彼方の空   作:ショ・シンシャ

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我々にとてもよく刺さる言葉


途中でほっぽり出すのは非常によくない

IS学園の整備室にて、空は国連から与えられた専用機である『ECF』がワイヤーなどで吊るされながら、整備科の生徒達に弄られているのを見ていた。

 

「……なんか、すっごい申し訳ないんだよね。荷物運びをしようとしたら止められたし……」

 

「ううん。空ちゃんが心を痛める必要はないよ…未完成のままで渡した国連に非があるから……」

 

空が頬を膨らませて少し不満そうにしているのを、隣で打鉄弐式の調整をしている簪が宥める。

そもそも脚も翼も装甲もスラスターも無い未完成品が送られてきたのには理由がある。

 


 

IS学園入学の2ヶ月前、空は束と簪を自宅に迎えていた。

 

「ほうほうここが空ちゃんのお家か〜あっ!?」

 

「あ、お義母さん。お邪魔します……」

 

束は靴をほっぽり出してリビングに入ろうとした瞬間、空の母親に猫のように摘まれて彼女の部屋に連れ込まれた。

空の母親は簪が来たのを感じた瞬間、少しだけ部屋のドアを開けて、2人にくつろぐよう言った。

 

「あら、簪ちゃん! 私はちょーっと、この子とお話があるの。お茶はそれから出すから、それまでリビングか空の部屋で待っててね?」

 

「は、はい……」

 

「ちょっ、助け! 2人とも助けてアーーーー!!」

 

((……合掌))

 

2人は知っている。あの状態の彼女を止められた試しがあるのは、誰1人いないことを。

五分ほどして、倫理観についての本などを持たされた束が出てきた。

 

「…その、うちのお母さんがすいません……」

 

「あ、うん。大丈夫…………とりあえず、簡易的な検査をしよっか」

 

束がテーブルに本を置いて、どこからともなく大量の機器を取り出す。

空の体に次々と取り付けられた機器が生体データを読み取った結果……

 

「……Eだね」

 

「Eですね……」

 

「うん……」

 

モニターに映し出された結果は『E』……S A B C D Eの6段階あるうちの最低ランクだ。ここまで低いと動くのすら満足に行えない。

試しに束がもう一度検査をしてみる。

 

「……やっぱりEだね。よし、もう一度検査して──」

 

「いや、もういいですから!」

 

「流石に諦めが悪いです……」

 

なおも検査を続けようとする諦めの悪い束を2人が止める。

腕を組んで唸る束は、限りなく不正に近い行為を提示してきた。

 

「うーん、あんまりやりたくはなかったけど……私の手で適正上げちゃうか!」

 

「え、適正って上げれるんですか!?」

 

「IS適正は乗り続ければ上がるらしいし、乗り続けるとか……?」

 

驚く空と適正の上げ方について考察している簪を見て、束は胸を張って

 

「うん! 乗り続ければ上がるのは勿論だけど、私の手にかかれば直接!一気に! ぐーんと引き上げられるよ!」

 

「そ、そうなんですか……」

 

「それじゃあ早速やっていこー!」

 

10分ほどで束が空のIS適正を引き上げ、再び軽い検査を行った。

 

「おかしいなぁ……束さんの目にはEという文字が見えるんだけど……」

 

「故障でしょうか……?」

 

軽い現実逃避に陥った束はモニターを解体して組み直すが、全くもって正常だった。

 

「そっかぁ! モニターの調子が悪、い、かも……え、全然故障してない……はは、ははは……」

 

「……篠ノ之さん。ここを見て」

 

顔を覆う束の横で、簪がモニターに映し出された結果の1部に指をさす。

束がそこを見てみると、適正を上げる前より『ちょっとだけ』数値が伸びていた。

 

「あ、うん。上がってるね。……うん。……でも、この数値だと上半身しか動かせないよ……?」

 

「頑張って乗り続けて、それで適正を上げるしかないと思う……」

 

IS乗りへの道のりは長い……

そして第2の問題にぶち当たる。

 

「空ちゃんの機体、どうしよう……訓練機なんて論外だし、流石の束さんでも乗れない人を想定したISは考えた事もないよ……」

 

元々ISは、その総数の少なさから適正の高い者が乗る前提で設計されている。

少なくとも、束自ら設計したISは満足に動けない者が乗る事まで想定されていない。

IS学園に案山子と変わらないレベルのIS適正の人間を生徒としてねじ込むには、流石の束でも理由付けが必要だ。

 

「適正の低い子が使うのを前提として設計されて、それでいて誰も使っていない……そんな都合のいい専用機がある訳……あ、あるじゃん!」

 

そんな都合の良すぎるISが……あったようだ。

空に最適と言っていいほどピッタリなISの存在を束は思い出した。

 

