原作のブルズアイはもうちょっと頭がおかしくて殺人衝動が抑えられないやべーヴィランです。
私、捨石 グエンは今ブラックマーケットの闇銀行でマーケットガードを務めている。あのスキンヘッドと便利屋に敗北した後、『雇い主』に引き渡された私たちヘルメット団は、任務の際に壊したビルの修繕費を稼ぐためにこうして闇銀行でこき使われることになった。
ブラックマーケットの治安は最悪で、度々駆り出されることが多かったが、今回ばかりは少し特殊だった。
「グエンちゃん、ホントに行くの…?」
「大丈夫よ、相手は少人数だから…また仕事に失敗したら今度こそお終いだわ。」
柱の陰に隠れ、暴れる強盗団を遠巻きに眺めて状況確認。リーダーは先に突っ込んでやられた。だから、今は私が五人の仲間たちを従えている。
強盗団メンバーの場所から死角になる場所を割り出し、仲間を引き連れ強盗団の近くまで移動。こちらが優勢になったところでダメ押しするつもりだったが…。
「…嘘でしょ、たった五人で数十人を相手に圧倒?正面からじゃちょっと厳しいかも…。」
瞬く間に警備員を撃ち倒す強盗団たち。プラン変更、後方でミニガンを連射しているメンバーを先に倒し、油断したところを一気に瓦解させる作戦に出る。
仲間に合図を送り、ミニガンをリロードしている隙に全員を突っ込ませた。もちろん私も一緒に。
「わわっ!まだこんなに残ってたなんて…!」
焦るミニガン持ちを六人がかりで瞬時に制圧し、一人を拘束に割り当てこのまま他メンバーも…と思った矢先。
「ダメだよ〜、そんな一気に姿を見せちゃー。」
背後から声が聞こえ、振り返るが誰も居ない。暴力的な銃声だけが響いていた。
「にげ…て。」
いや、そこには仲間たちがいた。全員床に突っ伏しているせいで一瞬見当たらなかったのだろう。全員が一様に、背中に傷を作っている。
「ノノ…クリスティーナちゃんを倒したところは良かったけどね。」
振り返る暇もなく、背中に強い衝撃が走る。肺に溜まった空気が押し出され、吹き飛ばされた私は壁に激突し身体をめり込ませた。
全身が痛く、今にも意識が途切れそう…けれど、最後に仲間が発した「逃げて」という言葉が脳裏を過ぎり、震える身体でゆっくりとその場を離れようと歩き出した。
強盗団はもう私に興味をなくしたらしい。ヒビ割れたヘルメットから見える景色はいつもよりクリアで、目線の先に居た者が『誰か』ハッキリと理解出来た。
紙袋を被った男…受付奥のデスクが並べられた場所を縦横無尽に飛び回る姿、そして腕から発射する糸で、その正体が分かってしまった。
「先生…。」
呟くと同時に、身体の痛みを忘れて私は駆け出した。
デスク4個分ほどの距離を保ち、互いに見合うブルズアイと僕。ウェブはあるけど、この距離だと奴の方が有利だ。投げるものも多いし。
「ねぇ、君のライバルってデアデビルじゃなかった?なんでこう何回も戦わなくちゃいけないの?」
「ハン、俺だって殺すならヘルズキッチンの悪魔の方がいいさ。今はお前で妥協してやってんだよ蜘蛛男。」
「へぇ〜、三流ヴィランに妥協されるほど僕は甘くないけどね!」
会話の最中にも関わらず、アイツは問答無用でナイフやらペンやらを投げてくる。スパイダーセンスが反応してるうちは避けられるけど、少しでも油断したら一撃食らってしまいそうだ。
僕も負けじとウェブを打ち出しながら、スライディングも交えてブルズアイに近付く。ペンを三本構えて僕に投げてくるけど、全部床に突き刺さった。そしてブルズアイの顎に目掛けてサマーソルトキック…!
「三流ってんなら、さっさと俺を捕まえてみたらどうだ?四流ヒーロー。」
軽々と避けられ、僕の空いた鳩尾にナイフで鋭い一撃加えられたッ…。
「やるじゃん?…キヴォトスに来て相手にしてた悪党は全員四流だったからさ、ちょっと鈍ってるんだよね。」
追撃とばかりに迫ってきた拳を掴み、しっかりと足を床に接地してからデスクが並ぶ所へ投げ飛ばす。そういえば、ブルズアイ以外に相手したのは不良生徒とかライノとかだっけ。そりゃ鈍るよね。
また腹に傷を付けられてしまった…うーん、スパイダーセンスが腹に対する攻撃に気をつけろって言ってるような気がする…もしかしてこの先も執拗にお腹を狙われたり?嫌だなぁ。
「僕の目的は金じゃない、もちろん君たちでもない。今日のところは見逃してあげるから、さっさと便利屋たちと帰りなよ。」
「見逃す?言っておくがお前は逃がさないぞ、その首をぶった斬るまでな。」
「へぇ、なら今度こそ君を捕まえようかな。」
「やれるならとうの昔にやってるだろ。」
スパイダーセンスが反応する、反応元は…足元?
