所長にチートオリ主サーヴァントを召喚させたかっただけ 作:がばがば小説マン
妄☆想
ーー始まりは、あの豪雨の日から……だった。
「……どうして」
目の前に無造作に寝かされた一組の男女と、幼い男の子。一見安らかに眠っているように見えるそれらは、しかしどう手を握っても、二度と僕の手を握り返す事は無く、感じられるのは冷たさだけ。
僕は……何も守れなかった。
あの日。日本に、台風が直撃した。夏場では特に珍しくもないそれは、しかしそれまでとは比べ物にならない威力を以て日本を襲った。
空は悉く漆黒に染まり、雷鳴はひっきりなしに地を突き、まるで海が空の上に一つ出来てそれが降り注いでくるかのような大雨が降った。
当然のように日本各地では土砂災害が起こり、テレビではそれはもう大きなニュースになっていた。
テレビによれば、それは十年に一度、いや百年に一度の大雨だったと。そんな事を聞いた。
「……なんで」
……僕の家のすぐ近くで、突然大規模な土石流が発生した。史上類を見ない規模のそれは、多くの犠牲者を出した。
僕は、その土石流の唯一の生き残り。
「……なん、で……なんでっ……」
最早悲しむ事すら既に疲れてしまった僕の、喉の奥からこみ上げてくる『それ』は、最早喪失の悲しみに由来する物ではなかった。
「何も……守れない」
家族すら、大切な人すら守れなかった自分への絶望。
しょうがなかったなんて思えない。思いたくない。
父さんも母さんも弟も死ぬしかなかったみたいじゃないか。あんな汚ならしい土石流に飲まれて死ぬのが運命だとでも言うのか。
そんな運命なんて、認めたくない。
だけど、無力な僕にはそれを否定するだけの力が無かった。それだけだ。
「……」
親友も片想いの人も行方不明。
故に、僕はどこまでも孤独。
そして所詮僕は死に損ない。
最早、僕は手元の縄で首を括るのに何も遠慮など無かった。
《暗転》
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「……、……?」
……声が、する。誰だろう。
「……ーい?……か?」
……この声は……
「……しかし、寝顔も可愛いな……マリーは」
「……るせる?」
「おっ!おはよう!!」
やっぱり!!るせる!!!るせるだ!!
「るせる!!るせるぅ!!!」
思いっきり、それこそもう壊してしまうような力でルセルのお腹に抱きつく。
「ぬおおおぉぉぉぉぉ!?!?!?」
「るせる……怖かった……怖かった……」
安心感で胸を一杯にしながら、ルセルの胸に頭を擦り付ける。それはまるで迷子が親にやっと出会えたような表情をしていたと、後にルセルは語っている。
「おうおう、どしたどした。よしよし、ルセル君が居るぞい。」
そう言いながら、ルセルは私の頭をポンポンと、安心させるようにやさしく手を当ててくれている。
あぁ……薄暗い部屋の中、ルセルの声が、ルセルの手の感触が、ルセルの胸の温もりが、今自分が『護られている』事を感じさせる。こんな事、人理焼却前では考えられなかった。
人理焼却がなければルセルと出会うことは無かったと考えると、寒気がする。
その点では、最早人理焼却に感謝すらしている。
「あのね、るせる……怖い夢を見たの。なんだかルセルと同じような気配がする男の子がね、家族を喪ってね、建物の中で自殺する夢だったの……怖かった……」
そう言った途端、ふと思い出した。
マスターとサーヴァントが契約を結ぶと、稀にサーヴァントはマスターの記憶を、マスターはサーヴァントの記憶を夢という形で体験する事があると。
その事を思い出して、ルセルの顔を見ると……なんだかすごく哀しそうな、それでいて苦しそうな目をしながら天を仰いでいた。
「るせ、る……?」
もしかしたらこれはルセルのーーー
「……マリー」
ーーー突然、ルセルが強い力で背中に手を当てて私を抱き締めた。
「あっ……」
全身でルセルの温もりを感じる。あぁ、あぁ、なんと甘美で、優しさと愛に満ちた抱擁なのだ。これが、幸せなのだと、確信させる程に、それは魅力的だった。
「……マリー、それは確かに僕の記憶だ。僕の過去だ。だけど、必要のない記憶だ。忌むべき過去だ。そんな物をマリーに見せて怖い思いをさせてごめんな。」
優しさに満ち溢れた、しかしどこか切なさを感じさせる声で語りかけて来る。
「ルセル……」
「……マリー、これからも、貴女の事を守らせてくれ。僕はずっと貴女の味方だ。」
ーーーこの時この瞬間、もう私の次の行動は決定された。
「……それにしても、午前2時かぁ……ずいぶん中途半端な時間だな……また一緒に寝r「ルセルっ」!?!?」
ルセルが時計を確認して振り返る瞬間、無理やりルセルの口に舌を捩じ込んだ。
「っ!?!?」
ルセルが驚愕の表情を浮かべている事など一切気にせず、ルセルの口内を激しく隅々まで蹂躙する。
同時に彼の口の中でねっとりと、しつこく舌と舌を絡み合わせ、私の唾液を彼の唾液に練り込む。
「っ、ぷはぁっはあっ……な、なに……?」
彼の蕩けたような顔を確認しながら、唇と唇を離す。お互いの下唇に出来たぬらりとした銀色の橋が、初めてルセルと私が肉体的に繋がれた証のような気がして、私にはそれがとても輝いて見えた。
「ルセル……♡婚前交渉……しちゃいましょう♡」
「ファッ!?ちょまっ」
顔を赤らめながらも困惑している彼の表情にバーサーカーのように理性を奪われた。それは正に狂化付与。思わずベッドに押し倒してしまった。端から見れば私が襲っているように見える。
しかし、サーヴァントなら難なくはね除けることができる筈なのに、私でも押し倒す事が出来ているということは、つまりルセルも男の子だと言うこと。同意の証と見て問題は無いだろう。
またつまり、それは私に興奮しているということ。その事実が、何より私のスイッチをオンにした。
「ちょっちょっ……待って!!待ってくれ!!」
「ルセル……どうしたの?」
ルセルが焦りながら私を静止する。なんだろう。もしかしたら、嫌だったのだろうか……
「えっと……その……一応僕……その……」
彼が顔を赤くしながらモゴモゴしている。なんだかとても言いにくそうだ。なんだろうか。
「こ、これが僕の初体験になるからさ……や、優しくしてね……」
~~そして私の理性はふっとばされた~~