昨日は投稿できずすみませんでした!!
ライノ事件から数十分、ミレニアムに隠しておいた私服に着替えてパーカー先生はミレニアム自治区へ繰り出した。
やはり規模が桁違いであり、高層ビルが立ち並ぶ姿はNYの摩天楼を連想させる。
スイングしたい気持ちに駆られるけど…今は我慢、さっさと用事を済ませなきゃね。
様々な学生が行き交うキヴォトス三大学園の一つ、ミレニアムサイエンススクール。
近未来的で白に統一された内装はオズコープ社を思い出させてくれる…あそこより空気が良いけどね。
さてと、ミレニアムに来て最初にすることと言えば…。
「やぁ、ユウカ。遊びに来たよ。」
「せっ、先生!?」
ユウカに挨拶をしようと、ミレニアムの生徒会であるセミナーに顔を出した。
何やら書類を手に作業をしている様子だったが、僕の姿を確認すると手元に持っていた書類を散らかしてしまった。
「あぁ…急に話しかけてごめん、ミレニアムに来たら真っ先に会いに行こうと思って。」
「…そ、そうですか……ありがとうございます…。」
書類拾いを手伝いながら、ここに来た理由を話す。
拾った書類を差し出しても、ユウカは俯いたままだった。
「…それで、先生はどんな御用でミレニアムまで?」
回収した書類をデスクの上に置き、期待の眼差しを向けるユウカ。
もしかしてユウカに用がある…と思ってるのかな?
「エンジニア部とヴェリタスに用があってね。」
「…ヴェリタス……ですか。」
あからさまに落ち込んでしまうユウカ。ごめんね…。
しかし、それとは別に何やら私的な感情が彼女の顔に浮かんでいる。
「…もしかして……仲が悪かったり?」
「…いえ、先生には関係の無いことです。エンジニア部の部室はここを左に曲がった先にありますよ。」
「ありがとう、もしこの後暇だったら…一緒に何か食べに行かない?」
笑顔を作り、僕を見送ろうとするユウカに提案してみる。
彼女は一瞬動きが止まるも、すぐに目を輝かせた。
「この後ですね、もちろん大丈夫です!最近美味しいスイーツ屋さんができたと噂になってて…。」
少し興奮気味に話していたユウカだったが、途中で我に返り口を紡いだ。
「OK、じゃあ終わったら連絡するよ。また後でね。」
「…はい、お待ちしております。」
ユウカに手を振りながら部屋を出て、彼女に言われた通り突き当たりを左に曲がったのだが…。
「ま、待ってお姉ちゃん!走ったら危ないよ!」
「急がば回れって言うでしょ!ほら早くし…」
幼げな声と共にドンッとお腹に鈍い痛みが走る。
思わず一歩下がってお腹を抱えようとした最中、目の前に見えたのは大きく身体を広げながら後ろに倒れてゆくピンクが特徴的な少女だった。
彼女の手には黒い家庭用ゲーム機のようなものが握られており、僕のお腹とコンニチハしたのはあのゲーム機であることを知った…。
「お、お姉ちゃん!?……すみません、大丈夫ですか?」
「もうちょっと私の心配してくれても良いんじゃない…?」
お腹を抱えながら、愉快な少女二人に笑顔を作ってみせる。
二人はよく似ていたが、ピンク色の子を『お姉ちゃん』と呼ぶ子は、緑色がトレードカラーだ。
「僕は大丈夫だよ…それより君の方が心配かな、頭打っちゃったでしょ?」
未だ倒れたままのピンクっ子に手を差し伸べ、彼女と手を繋ぎ立ち上がらせる。
「平気平気!ほら、早く行こう!スパイダーマンが近くまで来てるんだから!」
ピンクっ子の元気は健在のようで、栗のような口を開けながら妹らしき緑っ子を催促する。
「ちょっとお姉ちゃん…ちゃんと謝った方がいいよ、この人たぶんシャーレの先生だと思うから。」
『先生』という言葉を聞いたピンクっ子は、目を丸くして僕の方を見た。
「え!?シャーレの先生なの!?……あ、ごめんなさい!」
「いいよ、もしかして君たちスパイダーマンのファン?」
「そうそう!さっきサイ男を倒すところを生中継で見てたんだよね!すっごくカッコよかった!」
デイリービューグル…というか、ジェイムソンは僕を子供に悪影響を及ぼす悪魔って言ってたけど、この子の笑顔を見たらそんなこと言えるのかな?
…というか、さっきの戦い生中継されてたんだね…気付かなかった。
「私はお姉ちゃんの付き添いで…さっきこのミレニアムにスパイダーマンが現れたって情報が話題になったんです。」
「それでサインを貰おうとこのプライステーションを持って走ってたってわけ!」
黒いゲーム機にサインしても分からないんじゃないか…?と思ったが、彼女の純粋な笑顔を見ればなかなか言い出すことは出来なかった。
「そっか…会えるといいね、もしかしたらもうスパイダーマンは飛んで行っちゃってるかもよ?」
「可能性を追い求めるのが私達なんだよ!じゃあね、先生!」
最後に緑っ子がお辞儀をして、再び彼女らは駆けて行った…。
また今度、スパイダーマンのスーツを着て彼女達に会おうかな。
あれだけのファンを蔑ろにするのは気が引けるし…おっと、結構時間が経っちゃったな。
エンジニア部に向かおう…。
「…誰かいる?」
エンジニア部の部室に入り、様々な機械に囲まれた広い道を進む。
周囲に呼び掛けてみても、返事はしない。不気味なくらいに人気が少なかった。
スパイダーセンスが反応した!
