だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。
やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。
悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…
アメリカマサチューセッツ州エセックス郡、この地はアメリカ合衆国を建国するイギリス清教徒による移民が初めて植民地を立てた地であり、建国後のアメリカでも神格化されている場所でもある。
だが、この地はあるイギリス清教徒と同時にある得たいの知れないものによる新天地でもあり、その港町インスマスがそれであった。
マニューゼット川の河口にあり、周囲を湿地に囲まれているこの港町は1643年、漁業と中国・インドとの貿易で栄え、1775年のアメリカ独立戦争前後にはマニューゼット川を利用した工業、造船業が興るようになる。
しかし1812年に米英戦争が起こるとアメリカ海軍の寄港地として繁盛するも船乗りの多くがイギリス海軍の艦船を攻撃して命を落とし交易や漁業が落ち込むようになり、1861年の南北戦争で漁場が荒廃し、1920年代には衰退して人口が約300~400人程に減少していった。
この港町には金の精錬工場を経営するオーベッド・マーシュという人物がいたが、インスマスが廃れると、父なるダゴン、母なるハイドラと呼ぶ謎の存在を崇拝するダゴン秘密教団を設立した。
この教団は悪魔の岩礁と呼ばれる謎の儀式を行い、やがてインスマスの住民全てがその教団の信者になり、その信者はアメリカの大半にも広がり、強大な組織へと成長していった。
政府の中枢まで入られるのを恐れた米政府はマフィア鎮圧として軍と警察を出動させてインスマスに派遣したが、生き残りがほとんどなく、辛うじて生き残ったのも僅か2、3人でいずれも半魚人のようなバケモノが襲ってきたと何度も繰り返して発狂し、廃人状態の有り様であった。
それ以降、インスマスには誰一人立ち入らない立入禁止区域となり、その後、その港町がどうなったか、記録もない。
不可侵条約を結ぶという大役を果たしたヘレナとラルドはコロニーから地球へ帰還し、評議会ビルにて議長代理を努めたマクマリー副議長からそれまでの地球の情勢を伝えた。
ガルバトロナスの登場もあり、テロの鎮圧とデーモンビーストの駆逐は順調に進み、デーモンビーストの目撃情報と被害も少数になっていくようになり、加えて不可侵条約締結により、アークによる技術支援も受けられたため、ヘレナも懸念した改造デーモンビーストの実戦投入はされることなく、地球の統一は達成されそうになっていた。だが、これに対し、不満を持っていた人物がいた。KCIA副官のマードックだった。
「長官! このままでは、我が粋を集めた改造デーモンビーストの実戦投入が叶わなくなるのではないですか‼」
「焦るな。そもそも、新兵器というのはそれなりの実績と信頼性というのが無ければ、成り立たん。
それに現状、デーモンビーストのサンプルが少ないため、お前の改造デーモンビーストは不完全だ。もう少し待て。」
「しかし! 評議会は実戦投入どころか、デモンストレーションすら禁じ、場合によっては廃棄するという決定まで出すつもりです。そうなれば、いずれ、KCIAの存在意義が無くなり、我々もお払い箱に行かされてしまいます‼」
「物事には必ず、時機というのがある。それを間違えれば、身の破滅を招くぞ。」
「ですが…」
「それに特務隊から議長がコロニーにいる間、月に未確認のデーモンビーストが現れたという情報が出たそうだな?」
「はいっ…最も市民に更なる不安感を高めないためにマスコミにも隠すよう、指示されておりますが…」
「だとしたら、ちょうどいい。デーモンビーストが宇宙生物だとすれば、地球上のデーモンビーストが駆逐されても、デーモンビーストの脅威自体は去ったわけではないことになる。
いずれ、ASの性能が当てにならない程の存在まで出れば、それこそ、改造デーモンビーストを実戦投入させる口実にもなるだろう。」
「では、しばらく様子を見ろと…?」
