どうしてセリカのことを知っているのか?
なぜここにいるのか?
答えはこの下にある!!
「スパイダー…。」
「…マン?」
突如として現れた上半身裸の男…奇妙なのはその顔に着けたマスクだ。赤い生地に蜘蛛の巣のような模様が浮かび、黒い縁の目は白く目立っている。
引き締まった身体には思わず息を飲むほどの魅力があり、ヘルメット団の面々は一瞬だけ動きを止めた。それが間違いだった。
「おっと…僕の身体に魅了されちゃった?」
男の目の前に居た三人のヘルメット少女は一瞬にして蜘蛛糸の様なもので絡めとられ、仲良く並んで近くのガードレールにくっ付いてしまった。常軌を逸した力を持つ彼女らでも、その糸を引きちぎることは叶わない。
「見るのは自由だけど、座席は固定させてもらうねっ…と、スパイダーセンスに反応あり!」
蜘蛛糸に巻かれた少女たちは必死にもがくが、やがて無駄だと分かったのか力を抜いてガードレールに寄り掛かる。その様子を見ていた男は頷き、背後から迫る銃弾の数々を軽々と避けてしまった。
「なっ…!?」
「驚いた?別に君の射撃が下手ってわけじゃないから安心していいよ!」
クルリと回り、背後に居た少女達にゆっくりと歩み寄る。
「く、来るなぁぁぁぁああ!!」
「ちょっとちょっと…僕はモンスター・パニックの怪物じゃないよ。」
他の
何度も発射される銃弾を華麗に避け、いつの間にか少女達の目の前に到着する。カチカチと鳴るだけの銃を持ったまま、ただただ震える少女達。
「…参ったな、そんなに怖がらなくても……。」
銃弾を避けまくる上半身裸の覆面男が徐々に迫ってくる様は、年頃の女の子たちには銃声や薬莢よりも刺激が強かった。
男は困ったように頭を搔くが、結局その女の子達も蜘蛛糸でグルグル巻きにして同じくガードレールに並べておいた。
「……はぁ、これで全員かな。」
恨み言や命乞い、果ては母親を呼ぶ声など多種多様な声が混ざり、それなりの音量になる。
「…はいはい、ウェブは一時間後に溶けるから、もうこんなことするんじゃないよ。」
特にうるさい三人のヘルメットを外し、口元にウェブを張り付ける。鼻まで覆ってないため呼吸はできる、これが優しさかは分からない。
ヘルメットを付けていた少女たちはそれなりに顔が良かったらしく、ヘルメットを外した時、スパイダーマンは思わず「WOW…」と口に出してしまった。
涙目だが此方に反抗するような目、その情熱を他の分野に向けて欲しい限りだよ。
あぁ、僕はピーター・パーカー…驚いた?実は僕がスパイダーマンでしたー!
…なんて、みんなもう知ってるよね。
OK!じゃあなんでこうなったのか説明しよう!
数十分前・・・・・・・
「もうこんな時間か…」
特に用事もなかった僕はアビドス自治区をただ歩いてるだけで、特に珍しいものも見つからないままシャーレに帰ろうとしていた。
けれど、ふと立ち寄った大通りの一角に巨大なビルが建っているのを見つけて立ち止まったんだ。そのビルだけが異様に高く、夜空を突き刺すような構造は少し不気味だった。
その時、微弱ながらスパイダーセンスが反応し大通りの突き当たりを見ると…なんとあのヘルメット団がセリカを囲って、今にも襲い掛かりそうだ!
「まずいな…。」
セリカは背後から近付くヘルメット少女に気付いていない、このままでは彼女が危険だと、ビル横の路地裏に入り、肩から掛けていた鞄からスパイダーマンのマスクを取り出す。
「これで最後…これで最後だ…。」
そう自分に言い聞かせてマスクを着けるが、既のところでシャーレの制服を着ていることに気が付いた僕は、考えてる暇もなく着ているシャツごと脱いで鞄に突っ込み、ウェブで壁にはっつけて路地裏から飛び出した!
