しかし、シャンゼリオン知ってる人が少なそうで書く勇気が出ない今日この頃。
俺とタンニーンさんの模擬戦闘はほぼ互角という形で終了した。あれから、たまにフォームを数回変えながら半日近く戦った。
キングフォームを使えば凌駕できたかもしれないが、タンニーンさんの本気がまだ未知数だったうえに長時間の戦闘だったので使おうとはしなかった。
その後、イッセーは朝早くに戻って来たので修行は再開されて、そこからさらに数日経ち、ついにイッセーの特訓は終わりに近づいていた。
「っしゃあ!」
『Explosion!』
イッセーは神器の能力で己の力を増大させた。
「こいつはどうだ!」
タンニーンさんは口を大きく開けて、火球をイッセーに向けて連続で吐き出した。イッセーはそれらを軽やかに避けて、イッセーも手を前に突き出して、ドラグクローファイア(そういう技名らしい)を放ち反撃した。
〈キック〉
〈サンダー〉
〈ライトニングブラスト〉
イッセーに息をつかせる暇を与えずに俺は蹴り込んでいく。イッセーもそれに応じて跳び上がった。
「ウェェェェェイ!」
「ダァァァァァッ!」
俺達は空中で跳び蹴りをぶつけ合った後、共に後ろに吹き飛び着地した。さっき攻撃を避けずに真正面から手で受け止めたタンニーンさんは、その手を見ながらこんな感想をもらした。
「いい一撃だった。修行開始当初と比べれば、確実にドラゴンの力が高まっている。体力も申し分ない」
タンニーンさんはイッセーを珍しく誉めていた。
そう言えば、イッセーが一旦部長の別邸に帰った時の話を聞いた。それによれば、小猫ちゃんがオーバーワークで倒れたらしい。そうなってしまったのは周りのみんなが強い中、自分が弱いと感じて足手まといになると思っていたからだと言う。
それを目の当たりにしたからなのか、イッセーは山に戻って来てから、より気合いを入れて修行に取り組んでいた。
「お前はよく今日までやった。……しかし、もう少し期間を設けていれば可能だったかもしれないが、残念だったな。明日で修行は終わるが、無理だろう」
タンニーンさんは残念そうに息を吐いた。イッセーはこの修行を通して確実に強くなった。能力全てにおいて何もかも向上した。それでも
◼◼◼
「では、俺はこれで。魔王主催のパーティには俺も主席する。その時に兵藤一誠、ドライグ、剣一、また会おう」
俺達は修行開始の時と同じようにタンニーンさんに乗って帰ってきた。なんだかんだで俺の名前も覚えていてくれたのは地味に嬉しかった。
「あぁ、おやっさん、ありがとう!パーティでまた」
「そうだ、俺の背に乗ってパーティ入りするか?」
「えっ?それいいの?」
「問題ない。俺の眷属を連れて、明日またここに来よう。詳しくは後でグレモリーに連絡を入れる」
修行の時は厳しかったけど、根は優しいドラゴンなんだな、タンニーンさんは。
「では、さらばだ!」
そう一言だけ言って、タンニーンさんは空に舞い上がっていった。
◼◼◼
その後、二週間ぶりに全員集合して、それぞれの成果を報告しあった。それで、外出組ーー木場とゼノヴィアとイッセー、俺のペアがまず話した。
木場は師匠との修行を、ゼノヴィアもアザゼルに出されたメニューの内容についてを、イッセーはタンニーンさんと俺を相手に修行していたことを語った。
そして、イッセーの話が一通り終わった後、他のみんなは軽く引いていた。その理由は単純明快。木場やゼノヴィアに俺は別荘や小屋を利用して生活していたのに、イッセーだけは狩りをしながら、野宿で生活してきたことであった。ようやく俺もあの山でイッセーがどう生活してきたか知った。
「えっ、俺だけなんか酷くない?」
「……俺もお前がそんな生活送ってきたことに驚いたよ。ハジメは山小屋を使っているから、てっきりお前もそこを使っているものだと思っていたのだが」
「……ハジメは知ってたのか?山小屋の存在を」
「あぁ、言わなかった俺も悪かった。でも、聞かれなかったから、イッセーは敢えてそうしているものだと……」
