星喰らいの盛衰   作:彼岸花ノ丘

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再会
久しぶり


 ようこそ、私の意識の末端へ。

 

 久しぶりと言うべき、だろうか。予想通りの時間に、君の意識は再び私の下へとやってきた。

 君の精神は私の意識と同調しやすい形質らしい。この短期間で二度も私達の意識と接する存在は、数多の宇宙と歴史の中でも極めて稀なものだよ。君と同じぐらい同調しやすい存在と以前出会ったのは、君達地球人の時間間隔に換算すると大体三十三正六千一垓二十七兆四万一千百十九時間ぶりか。

 

 ふむ、私の事なんて知らない?

 

 覚えていなくても無理はないだろう。君にとって前回の私との接触、ファーストコンタクトは夢のようなものだ。目覚めた時には粗方忘れているし、覚えていても数時間もすれば忘却の彼方。

 そういうものであるし、何より全ての素粒子の動きを知る我々ポジトロニウム生命体にとって、君の記憶の有無さえ予測の範疇だ。覚えていないからと言って私は気にしないし、君もどうこう思う必要はない。

 勿論今回の遭遇も夢のようなものだ。また時間が経てば君の意識は元の世界に戻る。戻った時にはまた忘れているだろうが、以前よりは覚えている筈だ。回数を重ねるほどに記憶はハッキリしたものになるが、それは同じ夢を繰り返し見れば嫌でも覚えているのと同じ。何度私と再開しても、君の心身に悪影響が出ない事は保証しよう。

 要するに何も気負う必要はなく、暢気に私との会話を楽しめば良いという事だ。初対面に思える相手からこう言われても、中々受け入れ難い事かも知れんがね。

 

 ともあれ、無事再会出来た事だ。以前交わした約束を果たすとしよう。

 

 君は約束など覚えていないだろう。夢の中で交わした約束を何時までも覚えているヒトなど少数派、というより極めて稀な存在だ。

 ああ、不安がる事はない。約束と言っても私が勝手に交わしたもので、私が君に対してするだけだからね。

 する事だって、私がこれまで見てきた生き物の歴史について語るだけ。君はただ聞けば良い。

 そう、生命の歴史。幾千億の年月を掛けて変化し、繁栄と衰退を繰り返す進化の流れ。私はそれを無数に観測してきた。君達ヒトからすれば、無限に思える歳月と数を。

 

 約束したのはその中の一つ、宇宙の悪魔と呼ばれた存在について話す事だ。

 

 悪魔と呼ばれたあの生命の血族は、もう跡形も残っていない。そもそも君が暮らしている宇宙とは別の、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、全く交わらない宇宙での話だ。時間だって君達の宇宙が誕生する遥か以前の出来事。この生き物に君達が襲われる心配はないと断言しよう。

 既に滅びた一族だが、君達ヒトよりも……地球生命よりもずっと長い歴史を持っている一族だ。

 

 そしてその一族最後の種は、その宇宙に生きる誰よりも強かった。

 

 君達ヒトの中には、こう思う者も少なくないだろう。他を圧倒する力を持てば、誰にも脅かされない繁栄を得られると。最強や無敵の力があれば、何もかも思い通りになると。

 確かに宇宙の悪魔と呼ばれた彼女達も、一時大いに繁栄した。宇宙に棲むあらゆる種族から悪魔と罵られるほどの、罵る事しか出来ないほどの力を有していたがために。しかしその繁栄は終わりを迎えた……宇宙のあらゆる種族と敵対しても、それでも繁栄を勝ち取るほどの力を得たが故に。

 

 その盛衰の歴史を見てみよう。

 なぁに、難しく考える必要はない。

 

 勉学でも教訓でもなく、知的好奇心の赴くままに見れば良い。それもまた生命という存在に対する、『楽しみ方』の一つなのだから――――

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