怪獣創世記 アークオデッセイ   作:オーガスト・ギャラガー

6 / 23
 西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。
 だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。
 やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。
 悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…


Episode6「悪魔の大蛇」

 イギリス、かつてこの国は第二次世界大戦までは大英帝国として世界最大の領土と世界最強の軍事力を持って世界に君臨していた。

 しかし、ここも悪魔の審判によってその面影は無くなり、その象徴たるビッグベンも今やただの瓦礫となっていた。そして800年後、地球圏連合国軍の占領によって、地球圏連合国軍が統治し、首都ロンドンには特務隊の支部が置かれ、地球圏連合国軍のヨーロッパの拠点とされ、復興も行われた。午後11時半頃、2人の特務隊兵士がロンドン市街の見回りを行っていた。

 

 「なあ、聞いたか? 何でも時期議長候補のお嬢様が各国訪問に向かってこっちにも来るって話らしいぜ。」

 

 「お嬢様って…あの財団のご令嬢か?」

 

 「ああ、オマケに美人って話だぜ。」

 

 「一目でもいいから、見てみたいぜ。」

 

 「余り、期待するな。そもそもお前には会えねぇよ。」

 

 噂話をする程、余裕があるような中、道路のコンクリートが突然裂け、そこから蛇のような長い触手が現れ、ゆっくり兵士の方に近付いていった。

 

 「でも、俺たち特務隊だぜ。それでも、俺たちのいる支部にはくるんじゃねぇの? なあ…あれ?」

 

 話に夢中だった兵士が振り向くと、もう1人の兵士の姿はなく、静まり返っていた。そして先程の触手が別の場所から再び現れ、その兵士にも近付いていき、その足を捕らえ、地中に引きずり込んでしまい、ロンドンは再び静かな街に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 ロッキー山脈でバルガを討伐したことをマッカーシー特務大佐はオクタヴィス特務大尉と共にモーゲンソウ議長に報告した。

 

 「列車を護衛した部隊を襲撃したデーモンビーストはバルガだということが判明し、統制連合艦隊の部隊との共闘によって討伐に成功したが、その討伐に統制連合艦隊のスカル・デナム大尉の功績が大きく、その者がロックフェルド嬢の護衛に加わりたいと懇願してくるとは…特務隊が統制連合艦隊に遅れを取るなど、失態もいいところだ。」

 

 「ですが、バルガは我々特務隊では討伐はかなり難しかったです。今回の一件で戦力の拡大と他の部隊との連携が必要だということを痛感しました。

 そのためには財団には新型の開発と特務隊と統制連合艦隊による統合も必要かと…」

 

 「それは統制連合艦隊の連中が私と財団を支持すればの話だ。何しろ奴等は5年前の事件で失態を犯したにも関わらず、私の決定に反発し、私への不信感を募らせた!

 だから、私は君たちのような優秀な人材をかき集めて特務隊を結成し、より強固な部隊を作ろうとした。だが、奴等はそれを軍の統率を乱す行為とし、マクマリー議員を支持した。軍の統率を乱しているのは一体、どっちの方だと言うのだ!?」

 

 「ですが、護衛部隊の指揮は私が取り、スカル・デナム大尉にはその指揮に従うということで同意を得ているので心配はいりません。後は議長の承認のみです。」

 

 「信用していいのだな?」

 

 「問題ありません。」

 

 「わかった、承認は得る。だが、もし変な行動があれば、直ぐにでも部隊を外せ。」

 

 「了解しました。」

 

 報告を終えたマッカーシーとオクタヴィスは議長室から退出した。

 

 「特務大佐…」

 

 「何だ?」

 

 「スカル・デナム大尉の搭乗していた機体ですが、あれは何なのですか?」

 

 「どういうことだ?」

 

 「あの機体、性能なら、特務大佐のミカエルを上回っていると思うのですが、何故、あのような機体が統制地連合艦隊の者に? それに以前から聞いていましたが、5年前の事件とは…」

 

 「それに関しては何も話すな…」

 

 「えっ、何故…」

 

 「その事件に関しては軍では内密となっている。もし、そのことを知って他の者に話せば、国家反逆罪になる。そのことは忘れろ…」

 

