騎士の「本性」
「あらあら、全裸で海に」
「……イッセー先輩の赤裸々な過去」
「……小さい頃のイッセー、幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー……」
「みんな見ないでぇぇぇぇ!」
今、俺達オカ研部のメンバー全員でイッセーの家を訪問して、小さい頃のイッセーのアルバムを全員が観賞している。
………なんでこんな状況におちいったかというと、今日は旧校舎の大掃除の日らしく、オカ研部の会議をイッセーの家で行うということで全員集合したのだが、イッセー母が突然アルバムを持ち出したことで今に至る。
俺からすれば、付き合いが長いから「懐かしいなぁ」程度なんだが、みんなからすれば新鮮なんだろうか?木場まで楽しんじゃってるし。
突然、木場があるページの写真を見て表情を変えた。俺は不思議に思ったから、近づきそれを見た。そこには俺とイッセーともう一人、同い年くらいの園児が写っていた。
この子はたしか近所に住んでて、よく3人で遊んだっけな。でも、小学校入学前に海外に引っ越したから、それっきりだけど。
「木場、その写真がどうかしたのか?」
俺が質問を問いかけた。すると、木場は背後に写っている西洋風の剣を指差し、逆に質問を返された。
「これ、見覚えは?」
その声のトーンはいつもより低く、真剣だった。
「いや、俺はもちろんだが、イッセーも幼すぎて覚えていないだろう」
「こんなことがあるんだね。思いもかけない場所で見かけるなんて……」
そう言って苦笑するが、その目はいつもの木場とはまったく違う、冷たく憎悪に満ちていた。
「これは聖剣だよ」
俺と木場が話していたあと、しばらくしてみんなも満足したのか解散となった。
……それにしても、あの木場があんな表情になるなんて、神父の殺人の件もあるし、何も起こらなければいいけど。
◼◼◼
翌日の放課後、オカ研部の活動はいつも通りではなかった。来週の部活対抗の球技大会にむけて練習をしていた。もちろんクラス対抗戦とか男女別競技というのもある。……それにしても去年は不思議に思わなかったが文化部も参加する意味があるのだろうか?しかし、部長の気合いの入り方がとんでもないから参加はするけど。
それで今日は野球の練習をしている。そして、思ったことがひとつある。
「俺のいる意味が無い気が……」
「何言ってるの。あなたもオカルト研究部の一員なんだから、頑張りなさい」
「うっ、それはそうですけど……」
俺はブレイドに変身できてもベースは人間。たしかに一般人よりは身体能力は高いかもしれない。でも、みんな、運動神経が悪魔だからだろうけど、おかしすぎる。小猫ちゃんに関してはホームラン量産しまくりだし、絶対俺がいなくても勝てる。
……と思っていた矢先に木場の頭にボールが落ちた。木場はそれすらも気づいていない様子でボケーっと突っ立っている。
「おい、木場!しっかりしろよ!」
イッセーが声をあげた。それにはさすがに気づいたのか、顔をイッセーの方へと向けた。
「……あ、すみません。ボーっとしてました」
「祐斗どうしたの?あなたらしくないわよ?」
「すみません」
素直に木場は謝る。たしかに部長の言う通りかもな。いつもニコニコしてるあいつからは想像できない表情でここ最近ずっと過ごしている。
あの写真についてまだ気にしているのか?そうだとしても、学校で生活する時ぐらいは集中して欲しい。
しかし、そんなことはお構い無しに練習は再開された。
◼◼◼
その次の日昼休み、球技大会も目前に迫っていた。今日は昼を食べたら、部室に集まることになっていた。なんでも、最後のミーティングをするそうだ。
俺とイッセーとアーシアはいっしょに旧校舎に向かった。部室にはすでに俺達以外の部員は揃っていた。……ほかのお客さんもいるようだが、ソファーに座っている人は生徒会長の支取蒼那先輩か。いったいなんの用でここに来たんだ?
「なんだ、リアス先輩、もしかして俺達のことを兵藤と剣には話してないんですか?同じ悪魔の兵藤なら気づいてもおかしくないけどさ」
おそらく、生徒会長の付き添いで来ているであろう男子生徒がそう言った。………こいつも悪魔だと?どういうことだ?
