怪獣創世記 アークオデッセイ   作:オーガスト・ギャラガー

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 西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。
 だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。
 やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。
 悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…


Episode21「ノアの試練」

  ラルドたちがコロニーにいる間、ノアは自分を拾ってくれたヘレナを守れず、ラルドに守られているばかりの自分を悔やみ、誰かを守れるような人間になるため、自身を養女として迎え入れたブラッディに特務隊への入隊を志願した。

 ノア・アベラス、それが今の彼女の名前だった。ブラッディの養女になった彼女は他人の力を借りず、自らの手で強くなることを望んでいた様子だったため、別姓を名乗らせる必要があると判断したブラッディが自ら付けた姓であった。

 特務隊の元で訓練した彼女はKCIAで戦績を挙げているクトラに僅かに及ばないものの、それに近い程の実績を挙げ、早々に実戦に入ったが、それも4、5体のベルゼボアやトルークフューリーを討伐し、更にクトラ同様に地球圏連合国に反目するテロや反乱軍の鎮圧にも成果を上げ、軍内部でもその名は知られるようになった。

 

 「特務大佐、これが現在の彼女の成績です。」

 

 「う~ん…これは予想以上だ。現在KCIAにいるブラッディ少尉やハイライト特務伍長にも勝るとも劣らずのものだ。」

 

 「特にセラヴィムに搭乗している状態の方が戦績は高いです。オルスター特務二等兵より搭乗経験は浅いはずなのに彼より完璧に乗りこなせています。」

 

 「しかし、わからんのは、何故、これ程の逸材が軍に知られなかったことだ。オルスター特務二等兵と同じく記憶喪失というのも気になるが…」

 

 「とにかく、ブラッディ少尉が不在の我が隊に彼女のような人材が入れたのは幸運です。ただ…」

 

 「何だ?」

 

 「セラヴィムはオルスター特務二等兵が不在だから、搭乗出来るのであって、現在、アベラス特務二等兵専用の機体が我が隊に無いことです。」

 

 「ルシファロイドのようにブラッディ特務少佐は用意してくれなかったのか?」

 

 「それが…現在、財団会長に呼ばれて機体の開発が出来ない状態にありまして、代わりにKCIAのマードック副官に一任されているとのこと…」

 

 「KCIAに委ねることになるとは…」

 

 「マッカーシー特務大佐、オクタヴィス特務大尉、オルドー元帥が及びです!」

 

 「元帥が?」

 

 

 

 

 

 

 

  財団本部にあるロックフェルド邸では現会長の養子となったナイルがホテップ社CEO代理マッド・ブリンガーが教育係として財団会長としての指導と教育を受けていた。

 財団内でのナイルの評判は良く、ロックフェルド邸の使用人によると、とても従順かつ素直で勉学にもしっかり励むような性格とのことで、財団幹部でも将来性を期待されている。

 ヘレナが議長になったことで、評議会はマクマリー副議長によって財団の独裁を抑えるため、財団派及び財団出身の議員は数を減らしつつあるが、それでもホテップ社を後ろ楯とするロックフェルド財団の影響力は変わりなく、その会長は影の支配者にして実質的な評議会議長でもあった。

 そのため、マクマリー副議長はナイルが財団支持派を再び復帰するような思想を持たないことを願ったが、議長の座を追われた前議長モーゲンソウは財団の元で財団支持派と共に巻き返しを狙い、現会長を通じてナイルを引き込もうとしていた。

 だが、現会長は実子のカイル・ロックフェルド及び妻のエリザベス・ロックフェルドがデーモンビーストやテロによって失われたことがあってか、中立の立場を取るようになり、ナイルを誰の手にも引き込まれないよう、ナイルと財団護衛のための親衛隊を創設し、ブラッディをその親衛隊隊長に任じ、セネイトガーディアン量産と親衛隊仕様機の開発を行わせ、代わりにデーモンビーストに対抗するための新型ASの開発はKCIA副官マードックに一任されるようになった。

 

