翌日、ゆりかもめを経由して品川近郊の難民キャンプに到着した和美は、2年生の高尾佳乃と合流し、状況確認を行った。
「昨日はありがとう、佳乃ちゃん。それで、状況は?」
「警備状況ですが一時暴動が発生したのみで、外については問題ありませんでした」
「了解。因みに暴動の内容は?」
「昨日、柚木様達が接敵したヒュージの件ですよ。こっちに来るんじゃないかだとか何とかで。大変でしたよ」
「下北沢から疎開してきた人達ばかりだものね。ん、分かったわ。後は任せて、ゆっくり休んで」
「そうします。慣れない事して疲れてるんで」
酷い隈を湛え、大きく伸びをする佳乃を見送った和美は、指揮所のスマートテーブルを見下ろす。
避難所の全体像に、各地域のストレスレベルを色で表すそれを和美は確認する。
(聞いていたよりも状況は悪そうね)
避難所のストレスレベルは最高クラスを示す赤紫色に染められたエリアが多く、そこに防衛軍の人手も集中していた。
所謂ライオットコントロールの為に専門職があてがわれ、そう言った類を必要としない部分に代替としてリリィがあてがわれる配置。
(ヒュージがいなければリリィの扱いもこんな物ね)
ヒュージ退治以外出来ない生娘にやらせられる仕事はこんな物だろうとマップを見ていた和美は一人納得していた。
「和美、状況はどうですか?」
指揮所に入って来た黄昏の呼びかけに、振り返った彼女は1人いない事に気付いた。
黄昏の背後、劣悪な難民キャンプの状況を苦々しい目で見回していた真霜は、そんな和美の視線に気付く。
「何だよ、性悪女。人の事ジロジロ見やがって」
「……あなた達、姫神さんと一緒じゃなかったの?」
「は? お前と一緒じゃねえのかよ」
頭の後ろで手を組んでいた真霜の半目に、睨みを返した和美は自他に呆れてため息を漏らす。
「あなたの方で位置は分からないの?」
「……クソが。アイツ電源切ってやがる。位置が分からねえ」
「偶然、な訳無いわよね。やられたわ」
苦笑を漏らした和美を睨んだ真霜は、やれやれと首を振った彼女に掴み掛かろうとする。
直前で黄昏に止められたが、勢いはそのままに和美に糾弾の声を浴びせる。
「何冷静になってやがる! 今すぐに」
「探しに行けないわよ。居場所も分からないし、それに、あなたを含め、私達はここの警備統括をしなきゃいけないから」
「クソが……!」
八つ当たり気味に、血が出る勢いで戸棚を殴りつけた真霜は呆れている和美を睨み付ける。
滴っていた血は時間が経つにつれて止まっていき、傷跡すら無くなっていく。
「何処行ったんだよアイツは……!」
苛立ちを吐き出した真霜は、至って冷静な2人の視線から顔を逸らし、その場を後にした。
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同時刻、渚達を伴い天王洲方面に出ていた真波は、近場のコンビニで缶コーヒーを口にしていた。
「案外、話せば何とかなるものだな」
ケロッとした顔の真波に半目を向けたアイネは、ペットボトルの紅茶を飲みながらここに彼女が居る経緯を思い出す。
自らのポリシーに従い、現地偵察の為にアイネ達に同行しようとしていた真波だったが、当然ホテル側から止められてしまった。
どうしても、と食い下がった真波は、支配人に対し、自己責任を誓約する文章を交わし、死のうが何があろうが、ホテルに責任を求めない事を約束した。
「こう言ったフィールドワークは我々に任せて頂ければ良かったのですが」
「馬鹿を言うな。お前達をスラムに放り込んでおいて快適に過ごせる訳が無いだろう」
「お気遣い感謝しますが、我々としては監査官が前線にいると言うのはあまり良いとは言えません」
「分かってるよ。気休めだが、
「早々使わせません。ご安心を」
そう言って空にしたペットボトルを落書きだらけのゴミ箱に入れたアイネは、略式制服から比較的ラフな格好に変わっている面々を見回す。
