Spider-Archive   作:ネギャー

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 ブルズアイ視点のお話です。


第二十七話 大当たり

 

 

_____便利屋68事務所。

 

「あはは! ブルちゃん強すぎ! これでもう120回も負けたんだけど〜!」

 

 浅黄ムツキが、的に突き刺さったダーツを見上げながら、おどけたように肩をすくめる。

 

「俺とダーツで勝負なんて100年早いんだよ。ポーカーでもチェスでも、他にも色々あるだろ?」

 

 ウイスキーのグラスを傾けながら、手元に残ったダーツを無造作に放った。三本の矢は吸い込まれるように、すべてボードのド真ん中へ。ガキの頃はベースボールに夢中だったが、今となっちゃ何をやっても面白みを感じない。

 

「うーん、でも1回くらいブルちゃんが外してる姿見てみたいんだよね〜。後ろ向いてても、目隠ししてても、当たる瞬間に動かしても、全部真ん中に命中するし。」

 

「当たり前だろ、俺の名前は『ブルズアイ』だぜ。絶対外すことはねぇし、ダーツなら尚更だ。」

 

「じゃあ、次は玄関から____。」

 

 ジリリリリ、と事務所にひとつしかない電話……それも古臭い黒電話が呼び鈴を鳴らした。ボスと伊草は買出し中、鬼方は情報収集とやらで外出中、浅黄はニヤニヤと笑いながら此方を見ているし、出る人間は1人しかいなかった。

 

「……はぁ、こちら便利屋68。なンかご要件でも……。」

 

『久しいな、ブルズアイ。便利屋での仕事は順調か?』

 

 眉間に皺が寄る。それを見て怪訝な表情をする浅黄だったが、大丈夫だ、という意で手を小さく上げるとまた憎たらしい表情に戻った。

 しかし、いつか来ると思っていたがこんなに早く連絡が来るとは。電話の向こうにいるのは、俺の元ボスのウィルソン・フィスク……もといキングピン、現カイザー理事。ただの人間だっつーのに、電話越しでも異様な圧を感じる。

 

「えぇ、そりゃお陰様で。知ってると思うが、アンタの傘下にいる銀行からちょいと金を借りてね。そろそろ計画を次の段階に移行しようと思ってたんだが……予定を早めた方がいいか?」

 

『いや、その必要は無い。無闇に予定を早めては想定外の結果を招くことになる……分かるだろう?今回は、君たち便利屋に依頼をしようと思ってね。』

 

「……なるほど?」

 

 早速嫌な予感がする、銀行の件で借りがある俺らにゃ断りづらいと踏んだのだろう。こうなることは予想していたが、果たしてどんな内容か……。

 

『私に牙を剥こうとしている連中がいる、薬剤関係なのだが……少々厄介でね。ブラックマーケットの一角を拠点として活動しているのだが、どうやら私の縄張りでも薬を売っているらしい。今やブラックマーケットの半分は私のモノだが、もう半分は未だに制御しきれない。わかるか?』

 

「つまり、その厄介者を始末しろってことかい。キヴォトスでもヤクが流行ってるたぁ驚きだが……まぁあの地域じゃ有り得なくもねぇな。」

 

 ブラックマーケットの一部を掌握していると思っていたが、まさかもう半分も手にしていたとは。流石は裏社会のボスキングピン、カイザー理事とか名乗っておきながらその性根は変わってねぇな。

 

『あぁ、麻薬だけではなく強力な眠剤や劇薬も扱っている。もし仮に、私と他のブラックマーケットの支配者が戦争することになった場合…毒物の散布などされたらたまったものではない。』

 

「戦争ね……。」

 

『仮の話だ、だが状況によっては君たちにも応援を求めるかもしれない。』

 

 どこへ行っても争い事はなくならない。絶対的な支配による秩序を目指すキングピンだが、そのやり方が毎度上手くいかないのはいつになれば理解するのだろうか。

 とはいえ、戦争になれば合法的に人を殺りまくれる。ボス達にゃ悪いがその時が来れば存分に楽しませてもらおう……。

 

「マ、参戦するかはボス次第だな。そんで、俺たちがやるべき事はその麻薬カルテルの壊滅ってことでいいな?」

 

『あぁ、幸い薬品工場はアビドスにある。カルテルのボスが視察に来る時に始末すればいい……詳しい場所や人数、重要人物などは後で送らせる。ただし気を付けろ、敵は強力だ。』

 