 マッカーシーは思い出したくないような表情をし、それを見たオクタヴィスは首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニューヨークにある統制連合艦隊司令部、そこで、デナム大尉は入隊して間もない新兵が訓練している様子を見守り、そこをブリュースター中将が訪れた。

 

 「また、新たな者が軍に入ったか。それもまだ、若い…」

 

 「いえ、むしろ、これからの未来は若い者たちです。デーモンビーストの支配から地球を取り戻すには全ての人類の力を結集する必要があります。」

 

 その中でも、一際、実力の高い新兵がいて訓練相手の新兵を次々と倒していた。

 

 「1人は随分、威勢があるようだな。」

 

 「最近、入隊し、二等兵になったばかりの者です。まだ、17ですが、特に身体能力、剣術共に優れており、私の推薦で護衛部隊に加えようと考えているんです。見ます?」

 

 ブリュースターはデナムが渡した経歴書を見た。

 

 「ヤマト・ハイライト二等兵…ロサンゼルス出身、17歳。ヤマト…日本名か?」

 

 「どうかなさいました?」

  

 「いや…ところで、この経歴書は本当なんだろうな?」

 

 「私が偽の経歴書を出すとでも?」

 

 「そうだったな、すまない。しかし、いいのか? あんな若い者も同行して…」

 

 「特務隊にも似たような年齢の若造が2人もいるんですよ。こちらだって負けてはいられませんよ。」

 

 「そうだな…」

 

 「ところで、息子さんは? まだ、軍の復帰はされてないのですか?」

  

 「そう簡単に復帰させてたまるか。あいつにはもう少し反省が必要だからな。」

 

 「厳しいですね…」

 

 「では、私はここで失礼する。」

  

 

 

 

 

 

 

 

 財団本部のロックフェルド邸で、マッカーシーはブラッディ特務少佐と会い、今後の計画について話していた。

 

 「報告は以上になります。」

 

 「了解した。では、このことをロックフェルド嬢に伝える。そうそう、君に朗報だ。」

 

 「私がルシファロイドと名付けた例の新型機、調整が終わっていつでも出撃出来る状態となった。今回の護衛に使えるだろう。」

 

 

 「ありがとうございます!」

 

 「パイロットはまだ、決まっていないとのことだが、君の中では既に決まっているのだろう?」

 

 「もちろんです!」

 

 「やはり、私の息子か。」

 

 「彼以外には考えられません。私の見立てでは…」

 

 「ま、そうだと予想してあの機体を設計したのだがな。」

 

 その時、使用人が部屋を訪ね、

 

 「ブラッディ特務少佐、お嬢様がお呼びです。」

 

 「ああ、直ぐに向かう。さて、私はこれから、お嬢に今後の計画のことを伝えるのだが、君たちもヘレナに顔を会わせたらどうだ?」

 

 「せっかくですが、そのための準備が控えてますので、我々はこれで…」

 

 「そうか…では、君たちの無事を祈っているよ。」

 

 マッカーシーとオクタヴィスがロックフェルド邸を去った後、ブラッディはヘレナのいる部屋に向かい、そこにラルドとノアもいた。

 

 「待たせたね。」

 

 「叔父様! それでどうなったのですか?」

 

 「今回の各国訪問は計画通りいくとのことだ。但し、そのためのコースは変更になるがね。」

 

 そのことを聞いたラルドは、

 

 「コースが変更って、一体、道順は…」

 

 「そのことはマッカーシー特務大佐が詳しく話すので、今は話せない。ところで、ノアと言ったな。その子、どういう状態かな?」

 

 ブラッディが見ると、ノアは周囲に馴染めないような様子で同時に何かに怯えているようにな表情もしていた。

 

 「この子、今朝からずっとこうなの。丸で何かに怯えているように…」

 

 「そうか、いきなりこんなところに来て戸惑っているということもあるが、参ったね。ヘレナとラルドは明日からここにいないから、彼女の世話は誰にするか…」

 

 「いや、私から離れないで…」

 

 怯えているノアはヘレナに抱き締めて離れようとしなかった。

 

 「ノア…」

 

 「取り敢えず、明日まで様子を見るとしよう。もし、何かあれば、私に報告してくれ。」

 

 「ありがとうございます。」

 

 