スラム街の風景に少しでも溶け込む為の方策として、用意された服装はいわゆるストリートファッションの類で、近接戦用のCHARM群は何れも楽器のケースに収められていた。
一見すれば売れないガールズバンドの様に見せかけた彼女等は、真波が取り出したタブレットの周りに集まる。
「これからお前達には突入対象である関東新選組の支部の周辺調査を行ってもらう。この調査の目的は、以前話したと思うが、支部を吹き飛ばすにあたって余計な火種が無いかを確認する為だ。無論諸君らの実力をもってすれば引火してもまとめて消し飛ばせるだろうが、その分戦闘が長引く事になる。諸君等とて余計な面倒は嫌いだろう。そうならない為の調査となる」
「その後はどうしますか?」
「準備の手間を惜しむ為にそのまま突入と言いたいが、それではお前達を危険に晒す事になる。一旦戻って制服に着替え、それから作戦を敢行する。支給した服はあくまでも市販品だからな。防御性能なぞ皆無に等しい」
そう言いながらタブレットの地図を操作して、真波はそれぞれのエリアに担当を割り振る。
腕を組んだまま、担当振りを見ていた麻衣はオリヴィアとアイネの恰好を横目に見る。
「……アンタ達のそんな恰好、初めて見たかも」
「でしょうね。私もオリヴィアもこう言うファッションとは無縁だもの」
「はっ、相変わらず育ちが良い様で」
皮肉る様に言う麻衣に、苦笑を漏らしたアイネは、担当エリアと相方が記載されたデータを受信する。
端末を操作した彼女は、眼鏡型の光学センサーから送られる視界に情報を上乗せする。
捜査に従い、デバイスの光学素子が捉える周囲の風景にエリアへの道筋が重なったのを確認する。
「こちらは情報を確認したわ。全員、情報は行き届いているわね?」
音頭を取ったアイネは、頷く面々を見回すと改めて情報を確認する。
アイネ達6人は3組のペアに分けられており、アイネと渚、麻衣と優愛、オリヴィアと冨亜奈がそれぞれペアを組まれていた。
示された情報通りなら、ある疑問が生じる。
「監査官。1点、質問宜しいでしょうか」
「ああ、良いぞ。何だ?」
「頂いた情報には監査官が記載されていませんが、どうなさるおつもりですか?」
「私か? そうだな、近場の喫茶店でも見つけてお前達の吉報を待つさ」
「……何かあった際はすぐに連絡を」
遊撃するつもりだと見抜いたアイネは、苦笑を浮かべる真波にそう言うと渚達に指示を出し、それぞれ調査に入った。
コンビニの敷地から出ていく6人を見送った真波は、タブレットを収めた斜め掛けを背負い、後を追う様に移動した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一人荒れ果てた町を歩いていた真波は、支部近辺に差し掛かると腰に手を回し、後ろ手にスライドを引いて差し直した。
もしもの備えを用意した彼女は、端末を手に支部を素通りしながら正面の状況を確認する。
(正面に見張りが一人、大胆にも剥き身で散弾銃装備か。攻撃理由のこじつけには好都合だな。ドアの奥にはバックアップが一人、こっちの装備は拳銃だけか)
内心で数を数えながら目の前を通り過ぎた彼女は、意味ありげに周囲を見回すと角を曲がった。
支部の周辺は通常の街並みと違い、治安が悪く落ち着ける場所が殆ど無いエリアが続いており、一般人の振りをしている真波もそれなりに慎重な振る舞いを強いられていた。
段ボールで出来た仮住まいから視線を覗かせるシャッター外の住人達は、皆一様に飢えた獣の様な目で彼女を見ていた。
(迂闊に手を出せんのも困りものだな)
設定された役としては、あくまで迷い込んだ一般人であるとこの真波には迂闊な戦闘行為は許されておらず、故に状況次第では一方的に嬲られる事も覚悟していた。
無論そうでなければ一方的に叩きのめす事は容易なのだが。
「ん……?」
周囲に辟易していた真波は、顔を上げた先、複数人で出来た人だかりに気付いた。
人だかりを遠巻きに見ていた彼女は、その中心に見た事のある色があるのに気付いた。
(あの配色、御台場女学校の制服か……?)
