【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!! 作:そとみち
独自設定が火を噴きます。
「チームアップミッションとは────」
オールマイトの説明をA組みんなで聞く。
全国のヒーロー科のある学校と、現役ヒーロー間で行われるチームワークとコミュ力を高めあうことを目的とした制度。
いきなり知らないヒーローと協力して事件に臨むことも多々あり、そういう時にお互いに連携が取れるようにチームで動くことを経験しておこうという計らいらしい。
ってオールマイトが言ってたけど貴方大体の事件を一人で全部解決してたからむしろチームワークって意味じゃ一番アレなのでは? 俺は訝しんだ。
「なおこの制度は本来は来年一月ごろから始まる予定だったのだが……最近チームアップをして一気に知名度も事件解決率も支持率も挙げているチームがあっただろう!! あれを見てヒーロー公安委員会やヒーロー本部からも強い推薦があり、前倒しで始まることになったのさ!」
へー。そんな経緯があったんや。
どこだろーそんな一気に有名になって色んなヒーローやその卵とチームアップしてたチームってどこだろー。
ウチやん。
めっちゃオールマイトが俺の方見てくるやん。かーっ! とうとうヒーロー界隈を動かすほどの男になっちまったか俺はー! 有名人は辛いわーっ!!
とまぁ冗談は置いといて。この制度は俺に取っちゃ渡りに船と言ったところだ。
チームラーカーズで俺がマウントレディ達に感謝しているのが、色んな生徒と組むことでお互いに経験が積めていた点だ。そこからヒーローを紹介することでさらに縁はできるし、即席のチームアップで万全の力を発揮できるようになるってのはどう考えてもいい事だ。
連携が重要だって雄英に入学したころから言ってたもんな。それの経験をプロヒーロー側から推薦して色んなヒーローとチームアップが出来るってんならマジで歓迎よ。
「さて、早速だが既に最初のミッションが決まっている! みんなには指定の日時にプロヒーローの元へ向かってもらうぞ!」
説明が終わり、俺達A組のそれぞれに指定されたチームからの封書が渡される。
ちゃんとTUMって印刷されてるしこういう所マメだよね雄英。
さて俺も自分の物を受け取って中身を読めば……
「……ほぉ?」
A組で面子が固まっている。
緑谷、爆豪ちゃん、麗日ちゃん。と、俺。
そして向かう先のプロヒーローはまだ知らされないらしい。現地で会った所から仲良くなるのもミッションの一部って事かな。
「おいイクノ……お前のチーム女子いる? 交換せん?」
「死にそうな目でどうしたんだい峰田くん。女子はいるけど」
「いやよォ……集合場所のヒーロー事務所にめっちゃ見覚えがあって調べたらよォ……ファットガム事務所だったんだよオイラぁ!! あそこ女性ヒーローいねぇよぉ!!」
「ウケる。いいじゃん天喰先輩とたこ焼き食べてこいよ。前の事件でもお世話になったし俺の分も挨拶しといて」
「組むのも轟だしよォ! くそォォ女子と一緒に行きたかったァァァ!!」
「俺は峰田と組めて嬉しいが。あんまチームアップの縁なかったからなお前と」
「イケメンに言われても腹立つゥ!」
峰田が女っ気のない所に行くことが確定しててうける。いいじゃんファットガム。天喰先輩もいるし。
ってかもうその辺まで行くとお互い能力知ってるからチームアップミッションとしてどうなん? ってなるレベルだ。
「一緒に頑張ろうねデクくん! センくんも爆豪くんも!」
「麗日さんよろしくね! かっちゃんも……」
「何で俺がァ!? デクと!? 幾野もかよクソッ!!」
「なんだい俺じゃ不満かい爆豪ちゃん? あぁそうだよな……俺たちが全部解決しちまうもんな。爆豪ちゃんにチームワークはまだ難しいか」
「ア゛ァ!? ふざけんな立派にチームワークしたるわ!! 連携し殺したるわクソが!!」
「センくん爆豪くんの扱い慣れとんねぇ」
「心強い……!」
俺ら4人での初めてのチームアップミッションが幕を開けた。
さて指定の日時になった。
「よし着いた! 行こう麗日さん! かっちゃん! 幾野くん!」
「なんでテメェが仕切ってる風なんだァデクゥ!?」
「爆豪くんチームワーク! チームワークだよ!」
「なんかいつも俺が仕切ってる気がするんでたまには緑谷に任せてみんとす」
俺たち4人で指定の場所に着く……が、そこは普通のホテルであった。
ホテルを拠点とするヒーローなんていたっけ? わからん。緑谷も心当たりがなさそうだ。
「ここであってるはずなんだけど……誰なんだろう?」
「ザコヒーローじゃなきゃ良いがな」
「エロヒーローなら大歓迎」
「センくんの欲望漏れとる」
ロビーのソファで座って待ってると、少しして俺らとチームを組むヒーローがやってきた。
「───お前らが幾野・緑谷・麗日・爆豪だな!?」
むっ!! 女性の声!!