 午後11時半頃、ラルドとヘレナはそれぞれの部屋で就寝し、ノアも用意された専用の部屋で就寝し、宮殿内部や外では財団の私設軍隊の兵士が見張りをしていた。

 そんな中、宮殿の庭を見張っていた兵士が気付くと、そこに少年らしき影が裸足で宮殿の方へ歩いていった。距離と夜のため、その少年がどんな人物か確認出来ないが、間違いなく宮殿の方へ向かっていた。

 

 「おい、あれを!」

 

 「どうした? ん…おい、貴様! 何処から入った!?」

 

 しかし、その少年は兵士の言うことを聞かず、そのまま、宮殿の端の方に歩いていった。

 

 「くそっ、あのガキ!」

 

 2人の兵士はその後を付いていったが、そこに少年の姿は無く、宮殿に入ったような痕跡も一切無かった。

 

 「何処にいった?」

 

 「確かに、ここに行ったはずなんだが…」

 

 「お前の勘違いじゃないよな?」

 

 「いや、それだったら、お前には見えていないはずだ。」

 

 「取り敢えず、他の方を探すぞ。」

 

 「ああ、」

 

 宮殿の中で皆が眠っている間、廊下では誰かが裸足で歩いているような足音がしていった。その足音は小さかったため、宮殿で眠っている者は気付かなかったが、その足音が徐々にある部屋に近付いていった。

 その部屋はノアが眠っている部屋であり、その部屋の扉のロックがピッキングも触れてもいないのに勝手に解除されて扉が自然に開くと、その扉から黒い影の少年がゆっくりと入っていき、徐々にノアのところに近付いていった。

 黒い影の少年が眠っているノアに手を触れようとしたその時、ノアが何かに気付いて目を覚ますが、そこに誰もおらず、勝手に開いた扉が開いたままになっていた。

 目を覚ましたノアは不思議に思い、部屋の扉を閉め、ロックを掛けたその時、

 

 アハハハ…

 

 その時、少年の笑い声のようなものが聞こえ、ノアは振り向くも、それらしき姿は無かった。しかし、その笑い声は尚も聞こえ、辺りを見渡していても誰もいなかった。その奇妙なことにノアは更に恐怖して叫び声を上げた。

 

 「イヤアァ~!!」

 

 夜が明け、朝になると特務隊はデナム率いる統制連合艦隊の部隊と共に各国訪問のための準備をし、ヘレナを乗せる艦の中に機体と共に入っていった。

 そして、その司令室でマッカーシーがオクタヴィス、デナムと共に集めた特務隊と統制連合艦隊の部隊の兵士の前にヘレナの各国訪問の説明を行った。

 

 「さて、我々はこれから、ヘレナ・ロックフェルド議員の護衛をするわけだが、先ずは我々が向かう航路について説明しよう。

 当初、我々はアラスカ経由で我が地球圏連合国の支配領域である中国、ロシアに向かってアジアに向かい、その後、ヨーロッパに向かって首都メトロポリスに帰還するというものだったが、ロッキー山脈にバルガの生き残りが潜伏していたため、アラスカ経由は危険と判断し、その逆のヨーロッパ経由を渡る航路に決定し、特務隊の支部が存在するロンドンにさ向かう。

 航路はワシントンでもあるメトロポリスから直接大西洋を横断してロンドンに向かうといったものだ。艦はわが特務隊のものを使うが、ここまでで何か質問はあるか?」

 

 手を挙げたのはラルドだった。

 

 「当初はアラスカ経由を通るとのことですが、何故、太平洋横断を行かないのですか?」

 

 それを聞いた他の兵士たちは不思議そうに見詰めていた。

 

 「そうか…君は元々ここの出身ではないため、知らないのだな。では、改めて説明しよう。

 5年以上前、我が軍は太平洋横断ルートを計画していたが、南緯47度9分西経126度43分、ポイントネモとも呼ばれる海域に極めて近い絶海の海域に暗雲と巨大な黒い霧に覆われている現象が起こっていた。

 いつから、その現象が起こっていたか不明だが、文献によると、悪魔の審判の時から既にあったとのことだ。我が軍は一度、この現象について調査したが、この海域に入った部隊の通信が途絶え、消息を断った記録が出、他の部隊も赴いたが、同様の結果だった。

