週一投稿になりそうです!
「敵、後退しています!」
「だけどこのままでは…。」
無線機からアヤネが報告してくれるが、どうやら相手はまだ増援を呼んでくるみたいだ。
「…まだ来るつもりかな、みんなもうちょっと踏ん張るよ!」
「ま、待ってください!これ以上戦うとここを管理してる治安機関に見つかってしまうかもしれません…!」
スパイダーマンで助けに行くことも視野に入れながら再度指示を送ろうとするが、先程よりも焦ったヒフミに止められた。
どうやらこれ以上はまずいらしく、ブラックマーケットに詳しそうなヒフミに従って撤退する事を決めた。
「ではこちらへ!」
「先生、ちゃんと着いてきてよね!」
セリカに連れられ、背中をホシノに守ってもらいながら僕達は撤退していった。
「…ここまで来れば大丈夫でしょう。」
「ふぅ…ここのこと結構詳しいんだね。」
逃げた先は様々な屋台が並ぶ賑やかな場所、辺りから美味しそうな匂いが漂ってくる。
どうやら先程の不良たちは全員撒けたみたいだ。
「え?と、当然です。連邦生徒会の手が及ばない場所のひとつですから……。」
ヒフミによれば、学園数個分の規模を持つこのブラックマーケットには、専用の金融機関や治安機関があるらしい。
それに、ある企業が裏で牛耳っているという噂もある。下手に動けばその企業にマークされてしまうとか…。
「…よし、決めたー。」
「助けてあげたお礼に、私たちの探し物が見つかるまで手伝ってもらうねー。」
「…え、えぇ!?」
黙って頷いていたホシノは、なんとヒフミの手を借りようと提案した。
当然、ヒフミと僕は驚き目を丸くしてホシノを見た。
「い、いやぁ流石に唐突すぎない…?まぁ、ヒフミが良ければお願いしたいけど…。」
ブラックマーケットに詳しいヒフミが一緒に居てくれたら心強い。
少し悩んだヒフミは、決心したように頷いた。
「わ、分かりました…皆さんのお役に立てるか分かりませんが……助けて頂きましたし、喜んで引き受けます。」
「…ありがとう、それじゃあ案内お願いするよ。」
アビドス自治区、某所。
天を突き刺すようなそのビルは一際目立ち、暗雲の立ちこめる空は不気味さを醸し出す。
『フィスクタワー』と呼ばれるそのビルの最上階には、大柄な男が全面ガラス張りの窓から街を見下ろしていた。
「よぉ、フィスクさん。もしかしてまた俺を雇ってくれるのかい?」
スキンヘッドで額に特徴的な『的』の刺青を入れている『ブルズアイ』、彼は向かい合っている皮製のソファに腰かけ、指で弾いたチョコを器用に口でキャッチした。
「…いや、今回は『便利屋68』として仕事の話をしようと思ってな。」
振り返り、ブルズアイを見据える大柄な男こと『キングピン』。
彼は口に咥えた葉巻を灰皿に押し付け、ブルズアイの目の前に腰掛けて両手を杖の上に置いた。
「なんだ…それで?前回のは……。」
「前の練習はまぁ良しとしよう、アビドスの実力を見誤っていたのはお互い様だ。次はもっと兵力を集めればいい…。」
キングピンの言葉に少し眉を顰めるブルズアイ、というのも前回の襲撃は練習でも何でもなく本番だったのだ。
便利屋の資金をかき集め、やっとの思いで攻撃を仕掛けたのにあのザマ、もっと兵力を集めろと言われても資金と時間が足りない。
「…それよりもスパイダーマンだ。この間はライノが現れ、スパイダーマンがそれを捕らえたらしいな……奴はいつ始末するんだ?」
「俺にだって準備がいるんだ、あの蜘蛛野郎が神出鬼没ってことは知ってるだろ?」
杖を握る力が強くなり、ブルズアイに静かな威圧感を与えるが、彼にそんな子供騙しは通用しない事はキングピンが一番よく分かっている。
袖のカフスボタンを弄り、少し目を伏せながらキングピンは口を開いた。
「私にも時間が必要だ…一ヶ月以内までなら我慢しよう、便利屋も同様だ。」
「いつになく優しいな、よほど余裕があるのか…?」
キングピンは返事をすること無く、ただ口角を上げるだけだった。
「…これから客人を迎える予定だ、もし用があるなら後日聞こう。」
「いんや、俺からは特に無いね…一ヶ月以内にスパイダーマンを始末してアビドスを奪う、それだけだろ?」
「……期待しているぞ。」
便利屋にどう説明しようか、と頭を搔いてその場を後にするブルズアイ。
すれ違うようにスーツを着た男が現れ、キングピンはソファから立ち上がり握手を求めた。
「…あなたが黒服か。」
「…えぇ、此の度は私を呼んで頂きありがとうございます……フィスク氏。」
・・・・・・・・・・
事務所に戻ったブルズアイは早速事情を説明したのだが…。
「ななななな、なんですってーーー!!!?」
「……悪ぃな、だが断れないのはボスも分かるだろ?」
いつもより取り乱し、口を開けっ放しのアル。それを見てるムツキも、流石に今回はヤバいと思っているのか苦笑しながら冷や汗を流している。
「…それで、この一ヶ月の間にスパイダーマンとアビドスを制圧しろって?」
「あぁ、それまでに終わらなかったら…俺たちゃ雇い主に…。」
親指で首を掻き切るジェスチャーをするブルズアイ、ハルカとアルは完全に怯えきっていた。
ブルズアイ自身も、今までキングピンが行ってきた悪行を考えれば自分の身が危険なことを理解している。
奴は口封じの為に自分達を始末し、例え依頼を達成出来てもキングピン専用の殺し屋として雇われるのがオチだ。
どう転んでもこの便利屋達に未来はない…ブルズアイには全く関係の無い話だが。
「まぁまぁ、まだ不可能って決まったわけじゃないでしょ?」
「…今度はブルちゃんにも手伝ってもらうからね。」
「……ハイハイ、この間は悪かったな。」
前回の襲撃の際、ブルズアイはスパイダーマンを始末する為に単独で行動した。
それが敗北に繋がったかは分からないが、少なくとも便利屋68が全力で戦ったとは言えないだろう。彼も便利屋の一員なのだから。
ブルズアイはムツキから目を逸らし、上っ面の謝罪だけ済ませた。
「…それで、どうやって戦うよ?また傭兵を雇うにしても金が足んねぇし。」
「…わ、私がバイトでもしてきましょうか?」
「一ヶ月じゃ傭兵を雇うには足りないわ…。」
「……こうなったら、融資を受けるしかないわね。」
「融資?ボスの口座は凍結されてるってこの間嘆いてたじゃねぇか。」
融資、という言葉に驚く便利屋一同、それもそのはずアルはゲヘナの風紀委員会によって指名手配され、銀行の口座を使えなくされてしまっていた。
「……えぇ、けど一つだけ融資を受けられる銀行があるわ。」
「…その銀行ってまさか。」
「みんな、ブラックマーケットに行くわよ!!」
予想通り、と言った顔で頭を抱えるカヨコ。だが他に道は無いと、渋々ついて行くことにした。
他の面々もアルの後をついて行き、便利屋全員でブラックマーケットへ向かった…。