そして振り返るとそこにはなんと。
「あ、あなたは……!」
「ラビットヒーローミルコ!! 本物だ! すごい!」
「よっしゃァァァ大当たりッッ!!」
「……前回のビルボードでベスト10入りしてたヒーローか。悪くねェな」
これはコロンビアですわ。
見てよアレ。もうドスケベコスチュームだよ既に。鼠径部の食い込みがエロスの塊ッ!!
体に自信があるんだろうなぁ。じゃないとあそこまで際どいスリットは生み出せない。
筋肉質でもあるけど女性らしい丸みも帯びており、これはもう好き……お顔もお綺麗で……おっぱいもでっかくて……!
でも一番ぐっとくるのは髪だなぁ。長髪で普段から動いて靡かせてるのにめっちゃまとまってるの。何のシャンプー使ってるか絶対聞き出そう。
「でもどうしてこんな場所に集合場所を……?」
「ここは仮宿だ。私は事務所を持ってないからな」
「へぇ? ヒーローとしては珍しいっすね……緑谷なんでか分かる?」
「うん! ミルコは管轄を持たず日本中を飛び回る新しい形のヒーローなんだ! サイドキックもいなくて、でもその分活動範囲も広いし顔も売れる! 逆にどこに行けば会えるっていうのもないから中々ヒーロー活動を見ることができないことでも有名なんだけどそんな彼女の活動を近くで見られるなんてすごい貴重だよ!」
「説明ご苦労!」
ほえー。そんな形のヒーローもあるんだな。
おおよそヒーローって事務所構えてそこで働いてるイメージがあったわ。大体これマウントレディのイメージが強いからだな。マウントレディこそこのタイプで働いてればビルをいくつも壊す事なかったのでは? 今更だけど。
「今日は僕らがヒーロー活動の手伝いを────」
「いらん!!」
さてそしてリーダー緑谷が今日の活動の打合せをしようとしたところでいきなりの戦力外通告。
なんでや。自由だなこのおねーさん。プロヒーローだからって俺達学生を舐めてるなコノー!
でもまぁおっぱいもデカいしママみがあるから許したろ!
「公安委員からのお達しでお前らを受け入れただけだ。私は一人で自由にやるのが性に合ってんだ!」
「そんな……!」
「そんな意地悪言われても勝手についていきますからね俺は!! どこのシャンプーとコンディショナー使ってるか教えてもらうまでは帰りませんよ!!」
「『Lady Hair』だ。お前んトコのマウントレディがCMやってるアレ。私にもずっとCMの打診されてて試供品無限に提供されてるから使ってやってる!」
「ヨシ帰るか!!」
「帰っちゃあかんよセンくん!?」
いや……だって聞きたい事聞けちゃったし……。
ってかそうか、距離を無視してミルコの髪の香りを嗅げば確かにマウントレディの髪の香りに近い。そういや透ちゃんもマウントレディに勧められてこのシャンプー使ってるって言ってたっけ。マウントレディももちろん髪は綺麗だし。
……アレ!? 俺もしかしてLady Hair大好きか!? 今度使ってみるかぁ!!