「そうだあれがある! 国連主導で開発していた機体ECF! IS適正の低い子がパイロットの前提で開発された! 結局開発は途中で凍結されちゃったけど、空ちゃんにはピッタリの機体じゃん!!!」

 

ウキウキのまま束は検査機器と渡された本をしまって家を飛び出した。

顔を見合わせる空と簪。

 

「……それで、専用機ってすごいの?」

 

「うん。ガン〇ムとかシ〇ア専用ザ〇くらいすごい」

 

簪はオタク知識の乏しい空にも分かるよう、有名どころで専用機がどれくらい凄いのか例える。

 

「え、めっちゃ凄いじゃん! それに、簪ちゃんも専用機? 持ってるんだっけ! お揃いだね!」

 

「はう……♡‬」

 

「簪ちゃーーん!?」

 

目をキラキラさせる空を見て、簪はまたキャパオーバーでぶっ倒れた。

そんなこんなで、空はECFのテストパイロットとしてIS学園に入学する事になったのだ。

 


 

5日後。専用の台に鎮座しているECFに、フルスクラッチされた脚部やスラスター、ウィングユニット……そして申し訳程度の装甲が取り付けられた。

 

「それじゃあ、まずは乗ってね! 初期化と最適化は勝手にされるから!」

 

「はい!」

 

整備科の先輩に搭乗を促され、ISスーツを着た空はECFに身体を預ける。

空の身体に合わせるようにECFのフレームがスライドし、少しずつ最適化されていく。

 

「これが、ISの視界……」

 

ハイパーセンサーによって得られる360°の感覚と共に、空の脳へ様々なデータが次々と送り込まれる。

3分ほどして、情報の流れに慣れた空は目を開ける。

 

「うん! しっかり乗れたみたいだね。それじゃあ動いてみよっか!」

 

「はい!」

 

2時間ほど上半身を動かしていると、突如ECFが光りだし……

 

「おっ、キタキタキタキタ!!」

 

訓練機を纏ってサポートをしてくれた整備科の先輩が興奮冷めやらぬまま、変貌していくECFを見る。

灰色の無骨ささえ感じられたフレームは彼女の髪色そっくりな空色に変わっていき、角つきの多かった腕部と脚部は空気抵抗を意識した流線型のものになった。

そしてウィングユニットとサブスラスターはいつの間にか消えており、各部装甲に一体化していた。

 

「空色……私と簪ちゃんの髪にそっくりな色……」

 

空がパーソナルカラーに驚いていると、ECF最大の特徴である装備、ウェポンラックから専用サブアームが伸びてきた。

空は自分に武器を渡すよう命令してみるが、サブアームはうんともすんとも言わない。

今度はメニューを開き、直接呼び出し(コール)してみるが、やたらと時間がかかってしまう。

……しばらくは武装を使わず動くのに専念した方がいいかもしれない。




機体名:ECF Extended (長期的に)Curse kill (呪い殺す)Fortress (要塞)
所属:国連
製造元:日本、ドイツ、イタリア
世代:第2世代
待機形態:簪(人物名でなく、物の方)

【武装】
特殊ナノマシングレネードランチャー:ABCグレネード射出装置
5.56mmリボルバー:シュツルム・ファウスト
5.56mmアサルトライフル:穿(うがち)
手榴弾:死神のお守り(数十個)
8mmサブマシンガン×2:レーゲン&ブリッツ【雨と稲妻】
特殊ナノマシン散弾ショットガン:vanitasia(ヴァニタシア、虚無)
特殊ナノマシン:BLUE BIRD

【説明】
元々は国連が"IS適正の低い人物"が乗ることを想定して開発された機体。
コンセプトはパイロットと機体の追従ラグを様々なシステムとプログラムで強引にサポートし、とにかく動きやすい事を重視している。
しかし、篠ノ之 束がISコアを増やさず行方不明になってしまったため、コアを確保出来ずに計画は凍結。脚部も翼も無い未完成の基礎フレームと武装だけが残されていた。
そして数年の時を経て、ECFは主を得た。
強みとしてまず挙げられるのは、その扱いやすい武装。初期装備で大量の武器と弾薬がウェポンラックと拡張領域に搭載されており、常に撃ちっぱなしにでもしない限り、試合中に弾切れする事は無い。
未完成だった部分は整備科の生徒達によってフルスクラッチされたパーツを組み込まれ、僅か5日でISとして動かせるようになった。
弱点はその装甲の薄さと近接武装が無いこと。本人の希望でデッドウェイトを極限まで削ったせいか装甲はほとんど無い上に、近接武装に至ってはマニュピレータで殴り飛ばす前提で設計されている。そのため腕部は異様に硬い。
どうやら一部の武装に特殊なナノマシンが搭載されている弾頭があるようだが、詳細は未だ不明。
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