だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。
やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。
悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…
円盤型デーモンビーストが首都に現れる直前の出来事、財団会長はホテップ社CEO代理マッド・ブリンガーに会っていた。
「今度のデーモンビースト、例の奴に一致してると言うが、間違いないか?」
「間違いありません。資料が少ないため、断言は出来ませんが、800年前の悪魔の審判で人類の8割を死滅させたとされるデーモンビースト第0号が地下から出現した個体で、そして第1号が形状した個体とほぼ一致しています。」
「同一個体だと言うのか…しかし、アレは我がロックフェルド家の記録によれば、ほとんどの個体は絶滅したはずだ!」
「おそらく、万が一のために予めあの連中が残した個体が増殖し、地中に潜んでいたのでしょう。」
「なら、どうすればいい? ASでも太刀打ち出来なければ、財団はどうなる?」
「最悪、ナイルだけは我々が保護し、あなたは我々が用意した影武者と一緒に行動してください。」
「ナイルは私の息子だ! 私と一緒では駄目か…」
「あなたが一緒だと、反財団派がナイルも殺す恐れがあります。財団の存続を思うなら、ナイルだけでも生き残らせるのは妥当かと。
それに今回の混乱を利用すれば、長年あなたが邪魔と思っている現議長である娘も排除出来るのでは?」
「カイルの時のようにか…」
「あなたは我々に忠誠を誓う代わりに父を暗殺し、悪魔の審判以前にロックフェルド家が立てたアーク計画を潰し、ナイルを養子に迎えたのです。ならば、その忠誠の証をもう一度示してください。」
「わかった。ナイルを頼む…」
漆黒の闇のような暗雲と無数の大蛇がが世界中を包み込み中、ウー総督は現状脅威的でないとして、各総督府を統括していったが、同時に問題も発生した議長であるヘレナと時期財団会長として実質的に元首とするナイルの安否が未だ不明なため、各総督は北京総督に従う者、連合国を乗っとる恐れがあるとして、デーモンビースト討伐を口実にして加盟を見送りにする者までいた。
「タオ、ホテップ社からの報告はまだか?」
「本社に送還されているそうですが、未だ…」
「無事さえ確認出来れば、日和見の総督共を黙らせるのだが…」
「それより気になることがありまして…」
「何だ?」
「ジオフロント内に設置されていた監視カメラから議長とブリュースター伍長らしき姿が確認されました。」
「もし、未だ属さない総督がこれを知って擁立して閣下の立場が悪くなるかと…」
「それは一大事だな…とすると…」
「総督殿、その件に関しては私に任せてください。ナイルを擁立しなければ、スパルタカスは我々には付きません。 この際、議長には一刻も早く処分した方がよろしいでしょう。」
「出来るのか?」
「タオと一部隊を貸していただければ…」
「よろしい、指揮を君に委ねる。」
「お任せを…」
アトランティスから目覚めたハイドラを追うカイル、グリスとヘレナも必死に付いて走っていったが、カイルは12歳前後とは言えない程の足の速さで、2人は追い付けず、見失わない程度に必死に付いていった。
しかし、カイルはハイドラが通った道とは別の道を通り、違和感を感じる中、付いていくと開けた場所に付き、そこに巨大な甲虫や蜂や蟻のような姿の怪獣が死骸となってあちこちに転がり、死臭が漂う中、カイルはゆっくり歩き、あるものを見詰めると、それは王冠のような頭部と巨大な蜂や蟻の女王と思われる巨大昆虫型の怪獣が幾つもの何かの製造装置のようなものが身体に取り付いたまま死んでいた。
