Spider-Archive   作:ネギャー

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とりあえずアニメの展開には追いつきたい!


第二十三話 長い一日の終わり

 

 

 

 太陽が沈んで数時間、身体の節々が痛むし疲労感も半端じゃない。ここに来て、先生としての業務で積み重ねてきた疲労が一気に押し寄せてきた。

 公共交通機関とウェブスイングを交え、自分が出せる最高速度でアビドスまで辿り着く。グウェンや怪盗の事で頭がいっぱいだったけど、電車に乗ってる僕とツーショット撮ってくれたやけに元気なゲヘナ生徒と話していたら少し気分が落ち着いた。

 スパイダーマンのスーツを脱ぎ、もう皆が帰っているとは思いつつ一縷の望みに賭けて校門をくぐり抜けると、対策委員会の部屋の明かりがまだ点いていることに気が付いた。

 

「みんな…待っててくれたの!?」

 

 急いで階段を駆け上がり、勢いよく部屋の扉を開ける。そこにはホシノを除いたアビドスのみんなが待っていてくれた。先生泣きそう。

 

「仕方ないでしょ!書類は先生が持ってるんだから……もし日を跨いで書類を無くされでもしたら、私たちの苦労が無駄になるじゃない!」

 

「うん、それもあるかもしれないけど、セリカは先生が帰ってくるまでずっと心配してた。もちろん私も。」

 

「ちょっとシロコ先輩!!」

 

 ガタッ!と座っていた椅子から立ち上がり、耳をピンと立てるセリカ。対照的にシロコは座ったまま微笑んでいる。そういえば、怪盗には尻尾が生えていたけど二人には生えていないっぽいね。バランス感覚とかの違いがあるんだろうか。

 

「ホシノ先輩は先に帰られました……と言うより、凄く疲れていたので無理やり帰らせたと言った方が正しいですね。」

 

「私はずっとアビドスに居ただけですから…せめて書類だけは受け取って時間がある時に調べようかと。」

 

 どうやら、ブラックマーケットから脱出するまでの間ずっとホシノが前線を張っていたらしい……そう指示したのは僕のAIだ、流石にここは改善しないと。生徒たちに無理をさせるようなことはしたくない。

 

「みんなありがとうね……僕は見ての通り無事!書類もほら。」

 

 バッグの中から書類を取り出し、アヤネに差し出す。ちょっとくしゃくしゃになっちゃったけど破れてはいないから読めるはず。

 

「こちらこそありがとうございます、先生。それで……例のバックマンさんは?」

 

「あー、彼?まぁ……彼も大丈夫だよ、問題ない。」

 

「何よその含みのある言い方…。ちゃんとお礼言っておいてよね?」

 

「次は私とタッグで銀行強盗するから、伝えて欲しい。」

 

「うん…まぁ、次会えたらね。」

 

 恐らくもう会うことはないだろう、この世界にファンタスティック・フォーが居たり僕の服がなくなったりなんてことがあればまた復活するかもしれないけど。

 

「さ、書類も手に入れたことだし早く帰りましょ。明日は休日だから、みんなちゃんと休んでよね?」

 

「そういうセリカちゃんはアルバイトでしょう?また食べに行きますね。」

 

「も、もう来ないでよね!ノノミ先輩も!先生たちも!」

 

 帰りの支度を始める皆、本当に僕のことを待っていたんだなと少し申し訳なくなってしまう。それはそれとして、明日は柴関ラーメンを食べに……あぁいや、明日はミレニアムでスーツの最終調整だったっけ。残念。

 

 

 

「先生、私の自転車に乗って行く?その方が速いと思うけど。」

 

 校門を出た直後に、自転車を引いて歩くシロコに声をかけられる。見たところ僕が座れる場所は見当たらないけど…もしかして背負っていく気なのだろうか?

 

「ん。」

 

 まるで僕の心を読み取ったように、シロコは自信に満ち溢れた表情を浮かべた。どうしようか……でもシロコも疲れているだろうし、今日は遠慮しておこう。

 

「ありがとうシロコ、でも歩いて帰ることにするよ。運動は大事だからね。」

 

「ん……先生って、歩く方が好き?アビドスに来た時も、歩いて来ていたし。」

 

「あはは…そうかもね。」

 

 多分、シロコの中で僕は『歩くの大好きウォーキングマン』みたいな印象が生えてきたことだろう。

 

「それでは先生、さようなら。」

 

「うん、さようならみんな。気を付けて帰ってね。」

 

「さようなら〜」

「さようなら。」

「明日、ホントに来ないでよね!それじゃ!」

 

 校門前で別れ、それぞれの帰路に着く。さて、僕も明日は早いしさっさと帰ろう…。

 

 

 アビドス自治区を歩いて、僕はシャーレへ向かう。帰りの電車まで時間が余っているし、適当にどこかで時間を潰そうかなんて考えた時、ふと視界に見慣れたピンクの髪色が映った。

 

「……あれ、ホシノ?」

 

「うぇ!?先生……どうしたのこんな時間に、一人で歩いてたら危ないよ?」

 

 展開型のシールドを肩から下げ、愛用のショットガンを片手に持ったホシノと出会う。随分と驚いた表情を浮かべて、見開いた目を何度か瞬きさせていた。

 