「相変らずバカがよ。……ケッ、パトロールに付いてくくれェはいいんだろミルコ。ここではいサヨナラじゃミッションの意味がねェ」
「おお、付いてくるなら好きにしな! 私の邪魔はするなよ!!」
「はい!! ついていきます!」
「見て覚えます!」
「とりまいつものパトロールって感じでやるか。コスチュームに着替えて来ようぜ」
一先ずミルコもついてくることはOKを出してくれたので俺らはホテルの更衣室借りて急いで着替える。
もしミルコに先にパトロール出発されてもまぁ俺が探せば合流できるのだが……しかし着替えてきてもミルコはロビーで待っててくれてた。
え。普通に待ってくれてるじゃん。やだ……ミルコ優しい……。
口とは裏腹に面倒見いいタイプかこの人? ちょっとめっちゃ好きになっちゃうんですけど!
「私はお前らの面倒までは見ない。自分の身は自分で守れ! 行くぞ!」
「「「はい!!」」」「おォ」
そんなこんなでパトロールが始まった。
「北北西500m地点で異形型ヴィランが騒ぎ起こしてる……ってミルコ速っ!!」
「付いていこう! フルカウルッ!! 麗日さん!」
「うん! よろしくデクくん!!」
「イグジストォ! ヴィランの危険度と市民どもの避難は!?」
「とりまザコっぽい! ちと市民が近くにいすぎるけど……ミルコが間に合うな! 周囲に仲間らしき反応はねぇ、突発的な暴走か!!」
俺がダイブセンサーをバイザーモードで表示させ、そこにヴィランの反応があった瞬間にミルコが飛び出していった。
はっっや。閉所の峰田の跳峰田スクランブルほどではないにせよ、開けた場所でも相当な速さだ。跳んでいく、と表現されるほどの個性『兎』か、あれが。流石超有力ヒーロー。
俺達も急いで追いかける。緑谷はフルカウルで走り、その肩を掴んで自分を無重力で浮かせた状態の麗日ちゃんが引っ張られて行っている。
爆豪ちゃんは爆速ターボでの飛行だがインターン前よりも速度が出るようになった。
轟も言ってたけど、なんか出力をこう、凝縮して? 圧縮して? 放つ、みたいな。それで随分と炎や爆破での加速が変わるらしい。
エンデヴァー事務所でのインターンの成果だな。まだまだ伸びしろがありそうだ。怖い怖い。
俺? 俺はいつも通り空気抵抗無視してのダイブワイヤーよ。巻き取り速度を更に上げたからまだまだ二人には負けねぇよ。
いや、まぁ飛び出しの差で最初にたどり着いたミルコが一撃で終わらせちゃったんだけど。
「私のナワバリで悪いことするからだ!」
「ヴィランをぶっ飛ばした! ミルコー!!」
「すごーい!! ミルコさんカッコいい……!!」
「褐色太もも最高ー!!」
「その声援はどうかと思うよ幾野くん!? でもファンサービスも忘れない……さすが、プロって感じだ!」
「ファンサは俺も欠かさないよ?」
「感動が薄れるから幾野くんは口閉じて!?」
結局俺らの出番はなかったか。
まぁでもヴィランってのは捕まえてからが本番なところあるしな。
チームラーカーズでこの辺どんだけ慣れたかって話よ。さて。
「……周囲スキャン。少なくとも周りに明らかな敵対感情持つ人影なし。警察にはダイブセンサー経由で連絡入れてるんでもうすぐ着きます。デクはヴィランが目覚めても万が一が無いように拘束。これロープな」
「あ、うん」
「ウラビティとバクゴーはミルコのファンがヴィランに近づきすぎないように市民を誘導……って、あ。ウラビティ、アレ」
「ん。っと、風船飛んじゃっとるね! オッケー! 取ってくるー!」
「チッ。周りにヴィランいねェのかよ……ったく」
「……ほぉん?」
俺は腰に掲げてる様々な道具が入ったバッグから拘束用ロープを取り出して緑谷に渡す。ステイン戦でロープ使った経験で、それ以来常に携帯しているのだ。峰田がいれば要らないんだけどな。
で、ヴィランの確保と警察への連携。及び周囲の安全確保。
麗日ちゃんにもお願いする所だったんだけどたまたまそこで子供が風船を手放してしまったものだからそれの確保を求めた。アレだって立派なヒーロー活動よ。
で、周りにヴィランがいないことが分かって爆豪ちゃんも暴走欲を抑えて現場確保に回ってくれた。冷静な判断助かる。
「……あっ」
「っと」
「わっ、すみません! よく見てなくて……!」
しかしそこでヴィランを拘束し終えた緑谷が風船を捕まえる麗日ちゃんを目で追ってたところで、周りをよく見ておらず歩行者とぶつかってしまっていた。
コイツがぶつかる相手……匂うな。
もしかしてそのパーカーの人はヴィランか??