「僕たち一族の要となる存在…今や、それは亡骸となっている。しかし、それを受け継ぐ者は僕しかいない。女王の命を受け継ぎ、僕が後継者となって裏切り者と破滅を臨む存在を滅ぼす。
そのためにこの身体を依代としてずっとチャンスを待っていた。」
「おいっ、一体何を言っているんだ? お前は一体…」
「騙すつもりは無いんだ…でも、仮に記憶がある状態でホントのこと言っても許してはくれないよね…だから、ホントの意味でお別れだよ、姉さん…」
「姉さん…? まさか、コイツ…」
ドゴオォ~‼
突然、砲撃の音がすると同時に破壊された壁から北京軍が現れた。
「北京軍! 俺たちを探しに来てくれたのか⁉ お~い! 俺はグリス・ブリュースター伍長だ! 議長もいるぞ!」
「ああ、ホントによく連れてきてくれた。」
北京軍の指揮官として姿を現したのはブラッディだった。
「ブラッディ特務少佐! 生きていたんですか⁉」
「オルドー元帥とホテップ社の協力あって主だった者は北京総督府に逃げ込めた。コロニーではスパルタカス党が蜂起し、クーデターに成功…アトランティスが目覚め、ムーにいる片割れのダゴンを目覚めさせるために行動を移し、ピエロ役のデーモンビースト共ももうじき、天空を覆うリヴァイボルスが駆除してくれる。
後はナイルを元首となった国家を築き、スパルタカスと連立を組めば、全ては完了する。だが、その前にロックフェルド家が残した過去の亡霊とも言える遺産は排除せねば…」
「特務少佐、さっきから何を…?」
「我等の革命…それは悪魔の審判の時から始まっていたのだ!」
ブラッディが語るにそれは悪魔の審判が引き起こされる1年前に遡る。ロックフェルド財団はその時から既に存在し、ロックフェルド家はフランス革命からアメリカに亡命し、アメリカ初め、各国の石油と販売を独占した名門貴族にして大資本家であった。
西暦2324年、当時のロックフェルド家の当主にして財団会長アーノルド・ロックフェルドは遺跡に興味があり、各国の遺跡を巡る程であった。特にポイントネモとバミューダトライアングルの伝説にも興味があり、そこに遺跡があると信じていた。
しかし、周囲の猛反対もあり、調査を実行することが出来ない中、それを聞き付けたホテップ社が全面協力し、多大の資金を出すことで、戦術核にも耐えられる潜水艦まで開発することに成功し、バミューダトライアングルの深海を潜行していくとアーノルドは巨大な遺跡を発見した。
それは4代文明のどれより遥かに古く文明も遥かに進んでいることを現す程の巨大な遺跡だった。遺跡を発見したアーノルドは出来るだけ持ち帰れる程の遺物と情報を集め、財団本部に帰還した。
しかし、ホテップ社からは遺跡に関しては協力の条件に遺跡と回収した遺物を公に公表せず、内密にせよとのことで、以前からホテップ社CEOを継ぐパラディウス家との親交もあってアーノルドはその約束を守り、財団本部で遺物の調査を行い、新たな生命を一から生み出せるといった高度な遺伝子工学技術を有していることが判明し、遺跡のことは公表出来なくとも、この技術を何かに利用できるのではなと模索していた。
当時の地球は過剰な人口増加と劣悪な地球環境から脱すべく、移民目的としてコロニー建造の真っ最中であった。その中でアーノルドは人類を一旦コロニーに移住させ、劣悪な地球環境を浄化し、他の太陽系惑星をテラフォーミングさせる新生物を生み出し、浄化した後の地球に帰還させ、テラフォーミングした太陽系惑星にも移住させるというアーク計画を立て、ホテップ社に資金援助を受けるよう、交渉し、その新生物の開発に着手した。
しかし、そんな開発を進めているアーノルドのことを知った人物がいた。ノーランド・ビショップ、米軍大佐。
彼は選民思想が強く、大国一国のみを生き残らせることが人類から戦争を無くす唯一の思想だと提唱し、核をも凌駕する兵器の開発を進め、ロシア、中国等を屈服させるべきと軍部と政府に勧め、それを問題視した上層部によって一時更迭された。
