とりあえず日曜日までは待ってみます、来ないかもしれませんが。
玄関ホールで部長のお母さんと会話して数時間後、食事の準備が整ったらしく俺達はダイニングルームへと案内された。
そこには、ホテルのバイキングを思わせるぐらい、とんでもない量のありとあらゆる料理が並んでいた。どれも高級感があふれていて、とても美味しそうだ。
「遠慮しなくて結構だ。楽しんでくれたまえ」
部長のお父さんの一言で会食が始まった。
この場にいるのは、オカルト研究部メンバーと部長の両親、それとミリキャス君。
太陽も月も存在しない冥界にも朝と夜が分かれているらしく、窓から見える外の景色は辺りが暗くなっていて月に似たものが空に浮かんでいる。
みんな普通に食べているなか、小猫ちゃんだけは食事に一切手をつけていない。イッセーも最近、小猫ちゃんの様子が変だと言っていた。一時的なものだったらいいんだけど……。
「うむ、リアス眷属諸君、それと剣一君だったね。ここは我が家と思ってくれていい。冥界に来たばかりで勝手がわからないだろうけど、その時は遠慮なくメイドに訊ねてくれたまえ」
部長のお父さんはそんなことを言ってくれた。俺のことまで気にしてくださるとは優しい方だ。
その後は、ほとんどイッセーと部長のお父さんの会話となった。話の流れからはグレモリー家はイッセーを婿として迎え入れる気満々のご様子だった。……がイッセーはそのことに全く気が付かない様子で、俺からもあいつの頭は疑問符だらけだということが一目でわかった。
◼◼◼
冥界に来た次の日、まず、俺達はこのだだっ広い敷地の観光ツアーをした。……イッセーを除いて。感想としてひとつ言えることは駒王町よりも面積があるのではないだろうか?と思える位の広さだったことかな。
それで、イッセーはというと部屋に残って悪魔についての勉強をしていたらしい。その理由は言うまでもないだろう。
そして、一通り回り終えるとすぐに魔王さん達がいらっしゃるという領土に移動した。移動手段は昨日乗った列車だ。
列車に揺られて何時間経ったのかは寝ていてわからないが、目的地に到着した。そこは最先端の大都市を思わせるところだった。
「ここは魔王領のルシファードといって、旧魔王ルシファー様がおられたと言われている冥界の旧首都なんだ」
木場が簡単にこの都市の概要を説明してくれた。
「このまま地下鉄に乗り換えるわよ」
地下鉄まであるのか。よくよく考えると、悪魔は人間の文化を積極的に取り込んでいると思う。これで自動車が普及していて、飛行機まで飛んでたら人間界と変わらないだろうなぁ。
そんなことを考えながら歩いていると、突然、黄色い歓声が上がる。それは部長に向けてのものだろう。悪魔からも人間からも部長は憧れの的のようだ。
そんなこともあったけど、俺達は地下鉄に乗り再び移動をするのだった。ちなみにこの地下鉄も専用車らしい。
地下鉄に乗って約5分。ここで若手悪魔同士の恒例行事があるらしい。そこに俺が顔を出すのはさすがにマズイらしいので、
「ハジメ、悪いのだけど待っていてちょうだい。もちろん、この街を歩いても構わないから」
俺には待機命令が下った。まぁ、ここまで来れたのもある意味奇跡だと思っている。
「わかりました。みんなも頑張ってきてください」
俺はとりあえず、みんなにエールを送っておいた。それを確認すると、みんなは大きなエレベーターに乗り込んでいった。
◼◼◼
(さて、これからどこに行こうかな?)