 そのため、その海域は危険区域とされ、その海域に近いオーストラリアと南米南部は手を出せないでいる。太平洋付近の島や国にも調査のための前線基地を建設しようとも計画されたが、残念ながら、それも失敗に終わり、現在、太平洋横断は非常に危険なため、航行することは法令で禁止されている。」

 

 「それで、アラスカ経由と大西洋を向かう航路になったのですか?」

 

 「ただ、最も大西洋にも、悪魔の審判以前にバミューダトライアングルと呼ばれる海域にもポイントネモ程ではないとはいえ、似たような現象が起こり、現在そこも立ち入り禁止区域とされ、アフリカに渡るにはヨーロッパを渡らなければならない状態となっている。

 そのため、我々は安全な航路を渡るようにした。回答は以上だ。他に質問は? ないなら、直ぐに出発の準備に取り掛かる。」

 

 説明終了後、特務隊は空中移動型母艦に次々と機体を乗せ、準備に向かい、そこにデナムの部隊も到着した。

 

 「スカル・デナム大尉、只今到着致しました!」

 

 「よく来てくれた。これ以後は貴君は私の指揮に入ってもらう。」

 

 「もちろん、そのつもりです。」

 

 「その少年は?」

 

 「私の部隊に所属しているヤマト・ハイライト二等兵です。」

 

 「ヤマト・ハイライト二等兵です!」

 

 「私の部隊に所属したばかりではありますが、特務隊の両二等兵に引けをとらない実績の持ち主です。十分な戦力にはなるかと…」

 

 「そうか、では、よろしく頼む。」

 

 同時期、艦に乗り込む際にラルドはマルコと話をし、その内容はノアを頼むとのことだった。出発の早朝、ノアが昨日以上に怯えてヘレナに抱きついていて、このことをブラッディに伝えるとこれ以上宮殿に留まらせるのは危険のため、彼女も同行させることにしたが、流石にヘレナやラルドと一緒にさせるわけにはいかないため、セラヴィムとルシファロイドの整備を任せられたマルコがその保護者として一緒にいさせることにし、このことはマッカーシーにも伝え、特務隊やデナムの部隊の兵士にもその監視をするよう伝え、了承を得ていた。

 

 「くれぐれも、彼女を刺激するようなことはしないでくれ。」

 

 「信用してないな。これぐらいなら大丈夫だよ!」

 

 「(マルコはあの時の記憶がないから、ノアのことは知らない…だから、彼女が何に怯えているのかはわからない。 

 それにノアがあんなに怯えているということはあの半魚人のようなものが宮殿にも来たということなのか? 

 でも、宮殿を護衛していた兵士に犠牲者はいなかったし、宮殿内にも前の教会のような現象は起きていなかったし、それに何よりあの時のような気配は感じなかった。

 あの時のことを思い出してそれがトラウマになったと考えられるけど…何も起こらないことを祈るしかないか…)」

 

 全ての部隊が艦に乗り、艦はイギリスに向けてメトロポリスを出、大西洋北部の上空を飛行していった。この日は晴天で、空はいつもと変わらない青空だが、その空をフューリーの群れが飛行し、艦は何処からか現れるであろうトルークフューリーが襲撃してくることを想定していつでも砲塔を撃てる状態になっているという緊張感があり、飛行している空にはフューリー以外の鳥は存在せず、この地球にいる人間以外の生物がデーモンビーストだけであるということを物語っていた。

 これといった妨害や襲撃もなく、無事イギリスに着き、艦を降りた後に待っていたのは、スーツ姿の男と護衛の者だった。

 

 「よくおいで下さいました。私がイギリス総督のロイド・ブロンドです。」

 

 「ヘレナ・ロックフェルド議員です。」

 

 「話には聞いていましたが、何と美しい方だ。」

 

 「そんな…褒めすぎですよ。」

 

 「何時間も重苦しい艦の中でお疲れでしょう。私が総督府までお連れ致しましょう。」

 

 マッカーシーとオクタヴィスも同行しようとしたその時、ブロンド総督が待ったをかけ、

 

 「おっと、ここからは我が護衛がロックフェルド嬢をお守り致しますので、特務隊の方々は何処かでごゆっくりください。」

 

 「しかし、我々はロックフェルド議員の護衛として来たのです。議員から離れるわけにはいきません。」

 

 「しかし、軍も一緒だと重苦しい空気になってロックフェルド嬢に余計な不安も与えてしまうことになりますが…」

 

 「だとしても!」

 

 「待ちたまえ、特務大尉。では、我が隊から2人の護衛を付けることでよろしいでしょうか? 