「俺を誰だと思ってんだ、百発百中のブルズアイだぜ?」

 

『……そうだな、それでは期待しておこう。』

 

 ガチャリと電話を切り、溜息を吐きながらソファに座り込む。

 やはり、報酬はナシか。まぁ依頼遂行に必要な経費は出してくれるだろうが、銀行であれだけの金を受け取った手前報酬を要求するのは厳しいだろう。

 

「ブルちゃん、今のって……。」

 

「キングピン……カイザー理事だ、俺たちに依頼だとよ。」

 

「ただいまー、帰りにカヨコに会って一緒に帰ってきたわ。聞いてちょうだい、今日は鶏肉が安くって___って、何この空気?」

 

 ちょうどよく三人が帰宅してきた。ボスは俺たちの神妙な顔に気付いたようで、困惑したように首を傾げる。

 

「……依頼だ、ボス。それも厄介な。」

 

「……へ?」

 

 とりあえず、事の経緯を説明することにした。

 

 

「……つまり、私たちがお金を融資してもらった銀行は依頼主の傘下で、多額のお金を受け取ったから借りを作ってしまったと。そしてカイザー理事はブラックマーケットの半分を有する裏社会のボス……依頼を遂行しなければ私の命はない。それで合ってる?」

 

「あぁ。」

 

「お、終わりです!こうなったらカイザー理事を爆破して……。」

 

 頭痛を抑えるように頭を抱えながら要約する鬼方、冷や汗が止まらない伊草、流石に困り顔の浅黄、白目を剥くボス

 

「な、なんですってーーー!!!???」

 

「言わなかった俺も悪ぃが、どちらにせよあそこで融資して貰えなかったら本来の依頼も達成できないだろ?そうなりゃ俺たち……こうだぜ。」

 

 スッと首を切る真似をする。さらに怖がるボスと伊草。

 

「ちょっと、余計に怖がらせないで。確かにブルズアイさんの助けがなかったら融資を受けられなかったけど……私たちは仲間だよ。ちゃんと情報は共有しないと。」

 

 スマホのメモ帳に情報をまとめながら、鋭い視線を向ける鬼方。ボスがこうなった今、冷静な人間がいるのは心底有難い。

 

「次から気を付けるよ……次があればの話だがな。」

 

 ギロリととんでもない目付きでカヨコに睨まれた。危機感を与えたかったんだが……少しやり過ぎたか。

 

「依頼を断ればカイザー理事も退いただろうな、アイツの『兵隊』は他にもいる。ただ、次に来る依頼がこれより安全だとは限らねぇ。アイツは一度作った借りは必ず返させる男だ、ここいらで返しといた方が無難だぜ。」

 

「はぁ……それで、もう行くしかないけどどうするの社長?」

 

「どうするって……もうやるしかないんでしょ!?ならやってやるわよ!麻薬カルテルでも何でもかかって来なさい!!」

 

「さ、さすがアル様……!!」

 

 吹っ切れたか、いつまでもビビってるよりかは行動した方がいいしな。とりあえず今は準備だけ済まして、キングピンからの情報が来るまでのんびり待っているとしよう……。久々の『掃除』だ、楽しみで仕方ねぇ。

 

「くふふ、ブルちゃん顔怖いよ?」

 

「元からだ。」

 

 額にある『的』のマークをなぞりながら、そう答えた。

 

 

 

______アビドス自治区。

 

 あれから数時間後、キングピンから送られてきたデータをもとに、俺たちはアビドス自治区にあるビルの最深部、廃棄された化学プラントへと足を運んでいた。

 

 プラントの周囲には、ガスマスクを被った武装集団が徘徊している。ただのゴロツキじゃない。動きに統制が取れているし、何よりその目が……異常に血走っている。

 

「……ありゃあ、普通の薬じゃねぇな。ヘンなもんを打たれてる。」

 

 物陰に潜みながら、懐から数枚のコインを取り出す。キヴォトスに来て驚いたのは、ここの住人の頑丈さだ。だが、それでも『急所』は変わらない。

 

「ボス。あんたらは正面から派手に暴れてくれ。俺は上から『掃除』する。」

 

「えっ、あ、ええ! 任せなさい! 便利屋68の実力、見せつけてあげるわよ!」

 

 ボスが震える手で愛銃を構え、虚勢を張る。それが合図だった。

 

