構想の練りが甘くてごめんなさいm(__)m。
『律儀に入口から入らずに、壁を突き破った方が早いんじゃないかな?』
全力で飛行を行ったこともあり、神殿はもう目前に迫っていた。
「言われなくとも、そのつもりだ!」
〈ラッシュ〉
〈ドリル〉
飛びながら、ブレイラウザーを前に構え、そのまま高速で体を回転させた。
「よしっ!」
壁をうまく貫通させて、俺は神殿内に侵入できた。しかし、中は特に壊れていない。誰かが戦闘をした形跡は全く無い。
「もう少し前のフロアにいるのか?」
俺が神殿の中心部から離れていこうとしたその時だった。神殿の奥の方から肉を無理矢理捻り切るような音が聞こえてきた。
『まったく、僕達も僕達で麟ちゃんとは別の、嫌な因果を背負ってるらしいね』
俺はついさっきまでは感じなかったが、今なら前にも感じた嫌な気配が全身を通して伝わってくる。
その物音がする方向へと、俺は引き返していった。
「久方ぶりだねぇ~」
進んだその先には白髪の神父ーーフリードが目の前に立っていた。
「お前……生きてたのかッ?」
「そそっ、そういうこと~。僕ちん、しぶといからキッチリキッカリ生きてござんすよ」
相変わらず、空気よりも軽い口だな。それよりもさっきの音の正体だ。ここで一体何があった?
それは周りを見渡すと、何となく気付く。床にはベットリと血糊が残っていた。フリードがここにいた何者かを殺したのは間違いない。
……しかし、遺体も何も残っていない。フリードは何をしたんだ?
「ありゃ?さてはこの血の痕跡が気になるのかな?当然気になるよねぇ」
「……ここで何をした?」
俺は仮面の下で顔をしかめさせながら訊く。
「それはねぇ、俺様が悪魔の女の子を二人ほど食ったんでやんすよ」
そう言って、奴は口から細長い何かを吐き出した。よく見ると、それは指だった。それに奴は悪魔を食ったと言ったのか?こいつは何を言ってるんだ?
『…………彼はもうすでに人間ではありません』
なんだよ……それ?
「霧、奴が人間ではないと言うのは、どういうことだ!」
答えることが難しいような質問を霧にぶつける。しかし、それをフリードが答えた。
「ヒャハハハハハハハハハ!そのままの意味に決まってるだろうがぁ!てめえらにゴミのように切り刻まれた後にヴァーリのくそったれに回収されて、終いにはリストラ食らっちゃってさぁぁっ!」
奴の体は異様な音を立てながら、不気味な形を作り上げていく。そして、元の体の何倍もの大きさに膨れ上がっていった。
「そんで、挙げ句の果てには『
奴が人間であった欠片は、もうどこにも残っていなかった。ありとあらゆる体の構造全てが、統合性の全く無い化け物と化していた。
「ヒャハハハハハハッ!ところで、仮面君はアスタロトの坊っちゃんと面識あるんだったっけか?」
突然、奴はディオドラのことを口にする。
「だったら、どうしたっていうんだよ?」
「せっかくだから、あの坊っちゃんの素敵にイカれた趣味でもお話しして聞かせようと思ってさ!」
こいつのことだ。聞いているだけでも吐き気がしてきそうな話題になりそうだ。
「いや、彼ね?教会に通じた女の子達が好みのタイプなんだよねぇ。たとえば……そう!シスターとかさ!」
俺はその言葉を一発で理解ができた。
「……アーシアのことか!」
「ご名答!でもね、狙った女の子はアーシアたんだけじゃないんだよねぇ。あの坊っちゃんの眷属悪魔も全員が元をたどれば有名なシスターや聖女様なんだよ!そんでもって、それだけじゃあきたらず、自分の屋敷で囲っている女の子も全部!キャハハハ!こんなに沢山の教会の女の子をお得意の悪魔のささやきで誘惑して、手籠めにして、堕とすんだ!ホント、悪魔の鑑みたいな奴だよなぁ、彼は!」
「……それって、まさか!」
鍠がフリードにも聞こえる声で言葉を発した。
「察しがいいねぇ、化け物の癖にさぁ!そう、あんたの思った通りっすよ。あの坊っちゃんはわざと怪我をして、アーシアたんにその傷を治させたのさ!そこを他の聖職者に見つかれば追放されるかも。とか思っちゃったりしちゃったり!多少の傷痕が残ろうが、エッチさえできれば万事解決!それが坊っちゃんの生きる道!」
なんだと?……じゃあ、前にアーシアがしてきたことは無駄だったのか?