 ここにいるラルド・オルスターとクトラ・ブラッディ両二等兵を付けましょう。まだ若いですが、彼等の実力は私が保障します。」

 

 「ほぅ、ロックフェルド嬢のように中々若気のある子じゃないですか。いいでしょう。では、総督府までは私が。」

 

 「ありがとうございます。」

 

 3人を乗せた車はそのまま総督府へと向かっていった。

 

 

 

 ロンドン総督府、それはイギリス統治のために置かれている政治機関の中枢である。地球圏連合国はASの開発の成功によって今までデーモンビーストに蹂躙された各国を制圧し、メトロポリスと改名した旧ワシントンがある北米大陸はもちろん、南米大陸北部、北欧を除いたヨーロッパ、中国、ロシアを支配領域とした強大な軍事国家となっている。

 首都であるメトロポリスを除く各国の首都には総督府が置かれ、それぞれの領域を総督が統治するという体制になっており、このロンドン総督府は地球圏連合国が統治するヨーロッパの拠点となっている。

 

 「また、お会いできるとは光栄ですよ! ヘレナ様。あなたがイギリスに来られたのは確か、2年前でしたな。ユノラ・パラディウス殿があなたを招待した時の…」

 

 「え、ええ…」

 

 「あの時のあなたの器の広さはそれはもう丸で天使のようでしたよ! こちらにいたデーモンビーストによって親を喰われ、孤児になった子供たちに分け隔てなく接し、平等に食糧を分け与える等、議長に相応しい人だと確信しましたよ!」

 

 「そんな…誉めることではありません。」

 

 「何を言うのです! まだ、その若さで聡明な方は他にはいません。」

 

 「もし、宜しければ、明日、パラディウスCEOの元に私が送りましょうか? ここからなら、ホテップ社とそう距離はないですし…」

 

 その言葉を聞いたラルドは少し気になっていた。

 

 「ホテップ社?」

 

 「いえ、そんな…」

 

 「遠慮する必要はありませんよ。CEOも資金は出してくれますから!」

  

 「すみません…その件に関してはもう少し考えさせてください。」

 

 

 

 

 

 

 

 会見が終わった後、ラルドとヘレナは総督府の個室にいた。

 

 「ねぇ、さっきの話で聞いていたんだけど、ホテップ社って何なの?」

 

 「あ、そっか。ラルドは知らないのね。ホテップ社ってのは…」

 

 

 

 総督の命令により、総督府から離れたホテルに待機していたマッカーシーとオクタヴィスも似たような会話を交わしていた。

 

 「正直言ってイギリス訪問は後回しにしたかった。」

 

 「何ででしょうか?」

 

 「オクタヴィス特務大尉はホテップ社を知っているか?」

 

 「いえ…」

 

 「ホテップ社は大英帝国時代のイギリスの発展にも貢献した大富豪パラディウス家が創設した一大企業だ。

 パラディウス家は代々、イギリス議会の権限を握る程の力を持った名門で、東インド会社の設立にも関わり、世界貿易の大元を牛耳り、それがイギリスの植民地拡大や産業革命にも繋がっていたそうだ。」

 

 「そんな富豪家がいたとは…」

 

 「ホテップ社は第二次大戦後に創設され、アメリカや中国にも支社を置き、CIAに多額の援助を行い、ソ連でさえ手出し出来ない程の力も持っていた。

 そのため、KGBの工作員がソ連存続のための援助を行うよう、密かに交渉を行ったりしたという記録もあるそうだ。」

 

 「特務大佐、悪魔の審判以前の歴史はある程度熟知していますが、確か、当時のアメリカとソ連は…」

 

 「冷戦状態だ。」

 

 「その状態で、何故、ソ連と裏の交渉を?」

 

 「確かに両国は対立関係だったが、それ以前の大戦の影響もあって、もし全面戦争になったら、どれだけの経済的な打撃と損害を受けるか知れたことではなかった。

 そのため、両国共に本格的な衝突は避けていたが、アメリカとヨーロッパの経済を仕切る一大企業にソ連が資金援助を求めてきたとなれば、ソ連に恩を売っておき、その動きを抑制することが出来ると判断したアメリカ大統領は敢えてそれを黙認した。