内心そう呟いた真波は、早足に近づくと人だかりに囲まれた中心人物が誰かに気付いた。
(彼女は、昨日の……。確か、三朝詩季だったか)
対応に困り、怯え切っている彼女の様子にただならぬものを感じた真波は群衆の叫びに耳を傾けた。
「ここを通りたければ金目のもん置いてけって言ってんだろ! リリィの姉ちゃんよ!」
「そうだぜ、ここは俺達の縄張りだ!」
制服と纏った雰囲気でカモと決めつけられたらしい彼女に、内心同情した真波は手近な男の襟首を掴むとその場に引き倒した。
仰向けに倒れた男の行方に目もくれず、群衆を散らす様に追加で二人殴り倒した彼女は、凍り付いた群衆に割って入ると涙目の詩季を庇う。
何者だ、と視線を向ける彼らを睨み返した真波は、リーダー格らしい男が腰の後ろに手を回したのに気付く。
極短銃身のリボルバーを引き抜いた男の手を左の掌底で弾いた彼女は、右手にグロックを引き抜いて腰溜めに発砲した。
「逃げるぞ!」
返す左手で詩季の体を押した真波は、身構えた周囲に拳銃を乱射しながら後退した。
動揺しながら走り出す詩季を庇いつつ、真波は路地に誘導するとマガジンの残弾を確認する。
(残り6発か。予備弾倉は2本。少々心許無いな)
スライドを少し引き、薬室内の弾丸を確認した真波は、指に挟んでいたマガジンを挿入する。
即座に撃てる様、腰溜めで構えた彼女は、蹲ろうとした詩季を片腕で抱え、ゆっくりと後退させる。
「大丈夫か?」
そう問いかける真波だったが、返ってきた答えは異常な呼吸音だった。
過度なストレスで過呼吸を起こした詩季は、足を縺れさせ、その場に座り込んでしまう。
「くっ」
詩季を抱え上げた真波は、後を追ってきた男達に発砲すると路地脇に押し込んだ。
押し込むと同時に数名を射殺した彼女は、攻めの手が弱まったのを見計らって救護要請を出し、詩季の口元に手を当てた。
「落ち着いて、深呼吸を」
そう諭しつつ、路地を監視した真波は、呼吸が落ち着きつつある詩季を一瞬流し見る。
(クソが。あれだけぶちあげてこのザマか)
内心毒づきつつ、手首のスナップでマガジンを排除した真波は、右の太ももと脹脛でスライドオープンした拳銃を挟んだ。
腰のポーチからマガジンを引き抜いた彼女はグリップ底部にマガジンを挿入し、スライドストップレバーを下ろした。
ショックと共にスライドが戻り、初弾が装填される。
「いたぞ、あの女だ!」
浮浪者集団の内の一人が、アサルトライフルを持った男3人を引き連れ、真波を指差す。
先手で話途中の浮浪者に一撃当てるが、返礼とばかりにライフル弾の弾幕が壁の様に叩き付けられる。
「チィッ!」
老朽化した壁を削る弾丸に、舌打ちした真波は体を横倒しにして射手達の足元へ数発放つ。
一発が足の先端に直撃し、激痛で悲鳴を上げた男がライフルを取り落とし、一人が引き摺って物陰に隠す。
弾幕が止み、体を起こした真波は、物陰に隠れて詩季の様子を窺う。
(あまり良くないな)
浮ついた眼の彼女を見た真波は、再び放たれた弾幕に反射で身を竦める。
ライフル弾がコンクリートブロックを抉り、白い砂煙となって散る中、銃声が徐々に近付いてくる。
(クソが……!)