俺も慣れたぞこういうパターン???
「……そのコスチューム、ヒーロー?」
「あっ……僕はまだ学生なんですけど、今は学校の授業の一環としてヒーロー活動してるって感じです!」
「へぇ……じゃあ『個性』が自由に使えて……羨ましいなァ……」
「……あの、なんだか顔色が悪いようで……」
「あまり近づかない方がいいですよ……失礼」
「え……」
……マジで匂うな。俺は咄嗟にバイザーモードでその男をスキャン。
目つきはちょっと悪い……バイタルもよくないな。純粋な体調不良とも違う。個性の影響か……?
でも発言がかなり際どい。爆豪ちゃんも訝し気にその少年を見ていた。
念には念を入れておくか。
俺はその少年に近づいて……ウォールハックと、個性の無視を発動。
後ろポケットに入ってた予備のマスクを一度相手に気付かれないように奪ってから、呼び止める。
「あの、マスク落としましたよ。予備ですか? 風邪ですかね、お大事に」
「っ、どうも……って、君は……イグジスト?」
「あ、分かります? どうも、イグジストです♥ 職場体験中なんですよー」
たまたま落ちたマスクを拾った体にしてそれを手渡しつつ、至近距離でダイブセンサーにこの男のバイタルを登録した。
これで半径3キロ圏内なら生体センサーで捉えられる。
今日一日でもしこの男が何かしようものなら俺が場所を確認できるようにした。
実際こうして間近で話した感じ、やっぱりなんか妙な雰囲気がある。
なにせ緑谷とたまたまぶつかる様なヤツだ。俺緑谷のそういう所信頼してるから。マジで。悪い意味で。
まだお互いにお祓い行けてねぇし。
「あ、警察も来てくれたね」
「一先ず解決かな」
「チッ。つまらねぇヤマだ」
「警察に引き渡したらパトロールを再開するぞ! イグジスト、索敵広げておきな!」
「イェッサ!」
ヴィラン確保後の動きを評価してくれたのか、ミルコから今度は指示が入り、俺は再びダイブセンサーを起動。
周囲を監視しながら、5人でのパトロールに戻ったのだった。
「今日の活動……わたしゃ指導なんかするつもりはない! が一つ言いたい! 爆豪!!」
「あ?」
「お前の爆破の加速……良いぞ! 冷静に現場を見る洞察力もヴィランに対する剥き出しの殺意も良い! 気に入った!!」
「……ども」
一度パトロールを小休止して、ホテルのロビーで一服入れつつミルコから講評を受ける。
……この人割と面倒見いいな??