 マードックはデーモンビーストの正体と生態を明かすことも兼ねて毒は毒をもって制すという戦略上、捕獲したデーモンビーストを使って新型ASとも連携が取れる改造デーモンビーストの開発も行っていた。

 しかし、悪魔の審判で人類の8割を死滅した得たいの知れないデーモンビーストを制御下に置くことは不可能であり邪道だと評議会の大半の議員は断固反対の姿勢を取り、改造デーモンビーストの開発はしばらく停滞していた。

 しかし、KCIA長官オルドーは評議会に対し、改造デーモンビーストの必要性を訴えた。

 

 「現在、我が連合国はコロニー政府アークと不可侵条約を結んでいるが、これは互いの衝突を避けるために一時的に結んだ決まりごとに過ぎず、永遠に続くことは無い。機を熟すれば、アークは地球に侵略し、我が連合国を攻撃するようになるだろう。」

 

 「しかし、アークは800年もコロニーに住んでいて、月面にも領域を広げている! 宇宙に慣れたアークが我が連合国を侵略する理由等、あるのか⁉」

 

 「コロニーは過剰な人口増加に悩まされている。月面に開発を進めているとはいえ、宇宙での土地開発は地球より困難を極め、その間に移民問題の解決は不可能。

 それに我が連合国が全てのテロを鎮圧し、デーモンビーストの殲滅に成功して地球が人類の手に戻れば、アーク市民が怒涛のように地球に押し寄せる可能性は十分にある。

 それを我々が受け入れないなら、アークはそれを口実に条約を反故にして攻撃を仕掛けてくる。そうなった場合、あなた方はその責任を取れますか?」

 

 「………」

 

 「デーモンビーストを駆逐すれば、我々の次の敵はコロニーとなる。更にアークは我が連合国以上の技術力を有し、我が軍を遥かに凌駕する性能のASを開発するのは目に見えている。

 だが、幸いにもコロニーはデーモンビーストの脅威にさらされていないため、デーモンビーストに対する情報は我々より乏しい。

 これを利用し、改造デーモンビーストの開発と量産を行えば、我々はコロニーに圧力をかけ、侵略を回避出来るのではないだろうか?」

 

 この意見に対し、評議会議員の中にも改造デーモンビーストの開発を進めるべきだと主張する者が現れるようになり、更に財団総会ではほぼ全員一致で改造デーモンビーストの開発と量産をKCIAに許可し、その承認を評議会に求めたため、評議会は賛否両論の真っ二つとなった。

 これに対し、ヘレナの代理となっているマクマリー副議長は改造デーモンビーストの開発と量産を許可するが、あくまでアークの侵略に対抗するための抑止力であってテロ鎮圧やデーモンビースト討伐の際の実戦投入は認めず、ASのみで行うとした。

 これには評議会も賛成多数で可決されることになったが、テロ鎮圧やデーモンビースト討伐には改造デーモンビーストのデモンストレーションを行うには相応しいにも関わらず、実戦投入を認められなかったことにマードックは不平不満を漏らすようになっだ、オルドーは改造デーモンビーストの司令塔としての役割を持ち、ASを遥かに凌駕するサイズと性能を持つ機動兵器の開発を進め、表向きはASと同じ扱いにしてテロ鎮圧やデーモンビースト討伐の実戦投入にする計画を立て、そのプロトタイプを完成させたが、パイロット候補の選抜に悩まされ、その時にマッカーシーとオクタヴィスを呼んだのであった。

 

 「よく来てくれた。特務大佐に特務大尉。急に呼び出してすまないが、実は君たちに頼みたいことがあってな…」

 

 

 「例の機動兵器のパイロット候補でしょうか?」

 

 

 「話が早くて助かる。」

 

 

 「でしたら、そちらのブラッディ少尉が適任では? 彼はベトナム、東アジアでのテロ鎮圧及びヨーロッパ域のデーモンビーストをほぼ殲滅していると聞きます。それだけの戦績を持つ彼がパイロットになるべきでは?」

 

 

 「確かに、彼は問題なく乗りこなせるが、少々加減を知らなくてな…アレに乗ってしまったら、味方まで巻き添えを食う恐れがある。

 