背後からの危機を察知し、少し右に逸れて僕に向かってくる水を避けた。
「ぎゃっ。」
「…え?」
僕が避けた水は空中に付着した。
そこに一枚のガラス窓があるように、水滴が付いていたのだが…。
「お見事、まさか光学迷彩マントで姿を隠した私の攻撃を避けるなんて。」
急に姿を現したのは、エンジニア部の部長であるウタハだ。
続いて、部員であるヒビキとコトリも姿を見せた…どうやら僕は彼女らに囲まれていたらしい。
水がかかったのはヒビキらしく、濡れてはいなかったが驚いて声が出てしまったようだ。
「凄いね、これ君たちが開発したの?」
少し分厚めのマントを借り、学生でこれを作ったことに感心する。
「そうですとも!その光学迷彩マントはあらゆる場面で機能し、更にはマントの隙間から水を発射する事が可能なのです!」
間髪入れずコトリが説明を始めた、もちろん機能は凄いのだが…気になるところが一つだけ。
「…水を発射する機能っている?」
「……本来の用途では必要ないですね。」
数秒間の沈黙が流れ、マントを返したところで本題に入った。
「それで…私たちにどんな依頼を?」
濡れたマントを拭きながら、ヒビキが質問してくる。
そう、僕はこのエンジニア部にとある依頼をしに来たのだ。
部屋の中心にある椅子に腰掛け、僕はデスクの上で手を組んだ。
「……君達は、スパイダーマンを知っているかな?」
「…スパイ…。」
「ダー…。」
「……マン?」
OK!!!じゃあもう一度だけ説明するねっ!!!!
「…すまない、最近は開発に没頭しててあまりニュースを見ていなかったんだ。」
「…先生は、そのスパイダーマンって人と知り合いなんだよね?」
「そう、だから僕はスパイダーマンの代わりに依頼をしに来た…って感じかな。」
ネットに上がっていた僕とライノが戦う映像を見せながら説明し、僕はスパイダーマンの知り合いということで納得してもらった。
「じゃあ話を戻すね…僕がみんなに頼みたいのは、『新しいスーツ』の製作なんだ。それも飛びっきり性能の良いやつを二着ね。」
「ふむ…映像を見た限りかなりアクロバティックな動きをするみたいだけど、具体的にはどんな機能が欲しいんだい?」
「そうだね…まずチタン合金をベースにして物理耐久や防弾性能を上げて…あとは電気の流れる蜘蛛の糸を発射したり…。」
「待って待って、それ以上だとコストも時間もかなりかかっちゃうよ?」
「…大丈夫、もちろん費用は僕が負担するし、開発の手伝いもするよ。こう見えて機械工学は得意だからね。」
本当に大丈夫なのか?という疑いの目を向ける三人、ちょっと睡眠時間を減らして食事も少なくすればOK…またユウカに怒られるけど。
「…分かった、予算はまだ残ってるし足りない分は先生に補填してもらおう。その代わり、作ったスーツはエンジニア部の発明品として公表するよ。」
「もちろん、ありがとうみんな…これで借りができちゃったね。あぁ、もう行かなくちゃ。また来るね!」
全員が了承し、エンジニア部の協力の元、新スーツの開発が始まった…よし、次はヴェリタスだね。
みんなに手を振り、僕はヴェリタスの部室へと向かった…。
「誰かいる?」
扉をノックした後、返事を待たずに部室へ入る。
中に居たのは、ヴェリタス二年のハレ一人だけだった。
「あ、先生。待ってたよ。」
「あれ?他の子は居ないの?」
「うん…みんな用事があるみたい、それに先生の依頼は私ひとりでこなせるからね。」
僕が彼女に依頼したのは『僕の指揮を学習させたAIの開発』だ。
前のブルズアイ戦で実感したように、僕は戦っている最中だとあまり指示を出せない…まぁ当たり前だけど。
そこで、僕の代わりに指揮をしてくれるAIをハレに作ってもらった。
「…先生の指揮を学習させたと言っても、先生みたいな完璧な指揮を再現出来るわけじゃないよ?」
ハレが作成したAIをダウンロードをしたメモリを受け取る。
「大丈夫、僕自身でアップデートしていくからどんどん指揮が上手になるよ、いつか僕が要らなくなっちゃうかも。」
「シャーレの業務は一人じゃ厳しくて…これで少しは楽になるといいな。」
「……どうせなら、クローンとか作った方が…。」
「それだけはやめて。」
「ああ…うん。それじゃあ、報酬はアレでいいんだね?」
「…『一ヶ月間シャーレオフィスの盗聴を許可する』だよね。」
何故かこれしか受け入れてくれなかった、そのため渋々了承し、これから一ヶ月盗聴されながら仕事をすることになった…。
ユウカにどう説明しよう?
まぁ、ひとまずAIをゲットできたし、スパイダーマン業も捗るね。
「…あ、名前どうするの?AIって呼ぶのは味気ないでしょ。」
「……A.U.T.O…かな。」
「……そのまんまだね。」
僕はA.U.T.Oを持ってヴェリタスの部室を後にし、再びセミナーに向かったのだが…。
「す、すみません先生!今はちょっと…!」
…どうやら、ユウカは仕事が忙しくて手が離せないようだった。
「大丈夫だよ、邪魔してごめんね。」
ずっとここに居ても邪魔だろうから、僕はそそくさと部屋を出て再度エンジニア部に行きスーツの開発を進めた…。
ユウカの仕事が終わる頃にはスーツに搭載する機能の案が大体決まり、次は設計図に取り掛かる予定だ。今から完成が楽しみ!
「待っててくれたんですか?わざわざすみません。」
「謝らなくていいよ、誘ったのは僕だからね。」
その後は二人でスイーツを食べに行った…んだけど、スーツ開発の事とライノの事で頭がいっぱいになっていた僕は、スイーツの味とその時話したことをあまり覚えていなかった…。