機動戦士ガンダムUC バタフライ・エフェクト 作:しゃくなげ
格納庫は、怒号と作業音がやまない場所だ。昔からそう思っていたけれど、今のこれは、いささか過激にすぎるかもしれない。
連邦の艦に、ジオンの将校。格納庫ではジェガンとギラ・ズールが並べられて、連邦のメカニックが主導で整備を続けていく。
僕のギラ・ズールは、フレームのつぎはぎが忙しそうだ。
予備のパーツだって多くないから、辛うじてそれっぽいものさえあれば、まだいい方だろう。クシャトリヤなんて、なくした片脚を補うパーツが義足みたいだ。
とにかく、動けばいい。そういう、その場だけの一時しのぎがとにかく多い。
作業を続ける間にも、クルーたちの空気は険悪なまま。ジオンも連邦も関係なく、互いが互いに敵意を抱いている。
どうやら、僕はこの空気があまり得意ではないようだ。昔はこうして、周りを見ることなんてなかったのに。
ぎすぎすしているというのは、こういう状況だろう。気の休まる場所がどこにもなくて、なんというか、疲れる。
だから人間は、見知った顔を求めるのか。見つけたときに感じたものは、きっと、安堵の類だと思う。
「ここにいたのか」
「ああ、ずっとね」
ふたり並んで、モビルスーツをながめるだけ。修理の進捗を見るわけでも、連邦の人間に警戒をするわけでもない。
なんでもないようなことなのに、新鮮な気持ちになるのはなぜだろう。
ああ、でも、そうか。
あのコロニーで訓練していたとき、プルトゥエルブはグレミーにつけてやっていたな。だからこういう記憶が少ないのか。
特に理由もなく、そんなことを考えている。
「クシャトリヤは、そろそろ限界だな。おまえも、降りることを考えたらどうだい」
返事は、ない。
わかってはいる、僕だって同類だ。
モビルスーツに乗るためだけの存在が、モビルスーツから降りたなら。その先に待っているものなんて、なにもない。
そう考えてしまうから、うなずくことなんてできやしないんだ。
「わかっているだろう、私のことは。憐れむ目で見られるのは、苦痛だよ」
予想通りの答えだ。
降りた先で、あの子のようには生きられない。
そんな諦観さえ言葉の向こうに見える気がして、やるせない。
僕が考えることではないのかもしれないけれど、それでも、どうしたって考えてしまう。
「ああ、おまえの言い分もわかる。これもやっぱり、僕のエゴだ。我が強くて、独善的なのさ。そうでなければ、傲慢と言ってもいい」
思えば昔から、そうだった。
僕は、他人を見下す傾向にあるらしい。自分の考えを、押しつけがちだ。
プルテンには、いろいろなことで怒られたっけ。昔よりは、少しはマシな人間になっているといいなと、素直に思う。
だからこそ、こんなふうにあれこれと無駄なことを考えてしまうのかもしれない。
「うまく言葉が見つからない、なんだろうな、僕の意見はせまい視点で見た物言いでしかないから、もしかすると、悪い方向に進むかもしれない。それでも、そうしてみたいと思ってる。そう言ったら、伝わるかな」
ただ、今はその、無駄なことを考えるのが、楽しい。
楽しいとは違うのかもしれないけれど、好意的、肯定的に感じている。
目の前で移り変わる表情は、いつもより少しだけ、ほんの少しだけやわらかく思える。どこかおどろいたように、目が大きく開いている。
「そんなことを言い出すタイプだとは思わなかった」
「アップデートがあったのさ、いろんな部品のね」
大きなお世話だとは、言わなかった。実際、僕自身が自分の変化にとまどっているし、きちんと追いつけていない。
彼女がおどろくのも、当然といえば当然のことだ。
「とにかく、そうだね。僕は、自分の心に従ってみたくなっている。それはなんだろうかって、考えてさ。結局、行きつくのはひとつだけなんだ」
ギラ・ズールの動作確認は、順調らしい。