上層部を当てにならないと見た彼はある人物と接触した。軍事企業リーパーメタルCEOアルベルト・ギャラガーである。リーパーメタルは普段は米国に本社を構えていて、表向きは中立的な立場を取っているが、更なる軍事兵器の開発によって自社を誇示するため、ロシア、中国等の大国や中東を初め、各国のテロリストとも通じ、新兵器の開発と武器の提供を行っていた。
また、この企業はホテップ社の支配下にあり、大国や世界各地のテロリストとの交流は後ろ楯であるホテップ社による力でもあった。
ビショップはそのCEOアルベルトとは以前から親交があり、核戦争になった際、相手に対し、より有利な状況を作れるような兵器を考案し、遠隔操作によって地中を掘り進み、対象の都市に到達して核攻撃を行う地中間核弾頭ミサイルをホテップ社の資金を得て密かに開発し、自律型致死兵器LAWSを更に発展させた人型兵器の開発を行い、死傷者の出ない兵器として米軍に提供し、中東に実戦投入し、その形状はセネイトガーディアンに酷似していた。ビショップはアルベルトのコネを使って、新型兵器の開発で再び軍部に復帰することを目論んだが、アルベルトからアーノルドがアーク計画を立てていることを知ったビショップはその計画に我々も協力出来ないかと提案し、ホテップ社を通じてその計画に携わった。
リーパーメタルのCEOも加わったことにより、計画は順調に進んだかに見えたが、アルベルトは浄化するだけではその内また地球は汚染される。それに人類は文明を築いたことで進化したが、進化したのは文明であって人類そのものは進化していない。その技術を応用して人類そのものをあらゆる環境に耐えられる強靭な生命力を持った生物兵器に改造すべきだという計画を推奨した。
しかし、この計画は危険分子としてアーノルドはその案を握り潰し、退けられたが、アルベルトは諦めなかった。ビショップもこれに同調して密かに、一目付かない場所にあちこち研究施設を設け、人類を強力な生物兵器へ改造する実験を行った。
そうする中で他の生物の血液から得たDNA情報で自己進化を遂げるトライフォルドと名付けられた。そう、それこそが悪魔の審判で人類の8割を死滅し、メトロポリスを滅ぼした円盤型のデーモンビーストにしてデーモンビースト第0号であった。
トライフォルドに幾つもの生物のDNA情報を取り込ませ、自己進化させる実験を行い、最終的にその対象を人間に至らせようとしたが、自己進化したトライフォルドは過度に増殖し、取り込んだDNA情報を基に新たな生物を生み出すようになり、それらが全て世界各地に放たれた。それがデーモンビーストの誕生であり、悪魔の審判の始まりであった。
そして、伝承通り、自己進化したトライフォルドとデーモンビーストは地球上を蹂躙した。しかし、アーノルドのアーク計画を潰す目的もあったため、この暴走は敢えて引き起こしたもので、ビショップはホテップ社の一部の幹部と共にコロニーに脱出し、アルベルトは予め用意していたシェルターに身を寄せ、コロニー内でその実験を続けようとしたのである。
しかし、アーノルドは事前にその企みを知り、別のシェルターにより逃げ込み、地球浄化の役目を担う生物の完成に着手し、地球圏連合国の母体となる公国を密かに建国し、現在にまで至った。
「そして、コロニーに逃げ延びた後、その流れを組む者はスパルタカス党を設立し、ホテップ社を通じて地球圏連合国の内部に入り、それから派閥を生み出し、財団も同時に内輪揉めによって壊滅させるために工作員を送り込み、財団会長に接近した。
現会長であるハリーは地球の統一にはホテップ社との親密な関係は必要不可欠だった。そこをつけこみ、奴にある約束をさせた。
次の会長の座はホテップ社のパラディウス家と関係の深い者に付かせ、子息は排除させるようとな…