イッセーは俺の言葉に放心状態となっていた。本当に悪かった、イッセー。
「しかし、そのかいあって、体力がかなり向上したようだな。これでいつ禁手に至っても、活動時間はそこそこあるだろう。ま、気にするなイッセー。至れない可能性は予想していた範囲でもある」
アザゼルはそこまで残念というわけではなさそうだった。ここまで見越していたとは……。
「禁手っていうのはそれほど劇的な変化がなければ無理ということだ。せめて、あと一ヶ月もあれば……」
イッセーはその言葉を聞き青ざめている。
「よし。とりあえずこれで報告会は終了だ。明日はパーティ。今日は解散するぞ」
その言葉で報告会、そして俺達の修行はひとまず終わりをむかえた。
◼◼◼
次の日の夕方頃、俺は学校指定の制服を着こんで客間でタンニーンさん達が来るのを待っていた。
匙がここにいてイッセーと話しているのを見ると、どうやら会長とその眷属と一緒にパーティ会場に行くらしい。
悪魔ではない俺は一応の配慮としてアザゼルの護衛という建前でパーティに参加できることになった。まぁ、この堕天使の総督に護衛なんか必要ないことぐらい誰でもわかりきっているが。ちなみに、腕にはグレモリー家の紋章が入った腕章をつけている。
「よしハジメ、俺達はもう行くぞ」
アザゼルのその言葉に俺は驚いた。
「タンニーンさん達はまだ来てないですよ。……まさか、俺達だけ別ルートですか?」
俺が怪訝そうに訊くと、
「あぁ、そういうことだ。言ってなかったか?」
笑いながらアザゼルは答えた。まったくこの適当な先生は……。そんな風に心の中で愚痴っていると執事さんがこの場に来てこう言う。
「堕天使の提督殿、剣一様準備が整いました」
どうやら、俺とアザゼルは一足先に会場に着きそうだ。……と思ったのだが、そう考え付いた俺がバカだとこの後思い知らされるのだった。
◼◼◼
「レイズするぜ」
「コールだ。……しかし、なぜこうなった。先生」
会場近くにつくとアザゼルは真っ先にある場所へ向かった。そこがどんな場所かは入ってからわかったのだが、カジノだった。俺もついていくしかなかったので、仕方なく一緒に入っていくとなぜか俺もポーカーに無理矢理参加するはめとなっていた。
「細かいことは気にすんなよ。もっと楽しんだらどうだ?」
「俺はまだ未成年なんですからね!これで負けたら、俺は外に出ますから」
「ハハッ、そんなこと言ってさっきからずっと負けてないだろうが。嫌みか?この野郎」
アザゼルが言うように俺はゲームが始まってからずっと勝ち続けている。最初はただのビギナーズラックだと誰もが思っていたのだが、それが何度も続いてしまったのだ。
「先生は堕天使陣営の重役なんですよね?それがこんなところで油を売ってていいのかよ?」
「だから、さっきも言ったろ。このパーティ自体がそんな堅苦しいものじゃないんだよ。単に悪魔のみなさんがばか騒ぎしたいがための要は飲み会みたいなもんだ」
たしかに、アザゼルが言うようにパーティがそろそろ始まりそうだというのに、このカジノはまだ賑わいを見せていて人が散りそうにない。良いように言えば、冥界は平和である。逆に悪く言ってしまえば、警戒心が無さすぎる。
「しかし、ハジメ、お前は真面目過ぎるぞ。そんなんじゃ女が寄ってこないぜ?」
……地味に痛いところを突いてくるな、この先生は。
「まぁ、それだから朱乃を任せられると思っているんだがな」
さっきの言葉のせいで、今言った最初の方を聞き取れなかった。
「何か俺に対して言いましたか?」
「いや、なんでもねぇよ。っと、そろそろオープンだ」
う~ん、何かはぐらかされた気もしたけど、一体なんだったんだ?……うっ、また俺の勝ちかよ。このまぐれはどこまで続くんだか?
「あ~、ようやく負けた」
『いや~、ガッポリ稼いだねぇ~』
「アハハ、どうせ元は俺の金じゃないしあの先生のことだ、どうせ負けて戻ってくるだろう」
俺はあの後ようやく負けて、カジノを抜け出してこれた。……そもそもあんなに緩い雰囲気だったら、俺もみんなとすんなり会場入りできたんじゃないだろうか?