 浅黄の投げた爆弾がプラントの入り口を吹き飛ばし、伊草が狂気的な笑みを浮かべながら突撃する。鬼方が冷静にそのバックアップに回り、戦場は一気に混乱の渦に叩き落とされた。

 

「な、なんだ!? 敵襲だ!」

 

 パニックに陥るカルテルの連中。そこへ、音もなく死が降り注ぐ。

 プシュッ、と小さな音を立てて、見張りの一人の眉間にコインがめり込んだ。

 続いて、別の一人の脇腹を、投げられた「ただのペーパーナイフ」が正確に断ち切る——いや、キヴォトス人ならこれでは死なない。だが、その衝撃で意識を奪い、地面に縫い止めるには十分だ。

 

「……おいおい、どっち向いてんだ?」

 

 鉄骨の上を軽やかに移動しながら、手近にあった『ボルト』や『ナット』を弾丸のように指で弾く。それらは銃弾をも凌ぐ精度で、銃を構えようとする敵の手首や、手榴弾のピンを正確に叩いた。

 

「な、なんだあいつは! 弾丸が飛んでこないのに、仲間がどんどん倒れていくぞ!」

 

 ピンを外した手榴弾が盛大に爆発し、更に気分が盛り上がる。ベースボールやダーツなんかじゃ比にならない、硝煙と血の匂い、苦痛に悶える声と投擲物が風を切る音。

 

「この感覚だ……久しぶりだな!!」

 

 俺にとってこの戦場は、ダーツの盤面と変わらない。

 便利屋の面々が正面でヘイトを買っている間に、プラント内の傭兵共を次々と無力化していく。キングピンに神秘がどうたら、ヘイローがナンタラと小難しい説明を受けたが……別に必要なかったな。

 

「ぅ……い、いたい……。」

 

「助けて、血が、血が止まらない……!」

 

 ヘイローを掲げたガキ共も、別に不死身というわけじゃない。

 直接「急所」を狙わなくとも、手足の動脈を正確に射抜けば、投げた物は面白いように肉を貫通する。現に、俺の足元は血の海だ。頭や心臓を狙った連中が、ヘイローの加護で意識を失う程度で済んでいるのとは対照的だった。

 キングピンの野郎は「この街では殺しの仕事は成立しない」なんて抜かしていたが……即死だけが能じゃない。

 

「こうして失血死を待てば、キヴォトスの住人だろうが等しく『終わり』を迎えられるんだよ」

 

 始末を命じられたのはカルテルのボスだけだったが、たまには余興もいい。このヘイローとやらが消え去る瞬間を、一度拝んでおくとしよう。俺が指に挟んだボルトを弄んでいると、背後から喧騒を切り裂く声が響いた。

 

「……ちょっと、ちょっとブルズアイさん! 殺しはナシよ、ナシ!!」

 

 銃声が止んだ戦場に、場違いな悲鳴が響く。振り返れば、顔を真っ赤にして肩で息をするボスが、なりふり構わずこちらへ走ってくるところだった。

 

「なんだボス。アウトローってのは、殺人も厭わない大悪党のことだろ?」

 

 冷やかすように問い返すと、ボスは間髪入れずに、いつものビビり顔とは正反対の峻烈な否定を叩きつけた。

 

「それは違うわ! 私が目指すアウトローは……こんな残酷なものじゃない!!」

 

 その剣幕に、俺は思わず目を見開いた。だが、俺たちの置かれた現実は、ボスの語る理想ほど甘くはない。

 

「いいかボス。キングピンに首を突っ込んだ以上、アンタもいずれ血の仕事に手を染めることになる。あいつに関わって『甘いこと』なんて言ってられる時期は、とうに過ぎてるんだぜ。」

 

 俺の忠告は、脅しではない。冷徹な事実だ。

 しかし、ボスは震える拳を握りしめ、咆哮するように言い放った。

 

「その時は……その時は、私がそのキングピンを倒してやるわ!!