俺はグレモリー家の使用人(女性)の一人からここ近辺の施設について教えてもらいながら歩くことにした。
「そういえば、昼食がまだだったので、どこかオススメがあったら教えてくれませんか?」
「それでしたら……あちらなんかはどうでしょうか?」
俺の要望に対して、使用人は指を指し示しながら答えてくれた。
「えっ?あれって……」
俺の目に飛び込んで来たものは、輪っかのようなOが三つ横一列に並んでいて、丸っこいCのロゴが一文字真ん中にでかでかと入った看板だった。これはどこかで見覚えがあるような……。
「『コアバーガー』です。開店して一週間も経っていないできたてのお店なのでお昼時はほぼ満席なのですが、お客さんの回転率がいいのであまり待たないそうですよ」
なるほど、サーゼクスさんが授業参観の時にあの町をぶらぶら歩いていた理由がわかった気がする。それで某ファストフード店をパク……、参考にした店があれということだな、きっと。
「他のお食事をご所望するのであれば、最近できたもので、『
『えっ?これらは全部問題がないのでしょうか?』
霧の言う通り完全にアウトとも思えてくる。しかし、なんだかどれもすごく気になるのはたしかだ。全部回ってみたいところだけど、まぁ、そんな時間はおそらくないだろう。
「じゃあ、勝鬨屋ってところがいいです」
これを選んだ理由は何の店であるのかが一番見当がつかなかったからである。
「承知しました。それではこちらです」
俺は案内される形でついていった。
3分ほど歩いたらすぐに着いた。
その店は全体的にオレンジ色を基調とした装いとなっていて、外にもオレンジ色の旗に戦国武将の兜に見えるマークがプリントされていた。そして、この店が何を売っているのかも大体理解できた。
店の中へと入っていくと、法螺貝の笛の音色が鳴り響いたり、『エイエイオー』とか、掛け声が突然聞こえてきたりと賑やかな店内だった。
「いらっしゃいませ!ご注文が決まりましたらそちらのボタンでお呼び下さい」
俺が席に座ると、元気のいい男性店員が声をかけてくれた。接客も人間界を参考にしているのか、あまり変わった印象が見受けられない。
「じゃあ、これをください」
指で示して見た目が牛丼っぽいものを注文した。しかし、今頃ではあるが、日本語で悪魔の方達に通じるのだからこれはこれで驚きである。
それから、注文して一分も経たずに注文していたものが来た。味付けもほとんど狂いなく再現されていて、美味しかった。
完食してメニューを一通り目を通した後、この店を後にした。他にもオレンジスカッシュやバナナオーレといった名称のドリンクも売られていたが、その中にドングリとマツボックリがなぜそこにカテゴライズされているのかが謎だった。
それから、俺は適当に近くを歩いてみた。ブルースペイダーがあれば色々と便利だったんだけど……、いまさら言ったところでしょうがない。
ふと、俺は後ろを振り返った。なぜそんな行動を起こしたのかは自分でもわからなかったが変な気配がしたのだ。すると、そこには黒猫が俺をじっと見てたたずんでいる姿があった。
(冥界にも猫はいるんだな)
俺が近づこうとした刹那、その黒猫は一目散に逃げ出した。俺は無理に追いかけようとしなかった。する意味もあまりないし、それで迷子になりました、ということになったら笑えない。
(そろそろ時間だ。戻るか)
そして、いつの間にか夕方頃の時間をむかえていた。
◼◼◼
俺以外のみんなも定例行事を終えて、全員揃ってグレモリー家の本邸に帰ってきた。アザゼルが一足先に戻っていて俺達のことを迎え入れてくれた。
部長の話によると、どうやらシトリー眷属ーーつまり生徒会のメンバーとレーティングゲームをすることが決まった。それで、対戦日は今日から20日後、明日から各自それぞれ決められたメニューで修行開始というスケジュールだ。ちなみに、その修行メニューを考えたのはアザゼルである。
また、今回のレーティングゲームは一応、悪魔のお偉いさん方も見るので、公式戦とまではいかなくとも人間である俺は出られない。
『フン、つまらんな』
とか麟は言っていたけど、こればかりは仕方がない。
「明日の朝、庭に集合。そこで修行の詳細を各自に教える。覚悟しとけよ」
「「「「「はい!」」」」」
その言葉に全員が返事をして、この場は解散となった。