俺は何をするでもなくただ物思いにふけっていると、距離は大分離れているが、俺の目の前を一匹の黒猫が通っていった。あれは以前街中で見かけたあの……そんなわけはないか。
「はぁ~。……まったく、今日はついてないな。無駄な時間は過ごすし、前を黒猫が横切るし」
そうぼやいた時だった。
「あれは小猫ちゃんか?どうしてこんなところに」
黒猫についていくように小猫ちゃんが歩いてきた。さらにその後ろをイッセーと部長が尾行するような形で追ってきていた。
『これはきな臭いね。ハジメ、僕達も後を追おう』
「言われなくともわかってるよ。それにしても本当に今日は悪いことばかりだ」
〈シーフ〉
俺は全身を透明化させて3人の後を追った。
しばらく歩くと、小猫ちゃんは真っ暗な森の中へと入っていった。そして、小猫ちゃんはキョロキョロと何を探すように顔を動かしている。
「久しぶりね。白音」
俺には聞き覚えのない第三者の声が聞こえてくる。そこに俺は視線を向けると、黒い和風の着物を着た女性が立っていた。髪の色は黒いけど、頭部に猫耳を生やしていて、どことなく小猫ちゃんに似ている。……彼女は一体何者だ?
「……あなたは!」
小猫ちゃんのあの反応を見ると、知り合いのようだが酷く驚いた様子で全身を震わせている。
「ハロー、お姉ちゃんよ」
「黒歌姉さま……!」
彼女が小猫ちゃんの実姉?たしかに、それなら二人が似ていることの説明がつく。
「……これはどういうつもりなんですか?」
小猫ちゃんは怖い顔をして、お姉さんに問いかける。
「ん?ただ悪魔さん達がここで大きな催しをしているって言うから、気になっちゃって。にゃん♪」
しかし、そんなことを気にしてないかのように、彼女は笑みを浮かべながら答えた。
「ハハハハ、こいつはグレモリー眷属の一人かい?」
突然もう一人の声が聞こえてきて、そいつは姿を現した。以前にも聞いた声だと思ったらーーそう、孫悟空の美猴だ。
美猴はイッセー達が隠れている方に視線を移す。
「気配を消しても無駄だぜぃ。俺っちや黒歌みたいな仙術使いは、気の流れの僅かな変化でだいたいわかるんだよねぃ」
そう自慢するように言うと、俺の方にも目を向けた。どうやら、俺もバレてるみたいだな。
イッセーと部長は木陰から前に出てきて、俺は透明化を解除して姿をあらわにした。3人とも俺の出現に驚いている。
「……イッセー先輩、ハジメ先輩、部長」
「久しぶりだな、美猴。アンタらの用はなんだ?」
「いんや、特に用事という用事はないねぃ。ただ黒歌が悪魔のパーティ会場を見学するとか言い出して、なかなか帰ってこなかったから、こうして迎えにきたわけだ。おわかり?」
こいつから緊張感は伝わってこないが、隙がない。用がないなら帰ってほしいところだけど……。
「美猴、この子達は誰?」
「仮面ライダーブレイドとそっちが赤龍帝」
「本当にゃん?へぇ~。これがヴァーリの覇龍を退けた例の男なのね」
美猴の言葉を聞いて、黒歌は目を丸くしている。まぁ、あの時はイッセーの譲渡込みだったのだが……。勘違いしてくれてるならそれでいい。
「用がないんだったら速やかに帰ってくれないかな?」
「そうね。でも、白音はいただいていくにゃん。あの時連れていってあげられなかったからね♪」
そう言うと、彼女は小猫ちゃんに視線を向けて目を細める。小猫ちゃんはそれに対して恐怖している。
その光景を見て我慢ならなかったのか、イッセーは両者の間に割って入っていく。
「そんなことはさせない!この子はグレモリー眷属のーー俺達の大切な仲間だ!」
「そういうことだ。だからもう一度言う。大人しく帰ってくれかな?」
俺もイッセーの横に立ち、もう一度警笛を鳴らした。俺の腰には既にブレイバックルが巻かれている。
〈リモート〉
さらに鍠と麟を俺の隣に召喚させた。
「どうするの、お二人さん?僕はめんどくさいから戦いたくないんだけど」
「俺達と戦うという、愚かな選択をするか?」
「これまた分が悪いねぃ。どうする?黒歌」
「…………またチャンスはありそうだし今日は帰るわ。それになんだか興が冷めたにゃん」
そう言うと、二人は踵を返して暗闇の中に消えていった。
大事にはならなかったのだが、今回のパーティは『