 だが、その時のソ連は既に政権内部の分裂が強かったため、大した援助は受けられず、崩壊した。もし、資金援助を与えれば、もう少し存続していただろうな。」

 

 「つまり、ホテップ社はそれだけの資本を持つ企業だと?」

 

 「ああ、悪魔の審判が起こる数十年前にはコロニー建造のためにも資金を出していた。何でもコロニー建造には1国の国家予算でも足りない程だったため、責任者がわざわざパラディウス家のところまで出向いて頭を下げた程だそうだ。それだけの力を持つ企業だ。」

  

 「とはいえ、どうやって悪魔の審判から生き延びたんです?」

 

 「本社の地下に強力なシェルターを有していたらしく、主だった者は一部の生存者と共にそこで生き延びたそうだ。

 元は万が一、核攻撃を想定して設置されていたのだが、何しろ、世界経済を牛耳るほど故、下手に手出しすれば、世界経済を混乱させることに成りかねないので、どの核保有国も手出し出来なかったため、使用されることはなかったが、それが役に立ったようで、その後、ロックフェルド財団を創設してその財力で地球圏連合国を発足させ、今に至ったのだ。」

 

 「では、我が軍のASの技術も…」

 

 「そこまでは財団とホテップ社の者しか知らないため、何とも言えんが、恐らくそうだろう。」

 

 同じ会話は総督府の個室にいるラルドとヘレナにも続き、

 

 「そんな企業があったなんて…ホント、君の周りには凄いものばかりだね。」

 

 「といっても、知っているのはそれだけで、ホテップ社の方とそんなに顔が広いわけじゃないからね。」

 

 「え、でも、ホテップ社は財団の…」

 

 「あくまで一番顔が広いのはお父様だけで、仕事上の関係でよく会うけど、私はまだ、半人前だから、そこまでじゃなく、2年前にお父様の付き添いの時に訪問した時だけだからね。」

 

 「じゃあ、それ以来は会社の人と会ったことがないの?」

 

 「あそこは財団より結構特殊で、そんな気軽に会えるわけじゃないの。でも、さっき、ロイドさんから訪問のついでにユノラさんに会ったらどうかって勧められてたんだけど…」

 

 「あんまり会いたくないの?」

 

 「そういうわけじゃないけど、ここって私がいると色々迷惑が掛かることがあるから…」

 

 「迷惑?」

 

 その時のヘレナの顔は余りいい思い出がないのか、思い出したくないような表情をしていたため、ラルドは気になりながらも彼女のことを気遣ってそれ以上のことは問わなかった。

 午後10時頃、ヘレナが個室で就寝すると、予め渡された通信機で彼女のことをマッカーシーに伝えた。通信に対する応答は引き続き、彼女の護衛を続けろとのことだが、ヘレナがホテップ社を訪問することを総督に勧められたことを聞くと、暫く黙り込み、そのことに関しては明日、そこに向かい、詳しい話は彼女から聞くといったもので、通信はそこで終わり、ラルドはクトラと交代でヘレナの個室の前で警戒していた。

 交代の時間が来ると、自分の個室に入り、ベッドで休もうとしたその時、部屋の窓から見える上空からドラゴンまたはコウモリのような翼を持った巨大な蛇のようなものがゆっくりと上空を飛んでいるのが見えた。

 目の錯覚かと思い、一旦目を逸らし、もう一度見てみると既に上空にさっきの巨大な蛇のようなものはいなかった。気のせいだと思い、そのままベッドで休んだが、その部屋の上の総督府の屋上には1人の少年が佇み、上空を見上げていた。

 午後11時、特務隊が待機しているホテルの周囲で突然爆発が起きた。その様子を見るために現地の兵士と共に爆発が起きた箇所に向かっていった。

 

 「また、テロか…」

 

 「また…どういうことですか?」

  

 「そうか、特務大尉には話してなかったか。本国に反財団派と同じく地球圏連合国の統治に反対する勢力が幾つか存在し、それらがテロリストとして活動している。」

 

 「地球圏連合国に統治されず、自分たちで国家を作りたいということでしょうか?」

 

 「まあ、そう単純な話ならまだ、いいが…」

 

 「…?」

 