 それにルシファロイドは彼以外には乗りこなせる人材もおらん。」

 

 

 「では、ハイライト特務伍長は? 彼もブラッディ少尉と並ぶ戦績を有しています。」

 

 

 「彼は元々、統制連合艦隊の出だ。改造デーモンビーストに匹敵するスペックを持った機動兵器に乗せて連中が納得すると思うか? それに彼には既に専用機がある。」

 

 

 「では、元帥は…」

 

 

 「そうっ! ちょうど新兵として入ったアベラス特務二等兵だ。聞くところによると、ブラッディ少尉とハイライト特務伍長に引けを取らない戦績があるそうじゃないか。それに彼女はオルスター特務二等兵の代理としてセラヴィムに乗っていて専用機が存在しない。まさにうってつけだと思うが…」

 

 

 「確かに彼女の戦績は高いが、まだ新兵で、それに最初にセラヴィムに搭乗した時は暴走したことがあります。」

 

 

 「私たちの見立てではアベラス特務二等兵はオルスター特務二等兵以上の素質を持っている。」

 

 

 「何故、そう思うのです?」

 

 「とにかく、アベラス特務二等兵をここへ呼んでくれないか。その後で例の機動兵器を見せよう。」

 

 

 

  オルドーに従ったマッカーシーに呼ばれたノアもKCIA本部を訪れ、マッカーシーらと共にその地下室に招かれ、その機動兵器を遂に目の当たりにした。

 その大きさは98m程で、形状は従来のAS同様、人型で黒と銀を基調としたカラーリングをし、胸部にはコアに当たる円形のシュレッダーを備え、その周りには拘束具のようなものに見え、両肘にはブレードも装備されていた。

 

 「これは…」

 

 「これがKCIAの総力を結集した人型機動兵器ガルバトロナス。今日からこれが君の機体だ。アベラス特務二等兵。」

 

 「私の機体…」

 

 「これがあれば、君は現議長を…オルスター特務二等兵を守れる力を得られる。乗ってみたくはないか?」

 

 「(これがあれば、私の力でヘレナを守れる…)

 わかりました! これに私を乗せてください。」

 

 「良い返事だ。早速だが、君はこれで任務に入って欲しい。ウー総督から北京軍がモンゴル、チベット周辺に活動しているテロリストの鎮圧に向かっているが、複数体のギラガスも現れ、現在苦戦中とのことだ。

 君はガルバトロナスで北京軍の援護に回って欲しいのだ。」

 

 「わかりました!」

 

 「もちろん、我々も向かう。」

 

 「では、元帥。我々はミカエルで…」

 

 「いや、君たちは私やマードック副官と同じく北京総督府にいてくれ。出撃するのはガルバトロナスだけだ。」

 

 「いや、しかし、1機だけでは…」

 

 「これは、ガルバトロナスのデモンストレーションだ。我がKCIAの総力を結集した機動兵器に護衛等、付けられては物笑いにされるだけだ。」

 

 「しかし、流石に護衛無しでいきなり実戦投入はリスクが高すぎるのでは?」

 

 「ならば、ブラッディリーパーを護衛につける。最も必要とは思わないが…」

 

  ノアの乗るガルバトロナスは北京軍援護のため、モンゴル、チベット周辺に向かい、マッカーシーとオクタヴィスはオルドー、マードックと共に北京総督府にて、ガルバトロナスの護衛として付いていた3体のブラッディリーパーのカメラが投影する映像でその様子を見ていた。

 ノアのガルバトロナスは手の甲からのミサイルでテロリストの戦車部隊を迎え撃ち、北京軍の後方支援に入った。

 

 「彼女は後方支援に入ったようですね。」

 

 「あれだけの巨体だ。下手に動き回れば、味方にも被害が出る。それに操作に慣れるには良い手段だ。」

 

 ガルバトロナスがテロリストの戦車を撃破する中、戦車に乗っている隊長と思われる人物が合図をすると、突然撤退を始めた。

 

 「ハハハッ! 流石、KCIAの機動兵器。テロリスト共も恐れを為したか‼」

 

