今週もう一回更新できるかどうか?
俺達は走り続けて、神殿の終点らしきところにたどり着いた。そこの壁には円形の人工的な造りの装置が鎮座している。そして、そこの中央には……アーシアが張りつけにされていた。
「アーシア!今助けてやる!」
イッセーはそれを見て叫んだ。幸いなことに目立った外傷はなかった。
「やっと来たんだ。それに部外者まで」
装置の横からディオドラが姿を現した。奴はまた、笑みを浮かべながら、たたずんでいた。
そして、イッセーの左手にある宝玉は何かのカウントダウンを始めていた。話には聞いていたが、あれが鎧を纏うためのラグなのだろう。
「…………イッセーさん?」
アーシアはイッセーの声に反応して、こちら側に顔を向ける。彼女の目元は赤く腫れ上がっている。
「ディオドラ、お前、アーシアに何をした!」
「僕はアーシアに手を上げてないよ。ただ、ひとつお話を聞かせてあげただけだ。それを聞いたときの彼女の表情は最高だったなぁ。キミ達にも見せたかったよ」
……ッ!こいつはーーディオドラは、アーシアにあの真実を伝えたんだな。
「でも、まだ足りない。アーシアにはまだ希望がある。そう、キミ達がいるからだよ。キミ達がアーシアを救ってしまったせいで、僕の計画は崩れてしまった。本来ならあの場で駒を与えるのは、リアスさんではなく、僕である予定だったんだ。まっ、計画は遅れてしまったけれど、やっと僕の手元に帰ってきた。これでアーシアを楽しめそうだ」
「黙れ」
イッセーが怒気を込めた低い声でただ一言、そう言った。
しかし、ディオドラは俺が思ってた以上に心が歪んでいる。こんな奴がアーシアに言い寄ってきたのかよ!
「アーシアはまだ処女だよね?さすがに赤龍帝のお古は嫌だな」
イッセーが今にも襲いかかりそうだと言うのに、こいつの口は止まらない。
「あ、赤龍帝から寝取るってシチュエーションも悪くなさそうだな」
…………俺もそろそろ我慢の限界だ。ブレイラウザーを左手で逆手に持ち直し、カードデッキを展開させようと指をかけた。
「っざけんなぁぁぁ!!!」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!』
展開しきる前に、イッセーの叫びがこの神殿に響き渡ると、イッセーは全身に赤い鎧を纏っていた。カウントが終わる前に鎧が発現したのは、イッセーの怒りに呼応したからだ、きっと。
「アンタだけは絶対に許さないっ!」
「準備万端だな、イッセー。あの野郎を倒すぞ!」
「あぁ!」
俺の呼び掛けにイッセーは応じた。
「アハハハハハ!これが赤龍帝か!でも、僕はオーフィスから『蛇』をもらっているんだ。キミ達が二人がかりでかかって来ようが、僕にはーー」
〈ビート〉
〈サンダー〉
ディオドラが言い切る前に、俺達は爆発的な加速力を持ったスピードで一瞬にして詰め寄った。そして、そのまま奴にそれぞれの拳打を打ち込んだ。
「……かっ」
さっきまで笑っていた奴の顔は、苦悶の表情に歪む。俺達の攻撃に全く反応できなかったようだ。俺は訊く。
「2対1でも余裕だったんじゃないのか?」
ディオドラは後ずさりしつつ、手を前に突き出して、魔力の弾を複数作り出す。
「僕は現魔王ベルゼブブの血を引く者なんだ!キミ達のような有象無象の輩に負けるはずがない!」
ディオドラは魔力弾を俺達に放ってくる。俺はあるカードをラウズさせようとしたが、イッセーがそれを止めて、俺の前に立った。
イッセーは弾の雨を避ける素振りを見せずに歩き出した。弾を手で弾き、跳ね返しながら、前へ前へと進んでいった。
とうとう、奴の目の前にイッセーが迫った。ディオドラは危険を察したのか、攻撃を止めて、空に逃れようとした。
しかし、イッセーはそれに瞬時に追い付くと、回し蹴りを叩き込み、地面にはたき落とした。
「痛い。痛いよ。僕はオーフィスの力で絶大なまでに強くなったんだ。それなのに、どうして!」
俺とイッセーはディオドラにまた近づき、攻め込もうとする。
「こんな……こんな奴等に僕はぁぁぁっ!」
ディオドラは両手を前にかざし、分厚いオーラの壁を作り出した。
「ーーだったら!」
〈フロート〉
〈ドリル〉
〈トルネード〉
〈スピニングダンス〉
俺は竜巻を周りに纏わせ、体を回転させながら、宙に浮かせた。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』
イッセーは倍加の重ねがけをして、空高く跳び上がった。
「ハァァァァァァァッ!」
「ダァァァァァァァッ!」