 「実はここに到着する前、ここに駐屯している部隊の兵士が警戒中に何者かに襲撃されたという情報があった。」

 

 「まさか、それが先程のテロ…」

 

 「と言いたいところが、その周辺には銃撃や爆破に晒された跡はなく、血跡や遺体すら発見されず、地面が裂けていたということだけだった…」

 

 「人間の出来るようなことではない…まさか、デーモンビースト!?」

 

 「どうやら、悪魔はいくら駆除しても消えないらしいな…」

 

 

 同じホテルにいるデナムはヤマトと共に別の部屋でその様子を見ていた。その時、爆発の直後、それに反応するかのようにテムズ川にいる黒い影が蠢いてしばらくした後、潜っていった。

 爆発の影響で、その場にいた兵士は誰1人気付かなかったが、様子を見ていた2人は見逃さなかった。

 

 「気付いたか? ハイライト二等兵。」

 

 「間違いありません。例の個体です。」

 

 「どうやら、ここにいるテロリストによって活動が更に活発になっているようだな。とすると明日は人波乱起きそうだ。」

 

 火がまだ消えない中、ロンドン市街に何かを隠して走り去っていく男の姿があった。男は兵士に気付かれないよう路地裏を通って走り、マンホールから地下水道に入っていった。

 ある場所に向かって走っていく中、地下水道から巨大な呻き声のようなものが水道中に響いた。男は周囲を見渡すが、それらしき姿は見当たらなかった。

 ただの気のせいと思った男は先を急いで全速力で地下水道を走っていったが、向かいの通路に着こうとしたその時、右側から紫色の黒い霧が流れ込み、その直後にドンドンと壁を叩くような音がしてきた。

 その音を聞くと、その場で止まり様子を見た。止まった瞬間、その音は止んだが、進もうとしたら、再びさっきの音がし、止まっては止み、進んでは音がするの繰り返しになっていた。それに腹が立ったのか、隠していたのを落とし、銃を取り出して右側の壁に向けて発砲した。

 男は変な現象の犯人は人間と思ってそいつを驚かすために向かい側まで行かず、発砲していったが、壁の向こうにいたのは人間ではなく、巨大な尾であり、その尾は男をおちょくるように尚も壁を叩いた。平静を失って銃を乱射する中、男の後ろをゆっくりと巨大な影が迫っていき、口を開け、そこから尻尾のように舌が気付かれないよう、近付いていき、足を捕えると男は体制を崩し、銃を離してしまう。

 抵抗を試みたが、その舌はニョロニョロと縦横無尽に動き、銃の他に持っていたナイフもバランスを崩したことによって落としてしまい、抵抗は最早、意味を為さなかった。それでも壁を掴む等のことをしたが、舌の力は並みの力では抗えず、掴んだ手も引きずかれる衝撃で血塗れになり、巨大な影は男をそのまま丸呑みしてしまった。巨大な影はそのまま地下水道を通り、新たな獲物を求めて進んでいった。

 巨大な影に喰われた男が持っていたのは通信機と試作品型の時限爆弾だった。通信機から応答が何度も来たが、持ち主は既に喰われていたため、応答はなかった。通信していた仲間はロンドンの路地裏内に潜み、テロリストと思われし者たちだった。

 

 「くそっ、通信が切れた!」

 

 「連合国軍に襲われたのか?」

 

 「いや、地下水道を通っているという情報は奴等は掴めていないはずだ。」

 

 「まさか、デーモンビーストか!?」

 

 報告した男はゆっくり頷いた。

 

 「くそっ、連合国領のデーモンビーストは粗方駆除されたかと思ってここに隠れているのに…これじゃ、思うように行動出来ない! せっかく例の財団の女がここにいるっていうのにまた、行動を阻止されるとは…」

 

 「どうすんだ? 俺たちは大した武器も持ってないぞ。このままじゃ、軍を攻撃するどころか、デーモンビーストに全滅させられるぞ!」

 

 メンバーの決断が決まらない中、そのリーダーらしき男が口を開き、

 

 「デーモンビーストに邪魔されるというなら、ここはもう用なしだ。より活動しやすい場所に移動する。」

 

 「けどよ! ここが安全じゃないとわかったら、どこ移動しても同じじゃねぇか!」

 