バッチリ俺らの活躍というか、働きを見てくれてた。ウサギは視野が広いというが、その広い視野で俺らのことを気にかけてくれていたのだ。
なんだよ新たなツンデレかよ。ライバル登場だぞ爆豪ちゃん。
「麗日もナイスだ! 子どもに対して優しくなれない奴はヒーローになれん!」
「ミルコさんに褒められた!」
「幾野は噂通りと言ったところか! お前の力は誰と組んでも便利だ! その分お前がやることが増えるのは覚悟しておけよ!」
「もちのロンです」
「緑谷は何も出来てなかったな!!」
「ひどいや」
まぁ……うん……ぶっちゃけるとこのチーム戦力過剰なんよ。
攻撃タイプならミルコともう一人で十分で、緑谷も含めた3人ってなるとどうしても初速はフルカウル張って飛び出す必要がある緑谷に分が悪い。爆豪ちゃんも初速クソ速いし。
で、索敵は俺、絡め手は麗日ちゃんで間に合ってるからなぁ。こんなところで大勢のヴィランの襲撃なんて考えられないしな。やってるのただのパトロールだし。
まぁチームアップミッション初回だからある程度人数に余裕をもったということなのだろう。次からはもっと少数精鋭になるかもな。
さてその後昼食も取り終えて、俺が粘りに粘ってミルコの連絡先をゲットして今夜は自撮り送ってやるぜー! とテンションを上げていた時だ。
「うわああ!! た……助けてくれぇ!!」
「ッ!!」
悲鳴を聞いて全員が腰を上げた。
その瞬間に俺は先ほど感じた予感が確信に変わり、ダイブセンサーをヘッドギアモードで起動。
周囲を精密にスキャン開始。すると……
「霧が……霧が迫ってきて、吸い込んだら気分が悪く……!」
「霧だと? ……イグジスト!!」
「確認しました。やっぱさっきのヤツだ! 有毒成分……毒ガスを放つ個性か! 情報出します!!」
このホテルから少し離れたところでさっき緑谷とぶつかった男がガスを放出しているのを確認した。
くっそ。やっぱさっき捕まえておくべきだったか……いやでもまだ事件起こしてなかったからな。こういう所ヒーローって難しい。疑ってかかるだけじゃ捕まえられない。
でもすでに事件は起きた。もう時間はかけられない。
「場所は俺が逐一テレパシーで連携する! ガスは俺には効かないんで先に行きます!!」
「おォ! 私らはガスマスク準備したら市民救助しながら追う!! 先に行けイグジスト!! 原因を止めろ!!」
「ヤオモモちゃんおったらなー! 頼むよセンくん!」
「幾野くん! 僕もヒーロースーツがガスマスクの機能持ってる! 一緒に行くよ!」
「クソが!! ミルコ、とっととマスク準備して追うぞォ!!」
毒を無視できる俺と、ヒーロースーツの首周りのパーツに毒素吸収の機構をつけてる緑谷が先行することにした。
ダイブワイヤーを放って一直線に俺はヴィランの元へ。緑谷はフルカウルで走りながらも要所で拡散するようにエアフォースを放って霧を散らしていく。
たいして距離があるわけでもない。一瞬で先ほど登録したバイタルの、毒霧を巻き散らしてるヴィランを目視確認した。
「ヴィラン発見。路地裏を逃げてます。もう追いつける……確保する!」
テレパシーでチームに場所と状況を伝えつつ、一番乗りした俺がそのままヴィランに向けてダイブワイヤーを投擲。
走り方からして鍛えてるといった感じじゃない、あくまで一般人が個性で悪事を働いたって感じだ。ダイブワイヤーが男の背中に直撃……いや、潜行。
体に埋め込んだダイブワイヤーでもう逃がさない。俺はそのまま巻き取って、重さを無視してヴィランを確保した。
「なっ!? んで、これっ……!?」
「やっぱさっきのヤツか。諦めな、俺からは逃げられねぇよ。こんな路地裏に逃げ込んだって無駄だぜ」
いつもの腕を体に潜り込ませる拘束方法でヴィランを確保。
これでもう逃がさない。あとは動機とか聞きながら、みんなが集まるのを待って警察呼んで……って。
コイツこの状態でも個性を放つのを止めねぇのか。
なんだ往生際が悪いな。俺には毒ガス効かないぞ?