セリカに飛来するミサイル、このままでは直撃してしまう!
スイングでセリカの元に辿り着くが、着いた頃には着弾してセリカに多大なダメージを負わせてしまった。
砂埃が舞う中、僕はセリカの目の前に立ち塞がり目の前のヘルメット少女達を見据える。
誰だ、なんて言われてしまったら自己紹介するしかないよね。
「…ヘルメット団からセリカを守る男!スパイダーマンだ!!」
ってわけ、あとはもう知ってるよね。僕は華麗にヘルメット団を制圧して…あれ?
スパイダーセンスが反応した!
再び飛来するミサイル、そういえばこれを発射した子が居たね。
「アクション映画に派手な爆発は必須だよね!でもアクションシーンはもう終わりだよ!」
ミサイルをウェブで掴み、飛んできた方向に投げ返す。場所は…さっきのビルだね。
ビルから爆発音が鳴り響き、小さく叫び声が聞こえる。
ビル自体はかなり頑丈なようで、少しだけ壁が崩れる程度で済んだ。
ここに居るのはガードレールにはっつけられたヘルメット団と、先程のミサイルで意識を失ってしまったセリカ。立っているのは僕だけだ。
「…それじゃ、また会おうね!」
セリカを背負い、震えるヘルメット少女達に手を振る。
ヘルメット団の面々は「あいつが殺される。」だの「もしかしたら私が連れ去られてたかも…。」だの、何か勘違いされてそうだけど…幸いここにデイリービューグルは無いし、スパイダーマンの悪評が広まることは無いかな!
あぁ、念の為ヘルメット少女の一人にスパイダートレーサーを付けたから彼女達の動きは大体わかるよ!
さっきの路地裏に入りながら、マスクを外して鞄を回収する。まだウェブが引っ付いてるけどすぐに溶けると思う。
一旦鞄を枕代わりにしてセリカを寝かせ、いそいそと服を着る。流石に上裸の男が女の子を背負ってたら色々と誤解されるからねり
いつものシャツとシャーレの制服を着た僕は、再びセリカを背負って彼女の家に向かう…事前に生徒たちの自宅を知ってて助かったよ。
火薬の匂いと全身を襲う痛み、ぼんやりと霞む視界には砂埃しか見えなかった。けど、私の耳にはハッキリと聞こえる。
『ヘルメット団からセリカを守る男__』
そこで私は意識を失ってしまった。
あの声は…どこかで……そう、先生だ。先生の声だった。
生身でヘルメット団に立ち向かうなんて…私のために…。
気が付いた時には、私は誰かの背中に寄りかかっていた。大きくて温かい背中……。
「…せ、先生……?」
「あ、気が付いた?でもまだ動いちゃダメだよ。」
あぁ、先生だ。無事だったんだ…。
無意識に私は先生を抱き締め、涙を流していた。
「…セリカ?」
「ごめん、先生…私、先生のこと……。」
「いいんだよ、勝手に首を突っ込んだのは僕の方なんだから。」
「……そうだ、先生。怪我はない?」
「あぁ…えっと、『スパイダーマン』って名乗る覆面の男が僕たちを助けてくれてね…。恥ずかしいけど、僕はそのまま君と一緒に逃げて来たんだ。」
「スパイダー…マン…その人にお礼を言わなきゃね。」
「そうだね…まだかかりそうだから、眠ってていいよ。」
先生の言葉に甘え、ゆっくり目を閉じて先生に身を任せる。気付いた時には、私のベッドの中に居た。
外では小鳥が囀り、カーテンの隙間からは光が漏れている。
私の人生はどこで踏み間違えてしまったのだろうか。学校をやめた時?それともヘルメット団に勧誘された時?
