このままいけばアビドス編終わるの1ヶ月後くらいになり…そう?
エデ条まで長ぇ!
「スパイダーマン〜スパイダーマン〜♪」
普段とは全く違う声色でスパイダーマンのテーマソングを口遊ながら、賑やかな街並みを眺めてスイングする。
昨日徹夜して作ったボイスチェンジャーはしっかりと作動し、マスクの内側から発せられる声を自動的に全く違う声へ変換していた。もちろん自然な声だ。すごくない?
「良いモン持ってるじゃん、それ私たちにくれよ?」
「や、やめてください!この手榴弾は家族の形見で…。」
近道のために路地裏の中をスイングをしていたが、何やらトラブルが起こっているようだ。
ヘルメットを被った少女数人が柴犬に絡み、彼の持っている物を奪おうとしているらしい。
「Hey!僕が生粋の愛犬家ってことは知ってるよね!」
「なっ…スパイダーマン!?く、来るな!!」
どうやら歓迎されてるみたい、ならちゃんと応えなくっちゃね。
相手が撃つ暇もなく全員の銃を奪い取り、近くの街灯に張り付ける。
迷わず逃げ出すヘルメット少女達だけど…そう簡単に逃すわけにはいかない。
逃げ出した子から順番にウェブを張り付け、壁にくっ付ける。
「まっ…待ってくれ!」
「ごめんね、矯正局から出てきたら一緒にラーメンでも食べに行こう。」
最後の一人を壁に張り付け、手に着いた埃を払う。
先程の柴犬は無事かと振り返ったら、何故かその柴犬が僕を見て脅えていた。最近こんな反応ばっかり…まぁ、理由は分かるけど…。
「あ、ありがとうございます…で、でもっ、『災厄の狐』だけは呼ばないでくださいね!?」
「え…あー…いや、別に僕達はそんなに親しく……。」
説明する暇もなく、柴犬は足早にその場を離れていった。
仕方ないので自分で通報し、ヴァルキューレが来る前に僕もその場を離れた…。
なんで僕があんなこと言われるかっていうと、前にシャーレを襲撃して来た不良たちを捕まえた時、ヴァルキューレがワカモ専用の銃の弾丸を見つけたらしい。
不良たちのどの銃にも当てはまらず、尚且つ不良たちの証言からワカモがその場に居た事が明らかになった。
しかも、その不良達が僕とワカモが親しげに話しているって言っちゃったせいで……こうなった。
別に怒ってないよ?ただちょっとこの扱いは元の世界を思い出してヤな気分になっちゃう。
「仕方ない…うん、仕方ない。」
『せんせ…スパイダーマン!どうやら市街地で何者かが暴れているようです!』
「場所は…ここからそう遠くないね。OK、アロナ。今すぐ向かうよ!」
無線機からアロナの声が聞こえ、彼女が示す場所に向かってスイングする。
今日は予定があったんだけど…まぁ、スパイダーマンの汚名が返上できるならいっか。
「誰か説明しろ!俺を元の場所に返せ!!」
「と、止まれ!くそっ、全然銃が効かない!」
市民が逃げ惑い、先に到着していたヴァルキューレと交戦している男…あぁ、嘘だろ?勘弁してくれよ…。
思わず頭を抱えてしまったよ。道路に停まった車を投げ飛ばしながら、銀色のサイ・アーマーを着た男が叫んでいる。一体どうなっているんだ?
「このままではジリ貧だな…。」
「やぁカンナ、今暇?一緒にコーヒーブレイクでもどう?」
「貴様…。」
サイ男から少し離れた場所に見知った顔を見つけた。
近くのビルにウェブを飛ばし、逆さに吊るされる状態でスルスルとカンナの隣に降りてくる。
僕の存在に気付いたカンナは迷わず銃を向けるが、すぐには発砲しなかった。
「わぉ、タンマタンマ…どうやら苦戦してるようだけど、僕が加勢したら一発逆転できるよ?」
「まさか、奴のことを知っているのか…?」
「ん〜、まぁね。何回か捕まえたことあるよ。」
「…それは何度も逃したことにならないか?」
「悪いのはアイツを収容してる所だし…ひとまずその危なっかしい物を下ろしてくれない?」
カンナはため息を吐きながら銃を下ろし、真っ直ぐ僕を睨んだ。
「OKって事だね!じゃあ行ってくるよ!」
「おい!ちょっと待……はぁ、各員に通達、スパイダーマンがそっちに向かった。一旦任せて作戦を立て直すぞ。」
カンナの返事を聞かず、僕はウェブを飛ばしてスイングして行った。
さっきまでサイ男を撃っていた子達は僕を見たあと後退し、僕とサイ男の二人きりになった。わーおロマンチック。
「久しぶり、アレクセイ!ムショ暮らしはまだ飽きてないよね!」
「スパイダーマン!?…貴様もこの世界に来ていたとはな、知っていることを話してもらうぞ!!」
「それはこっちのセリフ、君には聞きたいことがたくさんあるからね!」
こちらを見るや否や、頭についてる角を突き出しながら四足歩行で突進してくるサイ男もといライノ。
「ねぇ、前から思ってたけどなんでいつも同じ行動ばっかりするの?脳までサイになっちゃった?」
