彩音恋葉の気まぐれβテストデバック   作:朱華麒月

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ゲーム開始!

ようこそβテストへ

 

そうデカデカと書かれたテキストにワクワクと胸を躍らせる。

寒空の中やっと買えたVRゲーム機を装着して初期設定を終わらせて、やっとこさたどり着いたゲームの入り口ですでに興奮が抑えきれなかった。

 

 

 

「新作VRMMORPG…大規模βテスト、テスター募集中…ねぇ」

そんな広告と共にくるくると動くアバターは多種多様な種族で様々な武器を使いこなしている。

今まで医療用としてしか使われていなかったVR空間。……まあ、細々としたゲームはあったらしいがどれもパッとしない、いわば手探り状態のゲームばかり。そんな中ゲーム業界に就職しようと検索エンジンをブンブン回していた僕、紀月無色(きのつきむい)はあなたへのおすすめという何ともまあ好みをついてくる広告に見事に引っかかってしまったのだ。

「まあ…応募したところで当たるとは限らないし…やってみますか!」

勢いのままにボタンを押していく。勿論、詐欺でないかなどは確認をして。個人情報の秘匿や管理…ゲームをする際の注意事項…収集する情報の選択…の辺りで指が止まる。

「デバックの協力……?」

ピコンと浮かんでいるハテナを押すとずらずらと内容が羅列されてゆく。

「詰まりゲーム中監視される代わりにバグを見つける度に500円貰えるしナビAIちゃんが付いてくるってこと…!?やるしかないでしょう!」

ちゃっちゃかとチェックボックスを埋めて送信ボタンを押す。その頃にはもう当たらないとゲーム会社に乗り込む勢いだった。

 

 

「……で、当たったわけだけれど。」

改めてその自由度に驚かされた。βテストだからと侮る勿れ。髪型から目の色は勿論。体型種族爪の形くびれの位置etc…

「…ッスゥとりあえずテンプレの中から選んで時間がある時ちょいちょいいじりますか」

との事で最低限目と髪だけ拘ってあとは理想に近いテンプレートを選ぶ。

髪は少し黄色みがかった白。それをハーフアップでまとめて種族の特徴の猫耳を生やす。目は輝く蜂蜜色だ。身長はリアルと齟齬が起きづらい様におんなじで……いや、ちょっとだけ盛って、体重は……低めで。

「名前はいつもの…」

 

“彩音恋葉”

 

迷わず指を滑らせて設定完了を押す。

それじゃ!ちょっと行ってきますか!

 

 

 

「…で、開始したは良いものの…」

βテストとはいえ配信直後。かなりの人数がはじまりの街で右往左往している。恥ずかしながら僕はコミュ障なのでそっと街の路地に身を潜める。にぎにぎと手を握ったり歩いている感じは現実世界と同じような感じで違和感などは殆ど無い。

「最初のチュートリアルがない系か〜じゃ、まず最初に確認するのは…」

人それぞれだと思うが僕はプレゼントBOXからである。「ステータス」と口遊みあからさまに通知が溜まっているボタンをポチりと押すとあった。目的の物が。

「AI“Kana”のコア」

音読した瞬間しゅわりと溶けるように消える。焦って声を出す前にシャラリと涼やかな音に変わって目の前に姿が形取られてゆく。小さめの足を守る紺の靴。白い靴下は太腿まで伸びてふわりと青いスカートで包まれ隠される。白いブラウスと共に祈るような手。爪は綺麗な桜色。スカートから伸びたリボンが首後ろで結ばれて、優しく笑みを浮かべた口元。淡く染まったほっぺ。薄く閉じられた瞳は何色だろうか。最後にふわっと現れる桃色の髪に…ぴょこりとうさぎの耳が生えた。

「初めまして。私、彩音恋葉様のお手伝いをさせて頂く“Kana”と申します。」

美しいカーテシーをしたその少女は、涼やかな水色の瞳でこちらに笑いかけた。

「かっ可愛い……!」

とにかく可愛いの一言に尽きる。説明文にはメイキングされた性別や種族などに合わせてランダム生成とは書いてあったがこの完成度はすごい…と、技術者視点でジロジロと見てしまう。

「あ、あの……何かおかしな所がありましたか……?」

「ふえ!?いやいや!むしろ可愛すぎて完璧で驚いていただけだよ!これから宜しくね、かなちゃん」

しんぱい…という表情を浮かべていたかなちゃんであったが、差し出された手を見てまたあの可愛らしい笑顔を見せてくれた。

「はい!宜しくお願い致します!」

 

こうしてやっと、僕達2人の冒険は始まったのだ。

 

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