「現状はそれが最良の策だ。それに議長の護衛をやっていたオルスター特務二等兵が目撃したというサメ型デーモンビーストの情報もこちらで新たに手に入った。 コイツで新たなサンプルを手に入れるのに利用出来るだろう。」
ラルドを呼んだオルドーの要件は彼が目撃したとされるサメ型デーモンビーストについてのことであり、形状やサイズ等をラルドから色々と聞いた。
「そうか…ザエボスすら補食したということは、かなり強大なもののようだ。」
「そのデーモンビーストについて、何か知ってるんですか?」
「実は、ある港町を調査していたところ、興味深い資料を手に入れてな…」
オルドーがラルドに渡したのはそれは千数百年経ったとされる写真とそれに関して記した日記であった。余りに古びていて、見えづらかったものの、漁船を襲撃した巨大な何かの形状でラルドは確信した。
「どうして、この写真にあのデーモンビーストが…」
「ほぅ、では、君が目撃した種はそれだと?」
「間違いありません!」
「ちょっと待ってください! 元帥。その資料から察するにそのデーモンビーストは悪魔の審判より前の…」
「西暦1970年頃と推定される。」
「ありえない! もし、それが本当なら、デーモンビーストは二千年近く前から存在していたとされるじゃないですか⁉」
「現在、我々以外は伏せられているが、月面で議長を襲撃した例の未確認のデーモンビーストがいたという情報もある。 悪魔の審判以前からいたというのも不思議ではない。
だが、このデーモンビーストが千年以上前からいるということがわかれば、デーモンビーストの起源がその個体の可能性がある。
そこで、我がKCIAはセメタリーファングを派遣し、インスマスの調査活動を続け、特務隊にも協力をお願いしたいのだ。」
「何故、我々特務隊にも?」
「そのインスマスに派遣したセメタリーファングの機体の通信が切れ、戻ってきた機体も1機もいなかったのだ。
その例のデーモンビーストがそこに潜んで、我が機体と交戦した可能性があり、出来るだけ多くの部隊が必要と思って君たちにも協力を要請したい。」
「ブラッディ少尉は?」
「実は、彼からも通信が途絶えている。」
「ブラッディリーパーは我が連合国軍でも最高の戦力だ。ましてや、ブラッディ少尉もいるとなれば、簡単にやられるとは考えられませんが…」
「しかし、万が一ということもある。だから、君たちにも協力したいのだ。」
「だったら、僕も出動させてください! 僕なら、あのデーモンビーストのことは知っています。」
「うむ、ちょうど君にも出撃させてもらいたいと思っていたところだ。」
「元帥! なら、私も出動させてください! 私のガルバトロナスなら、どんな敵でも立ち向かえます!」
「ノア…? どうして、ここに?」
「ラルド、今の私はアベラス特務二等兵。特務隊所属よ!」
「特務隊に1人隊員が入った話は地球に帰ってきてから聞いてたけど、まさか、ノア、君だったなんて…」
「彼女は対デーモンビースト用決戦兵器ガルバトロナスを乗りこなし、ブラッディ少尉に勝るとも劣らない実力を持った逸材だ。彼女がいれば、心強いはずだ。」
「ノア…君ってそんなに強かったの?」
「前の私はそうかもしれなかったけど、今の私なら、ラルドを守ることだって出来るわ!」
「そ、それでも危険だよ! ヘレナだって許してくれるとは思えないし、第一、君は半魚人や空飛ぶアリのバケモノに襲われたことだってあるし…」
「半魚人…空飛ぶアリ…? 何のこと?」
「アッ…‼(そうだった…あの時のこと覚えているのは僕だけだったんだ。あの時のことを言って下手に不安にさせるわけにはいかない。)
いや、何でもない。こっちの話だよ。」
「…?」
「では、アベラス特務二等兵はオルスター特務軍曹と共に出撃してくれたまえ。」
「お待ちください! 元帥。」
「何か?」
「確かに、彼女は我が特務隊の中でも優秀な人材です。しかし、彼女は実戦経験が浅く、精神的も未熟な部分が多く、その点で言うなら、彼女はまだ素人に過ぎません。」
「なら、今回の任務は経験を持たせるにいい機会だ。それに君たちにはまだ優秀な人材もいる。その内、彼女も今以上の実績を持つだろう。」
「しかし…」