思えば、この身体もあのなんとかってシステムも、秘匿するべきだったのかもしれない。連邦のメカニックが騒いでいるそれに、本当なら触れさせるべきではなかったのかもしれない。
いや、フル・フロンタルは僕に用もないのだから、義理立てする必要はないか。
もとより僕は、袖付きの人間じゃあなかった。心のあり方が少しだけ変わったとしても、それはただガランシェール隊の皆が好きだから、一緒に翔んでいただけだ。
だから、義理立てする必要があるのは、きっと。
きっと、ガランシェール隊の皆に対してだけ、だろう。
「今度は見捨てない、絶対に。おまえのためにも、あの子のためにも。それから、キャプテンのためにもさ」
「……マスターは」
「マスターはよせっていつも言われてるだろ、僕も賛成だ。……なあ、聞かせてほしいことがあるんだ。僕はさ、こどもで、あんなふうにはなれないから」
ふしぎそうな表情。怪訝そうな表情。
どちらにも見えて、どちらにも見えない。
やっぱり、僕のことを読めるほど、深くつながってはいないらしい。
だから言葉にしなければならない。そして、それがまた、むずかしい。
「おまえにとって、キャプテンは、いい父親かい」
失礼な聞き方になって、怒らせたりしないだろうか。そんなことを考えるようになっている自分が、僕もまた、ふしぎだ。
「……意味が、わからない」
「わかるだろ。血縁とか肉親とか、そういうのではないけれどさ、きっとおまえの父親なんだと思う。あのひとがそうだといいなって、僕も考えてる。だから知りたい、おまえにとって、キャプテンはいい父親なのかなって」
ガルダで、どんなやりとりがあったのか。そこまで知ることはできなかった。
ただ、直感はある。キャプテンが、どうにかしてくれたんだって直感だ。
それがまちがっていないと、確認を取りたいのだろうか。
自分のことなのに、いつだって、心はわけがわからない。
「……私は、……マスターは、私を……」
うつむいて、手すりをつかまえて、静かな声で。
答えを探しているように、声はまだ少し揺れている。ただ、奥の方に、見落としてしまいそうなほど小さな温度がある。
人工物のそれとはちがう、人間の温度だ。
「……私を、助けてくれる。いつも、いつだって。私が、わからなくなったときも……助けて、くれたから。けど、それは、……父親、なのか、わからない……。ただ、マスターは、とても……とても、あたたかくて」
だから、生命を差し出しても構わないと、そんな決意さえ感じとれる気がする。
信頼がある、安心もある。冷たい宇宙でも呼吸ができそうな、あたたかな温度がある。
そういうものが、キャプテンとの間には確かにある。それを感じた気がして、うれしくなった。
「ああ、よかった、安心した。やっぱり、そうだった。……たぶん、おまえはわかってる。ただ、そうじゃないとか違うとか、そう言われるのが怖いだけさ、きっと」
僕の感性も、捨てたものではないらしい。
それなら、うん、義理立てする必要がある。
きちんと恩返しができる、贖罪ってやつもきっとできる。
「そういうひとがいるなら、おまえも変われる。戦場だけが居場所じゃない。降りたって、居場所はあるさ」
「変わる、か。……おまえも、ずいぶんと変わった」
「そういうひとがいた、手を差し伸べてくれるひとがね。あの子もそうして変わって、今、おまえと話したがってる。たったひとりの妹を心配してるよ、いつだって」
「……私は、……」
「今すぐでなくたっていい。おまえがその気になれるまで、僕が必ず背中を守る」
やりたいことが、少しずつだけど見えてきた。
誰も彼もなんてできるほど、度量があるわけでも器用なわけでもないけれど。だからこそ、届くところには手を伸ばしたい。
せめて、せめてガランシェールの皆が喜んでくれたらいい。