「個性を止めろ。被害が広がればその分罪も重くなっちまうぞ」
「っ……できたら、やってる……!!」
「……ワケありか?」
その男の一言で、俺はこのヴィランに何か事情があるものだと察した。
……そういや確かにおかしかったんだよな。なんでコイツ路地裏にいたんだって話で。
マジで市民を巻き込んでガスを撒きたいんだったら大通りで放てばいい。
ヒーローにばれないように移動したかったと言っても余りにも人がいない方向に向かって移動し続けていた。
コイツ、もしかして……。
「よぉしイグジスト!! よく捕まえたァ!!」
「チッ、また先を越されたかよクソが!!」
「幾野くん! その人……ちょっと待って!!」
「待ってるよ、言われなくても。ウラビティは?」
「周囲でガスに巻き込まれた人を介抱してる。昏睡状態の人が何人かいたけど重傷者はいなさそうだった」
チームのみんなも次々と合流する中で、俺も緑谷の言葉で改めて周囲の被害状況をスキャン。
バイタル的に重症の市民はなし。昏睡して救急車で搬送が必要な人は何人かいるが……死者や、重篤な状態にある人はいなさそうだ。
しかしガスの毒性はかなり高いと俺のセンサーは判断している。このガスでこの程度の被害……そして今の緑谷の言葉で零した安堵のため息……。
……なるほどな?
「アンタ、もしかして自分で毒を抑えられなくなったのか?」
「…………その通りだ」
押さえつけてた男の体勢を少し楽にしてやって、俺は確信を得て問いかけた。
その男が言うには、個性が『毒ガス』で、放出しなければどんどん体に毒ガスが蓄積されてしまうのだと。
「この社会は『個性』の使用を禁止してる……僕はただ毒を体にため込むしかなかった……」
「そんな事情が……」
「もう限界だった……!! この個性が身を滅ぼす前に解放するしかなかった……!! ねぇ! 僕はヴィランなのかなぁ……!?」
「青少年個性の悩み相談窓口に相談とかしてみた?」*1
「…………ぇ、え……?」
俺はその男の言う内容に思わずツッコミを入れてしまった。
唐突に出てきた単語に、チームのみんなもぽかんとした顔をしてしまう。
「いや、青少年個性の悩み相談窓口。政府が設置している、個性での身体への害や周囲への害が考えられる場合に無料で相談に乗ってくれる窓口。……もしかして知らない?」
「……知らない……」
「あー……やっぱそうか。
「っ……幾野くん……」
「お? 私も知らねーぞなんだそれ?」
「そういう窓口があるんすよ。で、個性の在り方や使い方について相談に乗ってもらえるところで……俺も行ったことあって。まぁ俺の場合は個性解除に気を付けてってカウンセリングを受けたくらいだけど。このガスの個性ならどっかで放出させたりとかしてもらえると思う。今回みたいに事件を起こしちまったらなおのことかな」
「……そんなところがあったなんて……」
「僕も初耳だ……」
「あれ、意外とみんな知らねぇのな? 俺のまわり知ってる人ばっかだったからみんな知ってるもんだと思ってた。……もっと大々的に知られるべきだなコレ。ラーカーズの動画に広告出すか」
個性の悩み相談窓口。
幼少期に受ける情操教育『個性カウンセリング』とはまた別で、個性が生活に悪影響を及ぼしたり周りに被害が出たりするタイプの個性の相談に乗ってくれるところがあるのだ。
で、そこで相談して個性が危ないとなれば対策も練ってくれる。カウンセリングを受けたりな。俺は父さんに連れられて、そこでカウンセリングを受けていた経験がある。
まぁ正直あの頃の俺は周りが見えてなかったんでカウンセリングが効果出たかと言ったら微妙なんだけど。
でもこの人みたいに、ため込みすぎて暴発する恐れのある個性となればそれを発散させる場を作ったりなどもしてくれるはずだ。今回の件は手遅れになってしまったけれども。
「……イグジスト。今この場で窓口相談なんて出来るはずもねェだろうが。そういう説明は後にしとけや」
「ああ、そうだなバクゴー。悪いな、アンタの境遇には同情するけどここは捕まってもらう。減刑についちゃ俺も意見を……」
