スパイダースーツもガジェットも一番的なスパイダーマンと相違ないです!
第一話 アビドス自治区へ!
……おじさんの言葉は今でも僕の心に残り続ける。そう、あれは雨の降る凄惨な夜だった…ってここはもう知ってるか。
強大な力を持った僕が背負うべき責任、『大人』として行ったことに対する責任、その二つは僕にとって重要であり、常にそれらと向き合わなければならない。
それが『彼女』との約束だから_。
OK、それじゃあもう一度だけ説明するね。僕の名前は……え?もう何度も聞いた?
じゃあこれは知ってるかな?
僕は目を覚ますと見知らぬ土地…キヴォトスに居たんだ、ニューヨークとは違う街並み、銃を携帯した女の子、そしてその頭に浮かぶヘイローと呼ばれるもの…。
僕の人生は妙なことばかりだったけど、流石に今回はビックリしたね。だってその女の子達から『先生』って呼ばれたんだよ?
確かに僕の頭は良いって自負してるけど…先生になった覚えは無い。
でも不思議と…そう、『連邦生徒会長』って名前を聞いたら「僕がやらなくちゃ」って思ったんだ。
それにこの世界が危機に陥っている、なんて聞いたら嫌でもやるでしょ?少なくとも僕はそうする。
そうして僕は、シャーレの『先生』としてその武装した女の子達と一緒に闘うことになったんだ…。
あぁでも、僕は後方で指示を出すだけで良いらしい。
最初は「女の子だけに戦わせるなんて…。」って思ったけど、どうやら彼女達は相当強い。銃で何発撃たれてもへっちゃらだった、下手したら僕より強いかも。なんか情けない。
でも驚いたのは、僕には素晴らしい指揮能力があったってこと。今まで自分一人で戦ってきたのに、集団戦で指示を出せるなんて思いもしなかった。
けど、これが『先生』として呼ばれた理由なんだと思う。
そうして僕は、無事に『シッテムの箱』をゲットして『アロナ』と呼ばれる少女に出会った。どうやら此処の科学技術は僕が元いた世界とは大差ないみたいだ、AIやホログラムなんて当たり前のように存在している。
僕は連邦捜査部シャーレの先生として、様々な難題に立ち向かうのだろう。帰る目処はついてないけど、いずれその時が来るはずだ。
そうそう、ここに来る直前の記憶は無くて、来た方法も帰る方法も見つからないんだよね。一応
そういえば、最近SNSで僕の名前をよく見かけるような…ここまで目立ってしまうなら、スパイダーマンとして活躍するのは止めておこう。
何か起こったとしても、生徒たちが解決するはずだ。僕は後ろでそのお手伝いをすればいい。あの赤いスーツはオフィスのどこかにしまって…ウェブシューターは着けておこうかな、万が一って事もあるだろうし。
『おはようございます、先生!』
淹れたてのインスタントコーヒーを片手に高性能PCで調べ物をしていた最中、デスクの上に置かれたタブレット端末から元気な声が聞こえた。シッテムの箱に住む電脳美少女、アロナだ。
この数日間言葉を交わしたおかげで、僕と彼女の関係は良好、こうして挨拶をしてくれるようになった。
「おはよう、今日は良い天気だね。」
『はい!今日は一日晴れのようで、気温も少し暖かいです!』
「良いね、外出日和だ。」
『そうですね、なので今日はこちらを用意しました。』
「これは……。」
アロナが表示した一通の手紙、恐らく仕事の内容だろう。
初めての仕事にワクワクしているのか、アロナの顔は何時もより嬉しそうであった。
キーボードを叩く手を止め、山のように積み重なっている書類の中から同じ手紙を見つけ出し、コーヒーを一口飲んだあと手紙に書かれた文章を読み始める。
『連邦捜査部の先生へ』
『こんにちは。私はアビドス高等学校の奧空アヤネと申します。』
『今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、こうしてお手紙を書きました。』
『単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。』
『それも、地域の暴力組織によってです。』
アビドス、少しだけ知っている学校だ。砂漠に覆われた人気の少ない学校、少人数で学校を運営している…らしい。
『こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが…。』
『どうやら、私たちの学校の校舎が狙われているようです。』
『今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底をついてしまいます…。』
『このままでは、暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です。』
『それで、今回先生にお願いできればと思います思いました。』
『先生らどうか私たちの力になっていただけませんか?』
ここで手紙は終わり、とりあえず『まずい』状況であることは分かった。ここ数日でキヴォトスの常識などを調べた僕には、もう弾薬がどうとか暴力組織がどうとかなんて当たり前のように感じられる。
「アビドス高等学校…か。」
『知っているんですか?』
「うん、昔は大きい自治区だったらしいけど、気候の変化が街自体がかなり厳しい状態にあるって…。」
街のど真ん中で遭難者が出るほど大きいらしい、流石に誇張しすぎてると思うが…まぁ行ってみないと分からない。
詳しい事情は本人たちに聞けば早い、早速出掛けようとタブレット端末と鞄を手に取ったところで、オフィスの扉が開いた。
「先生、いらっしゃいますか?」
「…ユウカ、ごめん。ちょっと出掛けてくる!」
扉から出てきた…正確には入ってきた少女は、以前共にサンクトゥムタワーを奪還した早瀬 ユウカ、なんと彼女がシャーレに所属して色んな業務を手伝ってくれるという。
…しかし、今はそれどころでは無い。彼女の横を通り過ぎ、通路に出て走り出す。
「はぁ!?今からですか!?一緒に書類の整理をするって話だったじゃないですか!!」
「ごめん!ちょっとだけでいいからやっといてくれると嬉しいよ!」
「それじゃあ行ってきます!!」
「あ、ちょっと……全く、こんなことするのは私くらいなんですからね…。」
彼女の返事を聞かず、逃げるようにして走り去る。置いていかれたユウカの顔は、心做しか嬉しそう…ではないか、流石に。
スイングして移動したいけど、そんな所を見られたら僕が超人って事がバレてしまう…。
この世界での僕は『銃弾一発で動けなくなる普通の人間』とされている。まぁ当たり所によるけど、一発程度なら割と平気だ。僕が超人ってことを明かすのもアリだったかもしれないけど、もしもまたスパイダーマンになった時、真っ先に疑われると思うんだよね。だってヘイロー無いし。
あぁ、でもアロナにはこのことをバラしているよ、会話の途中で口が滑っちゃってね。そんなこと前まで無かったんだけど。
だから今日は電車で移動する、交通費は経費で落ちるらしいから、そういった名目なら乗り放題ってワケ。生徒や市民たちの視線が集まるのはちょっと居心地悪いけどね…。
そんなこんなで到着、アビドス自治区。やっぱり人が少ない。
けど、適当に歩けばいずれ学校に着くだろう。お菓子も水も持ってきたし、数時間くらいなら歩き回れる。
いつの間にか日を跨いでいた。僕はこの街で遭難してしまった。
プロローグ部分は端折ってしまいましたが、機会があれば書くかもしれません。