地球から少し離れた場所に浮かぶ要塞。名を、「ザムフォートレス」という。「彼ら」はそこから、地球を見つめていた。
地球。「彼ら」が長い間求め、そして遠からずその手中に収まるのであろう、青き美しき星だ。
そのザムフォートレスの指令室。幾何学的な装飾が施された薄暗い部屋の中で。
『陛下。準備が完了いたしました。』
陛下と呼ばれた男は配下の言葉を聞くと、影の中で少し身じろぎした。黒と白の体に、ハサミのような両腕のかぎづめ、そして顔全体を覆わんばかりの巨大な緑の目。それは地球の人間の姿ではなかった。
『ケルスを地上に降下させろ。地球人に抵抗できる地下あがあるとは考えにくいが、奴一人では手に余るようならば、ドレンゲランを使うがいい。』
『ハッ!』
同じ姿をした異形の兵士たちが作業を進めていく。すると、配下の1人がふいに尋ねる。
『陛下、我々の侵略作戦はこれまで何度か、あの忌々しい宇宙警備隊の連中に妨害されてきました。奴らも我々を本格的にマークしているはずです。また何か仕掛けてくる事はあるでしょうか・・・』
『気にする事は無い。宇宙警備隊とて必死だ、何かしらの妨害はあるだろう。しかし、我々の力をもってすれば何も恐れる事は無いのだ。それに我らの最終目標はあくまで地球征服。宇宙警備隊にかかりきりになって作戦を滞らせることなどあってはならないのだ。分かったか。』
『ハッ!全ては偉大なる我らが星のために!』
「彼ら」の地球侵攻作戦が間もなく開始される。「彼ら」の栄光の文明が小規模にではあるがまた拡大される事を考え、陛下と呼ばれた異形は心の中でほくそ笑んだ。
同じころ、高速で地球へと向かう、赤い光があった。
「彼」の使命は、地球に迫る危機に立ち向かい、地球を全力で守り抜く事だ。「彼」はいままでいくつもの星の防衛任務につき、そして使命を全うしてきた。しかし、今度の相手はそれまで戦ってきた存在と魔ハルで異なる存在だ。狡猾で残忍、目的のためなら手段は選ばない。「彼」を派遣した者たちもこれまでずっと警戒し続けてきた存在だった。だからこそ、エリートである「彼」が遣わされたのだった。
「彼」は急いでいた。どうか間に合ってくれと願いながら、地球へと飛んでいく。
地球をめぐって二つの意志が動き出していた。しかし、当の地球には侵略者の魔の手が伸びつつあるという事を全く感じさせない。人々はただ、それぞれの日常を生きていた。
だが「その時」は確実に迫っていた。