突っ込んできたライノを軽々と飛び越し、背中に乗って奴の顔にウェブを打ちまくって視界を塞ぐ。
そのままウェブで顔に手網をつけ、突進し続けるライノを操ろうと引っ張った。
「ぐぉおお…やめろ!この気味悪い蜘蛛糸を外せ!!」
「あぁ、そう?君の身体とスーツがくっ付いてる方が気味悪いと思うんだけど。」
手網のおかげである程度動きを操れるが、勢い余って周囲の車を片っ端から壊してしまう。ロデオマシーンに乗ってるみたい…ちょっと酔いそう。
「そろそろ疲れてきた?僕はもう帰りたい気分。」
「貴様をこの手で殺すまで諦めるか!そして元の世界へ戻してもらうぞ!」
「僕が死んだら君を元の世界に戻せないんだけど!」
なんでアレクセイがここに居るのか分からないけど、ひとまず止めないと…。
「…あれは……よし、アレクセイ。水浴びは好きかな?」
「なんだと…?何をするつもりだ!やめろ!!」
アレクセイを上手く操縦し、道路の端に停まっているトラックに狙いを定めた。
そのままアレクセイは一直線に進み、見事トラック…『塩酸』が大量に積まれたトラックに激突した。
寸前で僕は彼から離れ、近くのビルまでスイングしたから無事だ。
液体はアレクセイのスーツを徐々に蝕む…けど、これくらいで止まらないのが彼の良いところだ。
「じゃあ次はコイツを喰らいな!」
近くの電線をウェブで引き裂き、電流走る切断面をアレクセイに投げ付けた!
「うぐぉぉああああああ!!!」
「ひゅ〜…エレクトロと戦った僕の気持ちが分かるといいけど。」
電気を通しやすい彼の身体に約六千ボルトの電流が流れ続ける。
アレクセイが膝をつき、倒れたところで電線を外し、ゆっくりと近付いた…死んでないよね?
「う…ぐァ…。」
「良かった、生きてる。」
一応ウェブでぐるぐる巻きにした後、彼を引き摺ってヴァルキューレの子達が集まっている場所へ向かった。
「…本当に倒すとはな。」
「もしかして信用してなかった?でもこれで信用出来たでしょ、僕がそんなに悪い人じゃないって。」
「どうだかな…だが、この始末は我々がしなければならないんだ。もう少し考えてくれ。」
「…次からは気をつける。」
カンナが周囲を見渡し、粉々になった道路や車を見て大きくため息を吐いた。申し訳ないとは思っているよ、ホントに。
アレクセイは意識を失っていることを確認して、護送車によって特別な拘置所に送られることになったらしい。また脱走しなければいいけど。
「…噂によれば、あの『災厄の狐』と関わりがあるようだが?」
護送車を見送った後、僕とカンナは個別で話し合うことになった。簡易的な取り調べらしい。
「無いと言えば嘘になるけど…向こうが一方的に追いかけてくるって言うか…。」
「何かしたのか?」
「いいや?でも彼女のスタイルが良いとは思ったよ。」
「……では、貴様らは仲間ではないと言うのだな?」
「もちろん、今度捕まえてあげようか?」
カンナは少し目を伏せたあと、僕を見てこう言った。
「…本来なら我々が行うべき業務だ、ヴァルキューレとしては貴様の手を借りるわけにはいかない。」
「…だが、私個人としては貴様との協力も悪くないと思っている。」
「わお、ホント?なら君と僕は相棒だね!」
「相棒…。」
顎に手を添えて少しニヤケたカンナは、僕の視線で我に返り恥ずかしそうに頬を染めながらこちらを睨んだ。
「ち、違う!私はただ貴様の行動を見逃すだけだ!相棒などではない!」
「あぁそう?残念…『スパイダーコップ』が参上できると思ったのに…。」
「スパイダーコップ……まぁいい、貴様の自警団行為は私個人が容認する…だが、他の者に止められても私は知らないからな。」
「ありがとう…あぁそうだ、アレクセイとは面会できる?」
「…場合によるが、暫くは誰とも会わせられないだろう。奴を刺激して暴れられても困るからな。」
「そっか…じゃあ会えそうになったら教えて、僕はそろそろ予定があるから…。」
「…わかった、その代わり次は被害を抑えてくれ。」
「はいはい、すみませんでした…それじゃ!」
近くの電柱にウェブを飛ばし、ヴァルキューレのみんなに挨拶をしながらスイングする。
「暴れすぎだー!」
「街のものを壊すなー!」
「頑張ってスパイダー男!」
よしよし、みんな僕に夢中だね。これで僕に対する風評被害も無くなればいいんだけどなぁ。
そうして僕は最初の目的地である『ミレニアムサイエンススクール』へ向かった。
*ライノ、なにかの実験でサイのアーマーを付けられた可哀想な奴。しかも何をしても外せないから一生あのままかも。詳しくはゲーム版『MARVEL スパイダーマン』か、『MARVEL スパイダーマン マイルズ・モラレス』をやってみよう!