そして、風を纏わせたドリルキックと強烈な力を持った急降下キックがオーラの壁ごとディオドラを打ち抜いた。俺達の足技により、神殿に立っている柱のところまで、ディオドラは吹き飛んだ。
ディオドラは気絶こそしていないが、全身を震わせて怯えきっている。
イッセーは左手からアスカロンを出して、ディオドラの首に突き付けて言った。
「今度アーシアの前に姿を現したら、その時こそお前を殺す」
奴はガクガクと体を震わせながら、何度も頷いた。イッセーはそれを見ると、アーシアの方を向いた。
「アーシア!」
装置があるところに全員が集合していく。本当に良かった。アーシアが無事で。
木場と小猫ちゃんは、アーシアを拘束している枷を外し始めた。ーーが木場達の表情が険しくなっていく。
「そんな!この枷、外れない!」
なんだと?そんなことって……、
「ダァッ、くそっ!」
イッセーも外そうとするが……嘘だろ?イッセーの力を持ってしてでも外れないのか!だったら、
「ハァァッ!」
今度は俺がブレイラウザーを振り抜くが、傷ひとつつかない。他にも、様々な方法を試すが、どれも効果が見られなかった。
「……無駄だよ。それは絶対に外れない。ーーアーシアが能力を発動しない限りは」
突然、ディオドラが呟き始める。
「それはどういうことだ?」
俺が怒鳴るように訊くと、奴は淡々とした口調で喋り始めた。
「この装置は結界系神器最強の『
「発動条件とこの結界の能力はなんだ?」
俺は質問を続ける。
「条件は僕か、他の関係者の合図。もしくは僕が倒されたら。それで、能力はアーシアの神器の能力を増幅。それと同時に
回復を反転させると攻撃になる。それは前のレーティング・ゲームの時、副会長がイッセーと戦っている最中にに見せていた。
『あの時はイッセー君がかわしたから、どれほどの威力なのか計り知れなかった。しかし、彼らの作戦に使われている以上、殺傷能力は想像以上に高いのは間違いないだろう』
たしかに、嶋さんの言う通りだ。大きな被害が出る前に防がないと!
この枷をどうやって破壊すればいい?ロイヤルストレートフラッシュならーー駄目だ、あれは強力過ぎる。アーシアにも危険が及ぶかもしれない。
「私の力で先生やミカエル様が……そんなことになるぐらいなら、私をーー」
「何言ってんだよ!俺は諦めないから、だから、アーシアも諦めるな!」
アーシアは弱気なことを口にするが、イッセーがそれを否定した。
静かな音を立てて、装置は動きだした。どうしたらいい?どうしたら、みんなを助けられる?装置の音は徐々に大きくなっていく。
…………破壊できないなら、受けるだけだ。
「イッセー、譲渡を頼む!」
〈エボリューションキング〉
「……策があるんだな、ハジメ。なら、任せるぜ!」
イッセーは俺の頼みを快く聞いてくれた。実戦では初だが、これなら全員が助かるはずだ。いや、助ける!
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!』
『Transfer!』
イッセーの譲渡が終えたタイミングで、装置の音のパターンが変化した。すると、アーシアから緑の光が発せられ、装置はそれに呼応するかのように、赤い暴力的な鋭い光を辺りに拡散し始めた。
〈スペード、ハート、クラブセブン、アンド、スペード、ダイヤエイト〉
〈フルハウス〉
俺はキングラウザーを地面に突き刺し、装置をまるごとすっぽりと覆うようなドームを形成した。今の俺が作り出せる最強の盾ーー〈フルハウス〉。それは装置から放たれた攻撃を全て受けきり、見事に役目を果たした。
装置が完全に停止すると、アーシアの拘束はあっけなく解かれた。ディオドラも放心状態だし、アーシアも解放された。これでようやく一件落着だな。
「アーシア!良かった!お前がいなくなってしまったら、私は…………」
「本当に良かったです!アーシア先輩が帰ってきてくれて良かったです!」
ゼノヴィアとギャスパーは泣きながら、アーシアが解放されたことを喜んでいた。
「泣かないでください、二人とも。イッセーさんのこと、みなさんのことを信じてましたから」
そんな二人をアーシアはなだめていた。
「じゃあ、帰ろうぜ、アーシア」
「はい!」
みんなが笑いながら、この場を去ろうとした刹那、アーシアが光の柱に包まれていた。
「チッ!」
俺の体は瞬間的に動き、アーシアをその場から退かそうと跳ぶが、それはならなかった。
カッ。
光が消え去ると、俺の目の前には複数の色をマーブルしたような、歪んでいる景色が広がっていた。
俺とアーシアは何処かに飛ばされてしまったのだ。