険しい顔のメカニックが、ひそひそ話をしながら通り過ぎていく。
袖付きの兵士がそれとなくあとを追って、曲がり角に消えていく。
互いが互いを監視して、目に見える腹の探りあい。そういう空気に満ち満ちているものだから、きっとこの共同戦線はすぐに壊れてしまうだろう。
僕の心は静かなままで、いつもとまるで変わらない。
砂を噛むような不快感は消えないものの、道はもう見えている。そのときがきたら、きっと、すぐに動けるだろう。
ぐらり、と。
空気がゆがんだように感じたのは、ちょうど、そんなことを考えたときだった。
前へ、前へ。さけぶひとの中をかきわけ、見えないものに向かって走る。
なにが起こっているのか、現状がどうなってしまっているのか、知る術はない。
空気は相変わらず重たくて、ざらついて、とげとげしい。さっきまでは重苦しくても、これほどの敵意には満ちていなかったというのに。
聞けば、味方へ救難信号を出したメカニックがいたらしい。
その結果、ネェル・アーガマは連邦のパトロール艦に見咎められた。袖付きの乗艦なんか明かせるはずもないから、あとはもう撃てだの撃たないだのと意地のぶつけあいだ。
なにがどうなっているのか、正解はどれなのか、判断するような知識は僕にはない。共同戦線が解消されたと聞かされたのだって、六十秒ほど前のことだ。
銃を持った兵士たちが、敵を撃ち殺そうと艦内を走り回っている。そんな騒動の中を、ただ夢中で進むしかできない。
「フラスト、アレク!」
ふと、手招きする見慣れた顔を見付ける。
目立たないようにしているものの、ふたりの表情は険しいものだった。
「いいか、モビルスーツ・デッキだ。ガランシェール隊の機体だけは確保しておけ」
駆けよるなり、フラストの指示が飛ぶ。
この様子だと、キャプテンはまだレウルーラか。
「ユイは」
「もう行ってる、姫様とマリーダも一緒だ」
それだけ聞ければ、十分だった。
重力の制約がなくなって、僕の身体はもう重たくない。思うように駆け出して、思うように飛び回れる。
降りて、真っ直ぐ。突き当たりを右に、それからまた直進。導かれるように、知らない通路を知っているように駆け抜ける。
呼んでいるのがわかる。
呼びたくないけれど、呼ばなくてはならない。
そんな複雑な心の動きに、指の先が触れた気がする。
「ユイ、待たせた!」
どこにいるのか、探さなくても感じられる。
ただ、声を聞かせてやりたくて、自然と名前を呼んでいた。
たどり着いたデッキはもうすでに、戦場のようなありさまでいる。
どちらの軍人も、ノーマルスーツを着用しているものの、モビルスーツにはたどり着いていない。ちょうど今しがた始まったのか、銃撃戦の最中だったらしい。
ギラ・ズールの足元で、マリーダはヘルメットのバイザーをあげたまま僕を一度だけ見やる。ユイはそのかたわらで、酸素量の確認をしていた。
「行かないでって、言いたい。マリーダにも、ジンロウにも、それから、あなたにだって」
「感謝します。あなたに、マリーダに、そしてジンロウに」
ミネバ・ザビを見つめるユイの表情は、複雑だ。笑顔を見せようとして、緊張でうまくいかない。まるで、そんなふうに感じられる。
ふたりが言葉を交わすところは、あまり見ていない。だからもっと、ぎくしゃくしているものかと思っていた。
僕の知らないところで、ユイはちゃんとうまくやっている。きっと、僕よりずっと、しっかりと大人になっている。
どうしたと聞かれて、意識はすぐに切り替わる。
振り向けば、マリーダはいつもと変わらない静かな表情でそこにいる。
「ジンロウ、手短に伝える。私は姫様とクシャトリヤに。おまえは、起動に時間がかかるはずだったな。五分か?」
「手順を飛ばせば四分、三分半で出せる」