もしどこかで正しい道を選んでいたら、私は…捨石 グエンはあの先生と一緒に居られたのかもしれない…。
『依頼』を達成するため、今度は黒見 セリカを狙った。彼女が一人の時を狙って、残ったヘルメット団員をけしかける作戦だ。
途中までは上手くいっていた、けどミサイルが直撃した時…そう、あの時現れた…。
「だ、誰この変態!?」
妙なマスクを被った上半身裸の変態が私たちの邪魔をしてきた。
その時の私は必死だったから、ソイツを…いや、スパイダーマンと名乗るその男を止めることに必死だった。
結局、私たちはその一人の男に制圧されて、あまつさえミサイルを投げ返し『依頼人』の建物を一部破壊してしまった。
仲間は泣いていた、もうチャンスは無いと。せっかくみんなで大きな仕事ができたのに、達成できなかったと。
私も泣いた、自分の無力さと踏み外してきた選択の数々を思い出して。
でも、路地裏に入って行く男が覆面を外した瞬間を私は見た。
顔自体は見ていないが、あの綺麗な金色の髪はちゃんと覚えている。
…そうだ、あのスパイダーマンと名乗る男の正体はシャーレのパーカー先生だったんだ……。
幸い、このことは仲間に気付かれなかったみたいだから、これは私だけの秘密。
……もう一度、学校に戻りたいなあ。
キヴォトスの某所で事務所を構える非公認の組織、『便利屋68』。
その事務所の中に、一人の男が訪ねてきた。
「それで…わざわざ事務所まで来るほどの依頼なんでしょうか?」
「…あぁ、とても大事な仕事でね、直接話がしたいと思ったんだ。」
「何事にも『信頼』というのは大切だろう?」
大柄な男は一人でソファを占領し、便利屋の社長 陸八魔 アルと話していた。
傍から眺める浅黄 ムツキ達は、男が下手な行動を起こさないように観察している。男はただ座っているだけで威圧感を放ち、事務所には緊迫感が漂っていた。
だがアルはグッと堪えながら堂々としている。内心はちょっと怖がっているが。
「その仕事…とは?」
「…アビドスの件……そして、『スパイダーマン』の始末…。」
「…スパイダーマン?」
聞き慣れない言葉にアルは困惑するが、男は構わず話し続ける。
「あぁ、どちらも大事だか…我々としてはスパイダーマンの方を何とかしたい。」
「…それで、君たちには私の部下と協力して欲しくてね。」
「部下…?」
男が持っていた杖で床を突くと同時に、もう一人の男が彼の背後に現れた。
「「「「!?」」」」
「…君たちにとっては少しやりにくいかもしれないが、報酬は弾む。」
「それに…スパイダーマンの方は私の部下一人で何とかできるかもしれないからな。」
現れた男は不気味に笑い、便利屋の面々を一人ずつ見定める。
「…よろしくな、嬢ちゃんたち。俺のことは『ブルズアイ』って呼んでくれ。」
何故かは分からないが、ブルズアイからも異様な雰囲気が漂う。
アルは息を飲んだあと、口を開いた。
「…わ、分かりました。」
「それで…あなたの名前を伺っても?」
男は少し目を伏せたあと、アルを見据えてこう言った。
「私は『キングピン』……」
「…いや、今は『カイザーPMC理事』…だったか。」
大柄な男…ウィルソン・フィスクことキングピンは不敵に微笑んだ。
*スパイダートレーサーとは、蜘蛛型の発信機である。ウェブシューターに内蔵されており、付けられた場所をスパイダーセンスで察知することが可能!
*ブルズアイとは、超ざっくり言うと物凄い投擲能力を持つヴィラン版ホークアイだ。詳しくは映画版『デアデビル』か、ドラマ『デアデビル』のシーズン3を観よう!
*キングピンとは、裏社会を牛耳るマフィアのボス。体脂肪率2%の化け物だが、ただの人間だ。こんな説明じゃ足りないと思うので、詳しくは映画版『デアデビル』か、ドラマ『デアデビル』、または映画『スパイダーバース』を観よう!個人的に一番好きなヴィラン。