プレステのマーベルスパイダーマンやってたんですけど、これ2にヴィランとしてヴェノム出てきたらスパイダーセンス反応しなくて超鬼畜になりません?
便利屋の襲撃から数十分後、僕達はいつもの教室で集まった。
僕が来た時には既に他の全員が集まり、とある話題で盛り上がっていた。
「それで〜?そのスパイダーマンっていう変人が助けてくれたの?」
「変人じゃなくて恩人!あの人が居なかったらきっと私と先生は大変なことに…あ、先生!」
「やぁ、さっきはお疲れ様。」
どうやらスパイダーマンについて話していたようだ。
少し聞こえたが、僕は変人扱いされているらしい…まぁ正体不明のマスクを被った奴って変人以外の何者でもないよね。
僕は何食わぬ顔で手を振り、みんなの元に現れた。
痛みはまだ続いているが…顔には出てないから大丈夫だろう。
「大丈夫でしたか?便利屋が撤退したあと派手な爆発が…。」
「大丈夫大丈夫、僕はただ指示を出してるだけだったし…みんなこそ大丈夫だった?」
「はい、全員無事ですよ〜。」
顔を見れば、みんな余裕なことが伺える。心配しなくても平気みたい。
というかマトモな指示を出してなくても案外いけるもんだな…。
「それじゃ、一応便利屋について調べてみたから皆に共有するよ。」
全員が席に着いたのを確認して、みんなのスマホに調べた情報を送りながら説明を始める。
「便利屋は社長である陸八魔 アルと、その部下三人…そしてつい最近参加したと思われるブルズアイ。この五人で構成されているね。」
「まさかあのおじさんも便利屋の一人だったなんてビックリだよねー…でも、さっきの戦闘には参加してなかったような?」
「あ〜…それについてはよく分からないかな。あの見た目で参謀かもしれないし、もしかしたら朝起きれなかったのかも。」
苦笑しながらジョークを混ぜて濁す。本当のことを話したら僕がスパイダーマンってバレちゃうから。
「便利屋は依頼のためなら何でもするゲヘナの問題児達…らしいよ、そんな悪い子たちには見えなかったんだけどね。」
「依頼とはいえ私たちの学校を襲ったんだから悪いに決まってるでしょ!」
セリカの言うことはごもっとも、急に襲われて学校がめちゃくちゃにされそうだったのに相手を悪くないだなんて言えるはずない。
でも、彼女たちの雰囲気は僕が戦ってきたヴィラン達とは違う…いや、比べる対象がおかしいだけかもしれないけど。
「まぁだから、その五人以外は全員傭兵だね。結構高いだろうし、そう頻繁に襲ってこないと思うけど…警戒だけは怠らないようにしておこう。」
あの数で襲ってきても返り討ちに出来たんだ、次来るとしても相当間が空くだろう…彼女らに資金的余裕が無ければ。
これで便利屋についての話は終わった、とりあえず警戒だけしていれば大丈夫だろう。
「では、私からも話が…先日お二人を襲ったヘルメット団についてです。」
そう言って切り出したアヤネは、この間セリカが襲われた場所に落ちていたミサイルの破片を調査し、既に生産が中止された兵器が使われていた説明した。
「生産されてない…それをどうやって手に入れたのかしら?」
「生産が中止された武器を手に入れる方法は…キヴォトスでは『ブラックマーケット』しかありません。」
ブラックマーケット…聞いただけでも嫌な感じがする。どうせろくなところじゃないんだろうな…。
「あそこでは中退、休学、停学…様々な理由で学校を辞めた生徒たちが独立した社会を形成しているらしく、連邦生徒会の許可を得ていない非認可の部活もたくさん活動していると聞きました。」
「便利屋68みたいな?」
「はい。それから便利屋68も、ブラックマーケットで何度か騒ぎを起こしていると聞きました。」
なるほど、というか連邦生徒会はここをほっといてもいいのかな…?それとも僕が何とかしないといけない感じ?