「特務大佐、元帥の言う通りです。ハイライト特務少尉にも出撃させましょう。それなら、文句も無いでしょう。」
「わ、わかった。元帥! アベラス特務二等兵も出撃させます。ですが、危険が高いため、ハイライト特務少尉にも出撃させます。」
「それなら、問題ない。では、アベラス特務二等兵、期待してるぞ。」
「はいっ! ありがとうございます!」
ノアの目はいつも以上にキラキラしていたが、マッカーシーはどうもやるせなかった。
「何故、彼処まで彼女を出撃させたがるのだ…? 元帥の狙いは…」
旧アメリカマサチューセッツ州エセックス郡にある港町インスマスに付いた特務隊は街を調査したが、街には人の影が一切無く、欲しい資料らしきものもなく、あるのは水溜まりだけだった。ラルドはその異様な光景に何処か見覚えを感じていた。
「やはり、似ている。あの時、ノアと初めて会ったあの教会の時と…もし、そうなら、僕はワームホールみたいな現象でここに来たということなのか? とにかくもう少し調べてみないと…」
更に調査すると突然、街中が霧に覆われ、他の特務隊の姿も全く見えなくなり、レーダーもバグが起き、通信機もイカれてて完全に孤立してしまった。ラルドが周囲を警戒する中、霧の中から3~4mをした緑色の蟻と翼竜を合わせたような不気味な姿をした飛行生物が無数に現れ、セラヴィムに襲い掛かった。
「コイツらはあの時…やっぱりこの街はコイツらの巣窟か⁉」
セラヴィムはブレードとライフルで飛行生物を次々と撃破していくが、別方向から無数の毒針も飛んでき、それもすかさずライフルで迎撃するが、その内の1本がセラヴィムの腰に突き刺さり、その部分が腐食していった。
毒針を喰らわぬよう、警戒して迎撃を続けたが、飛行生物はそれを好機と見て群がるように一斉に襲い掛かってきた。セラヴィムは毒針の迎撃に手一杯で打つ手無しかと思われたその時、飛行生物が全て一瞬で撃破され、霧からロバストハンターが現れた。
「ヤマト‼」
「ラルド、無事か?」
「何とか…」
「ノアはどうした?」
「通信機がやられて場所も特定出来…(いや、待てよ! もし、ここがあの時の教会と同じ場所なら、奴等はノアを…)」
「早くノアを助けに行かないと‼」
「ああ、恐らく連中は彼女を狙っているだろう。だが、彼女の位置は距離的にはそう遠くはない。直ぐに向かう。」
「?」
その言葉にラルドは疑問視した。
「どういうこと? もしかしてヤマトも何か知っているの?」
「説明する暇はない! とにかく急ぐぞ!」
「わ、わかった。」
ラルドがヤマトに付いていく中、毒針が飛んできた霧の方にある者が潜んでいた。それは月面にてヘレナを襲撃した3体の内の1体でハチとミノカサゴを合わせたような姿をしたデーモンビーストそのものであり、口から飛行生物を飛ばせ、その後を付いていった。
ラルドが恐れていたようにノアは霧のせいで孤立し、彷徨ったが、ラルド同様にこの地に何処か見覚えを感じていた。
「ここ、何…? 来たことないのに丸で来たような気がする…」
更に彷徨うと、霧の向こうに苦しんでいる兵士たちの姿があり、軍服からしてそれは連合国軍の兵士だった。
「だ、大丈夫⁉」
ガルバトロナスから降りたノアは兵士たちの元に駆け寄り、1人の兵士がそれに気付いて振り向いたが、その兵士の顔は人間の面影が若干残って不気味な半魚人のような姿に変貌していた。
「き、キャアアァ~‼」
その悲鳴にラルドとヤマトは気付いた。
「今の悲鳴は…」
「近いぞ、こっちだ!」
半魚人のような醜悪な姿に変貌していた兵士に怯え、腰を抜かしたノアに1人の兵士が話し掛けた。
「ウウゥ…た、助けてくれ…」
「喋れる…あなた、私がわかるの? ここで何があったの?」
「わからない…任務に付いていた我々がここを調べていた時、突然、ワームホールみたいな現象が起きて、そこに呑み込まれ、我々はずっとここに何日、何ヵ月経ったかもわからない…餓えと恐怖に苦しむ中、ある声が聞こえた。救済を求めるなら、父なるダゴン、母なるハイドラを称えよ そうすれば、救われるであろう…とその声に導かれ、泉を見付け、その水を飲んだら、いつの間にこの姿になった。
だが、この姿になってある記憶を見た。この地には古き大陸を支配していた神を崇拝する教団がいた。
