彼方の空   作:ショ・シンシャ

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ようやく原作1話……


人生って幸運だけでは作られてない

IS学園の校舎前に貼られた張り紙の前にて、3人の少女が自分の名前を探す。

 

「えーっと、簪ちゃんは一組で……うぅ〜! 私4組ー!? 簪ちゃん達と別々なんて〜!!」

 

「……うん、寂しいけど、クラス分けは公平なものだし仕方ないよね……」

 

簪が仕方ないと心の中でなんとか割り切れた中、空が彼女そっくりの色をした自身の髪をわしゃわしゃとさせる。

すると、簪の親友である布仏 本音がかなり遅れて自分の名前を見つける。

 

「あ、あったー! かんちゃんと同じだねー!」

 

「あ、のほほんちゃんは簪ちゃんと同じなんだね! バラバラにはならなくて良かったー!」

 

先程まで落ち込んでいた空も胸を撫で下ろし、全員までは離れ離れにならなかった事を素直に喜ぶ。

この底抜けなまでの明るさが彼女の魅力だ。……ちょっとおバカなのはご愛嬌。

 


 

「じゃ、ここで一旦お別れだねー! すぐ行くからー!」

 

「あ、そっちは2年生の教室……って、行っちゃった…」

 

空は2人と別れ、大きく手を振りながら2年生の教室の方へと早歩きで向かった。

この後盛大に2年生へ「これからよろしく!」と挨拶をした空は、本音の姉の案内によって4組になんとかたどり着けた。

 


 

「はーい、皆さん揃ってますねー! 朝のSHRをはじめますよー!」

 

黒板の前でにっこりと微笑みながら、一年一組の副担任である『山田 真耶』が明るく振る舞う……が、生徒の9割くらいはそっちなんかより何倍も気になる事があった。

そう、2人の男性操縦者である。その片割れである織斑 一夏は……

 

(や、やべぇ……めっっちゃ見られてる……! 動物園のパンダってこんな気持ちだったのか……!)

 

「それでは皆さん、1年間よろしくお願いしますねー! …………あの…じゃ、じゃあ出席番号順に自己紹介をしましょう!」

 

ガチガチに緊張していた。何なら動物園のパンダ以上に女子からの視線を向けられていて、彼は身動ぎひとつ出来なかった。もしかしたら人の視線には石化の力があるのかもしれない……なんて事を一夏が思ってると、山田先生が自己紹介を振ってきた。

 

(もう1人は……って、何のんきに水飲ん…で……)

 

一夏はチラリと、隣の席に座っているもう片方の男性操縦者の方に目を向ける。

短くまとめられた茜色の髪と小柄で痩せ気味なのが特徴の彼は、ペットボトルの水を飲んでいた。

一瞬その図々しさに憤りすら感じられたが……彼の手元を見てそんな感情は瞬く間に消え去った。

 

(薬? ……ていうかあれ、デカくないか!?)

 

薬の名前までは分からなかったが、額から冷や汗をタラリと流していた彼の顔と錠剤の大きさを見るに、明らかに効果の強いものを飲んでいる事くらいなら、察しの悪い人間とよく言われる一夏にも分かった。

 

「え、えーっと…次は一ノ瀬くんですね!」

 

「はい」

 

山田先生に名前を呼ばれた彼は、周囲から心配の視線を向けられている中、何事も無かったかのように立ち上がり自己紹介をスラスラとしていく。

 

「一ノ瀬 五月だ。特技はスケボーと他人の真似。……それとこれは特技と言えるかは分からんが、鼻が利く。趣味は動物図鑑を見るのと…テレビゲームだ。……これからよろしく頼む」

 

自己紹介は完璧に済ませ、一ノ瀬はさっさと座る。

小さな拍手が響く中、次は自分だとギリギリ気づいた一夏は急いで立ち上がる。

 

「次は……織斑く「はいっ!!」うひゃあ!! び、びっくりしました……い、いきなり立ち上がらないでください〜!」

 

いきなり立ち上がった一夏に山田先生が驚いてしまった事で、周囲に少し気まずさが残ったが…一夏は立ったままはもっとまずいと考え、とりあえず自己紹介を始める。

 

「え、えーっと……織斑一夏です! 好きな物は稲荷寿司です!」

 

無難な挨拶と好物を言った一夏だが、周囲は更なる情報開示……もとい、一夏の趣味や特技は何なのかと期待していた。

 

「………その、い、以上です!」

 

我慢の限界に達した彼は自己紹介をやや強引に切り上げる。

すると、かなり期待をしていた生徒の7割くらいが椅子からずり落ちそうになる。というか何名かはずり落ちた。

 

(やべぇ…完全にやらかした……!! どうにかしねぇと!)

 

「……自己紹介くらいはしっかりやれ。織斑」

 

「ち、千冬姉…あだっ!」

 

何とか取り繕おうとする一夏だったが、それも姉の登場によって不可能になってしまった。

自身の姉である織斑 千冬の名前を思わず呼んだ一夏の額に、かなり強めに放たれたデコピンが直撃する。もし名前だけ言って切り上げていたら、彼女の持っている出席簿が彼の脳天に炸裂していただろう。

 

「学校では織斑先生だ。公私混同は良くないぞ。……さて諸君、私が織斑 千冬だ。私の仕事は、君達新人を1年で使い物になる操縦者に育てる事だ。私の言う事はよく聴き、よく理解しろ。できない者にはできるまで指導してやる。逆らっても良いが、私の言う事は必ず聞け。良いな?」

 

一夏に向けた呆れ混じりの声とは違い、やや優しめの声で言った千冬。

そして千冬が言いたい事を言い切った瞬間、音響兵器(女子の歓声)が炸裂した。

 

「千冬様! 本物の千冬様よーーーー!!!!」

「カッコイイーー!!!」

「私、お姉様に憧れて北九州からこの学園来たんです! 北九州から!!」

(………流石にうるさい)

(先生、大人気だぁ〜!)

 

大音量の歓声に簪は顔を顰め、本音はちょっと呑気に感じていた。

そして一夏は目を回しかけ、一ノ瀬は耳鳴りに悩まされていた。

 

「はぁ……毎年毎年、よくもまあここまで集まるものだ。それとも私のクラスだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 

(いてて……俺、ここでやっていけっかな……?)

 

(…………あまり、いい印象は得られなかったか)

 

千冬のため息と愚痴が零れる中、2人の男性操縦者はこの先へ不安を覚えていた……

 

IS学園での生活が幕を開ける。




これ、ダイス神が悪いんです……ピンポイントで4組引いちゃったんです……
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