「じゃあ、便利屋とブラックマーケットについて色々調査してみようか。もしかしたら黒幕に辿り着けるかもしれないし…。」
「だねー、またみんな集まった時ブラックマーケットに行ってみようかー。」
よし決まり、ブラックマーケットを調べれば、ブルズアイの言っていた雇い主の情報も得られるかもしれないし…思わぬ収穫があるかもしれない。
今日のところは一旦解散、さっきの戦闘で疲れただろうしね。
シッテムの箱にまとめた情報を整理しながら皆を見送り、僕とホシノだけになったところで彼女が話しかけて来た。
「…先生、何か隠してることない?」
「……どうしたんだい、ホシノ。大人は隠し事ばっかりだって知ってるでしょ?」
「おじさんの目は誤魔化せないよー?先生怪我してるよね。」
タブレットを操作していた手が止まる。
顔を上げて彼女の顔を見て、少し言葉に詰まった。
「やっぱりそうだよね、ほら保健室行くよー。」
いつもの優しげな表情のまま、ホシノは僕の袖を引っ張って教室から出た。
僕のちょっとした表情の変化と不自然な動きで察したのだろうか、あの戦闘時の慧眼を見れば不思議ではない。
「…黙っててごめん、皆に心配かけたくなくて……。」
「気持ちは分かるよー、でもちゃんと手当しないと悪化しちゃうからさ。」
「ま、まぁ…ただの切り傷だし大したことは…。」
袖を引っ張る力が強くなり、ホシノは少しムッとした顔で僕を見る。
「…ごめんなさい、次からちゃんと手当します。」
「……そうそう、それでいいんだよー。先生は私たちよりひ弱なんだからさー。」
ちゃんと謝れば、ホシノの顔はいつもの表情に戻った。
普段ならあれくらいの傷は寝れば治るけど、みんなからすればちょっとした傷でも治りにくいと思われてるよね。やっぱり両立は難しいなぁ。
「ほら着いたよ、ちゃっちゃと終わらせよー。」
保健室につき、ホシノが持ってきてくれた救急箱を机の上に置いて丸い椅子に座る。
上着を脱いでシャツに手をかけたところで、傷口を塞いだウェブのことを思い出した。
「…えっと、胸の辺りも怪我したからあっち向いてくれない…かな?」
「うへ〜、先生って結構恥ずかしがり屋さんなんだねー。」
へらへらと笑いながら、僕とは反対方向を向くホシノ。
シャツを脱ぎ、ペリペリと固まった血とウェブを右腕から外しながら息を吐く。
「…先生、どうして私たちのためにそこまでしてくれるの?」
「うーん…みんな大切な生徒だから…って言ったら安っぽいかな?」
少し間が空く、その間に消毒を済ませ、ガーゼを傷口に押し当てた。
「…ううん、そんなことないよ。実際にこうして行動してくれてるんだから……。」
ホシノにも何か思うところがあるのだろう、今は深く聞かず彼女から話してくれるのを待つのみだ。
「だって、先生はこんなにも……。」
ホシノが振り返る、きっと面と向かって伝えたかったのだろう。
だが、その時ちょうど僕は脇腹に負った切り傷の消毒をしている真っ最中だった。僕にとっては大したことないけど、九センチくらいの切り傷は彼女にとっては大怪我なようだった…。
「先生…それ……。」
「あぁ…待ってホシノ…僕は平気だから……。」
「平気って…その傷、どうしたの…?」
青くなった彼女の表情を見て、やってしまったと後悔した。
ウェブを付けるまでに流れた血が、固まって傷の真下に張り付いている。ホシノはずっとそこを見続けていた。
「いや、ホント…大したことないんだ。色々事情が…。」
「…説明して、先生。誰にやられたの?」
威圧感を与えるような目。スパイダーセンスは反応しないが、一瞬背筋が凍るような感覚に襲われた。
ハッと我に返ったホシノは、顔を伏せて出口へ歩き出した。
「待って…。」
「…先生は手当をしてて、これ以上問題が起こらないようにおじさんが何とかしてくるからさ。」
振り返ったホシノの顔は、いつものように朗らかな笑顔だった。
そんな表情が仮面だってことくらい分かる、これ以上彼女を巻き込まないように正体を…いや、明かせば逆に……。
だが考えている暇はなかった、彼女が再び歩き出した瞬間、僕はウェブシューターを彼女の肩に飛ばし、僕の元へ引き寄せた。
「先生…!?」
「…わかった、説明するよ。」
「……僕は、普通の人とは違う特別な力を持っているんだ。」
ホシノの肩を抱き寄せ、彼女の顔を真っ直ぐ見ながら告白する。
まだ状況を掴めず、唖然としたホシノは僕の目を見ながら瞬きを繰り返すだけだ。
「…まぁ、言っても理解しきれないだろうから……。」
ホシノから手を離し、トンッと天井に片手を張り付ける。
僕を見上げながら、ホシノが最初に口にした言葉は…。
「……どういうこと?」
呆気に取られてそれ以上の言葉は出ず、ただ僕を見上げ続けるホシノ。
まぁ、最初はみんなこんな反応するよね…。
「OK、じゃあ最初から説明するね。」
それから僕はホシノにパワーを得た経緯と、その能力、自身がスパイダーマンであることを話した。
ホシノはただ呆然と聴き入り、合間合間に気の抜けた相槌が入るだけだった。
「えーっと…それじゃあ先生は蜘蛛のパワーを持った超人…ってこと?」
「そう、だからこの傷を受けても平気だし、なんなら目の前で撃たれた銃弾も避けれる。」
「うへ〜…じゃあ私たちとそんなに変わらない?」
「まぁ…多分、でも耐久力はみんなの方が高いかも。」
いつの間にか普段のテンションに戻っていたホシノは、未だ信じられないという顔をしながらも、天井を這う姿やウェブを使ってぶら下がる姿を見て状況を理解してくれたようだ。傷口が開くからと何回か止められたけど。
「なら、あの時セリカちゃんを助けたのは…。」
「…うん、僕がヘルメットの子達を糸でぐるぐる巻きにした。」
「やるねー…それで、スパイダーマンの活動は続けるの?」
「続けるって言ったら止める?」
「止めても無駄だと思うな〜、でも危険なことはやめて欲しいって言っておくよー。」
「あっはは…まぁ気を付けるよ。」
ホシノには、僕の能力とスパイダーマンであることは隠してもらうようにお願いした。
傷はブルズアイに付けられ、奴に狙われていることも話した後、ホシノは何かあった時は助けると言ってくれた。けど、この問題は僕一人で片付けなくちゃね。
「…もうこんな時間か、帰ろうホシノ。」
「…先生。」
保健室を出た僕の背後から声が聞こえ、足を止める。
「…あんまり隠し事しちゃダメだよ?」
「…僕が隠してることなんて、これくらいだよ。」
最後に笑顔を見せてくれたホシノと別れ、僕達はそれぞれ帰路に着いた。
これで僕の正体を知っているのは、アロナを含めた三人…正直これ以上ふやしたくないなぁ…。