくれるかしら……なんて、少しネガティブな思考に陥りかけた瞬間に。
「梅雨ちゃん、手ェ繋ごう! お化け屋敷に男女ペアで入る時は手ェ繋ぐのがマナーだぜ!!」
「……ケロ」
こんな言葉をかけてくるのだから……本当にセンちゃんの親友ね、峰田ちゃんは。
見下ろせば、その目にはいわゆる性欲が多分に宿っており、私のひそかなコンプレックスなんて思いもよらないのだろうけど。
でも、その一言が私にとっては何よりも嬉しかった。
「……個性の影響でしっとりしてるわよ、私の手」
「むしろご褒美ッ!! しっとりした女子の手からしか得られない栄養素があるっ!!」
「変態」
自信満々に返してきた峰田ちゃんに、私は苦笑を零して手を差し伸べる。
大きな私の手に、それよりも大きな峰田ちゃんの手が重ねられた。
……峰田ちゃんも私よりも身長が低いのに手は大きい。これが個性の影響なのかは詳しくは聞いてないけれど……その大きな手が、私にはとてもカッコよく見えた。
盲目ね。
「怖くなったらいくらでも抱き着いていいからな梅雨ちゃん! 行くぞォ!!」
「抱き着いてくるのは峰田ちゃんの方だと思うわ」
そうして私達は心霊迷宮に足を踏み入れた。
中は……すごく雰囲気が出ているわ。セメントス先生が手伝ってくれたのかしら、ちゃんと壁は土塗の和風になっていて木組みもはめ込まれていて。
所々にお札が貼ってあって、蜘蛛の巣なんかも。薄暗い雰囲気で……成程、これはセンちゃんもビビるわけだわ。
どこから驚かしに来るのかしら。いいタイミングだったら、私から峰田ちゃんに抱き着いてしまおうかしら……などと、桃色の思考も持ち合わせながらも迷宮を歩いていく。
しかし。
「……あら?」
「おん?」
第一村人を発見。
明らかに驚かし役のアクターだろう。顔には青白く化粧をして、頭にはろうそくを刺した仮装をして、ぼろぼろの衣服を着て……しかし、その人は、なんていうか。
普通に突っ立っていた。
その傍に隠れる様なスペースがあるから、そこに隠れて驚かす役割だと思うのだけれど……どうしたのかしら?
「……その? 平気かしら?」
「おーう、大丈夫かー?」
「────────っハ。……あ、すまねぇ!! ちょっと呆然としちまってた……」
思わず私達が声をかければ、フランケンシュタインの様なその生徒が我を取り戻した。
事情を伺う。何かあったのかと。
「……幾野がよぉ」
「ケロ」
「嫌な予感」
「マジで怯えて泣きそうな顔になってるのを見ちまって…………脳が破壊された……!!」
センちゃん。
何を。なにをしてくれているのセンちゃん。
せっかく峰田ちゃんと手を繋いで初めてのお化け屋敷なのに、この瞬間に私たちの逢瀬が喜劇になることが確定したじゃないの。
「ウチのイクノがすまねぇな……後でキツく言っとくからよ……」
「お、おう……いや、驚かせられなくて悪かった……起こしてくれて助かったよ」
「ケロ……大変だったわね」
私も大変なのだけれど。でも、峰田ちゃんがセンちゃんの尻拭いをし始めた手前、私も手伝わなくちゃならないわ。
結局その先に進んでも、同じようにみんな脳が破壊されて茫然自失の姿で棒立ちしていたの。
心霊迷宮はどこ……? ここ……?
センちゃんに脳破壊された被害者友の会になってしまっているわ……?
「あ、心操もやられてる……」
「心操ちゃん……大丈夫? 喋れる?」
「─────ッハ。……あー……峰田と梅雨ちゃんか」
天井からぶら下がる形で脳破壊されていた心操ちゃんを発見。
ううん、とても気合の入った仮装だわ心操ちゃん。体中血まみれの服に、口から血も流して。
でもこれをセンちゃんが見たらそれはもう全力で泣き叫び喚いた事でしょうね。血まみれなんて特効よ。
普段は可愛く、冗談を言う時は嫌らしく、そして真剣なときは凛々しくかっこいいセンちゃんの怯え顔という新たな劇薬を見てしまったんだもの。
脳が壊れてしまってもおかしくないわ。大丈夫かしら。
「……俺の『洗脳』を食らった人ってこんな感じなのかなって。5分くらい意識飛んでたな……」
「とりあえずお前が無事で何よりだよ心操……リカバリーガール呼ばなくて大丈夫か?」
「多分……でも今日の夢に出そうだから後で自分に洗脳かけて記憶を忘れることにする」
「あら、そんなことも出来るようになったのね心操ちゃん」
「個性伸ばししといてよかったよ。……悪ィな、驚かせてやれなくて」
「いいってことよ。いつもイクノが世話になっちまってるしよ、こっちこそスマンだわ」
「4人で今度遊びに行きましょう。騎馬隊チームで」
「ああ、そりゃいいな。誘ってくれ」
ひとまず心操ちゃんの無事を確認して、その後も生徒たちの心理的ケアをしながら私たちは心霊迷宮を抜けたわ。
一つも驚くところなかったわ。
「……センちゃんに文句を言いに行ってもいいと思うの私達」
「それな」
あのプリケツを引っぱたくことを心に誓って、でもつないだ手は離さずに私達はセンちゃんを探しに行ったわ。
驚くことはできなかったけど、これもまたいい想い出になりそうね。