物陰から銃口だけを出し、牽制した真波は、耳を塞ぎ、悲鳴を上げる詩季の全身を見回す。
そうして、彼女の腰のヨートゥンシュベルトに目を付けると、鞘ごと取り外した。
「すまん、借りるぞ」
そう言い、逆手に抜き放った真波は純手に持ち直すと、グロックと合わせて構える。相応しい持ち手に依れば、CHARMとして人外染みた力をもたらすそれも、一般人同然にマギが減退した真波の手ではただのサーベルとして使われるのがせいぜいだった。
真波自身もそれは織り込み済みで、不用意に近づく輩を叩きのめせればそれで良いと言う考えで手に取っていた。
止まっていた銃声が再び近付き、銃口が角から覗かせた瞬間、真波はヨートゥンシュベルトを薙ぎ払った。
「なッ!?」
銃身が大きく内に弾かれ、狙いを逸らされた男が驚愕する中、男を蹴り飛ばした真波は一気に距離を詰め、ナックルガードでライフルごと彼を抑え付ける。
至近で腰溜めに拳銃を連射した彼女だったが、腹部狙いの射撃は着込まれたボディアーマーに防がれ、貫通した衝撃が男を怯ませる。
その隙に距離を取った真波は、彼の喉笛に向けてサーベルを振るい、切っ先で一息に引き裂く。
「貴様!」
一連の流れを見ていたもう一人が単射の連続射撃を放ち、咄嗟に隠れた真波の右の手の甲を擦過したライフル弾が浅く裂く。
「ッ!」
痛みで力が緩み、指をもつれさせた彼女は、ヨートゥンシュベルトを取り落とす。
空虚な金属音と共に地面に落下したそれを他所に、物陰に引っ込んだ真波は、手慣れた動きの相手に舌打ちする。
(クソ、軍人崩れか?)
近年のガーデン重視傾向により、予算が圧迫されている防衛軍は人員整理と更なる無人化が進んでいると聞く。殆どは民間軍事警備会社へ就職すると聞くが、そうでない人間もいる。相手は後者の人間なのだろう。
真波が顔を出せない様、立ち姿勢としゃがみ姿勢の位置、それぞれに的確な射撃を撃ちつつ、相手は距離を詰めてくる。絶体絶命。その言葉が過ぎった瞬間、銃声の聞こえ方が変わり、弾丸は別方向へ放たれる。
「ッ!?」
何事だ、と手の痛みも忘れて飛翔方向へ顔を向けた真波は、狭い路地の壁を走る渚に気付いた。
CHARMで増幅された身体能力で駆けた彼女は、男との彼我距離を一気に詰め、手にしたサクリファイスを振るう。快音と共に銃身が斜めに切断され、切り飛ばされたそれが束の間、宙を舞う。
「こいつ、リリィか!?」
そう言い、腰に手を回した男へ振り向いた渚は、それと同時に刀を振るい、ナイフを構える前の彼を袈裟に切り裂く。刃の動きに乗った一筋の血が一文字に散る中、ずるりと切断体が切り口から滑り落ち、零れ出た大量の体液の溜まりに落下した。
じわりと血の色が路地に広がり、野次馬気味に様子を見ていた浮浪者達は渚の睨みに怯み、悲鳴を上げながら慌てて退散していく。
得物と同じ鋭さを湛えた目を元の柔和なそれに戻した彼女は、サクリファイスを血振りして納刀した。
「すまん、助かった。しかし、思ったより早かったな」
「いえ、僕がポイントマンってだけです。皆向こうで待ってます。一刻も早く離脱しましょう」
「そうだな。ついでで済まないが、彼女を頼む」
頷いた真波は、血の滲む右手に包帯を巻くと、後ろで蹲っている詩季を抱え上げて渚に引き渡す。
ヨートゥンシュベルトを拾い上げた彼女は、鞘に込め直したそれを詩季の腰に付け直す。
「合流ポイントの情報は?」
「チャンネルS2で管理してます。離脱作戦の工程もそこに」
「了解だ。……逃げ帰りながら言い訳を考えておかねばな」