「無理はするな、私も無謀はしない。おまえが苦しめば、それ以上に悲しませる。……きっと、そのはずだ。姉妹だから、私にもわかる」
感情が、揺れる。
僕のか、ユイのか、それともマリーダのか。わからないけれど、揺れたのを感じる。
あたたかくて、やわらかくて、ふわふわとしていて。触れると、とても、心地がいい。
「マリーダ」
「……また、話がしたい。私も、やっとそう思えた。インダストリアル7に、アイスクリームのうまい店があるらしい」
ぎこちなく、それでも、笑っている。
マリーダも、ユイも。同じ顔で、笑っている。
それがあまりにきれいで、見惚れた。ほんの一瞬、戦争だとか出撃だとか、そういうことをすべて忘れて。
「フォン・ブラウンに、チョコパフェのおいしいお店があるの。私、今、そこで働いてる。歌うんだよ、夜には、うまくないけどピアノも弾いてる」
「マリーダ、供回りを。……必ず戻るぞ、アイスクリームとパフェは、私も気になるからな」
ミネバ・ザビの冗談には、さすがにおどろいた。こんな状況でそんなセリフを口にするとは、見た目以上に肝がすわっている。
姫様、と。マリーダの声もどこか面食らったようで、少しだけ笑えてしまう。けれど、とても穏やかな気持ちにさせてくれた。
クシャトリヤへ向かうふたりのうしろ姿は、互いの信頼が感じられる気持ちよさがある。
ぐずぐずしてもいられない。僕には僕の、やるべきことが残っている。
「さて、僕も行くよ。ユイ、君はガランシェールの皆と合流だ」
振り返れば、君がいる。
いつか、どこかで。見覚えのあるような気がする、まるで知らない光景。
泣き出しそうなその顔を見ても、心はやっぱり、揺らがなかった。
銃声が聞こえる。あちこちから、ひっきりなしに。
けれど、聞こえる音は厚い壁を隔てたように、どこか遠い。そのかわり、目の前のことだけに意識が集中しているのがわかる。
大きな目も、伸びた髪も、ぎゅっと結んだ口元も。こぼれそうな涙の雫さえ、全部、なにもかもが見えているようだ。
「生きる意味ってやつがさ、わかったんだ。やっぱり君だった、ユイ。喜びも幸せもそうだったように、全部、全部が君なんだ。そのためだけに、六年間も生きられたよ」
壊してしまわないように、そっと抱きしめる。胸の中に包んだぬくもりは、いつまでも触れていたくなるほどにあたたかい。
きっと、感じているんだろう。僕もそうだ、なんとなくわかる。
「どうしても、だめ? ねえ、行かないでって思ってる。本当は、このままふたりで逃げたいよ。身体だって、整備したのにって。壊れてなんかいないからって、そう思ってるのに」
「ああ、だめだ。僕は、僕がやりたいことのために行く、僕の心に従うよ。それにさ、ここで逃げても半年だって生きられない。最初から、僕には首輪がついてるんだ。ずっと整備を続けなければ、生きていけない身体なんだ」
言葉にしてみれば、悲惨なものなのかもしれない。
けれどふしぎと、心に悲哀の感情はない。
むしろ、いっそ晴れやかだ。光が射し込むように、目の前がどこまでも拓けてみえる。
ほほをなでて、そっと涙をぬぐってやる。ああ、うまくないな、どんなになぐさめても止めてやれない。
こぼれて、流れて、止められない。愛の深さを感じられるほど、涙はずっとあふれ出る。
君が僕の立場だったなら、もっともっとうまくなぐさめたろうに。
「私なら、平気だよ。地球に降りて、連邦のやつらに捕まったっていい。研究所でも、実験台でもさ、ジンロウと一緒なら生きていられる」
「それじゃあ、また歯車になる。僕だけでなく、君までも。それはね、とてもひどいことだ。あんなの、僕はもう見たくもないし、見せたくもない」
モビルスーツの駆動音が聞こえる。
それから、少しの間をおいて格闘戦の激突音。
ふしぎなもので、直感よりもずっと強い確信がある。これが最後なんだと、乗る前から感じている。