 

 予想だにしない返答に、俺の思考が一瞬止まる。

 

「いい、ブルズアイさん? 真のアウトローっていうのはね、誰かに指示されて自分の意志を曲げるような真似は、絶対にしないものなのよ!」

 

 アルのその言葉を聞いた瞬間、俺は思わず吹き出していた。

 

「……ハハッ、ハハハハハ! 傑作だ、最高だよボス。あのキングピンを、たかだか便利屋の小娘が倒すって?」

 

 笑いが止まらなかった。殺し屋として数多の戦場を渡り歩き、フィスクという男の底知れぬ冷酷さを誰よりも知っている俺からすれば、それは死刑宣告にも等しい世迷い言だ。だが、目の前のアルは、震える膝を必死に抑えながら、真っ直ぐに俺を……いや、俺の背後にある「現実」を睨みつけている。

 

「……本気なんだな。自分の意志を曲げない、それがアンタの『アウトロー』か。」

 

 俺は地面に転がっていた、ただのホッチキスの芯を拾い上げた。

 

「……分かったよ。なら、コイツらは死なせねぇ。だが、これだけは覚えておきな、ボス。死ななきゃいい、ってのは……死ぬより苦しい目にあわせるってことだぜ。」

 

 俺の手首が、目にも止まらぬ速さでスナップを効かせる。

 放たれた銀色の細い芯は、出血死を待つばかりだった敵の兵隊たちの傷口周辺、その止血のツボと皮膚を正確に縫い止めるように突き刺さった。

 

「ぐっ、あ……ッ!?」

 

「騒ぐな、傷口を仮止めしてやっただけだ。……死ぬのが怖くねぇなら、そのまま這って帰りな」

 

 圧倒的な技術の暴力。アルはそれを見て、顔を引きつらせながらも「そうよ! それが便利屋68のやり方なんだから!」と、また無理のある虚勢を張った。

 

 


 

「ブルちゃんつよ〜い、今回の仕事は楽に終わりそうだね!」

 

「す、すごいですブルズアイさん……。」

 

「気を付けろよ、こういう気の抜けた瞬間がいちばん危険……。」

 

 突如、通気口から異様な音が聞こえてきた。

 

「……っ、何これ、煙が……!?」

 

 ムツキが鼻を抑えた瞬間には、もう遅すぎた。換気ダクトから噴き出した謎のガスを吸い込み、ボスたちが次々と力が抜けたように倒れた。

 

「ハルカ、社長を……! 力が入らな……」

 

「あ……アル様……すみま、せん……私が……不甲斐な……」

 

 カヨコが銃を支えに膝をつき、ハルカがアルを庇うように倒れ込む。アルもまた、ハードボイルドな台詞を吐く余裕すらなく、意識が遠のく中で床に沈んだ。

 

「あーあ、だから気をつけろっつったろ。……ったく、先生が見たら泣いちまうかもな。」

 

 立ち込める緑色の煙の中から、一人だけで悠然と歩み出る。ガスの噴出を察知した瞬間に、予め盗んでおいたガスマスクを装着して難を逃れた。薬品工場なんだから、これくらい警戒しておかないとな。

 

「ひ、ひひっ! かかったぞ! 噂の便利屋も、この新型の神経毒の前には無力だ!」

 

 奥の指令室から、防護服を着た男たちが薄汚い声を張り上げて現れる。奴らの手には、気絶したボスたちを「処理」するための無骨な鉈や、捕縛用のチェーンが握られていた。

 

「……おい。」

 

 自分でも驚く程に、その声は冷え切っていた。

 

「そのガキどもに触るんじゃねぇよ。そいつらは、俺の『まともな日常』の観客なんだ。……汚されると、俺の機嫌が悪くなる。」

 

「あぁ!? 何を言って___」

 

 男が言葉を発し終える前に、手が動く。ポケットから取り出されたのは、事務所でボスに「景品よ!」と渡された、何の変哲もないプラスチック製のダーツの矢。

 シュッ、という鋭い風切り音。

 それは男たちの喉仏に正確に突き刺さり、声を奪った。

 

「死にたいなら抜きな、嫌なら息が続く限り逃げることだ。」

 

 男たちは呆気なく退散し、司令室へ足を進める。少しばかりアルたちの容態を確認したが、意識を失っているだけで命に別状は無さそうだった。ただキヴォトスの人間であれだけのダメージを喰らうなら、俺が吸い込んでいたらもっと酷い症状が出ていただろう。

 

「よう、キングピンからの届け物だぜ。」

 

 自分でも分かる、完全に『スイッチ』が入った状態だ。懐にしまっていたトランプカードを指先で弄びながら、笑みが自然と浮かぶ。

 司令室に居座っていたカルテルのボスは、写真の通り小太りの男だった。本人と分かればそれでいい、後は始末するだけだ。

 

「ひ、ひぃぃいいい!!」

 

 俺は逃げ惑うカルテルのリーダーを最上階へ追い詰めた。

 すぐに殺すこともできたが、アイツらの近くで命を奪うことには少し抵抗感を覚えた。

 