「それはこっちのセリフ、もう夜中になるよ?不良生徒さん。」

 

「うっへへ〜…今日はたまたまだからさ、見逃してくれない?先生。」

 

 後頭部に手を当て、困ったように笑うホシノ。アビドス自治区とはいえ、こんな時間まで出歩く生徒を見逃す訳には行かない。というか、疲れているはずなのに寝ないでまた外に出た理由はなんだろうか。

 

「ヘイヘイヘイそこの大人ァ!持ってる金全部置いて行きなぁ!?」

 

 ホシノに理由を問いただそうとした時、背後から荒々しく乱暴な声が聞こえてきた。振り返れば、そこには銃を構える不良生徒が二、三人。もう見慣れてしまったものだ、今更驚くことは無い。

 

「良かったねホシノ、不良生徒仲間だよ。」

 

「もう、やめてよ先生ー。おじさんはそんなんじゃないってば〜。」

 

「オイ、何ヘラヘラして……うわっ!小鳥遊ホシノだ!クソっ、今日も居やがんのかよ!!」

 

 互いの実力を把握しているからか、僕らは全く危機感を持たずヘラヘラと笑い合う。そんなホシノを見てキレた不良生徒がズカズカと詰め寄ってくるが、両手でショットガンを構えたホシノを見ていきなりビビりだした。しかもちゃんとホシノの名前を呼んで。

 

「あれ、君たち知り合い?なら仲良くしてくれると嬉しいんだけど…。」

 

「そんなんじゃねぇ!ソイツは……真夜中に現れては不良をぶっ倒すアビドスのヤベェヤツ、小鳥遊ホシノだろ!私達も今まで何度かやられた……!」

 

「う、うへ……おじさんそんなことした覚えはないけどなぁー。」

 

 焦ったように頬を掻きながら、僕から視線を逸らすホシノ。彼女達の言葉が正しければ、ホシノはよく真夜中を出歩く…いや、パトロールと言った方がいいかな?ともかく、彼女はここの治安を人知れず守っていたらしい。

 

「けど、今のテメェにはその大人っつーお荷物が居る!日頃の恨み、晴らさせてもらうぜェーー!!」

 

「あっぶなっ!?」

 

 スパイダーセンスが反応した!

 不良生徒から放たれた弾丸はスパイダーセンスの回避とアロナバリアのおかげで横脇腹スレスレを過ぎ去り、発砲音と共に駆け出したホシノは足刀蹴りで不良生徒を二人吹っ飛ばし、残りの生徒を散弾一発で沈めた!さっすがホシノ!けれど、ダウンした不良生徒三人を目の前にホシノは少し浮かない表情だ。

 

「……ホシノ?」

 

「あぁ、うん。もう大丈夫だよ先生……それより怪我してない?」

 

 こちらに近寄り、銃弾が当たりそうだったわき腹付近をペタペタ触るホシノ。心配してくれるのは有難いけど、そこには闇銀行で受けた傷が残ってるからあまり触らないで欲しいかな。ちょっといたい。

 

「ごめんね先生、反応が遅れちゃって。」

 

「そんなに気にしなくていいのに……ありがとうね、守ってくれて。」

「……それはそうとホシノ、君いつも夜中に出歩いて働いてるの?治安の維持は大事とはいえ…ちゃんと寝ないと。」

 

 いつも昼寝している理由はコレか、恐らくほぼ毎日見回りをしているのだろう。そういう点で言えば、彼女もヒーローに違いない。けど、僕が言うのもなんだけど、自分を顧みないやり方はいつか自分の身を滅ぼしてしまう。

 

「どういたしまして、おじさん歳のせいか上手く寝付けなくてねー。眠れない時はこうやってパトロールしてるのさ。でも寝るのは好きだから、時間さえあれば寝てる…のは知ってるよね。」

 

 えへへ、と少女らしい素敵な笑顔を浮かべるホシノ。歳のせいにするにはあまりに若すぎるがそこはツッコまず、少ししゃがんで視線を合わせた。

 

「……無理してるなら、ちゃんと相談してよ?僕がスパイダーマンとして代わりを務めるから。これでも街を何度も救ったスーパーヒーローだからね。」

 

「なら、おじさんが腰を痛めた時はお願いしようかな。正義のヒーロースパイダーマンさんに。」

 

「もちろん構わないよ、腰痛は辛いからね。」

 

「もしかして先生も腰痛持ち?……それじゃあ、帰ろっか。先生。」

 

 立ち上がり、この近くだというホシノの自宅まで送る。帰り道は何気ない話で盛り上がり、魚の豆知識を色々教えてくれた。どうやら彼女は海の生き物が好きらしい、今度アビドスのみんなで海に行けたらいいな。

 さて、今日は早く休もう。明日はミレニアムで新スーツの開発、久々に羽を伸ばしてゆっくり出来そうだ。

 

____翌日 ミレニアム エンジニア部 部室___

 

 

ドカァァァァアアン!

 

 電車で眠りながら向かったミレニアムのエンジニア部 部室、消えない眠気で欠伸をしながら部屋の扉を開けた瞬間、僕は爆発に巻き込まれた。

 

 

 

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