ああ、そうか、あの、あれか。
「わかってるんでしょ、ねえ、私だってわかってるの。見えたんだよ、私、見たんだ。ジンロウだってさ、見たんでしょ」
そうだね、きっと、そうだと思う。
覚えているわけではないけれど、確かに感じているものがある。その答えを知る方法は、ないけれど。
光の中で、あの空で、きっと、僕は自分でも知らないうちに知ったのだろう。
もしも僕が行かなければ、もしも僕が行くのならば。
どちらの答えも、きっと、僕はもう知っているんだ。知っているから、この確信がある。
それが伝わってしまったから、君は、君はこんなに泣いている。
ああ、まったく。
そんなだから、君は向いていないんだ。
「僕が一番うまいんだからさ、不調のマリーダを援護してやらなくちゃいけない。……壁を越えられたんだ、君たちならきっとすぐにわかりあえる。だから、そのためにも、あの子は絶対に守ってやる」
「ばか。ばか、ばか。ずっと一緒にいるって、約束したのに」
「一緒さ、いつでも、いつだって」
そうさ、君は優しいから。誰かが死ぬたびに、何度だって泣いてきた。
姉妹の中で、一番の落ちこぼれだ。人を殺す機械としては、きっと、誰よりも落ちこぼれだ。
けれど、だから。そうさ、だからさ。
床を蹴って、ギラ・ズールのコックピットへと飛ぶ。
「じゃあ、行ってくる」
すべりこませた身体から、両脚、左腕のロックを解除。身体をコネクターに接続しながら、システムをリブートしてやる。
コックピットの中はいつものように凍てついた空気だと思っていたけれど、今日はどうしてか、あたたかさを感じる。
これも、心の変化ってやつなのか。
ユイはまだ、僕の足元にいる。僕を見上げる瞳が、今だって見えている。身体をつないだばかりで、視界はまだ、接続していないはずだのに。
いや、いいか。これが脳の誤作動だとしても構わない。君が見えるのなら、それでいい。
出撃するのが恐ろしいと感じる。帰れないとわかるから、いっそ、逃げ出したくなるほどだ。
それが人間というものなら、僕はきっと、ようやく人間になれたのだろう。
はじめの一歩を、これから、やっと踏み出せるんだ。
「ありがとう、ユイ。君のおかげで、僕の生きる意味はあった。ああ、陳腐だ、とても、うまくない。くやしいな、もっと本を読めばよかった、勉強すればよかった」
なにのために産まれて、どうして今まで生きてきたのか。その答えは、きっとこれだ。
僕は、君にひとつでも多く、なにかを残していきたいんだ。
「聞こえるかな、聞こえているのかな。ユイ、なあ、ユイ。たくさん話したい、話したかった。もっともっと、一緒にいたい」
探して、探して、探して、探す。
伝える言葉を、自分の心を、感情を。
箱の中身をひっくり返して探すように、手を伸ばして、つかまえる。
まだ身体につながっている右手を、閉じていくハッチの向こうに伸ばす。
「ずっと愛している、君を」
「愛してる、私も、私だって、ずっと愛してる。もっと一緒に、ずっと一緒にいたかった」
届くはずのない声が届いて、聞こえるはずのない声が聞こえる。聞こえた、気がする。
きっとこれが、君との別れなんだろう。
無理やり作っていたというのに、やっぱり、君の笑顔はきれいだ。
こんなにも心をうばわれるものがこの世に存在するのかと、今さらだけど、いつも思っていたよ。
「デバイス、再起動完了。右腕を接続、最適化開始。待ってろマリーダ、すぐに行く」
最後に残った右腕も外して、僕は完全に、僕に戻る。いつもと少しちがうのは、心と身体の歯車が、しっかりと噛みあっているのを感じることだ。
ユイ、君は人間として生きろ。兵器にだけは、なってはいけない。モビルスーツに乗るのは、僕が最後でいい。
ああ、すごい。
僕は今、人生で一番生きている。
生きているんだ、この僕が。