「待て! 金なら出す! 助けてくれ!」

 

「金か。あいにくだが、俺のボスはもっと安い金で、もっと面倒な誇りを持って動いてるんだ」

 

 俺は床に落ちていた、折れたボールペンを拾い上げた。

 

「アンタを殺せば、アイツらは悲しむだろうな。アイツらは、本当の『死』の臭いには慣れてねぇ。……だから、これは俺の個人的な仕事だ」

 

 アイツらの『ハードボイルド』を守るために、俺が泥を被る。それが、この便利屋に居座るプロとしての、俺なりの支払いだ。

 

「あ、あんなガキ共の味方をして何になる!?情でも移ったのか!?」

 

 情……情か。

 ふっ、と自分でもバカバカしく思えて鼻で笑う。

 

大当たり(ブルズアイ)だ。クソ野郎。」

 

 放たれたボールペンが、標的(ターゲット)の眉間を貫いた。

 


 

「……う、ううーん。……あれ? 私、寝てた……?」

 

 数分後、アルが真っ先に目を覚ました。周囲には、ブルズアイによって急所を外され、拘束された敵だけが転がっている。

 

「アルちゃん、大丈夫〜? 私も今起きたとこ……」

 

 血痕は拭き取られ、致命傷を負った死体はブルズアイによって事前に処理されていた。

 

「おーい、ボス! 意識戻ったか?」

 

呑気にパイプの上でダーツを投げているブルズアイを見て、アルが目を輝かせた。

 

「ブルズアイさん! あなたが無事だったのね!? よかったわ、敵はどうなったの!?」

 

「ああ。あんたらが寝てる間に軽く散らしておいたぜ。リーダーの野郎は窓から飛び降りて逃げやがった。……まぁ、キングピンには連絡を入れたし向こうで勝手に処理してくれるだろ。」

 

「そう……依頼は達成ってことでいいのよね?みんな無事でよかったわ!」

 

 アルが胸を張って笑う。その無垢な笑顔に、ブルズアイは小さく鼻を鳴らした。

 


 

「にしても、ブルちゃんって本当に強いんだね〜。もしかしたら風紀委員会にも勝てるかも!」

 

「うーん、それはどうだろう……ブルズアイさんが強いのは確かだけど、やっぱり空崎ヒナの存在がいる限り私たちじゃどうにもできないと思う。」

 

「ソラサキ?そんなにヤベー奴なのか?」

 

「それはもう……!多分、私たち5人を相手にしても単独で勝つくらい強いわ。」

 

 ふーん、と頭の中にある要注意メモに刻みながらブルズアイはムツキ製の高性能爆弾を手のひらで転がしていた。使う機会はなかったが、使用期限は今日中。最後は派手にぶち撒けば良かったか、と内心カルテルのボスを仕留めた方法を悔やんでいた。

 

「……たまには、狙わずに投げてもいいか。」

 

 アビドス自治区は現在、ほぼ人がいないような状態。ならば適当に投げてもいいだろうと、ブルズアイは手に持っていた爆弾を思いっきり背後へ放り投げた。

 

「ぶ、ブルズアイさん……今何投げました……?」

 

 その動作を唯一目撃していたハルカが、震えた声で問い掛ける。

 

「何って、爆弾だぜ。使用期限が今日までらしいからな、不意に爆発しても困るし捨てといた。ここら辺は人通りが少ないらしいし大丈夫だろ?」

 

「あ、あの……投げた先……。」

 

「あん?」

 

 ブルズアイは、自分の能力を過小評価していた。単なる『技術』として研鑽されてきたその力は、ある種の『スーパーパワー』にまで匹敵するほど昇華されていた。

 彼の能力は、『投げた物が必ず当たる』こと。例え狙いを外しても、何かしらには命中する。そう、例え()()()()()()()()()()()()だ。

 

ドカァァァァァァァアアアアアアン

 

「な、何!?」

 

 驚いたアルが振り返った先にあったのは、かつてアビドスの面々と出会った思い出の店、柴関ラーメン。

 

「……悪いボス、やらかした。」

 

 珍しく真顔でそう呟くブルズアイ。

 

「なななななななな、」

なんですってーーーーーーーーー!!!???

 

 便利屋の波乱な1日は、まだ始まったばかりだった……。

 





ブルズアイの見た目は映画デアデビルに登場するブルズアイと全く同じです。スキンヘッドです。
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