「アホが!! もう一歩先まで見ろやボケ!! ……
「っ!」
「コイツに悪気はなかったんだろォが。だったら毒ガス全部出し切らせりゃいい、そうすりゃ清々するだろ。俺らなら出来る」
「……そうか、そうだな! ここにはお前もウラビティもいるんだったわ、行けるか! なぁアンタ、逃げ出すつもりはねぇんだろ?」
「……ああ」
「じゃあ話は早ェ。デク! ウラビティ呼んで来い!!」
「うん、分かった!!」
「……待て。ヴィランの行動に手を貸すつもりか?」
「ミルコ! バクゴーには考えがある……これ以上被害が広がることはないっす。俺らを信じてもらえませんか」
そして俺は爆豪ちゃんからまさかの提案を受ける。
コイツ……俺よりも真っすぐ、フラットな視点でこの男の状況を読んでやがった。
で、俺らで出来ることで今この男の毒ガスをぶっ放す手段も一瞬で思いついたんだ。クソ、悔しい。思いつかなかった俺のアホ。
いや、それこそチームだったからか。今回は爆豪ちゃんに助けられた。解決を焦りすぎてたな。
俺も緑谷も遅れて解決策に考えが至り、緑谷は急ぎ麗日ちゃんを呼んでくる。
俺はミルコを説得して、そうしているうちに麗日ちゃんが現場に駆け付けた。
「話は来る途中に聞いた! いける!」
「うし、やるぞ。まずはコイツを浮かせろウラビティ! 出来るだけ高いとこにだァ!!」
「うん!!」
「イグジストはワイヤー埋めたままにしとけェ! 万が一がありゃコントロール!!」
「了解!!」
「デクは周辺の警戒!! 着地の瞬間よく見とけ!!」
「うん!!」
「いっけぇぇぇーーーーー!!!」
「爆速圧縮ターボォッ!!」
爆豪ちゃんの指示でまず麗日ちゃんが毒ガスの男を無重力にして高く高く飛び上がらせる。
それを爆破の飛行で追いかける爆豪ちゃん。ガスマスクを装着してるので問題なし。
俺は毒ガスの男にワイヤーを通したままで飛び上がる位置をコントロール。これも随分と慣れたもんだ。連携で無重力で飛ぶ人間にワイヤー通したり瀬呂のテープ通したりで凧揚げみたいに調整するの練習したしな。
で、緑谷は万が一の落下の時に受け止める役。俺でもできるけどまぁ……戦力過剰だから……。
さて、随分と高くまで二人とも飛び上がったところで爆豪ちゃんが最後の指示を出す。
「ここまで上がりゃいけんだろ。出し切れ!! てめェの個性全てをよォ!!」
「くっ……あああああああ!!!」
大空に毒ガスを巻き散らす青年。
相当量が溜まっていたようだ。地上に生まれていた霧のそれとは比較にならないほどの黒い靄が広がって、しかし。
KABOOOOOOM!!
その毒ガスは、風を読み広がったガスの流れを読み切った爆豪ちゃんの生んだ大爆発で全て燃焼され、無毒化された。
完璧だ。やっぱ流石だぜ爆豪ちゃん。
「……ケッ。スッキリしたツラになってんじゃねぇか」
「毒が消えてる……全部……! ありがとう、ヒーロー……!!」
無事に着地した爆豪ちゃんと毒ガスを放ち切った青年の笑顔で、事件は解決を迎えた。
俺たちはその後駆けつけた警察にこの事件のあらましと青年の個性の事情についてすべて話して、俺の方から個性の悩み相談窓口を紹介するように言伝した。
起こした事件を無かった事にはできないが、俺も罪を軽くする嘆願署名はしておいた。
後日、この事件をチームラーカーズの動画でニュースとして紹介した。更に世間の意見を集めておくくらいは全然許されるだろう。
あとラブラバに言ってラーカーズのチャンネルの動画に個性の悩み相談窓口の広告が出るようにお願いしておいた。一時間後には出るようになったので仕事が早いわあの人。
こんな感じで、俺達の初めてのチームアップミッションは終わりを迎えた。
「悪ぃね爆豪ちゃん。助けてもらっちゃったな」
「アァ? ……ケッ。今日の晩飯に激辛系入れとけや」
爆豪ちゃんにお礼を言ったら素っ気ない態度で返された。
ンモー。ツンデレなんだから。
……マジでありがとな。助かったぜ。
バサラとガムリンの関係がぁ……好きでぇ……(唐突な自分語り)