その教団の伝承では、古き大陸を支配していた神は我々を導いてくれた。だが、ある時、星から別の神が現れ、その神と果てしない戦いを繰り広げた。その戦いによって世界は滅び去ろうとしていた。
そんな時、星から光の戦士が現れ、神々の争いを静め、神々を封じ込めた後、全てを司る神の使いと共にこの地に新たな命を芽生え、平和を取り戻した。
そして、光の戦士は方舟に乗り、星に帰っていったが、我々は信じている…」
「えっ…」
「我々は確信した。光の戦士が方舟に乗って再びこの地に帰ってくると…その末裔が恐らくあなただ。あなたなら、我々を救ってくれる…」
「私が…」
その時、地鳴りがして無数の飛行生物が合体した植物怪獣が周囲を破壊していった。
「あれは…」
「星から来た別の神の使者…再びこの地を荒らしに来たか…だが、あなたなら、あの怪物を静められる…」
「そんな…私にそんな力なんて…」
植物怪獣が街中を破壊し、兵士たちが怯えるのを見て躊躇したノアは決心し、ガルバトロナスに乗り込んで、ミサイルを撃ち込んだ。
植物怪獣は怯んだが、触手をガルバトロナスの四肢を捕らえた。ガルバトロナスはそれに負けじと抗い、全力を振り絞って触手を引きちぎった。
しかし、引きちぎった触手から飛行生物が無数に分裂し、ガルバトロナスの身体にへばり付いた。ガルバトロナスは必死に抵抗するが、離れる様子が無く、どうしようもなかった。
その時、突然、何処からか飛んできた毒針がガルバトロナスの胸部のコアに入り、ガルバトロナスの目が赤く発光すると出力が一気に向上、更に発熱までへばり付いた飛行生物を一瞬で消滅させ、展開した両腕のブレードで植物怪獣をズタズタに引き裂いた。コクピットの中のノアは無我夢中なのか、丸で意識がないかのように表情1つ変えていなかった。
植物怪獣が倒れ、その残骸から飛行生物が分離したが、襲い掛かる様子はなく、そのまま霧の中へ消えていった。
「皆、大丈夫よ!」
ノアがガルバトロナスから降りて兵士たちのところに駆け寄ったその時、
グオォ~‼
突然、海の方向から巨大な咆哮がすると同時に兵士たちの姿が教会やンガイの森に現れたのと同じ半魚人の姿へと変貌していった。
「オオォ~、我が父が呼んでいる。光の戦士の末裔よ、我々と共に来てくれ。」
半魚人の兵士たちが次々とノアに近付き、ノアは恐怖で動けなかった。
「い、いや…」
ドン、ドン、ドン!
銃声がしたと同時にクトラが半魚人の兵士たちを拳銃で撃ち込んだ。撃たれた半魚人は水しぶきが撃たれた箇所から鮮血のように迸った。
半魚人はクトラの姿を見ると逆に恐怖し、後退りして海の方へ逃げていった。
ノアは恐怖で倒れ、倒れたノアをお姫様だっこをしたクトラが海の方を見ると、無数の触手を持った巨大影が現れ、直ぐに姿を消していき、クトラは抱きかかえたノアと共にガルバトロナスに乗り、ルシファロイドを遠隔操作に切り替え、その場を去った。
セラヴィムとロバストハンターが襲い掛かる飛行生物を蹴散らす中、霧が晴れ、他の特務隊の姿も露になったが、インスマスの街が消え、更地になっていて、消えていく霧の向こうからルシファロイドとガルバトロナスが現れた。
「ブラッディ少尉! 無事だったか。」
「元帥は何処に?」
「元帥なら、本部だが…」
「では、直ぐに撤退してください。必要な資料は全て手に入りました。この地もご覧の有り様です。」
「資料を手に入れたそうだが、それは一体何だ? それに今までここで何が起こった?」
「それは言えません。とにかく元帥に会いたいので…」
「わかった。」
不完全燃焼ながらも、マッカーシーはクトラの言う通りにし、特務隊を撤退させた。そして撤退した後、
更地となった地に再び水溜まりが現れた。
To be continued
次回予告
宇宙から飛来した水晶体のような形をした謎の巨大物体。それはコーカサスのような姿をしたデーモンビーストのサナギだった。
新たなデーモンビーストに対し、特務隊とKCIAが迎え撃つが、そのデーモンビーストを目撃したヘレナを気が狂ったように怯え始めた。彼女はそのデーモンビーストを知っていたようだが、果たしてその正体は…
次回 「宇宙から飛来する者」 その悪魔は彼女の心を乱す