 しかし、その様子にオルドーは違和感を感じた。

 

 「ガルバトロナスに距離を維持しながら追撃しろと伝えろ。」

 

 「はっ!」

 

 「元帥殿、これは陽動かと…」

 

 「わかっている。だが、敢えてその手に乗らせてもらう。」

 

 撤退を開始したテロリストの戦車の方向から中東にてヘレナたちを襲撃したASが現れた。

 

 「あっ、あれは…あの時の正体不明機‼」

 

 「あれか…特務大佐の言ってた所属不明機とは…」

 

 「アイツっ…あの時の…‼」

 

 所属不明機を見たノアは感情に委ねてガルバトロナスの手の甲のミサイルを連発したが、所属不明機は手裏剣状のストームスラッシュとブレードカノンで迎撃した。

 

 「コイツッ‼ 舐めるな~‼‼」

 

 ガルバトロナスは機体に搭載されている全ミサイルを放つが、所属不明機はそれらも悉く迎撃した。

 

 「特務大佐、これは何かおかしいです。」

 

 「ああ、奴はガルバトロナスのミサイルを迎撃しているが、ガルバトロナス自体には攻撃を加えていない。出来るだけダメージを与えないようにしているようにも見える…」

 

 「一斉砲撃だ! 奴を撃ち落とせ‼」

 

 ウー総督に従って北京軍も一斉砲撃を開始したが、それらを全て回避するとストームスラッシュで1体1体確実に撃破していった。

 

 「我が軍のAS、全滅しました…」

 

 「そんな…たかが1機に……」

 

 「ブラッディリーパーも援護に回れ!」

 

 オルドーの指示に従って起動したブラッディリーパーも援護射撃を行い、所属不明機は悉く回避したが、その内の流れ砲弾が見えない何かに直撃し、空間が歪んだように何体かの見えない何かがガルバトロナスに群がり、足元を拘束した。

 

 「何なの⁉」

 

 姿を現したのは6体のギラガスだった。

 

 「くっ、邪魔をするな~‼」

 

 しかし、その内の1体がガルバトロナスによじ登り、食らうように巨大な口を開いた。

 

 「来るな…来るな~‼」

 

 その時、ガルバトロナスの胸部のコアが赤く発光し、よじ登ったギラガスの頭部を握り潰し、更に残りの個体も蹴飛ばし、全て踏み潰す等した。

 

 「これは…」

 

 「ハハハッ! 良いぞ! デーモンビースト共を蹴散らしてしまえ‼」

 

 だが、その時、所属不明機がブレードカノンでガルバトロナスのコアに直撃すると、ガルバトロナスは突然、機能停止し、コクピット内部のノアも気絶し、そのままその場を去っていった。

 

 「クソッ! 何をしている! 早く追撃しろ‼」

 

 「無駄です! 総督。あの機動力ではガルバトロナスもブラッディリーパーも追い付けません。それに下手に深追いして何か仕掛けられたら面倒ですよ。」

 

 「しかし…!」

 

 「とにかく、テロリストを粗方鎮圧しましたし、ガルバトロナスの戦闘データも入手出来ました。まだまだ、改良の余地はあるということです。 特務大佐もそれでよろしいかな?」

 

 「むしろ、それで構わないが…」

 

 「よろしい…。(それにしても、あのコアをピンポイントで撃ち抜くとは…パイロットも相当の手練れのようだ。もう少し、調べてみる必要はあるようだ)」

 

 To be continued




 次回予告

 ヘレナとラルドがコロニーから帰還し、ヘレナたちを襲撃した月面の3体の未確認デーモンビーストからデーモンビーストは宇宙生物の可能性が示唆され、更にKCIAが入手した文献からザエボスを葬った未確認のサメ型デーモンビーストが悪魔の審判から数世紀前からも目撃情報があったとあり、そのデーモンビーストの本拠地に起源があるのかと特務隊とKCIAは文献が見付かったインスマスにて調査を始めたが、そこで得たいの知れない教団に会う

 次回 「インスマスの教団」 教団の誘う先に何がある?
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