「サジ、基本的に私達は『表』の生活以外ではお互いに干渉しないことになっているのだから仕方ないのよ。それに兵藤君は悪魔になって日が浅く、剣君に関しては悪魔ではない。彼らは当然の反応をしているだけ」
つまり、生徒会のメンバーも全員悪魔らしいな。俺のようなイレギュラーがいなければの話だが。
「この学園の生徒会長、支取蒼那様の真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主様ですわ」
朱乃さんが説明をしてくれた。上級悪魔ってことはすごいところの出ってことはなんとなくわかるけど。
そう思っていた俺と絶句しているイッセーに対して、さらに捕捉して説明をしてくれる。
「シトリー家もグレモリーやフェニックス同様、大昔の戦争で生き残った七十二柱のひとつ。この学校は実質グレモリー家が実権を握っていますが、『表』の生活では生徒会ーーつまり、シトリー家に支配を一任しております。昼と夜で学園での分担を分けたのです。」
まさか、そんなシステムだったとは、驚きの連続だ。さっきサジと呼ばれていた男が再び口を開いた。
「会長と俺達シトリー眷属の悪魔が日中動き回っているからこそ、平和な学園生活を送れているんだ。それだけは覚えておいてくれてもバチは当たらないぜ?ちなみに俺の名前は匙元士郎。二年生で会長の『兵士』だ」
「おおっ、同学年で同じ兵士か!」
イッセーは同じ仲間ができたようで嬉しそうだ。
「よろしくな、兵藤。俺はこう見えても駒4つ消費の兵士だぜ?」
この男さりげなく自慢してるよ。
「俺は駒8つ消費した兵士だ。よろしくな匙!」
イッセーも負けじと自慢してるし……。
「駒8つ!?お前以外とすごいんだな。」
イッセーはどんな印象を持たれてるんだろう?
「兵藤一誠君、アーシア・アルジェントさん。よろしければ同じ新人の悪魔同士、仲良くしてあげてください。もちろん、剣一君もお願いしますね」
「はい。悪魔じゃないけど、よろしくな」
「あぁ、こちらこそよろしく。しかし、こんな優男があのフェニックスを倒したなんてな、もっと恐ろしい野郎を想像してたぜ」
フェニックスの件を聞いたのか?しかし、優男と言われるとは、別に悪口ではないのだろうが。
こうして、俺達3人は生徒会の秘密を知った。
◼◼◼
そして、球技大会当日をむかえた。スケジュールはクラス対抗戦がはじめに行い、次に男女別競技、最後に部活対抗戦だ。で部活対抗戦の種目はドッジボールに決まったようだ。
生徒会長と部長がクラス対抗戦で超次元テニスを繰り広げたことは置いといて、いよいよ部活対抗のドッジボールが始まろうとしていた。
「イッセーさん、例のもの配ったらどうですか?」
「おっとそうだった。みんな、これを巻いてチーム一丸になりましょう!」
イッセーは「オカルト研究部」と刺繍があるハチマキを取り出した。イッセーお手製のようだ。いつの間にこんなものを作ってたんだ?なによりもできが良いのが驚きだ。
「あら、イッセーって意外に器用ね。うまくできているわ」
「……予想外の出来映え」
「あらあら、これは素敵なハチマキですわね」
「皆さん、ありがとうございます!」
お礼を言う立場が本来逆な気がするが、イッセーも嬉しそうにしてるからつっこまないでおこう。
「ほら、木場。……今は勝つことに集中しろよ」
木場にもハチマキを渡すが、
「……あ、ありがとう。そうだね……」
いまだに、木場の調子は戻ってないか。今回のドッジボールは勝てるのかな?
◼◼◼
\パン!/
乾いた音が響いた。木場が部長に叩かれたからだ。
「どう?少しは目が覚めたかしら」
部長はかなり怒った様子だ。
競技は結局、俺達が優勝して終わった。でも、木場はほとんどチームに貢献していないうえに、終始ボケっとしていた。試合の途中も部長が怒鳴ったが、それすら、見向きもしなかった。それにずっと無表情のままでいる。
しかし、突然ニコニコ顔になり、
「もういいですか?少し疲れましたので普段の部活は休ませてください。夜の時間も休ませてもらってもいいですよね?昼間は申し訳ございませんでした。どうにも調子が悪かったみたいです」
そんなことを言った。
「なぁ、木場。お前らしくないぞ。何かあったなら話してくれないか?同じ仲間だろ?」
俺は我慢できず、ついに口を開いた。
「仲間……か。ハジメ君は悪魔ではないからそんなことが言えるのかな?」
「なんだと?………おい、木場ぁ!」
「イッセー、落ち着け!お前がキレることじゃないだろ?」
しかし、木場の口からこんな言葉が出るとは、そうとう深刻な問題だぞ。
「イッセー君もハジメ君も熱いね。………僕はね、ここのところ、基本的なことを思い出したんだよ」
勝手にそう話し出した。
「なんだよそれ。部長のためじゃないのかよ?」
イッセーはなんのためらいもなくそう言った。しかし、木場はその言葉を否定した。
「違うよ。僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー。それを破壊するのが僕の戦う意味、生きる意味だ」
初めて見る強い決意を秘めた表情。
そのとき、俺達は初めて木場の本音を聞いた。