ころりと転がってきた球体、スパイダーセンスのおかげでそれが何なのか理解出来たが、飛び退くと同時に爆発してしまった。金属の破片が飛び散り、急所を守ろうとした手足に突き刺さる。ブルズアイは既にデスクの裏に隠れ被害を免れていた。
「浅黄特製の小型爆弾だ、ガキのくせにエラいもん作ってくれるよなぁ?」
「なるほど、ムツキのね…。」
やはり便利屋は侮れない。アビドスのみんなで感覚が麻痺していたが、便利屋達も相当な実力の持ち主だ。
「へぇ、ムツキのこと知ってるんだ。」
後頭部に押し付けられた銃口、その声は…。
「……まぁね、君のことも知っているよ。カヨコ。」
視線を背後に向けて、答え合わせ。うん、合ってるね。でも状況は最悪だね。目の前にはトランプやペンなどの凶器をチラつかせるブルズアイ…ああ、奥で大きな爆発音がしたのはムツキとハルカかな。
「これは…ちょっと想定外かな。」
便利屋の介入、不要に首を突っ込むことはないと思っていたけれど、どうやら彼女達はこの件に関わりたいそうだ。
ヒールの音が鳴り、ブルズアイの背後から大人のような風貌の少女が現れる。便利屋68の社長、陸八魔 アルだ。
片手に持ったスナイパーライフルを僕に向け、不敵な笑みを浮かべている。
「…ごめんなさいね、ボンバス……ボンバスティン…。紙袋男。
貴方達の行動は賞賛に値するけれど…無謀とも言えたわ。何せ、この便利屋68がいる前で、私たちの雇い主の銀行を襲ったのだから……。」
「あっ」
背後にいるカヨコが「しまった」と言わんばかりに片手で顔を覆う。
「おい、ボス!それは言わねぇ話だろ!」
「…え?あっ、ごめんなさい!私、ついうっかり…。」
先程まで活き活きとしていたアルが、ブルズアイの一声で急に縮こまってしまった。それより、雇い主の銀行だと?彼女たちを雇ったボスが、この銀行を…いや、ここはブラックマーケットの中でも一際大きい銀行だ、もしかしたらブラックマーケットの一部すら掌握している…?
「……で、僕をどうするつもりだい?」
「ホントは生け捕りが好ましいんだが…今のを聞かれちゃあな。」
今まで、生徒にはウェブだけで対応してきたけど…そろそろ暴力を振るわなきゃいけなくなるのか?先生としてそれは避けたいけど…。
「これでも…喰らえっ!!」
スパイダーセンスが反応した。
背後に立っているカヨコを庇うように、後ろに飛び退いて危機から逃れる。その瞬間、ブルズアイとアルが立っていた場所に閃光と破裂音が鳴り響いた。
「なっ…何!?」
「カヨコ、大丈夫?」
倒れるカヨコの目の前に立ち塞がり、立ち上がらせようと手を伸ばす…けど、向けられたのは銃口だった。
「……こんな時まで、敵の心配してるの?」
「…まぁ」
「生徒は生徒だから…って?言っておくけど、私は誰が相手だろうと容赦しないよ。」
「待って、それって……。」
その言葉に疑問を抱く前に、僕の手は誰かに引っ張られ…担がれた。
僕を担いだのはヘルメットを被った少女、先程の閃光弾も彼女が投げたものなのかな。けれど、どうして…。
「大丈夫!?とりあえず仲間のところまで連れて行くわ!」
息苦しいのか、ヘルメットを外して投げ捨てる少女……
___そんな。
「嘘だろ……。」
長いブロンドの髪に黒のカチューシャ、長い睫毛に青い瞳。そして何よりその顔立ちは…。
彼女の笑顔を思い出す。彼女の仕草を思い出す。彼女の最期を思い出す。
グリーンゴブリンの手によって橋から落とされた彼女を、僕は救えなかった。何度も後悔した経験を、今思い返す。
「グウェン…?」
彼女の名前はグウェン・ステイシー。僕と人生を共にするはずだった、僕のせいで命を落とした女性だ。
グウェン・ステイシー:ピーターの元ガールフレンド、父は警察署長だったが、事件に巻き込まれ命を落とす。その際、グウェンはスパイダーマンが父を殺したと信じ、長くスパイダーマンを恨んでいた。
ノーマン・オズボーンことグリーンゴブリンが彼女を誘拐し、スパイダーマンの目の前で橋から落とした。あと一歩のところで間に合わず命を落とし、彼の心に深い傷を残した。
捨石 グエン:グウェン・ステイシーと瓜二つ。ヘイローの形はなんの特徴もないまん丸。但し美人。パツキン美少女。閃光弾は彼女が作成した。