だが、意外にも奴はその条件を簡単に受け入れ、息子と娘、そして、その母親とロックフェルド家の要とも言える生物の排除を実行したが、まさか、意外にも別の形で生き残り、娘も議長になるとはな!」
「まさか、その工作員ってのは…」
「そう、この私、ヨシフ・ブラッディだ。」
「ふざけるな! 俺たちを騙し、国家転覆を狙う等、そんなこと許されてたまるか!」
「もう、革命は成功しているのだ。コロニーは既にスパルタカス党が掌握し、スパルタカス人類革命政府が誕生した。
後はホテップ本社と地球に残り我等北京総督府と同胞が組めば、人類は新たな道を勧める。だが、そのためにもロックフェルド家の生き残りとその古臭い体制を象徴する巨大な害虫は駆除しなければならない。やれ‼」
ブラッディの攻撃命令と共に北京軍が一斉に発砲し、グリスがヘレナを抱き抱えると同時にカイルが自ら盾になって蜂の巣にされ、青白い血が流血した。
「お前たちの野望を阻止するために、ここに来た。それが生き残った僕の定め…」
そう言うと、カイルの全ての傷口から青白い血が一気に吹き出し、ミイラのように痩せこけた身体になって倒れ、カイルの頭から寄生虫が飛び出してくるように皮膚と頭蓋骨を突き破って、芋虫のような足をした脳髄が現れ、それが羽化するように身体を突き破り、巨大化していくと、トライフォルドが現れる元凶となったコーカサス型に似ていたが、ヘルクレスオオカブトのような巨大な角と幾つもの赤い複眼、前傾姿勢の体格を持った甲虫型の怪獣へと成長を遂げた。
「やはり、そういうことか…死んだはずの会長の実子に似た小僧が何故いるのか…ソイツを依代にしていたということか…なら、タオ!」
ブラッディが北京軍と共に連れてきたタオに指示を与えると、タオの背中から蜘蛛の足が皮膚を突き破り、皮を剥いで何かが現れるように変化していき、同様に巨大化していくと、右手が鎌と左手が扇子型のナイフのような形状となっていて、背中には身体を支えるための4本の巨大な蜘蛛の足を持った禍々しい怪獣へと変貌を遂げた。
カイルは巨大な角で突殺そうと牛のように突進したが、タオは身体を一回転して回避し、4本の蜘蛛の足で捕らえ、身動きを封じた。
しかし、カイルはそれをものともせず、持ち前の怪力で脱し、2本の角で鷲掴みにして投げ飛ばした。更に巨大な羽を広げて飛行し、串刺しにしようとしたが、瞬時に4本の足で地面を掘り進んで不発になった後、背後から現れて、口と両手から蜘蛛の糸を吹き出し、カイルの動きを完全に止めた。
その様子を見ていたヘレナの脳裏に実弟が殺された時の記憶のビジョンがハッキリ映り、2人がハリーによってある場所に連れていかれ、変貌したタオが2人を襲い掛かった時に2人を守るように変貌したカイルがそれに立ち向かい、激しい戦闘に巻き込まれた際に実弟がヘレナを庇い、変貌したカイルの巨大な指の爪で串刺しにされたという記憶で、それを思い出したヘレナは今まで以上に錯乱し、悲鳴を上げた。
それを見たタオは先にヘレナを始末しようと足を伸ばして殺そうとしたその時、上から天空を覆う暗雲から現れた大蛇を一掃してきた時の巨人型の怪獣が現れ、口から放つ衝撃波で、変貌したタオを北京軍もろとも一掃した。
変貌したカイルは糸を自力で破り、直ぐ様、その場を離れ、逃げるのは今しかないと見たグリスもヘレナを背負ってその場から離れるが、こちらを振り向いた巨人型怪獣にどこか見覚えを感じていた。
To be continued
次回予告
特命によってナイルを連れたマッカーシーとオクタヴィスをナイルを安全な場所に向かわせるためにロンドンのホテップ本社に向かった。
そこで待っていたのは不気味な仮面を被った幹部たちが迎え、彼等の前にCEOが姿を現した。
次回「機械仕掛けの魔獣」世界の裏で暗躍する組織の正体とは…