「……非道い!それはあまりにも非道過ぎます!」
珍しく霧が表に出てきて、声を荒げる。
「んなこと俺様の知ったことじゃないもんね。言うなら、異常な性癖を持つ本人に言ってくれないとさぁ。ヒャハハハハ!」
俺は知らない間に下唇を血が出るほどの強さで噛んでいた。
「まっ、今まで信じていた教会から追放され、神を信用できなくなったら、簡単に僕のもとに来るだろう。って話なわけさ!坊っちゃんにとって、聖女様の苦悩、苦しみ、その他もろもろは最高のスパイスなの!堕ちるところまで堕としといたところを掬い上げて、犯す!それも心身共に!それが坊っちゃんの至福の一時なのでした!」
「それは……本当のことかよッ!」
後ろからイッセーの声が聞こえてくる。いつの間にか、みんなもこの場に来ていた。
「あら、イッセー君とそのご一行も来ちゃいましたか。イエスイエス。この話は100%ノンフィクションであります!」
ギリギリと音をたてるぐらい、歯を食いしばっているイッセー。それを逆撫でするかのような物言いでフリードは答えた。
イッセーが赤い籠手を発現させて、駆け出そうとしたその時、俺が手を前に出し、イッセーを制した。
「イッセー、お前の気持ちは十分わかる。だからこそ、その怒りはディオドラ・アスタロトにぶつけるべきだ。爆発させる時は今じゃない」
イッセーは何か言いたげに俺の肩を掴むが、すぐさま放した。俺はそれを確認すると、フリードに向かって一歩踏み出そうとした。しかし、鍠の声がそれを止めた。
『そう言うハジメだって、かなり頭に血が上ってるんじゃないかな?ここは僕が殺るよ』
(いや、ここは俺が!ーー)
『「自分の後始末は自分でやれ」ハジメはさっき麟ちゃんにそう言ったばかりじゃない。あれと因縁が深いってわけじゃないけど、これは僕の役割だ。だから、任せて』
「…………そうか。なら、任せる」
〈リモート〉
俺は静かにカードをラウズした。鍠とフリードーーアンデッドとキメラが対峙する。
「おやぁ?面と向かって会うのは、あの日以来じゃあーりませんかァッ!金色カブトムシ君!前々からぶっ殺したいと思ってたところなんで、丁度良かったよぉ!」
「…………かな?」
鍠はうつむき、ぼそりと小声で呟く。
「ん?聞こえなかっーー」
フリードが何かを言いかけるが、それを言い終わる前に鍠はすさまじい速度で剣を上段から降り下ろしていた。その静かに解き放った剣戟は、奴の体を真ん中から真っ二つに割った。
「んだよ、これは」
頭が二つに分かれていながら、奴はまだ喋る。
「そんな状態でまだ口が動くんだ。さっき、僕は黙ってくれないかな、って言ったつもりだけど?」
そう言うと、鍠は剣を構え直して、もう一度振り抜き、首をはね飛ばした。
「みんな、先を急ごう!」
その光景をみんなは見ていたからか、間がしばらくあったが、イッセーの一言でみんなは頷き合った。そして、神殿の最深部へと向かっていくのだった。
◼◼◼
「くそっ、絶対に貴様を葬ってやる!」
「フン、さっきから同じような台詞をねちねちと。いい加減、聞き飽きたぞ。だから、さっさと本気で来い!」
俺ーー金居麟はクルゼレイ・アスモデウスとかいう名前の悪魔と対峙していた。敵はさっきから、チマチマとした小賢しい攻撃ばかりを俺に向けて放ってきている。
よっぽど慎重な性格なのか、もしくは名ばかりのただの雑魚か。どちらにせよつまらないだけだ。俺が奴に斬りかかろうとしたその時だった。俺と奴の間に紅髪の男が乱入してきた。
「何の用だ?サーゼクス・ルシファー」
「クルゼレイを説得したい。私も前に出てこなければ、妹に顔向けできそうにないんでね」
そういえば、この男もハジメと同じ位、お人好しだったな。しかし、今回の相手にはーー
「サーゼクス!忌々しき偽りの魔王の分際で!貴様らさえいなければ、我々は……ッ!」
やはりな。それはわかりきってたことだろう。こいつらとの話し合いは全く意味の無い、無駄なことだということは。
「クルゼレイ。矛を下げてはくれないだろうか?私は前魔王の血筋を表舞台から遠ざけてしまったこと、冥界の辺境に追いやったことを後悔している」
それでも、この男は説得を試みる。しかし、その言葉に奴は俺と戦っている時以上に激昂する。
「サーゼクス、ふざけるなよ!堕天使や天使と通じて、種の伝統を汚した貴様に理想論を語る資格など無い!」
「ハッ。貴様らも三大勢力とかのハブられたもの同士、仲良しこよしで集まっているだろうが。どの口でそれを言っている?」
「お前こそ何を言っている?化け物。あくまで利害が一致しているだけの
聞いて呆れる。こんな輩がいるから、悪魔は滅びかけたのだろうな。
「サーゼクスの考えは甘いと言っているのだ!貴様には魔王を名乗る資格などない!この真なる魔王であるクルゼレイ・アスモデウスがお前を滅ぼしてくれる!」
「典型的な弱者の発想だな。もはや、本者、偽者以前の問題だろう。貴様からは魔王の品格も、何も感じられない!」
「…………これ以上は時間の無駄だ。この際、まとめてかたづけてやる!」
そうほざくと、奴は両手に巨大な魔力の塊を作りだしていく。つまり、さっきまでは本気ではなかったというわけだ。
しかし、その塊は放出されることはなかった。俺の後方から複数の小さな球体が飛んでいくと、縦横無尽に動き回り、それを跡形もなく消し飛ばした。
後ろを振り向くと、サーゼクス・ルシファーが掌を前にかざしていた。これがこの男の力か!
奴は怯まずに攻撃を続ける。……が、俺にもサーゼクス・ルシファーにも有効打を与えられずに、だんだん、焦りが見えてきた。
そして、奴の口内へさっきの球体が入り込んでいった。すると、数秒もたたずに変化が起きた。奴のオーラが一気に減少したのだ。
「腹に入っていたオーフィスの『蛇』を消滅させた。君の詰みだ。クルゼレイ」
パワーの源を消され、慌てふためくクルゼレイ・アスモデウス。その一瞬の隙を見逃さなかった。
\バシュッ!/
「この程度で冷静さを保てなくなるとは……。隙だらけだ!」
俺は奴の背中をとると、双剣を腹部に突き刺して、横に斬り払った。
「……グゥッ!……私はこんなところで……死ぬわけにはいかないのだァッ!」
口から血を吐き、顔の至るところから血を吹き出させながらよく吠える。
だめ押しにもう一度双剣を振るい、大量に生えている翼を斬り飛ばした。そして、それが終えると同時に、滅びの球が追い討ちをかける。それらは奴の体を全て、この世から消し去った。