「手土産があれば誰も怒りませんよ」
「なら良いんだが、いかんせん収穫量が薄いからチャラに出来んだろうな」
苦笑交じりに言う真波は、左手のグロックを通りに巡らせ、様子を窺った。
誰もいない、と確認した彼女は、渚に合図すると自身が先頭に出て無人の通りを抜ける。
『
「ヘイズル6、了解だ。すまんな、余計な手間をかけさせて」
『いえ。お気になさらず。しかし、発端になった彼女はどうしてこんな所に? 御台場に戻った筈では?』
「さあな。それはひとまず離脱してから聞くとしよう。水先案内を頼む」
『了解しました』
そう答えた直後、銃声が通りに鳴り響く。咄嗟に足が止まり、振り返った先、出て来た路地に向けて銃撃が撃ち込まれていた。
先の男達の本隊が顔を出したであろう事は想像に難くなく、真波達は足を早める。
『オリヴィア、フアナ、監査官達のカバーを。前を塞ぎに来る筈』
通信に乗ったアイネの指示に従い、真波達がいた通りの上からオリヴィアと冨亜奈が降下してくる。
グングニルカービンを手にした彼女達は、読み通り、前の交差点から姿を見せた兵士達に銃撃を加える。
「
冨亜奈が声を張ると同時に、レーザーマシンガンを発砲。右から大回りに駆け出したオリヴィアは、近接形態に持ち替えたグングニルカービンを手に、雑兵達の群れに突撃していく。
不用意に固まっているが故に、弾幕に捕まった彼等は、数名の被弾者を出す。
「ガキ相手に何まごついてやがる! さっさとあいつらをぶっ殺せ!」
リーダー格らしい中年の男が叫び、手近にいた部下の背を押す。多少被弾しつつも、その倍以上の弾幕を張った彼等は、障壁で弾き飛ばす冨亜奈を衝撃で足止めする。
射撃の手を止め、冨亜奈は防御に集中。半球状の障壁に当たり、あらぬ方向へ飛んでいく弾丸が火花を散らす。
「いくらリリィっつったってただのガキだ! 数で押せば大した事はねェ!」
「それは、どうかしら!」
渦中に飛び込んだオリヴィアは中年に向け、跳び蹴りを叩き込み、数人を巻き込んで吹き飛ばす。
首の骨を折られ、即死した彼を他所に、特殊警棒との二刀流で周囲の男達を薙ぎ倒していく。
「コイツ!」
オリヴィアの存在に気付いた一人は銃口を振り上げるが、グングニルカービンの刃で割断され、強度補正の入った警棒のフルスイングで顎を粉砕された。
倒れる彼に目もくれず、背後の敵へグングニルカービンを振るったオリヴィアは、袈裟に切り潰された死体を蹴飛ばす。
「あなた方! これ以上死にたくなければ退きなさい!」
そう叫ぶが、パニックになった彼らにその言葉は届かず、銃口の一部が彼女に向き、流れ弾が背後の敵に直撃する。
愚かな、と内心毒づいた彼女は、ジグザグに回避し、射手達へ迫る。両手の得物を駆使して彼らを屠った彼女は、最後の一人を縦に斬り潰す。
倒れた死体から、嬲り殺しの衝撃でミンチ状になった脳漿がこぼれ出す。足で死体を蹴倒し、食い込んだ刃を引き抜いたオリヴィアは、血の海に変わった周囲を見回し、深呼吸する。
夥しい死臭を吸い込み、咳込んだ彼女は、警棒を収めて状況完了のサインを出す。
「派手にやったな」
合流しに来た真波が苦笑交じりに言う中、顔に付いた血を拭うオリヴィアは肩を竦める。
「こうまでしないと分かっていただけないかと思いまして。まぁ、無駄な行為でしたが」
溜め息を落とし、ナプキンでグングニルカービンの血を拭った彼女は、真波達を先導し、離脱の一途を辿る。
(戻ったら色々とやらねばならんな)
面倒だ、と内心で思いながら、少女達に囲まれた真波はその場を後にした。