 「ASが開発されるようになったとはいえ、デーモンビーストは未だ、世界中のあちこちに存在している。それに、地球圏連合国の領域には俺たちのように財団や軍に反抗する者も少なくない上に占領されていない地域にも生存者による軍事組織もいる。ならば、俺たちはそいつらと手を組む必要がある。」

 

 「でもさ、ここにはあの財団の小娘がいるんだぜ! ここを逃したら、チャンスは2度と来ないかもしれないぞ。」

 

 「いや、情報によると、その小娘は世界各国に訪問するらしい、どこかしらで網を張れば、その内チャンスは来るだろう。ま、さっき俺たちを妨害した害虫から逃れられたらの話だがな…」

 

 

 

 

 夜が明け、ヘレナは総督に会い、挨拶だけでもするとのことで、総督はそれに応じ、自らの車でラルドやクトラも乗せ、ホテップ社に向かった。

 その時、昨夜、巨大な影に喰われたテロリストの男が地下水道に落とした時限爆弾が落とした衝撃でスイッチが入り、ヘレナたちを乗せた車の真下で爆破し、その衝撃で車は横転し、地面が裂けた。

 

 「キャアァッ!!」

 

 「何だ! 何が起こった!?」

 

 「爆破です! 地下に爆発が起こったようです!!」

 

 「まさか、テロか!?」

 

 その直後、地下を進む巨大な影がその爆発に気付き、その場所に向かって進んでいった。爆発によって車は横転したものの、要人警護車ということもあって軽傷で済み、護衛の者に従って車から出た。

 最後に総督が出ようとしたその時、裂けた地面から触手のようなものが現れ、護衛の者を捕らえ、次々と地面に引きずり込んでいった。

 

 「ウワァッ!!」

 

 「何だ、これは!?」

 

 その隙に車から出られるも、舌はそれを逃さず、足を捕らえてしまう。

 

 「しまった!」

 

 「ブロンドさん!」

 

 巻き付いた触手を引き剥がそうと何度も抵抗を試みるが、その触手は並みの力では引き剥がすことが出来ず、そのまま引きずり込もうとした。

 ラルドは咄嗟に総督の手を握り、それを阻止しようとしたが、舌はそれも構わず、2人まとめて引きずり込もうとした。

 

 「駄目だ! 引きずり込まれる!!」

 

 「諦めないでください!!」

 

 だが、その力に抗えず、触手は捕らえた総督を遂に引きずり込んでしまう。

 

 「ブロンドさん!!」

 

 その後、触手は反対方向から現れ、今度はヘレナの足を捕らえた。

 

 「キャアァッ!!」

 

 「ヘレナ!」

 

 ラルドはすかさずヘレナの手を握り、引っ張るが、触手はラルドを振り払い、そのまま地面に潜ろうとしたその時、拳銃を取り出したクトラが触手をピンポイントで撃ち込み、それに苦しむと捕らえたヘレナを離し、ラルドがそれをキャッチすると触手は地面に潜った。

 総督が喰われたことで恐怖し、動けないヘレナを運ぶ中、地面から、巨大な何かが現れ、それは背や頚部等が刺々しくなっている巨大なコブラ型のデーモンビーストだった。

 触手かと思われたものはコブラ型のデーモンビーストの長い舌で、再び先程の舌を出し、ラルドたちを捕らえようとしたが、いずれもクトラの銃撃によって防がれ、舌での攻撃を止め、そのまま丸呑みしようとしたその時、2発のミサイルが直撃し、体制を崩した。 騒ぎを聞き付け、部隊を動かした特務隊とデナムの部隊が現れたのだ。

 

 「大丈夫か? オルスター、ブラッディ両二等兵!」

 

 「はいっ!」

 

 「問題ない。」

 

 「我々は直ちに奴の排除行動に移る。ヘレナ嬢の護衛は他の兵士に任せ、お前たちも自分の機体に乗れ!」

 

 「はいっ!」

 

 マッカーシーの命令に従い、ラルドはセラヴィム、クトラはルシファロイドとそれぞれの機体に搭乗し、部隊はデーモンビーストへの攻撃準備に入り、対するデーモンビーストも体制を立て直し、構えていた。

 

 「特務大佐、あれは…」

  

 「デーモンビースト第6号バジリスク、エジプトに生息していたという記録があったが、まさか、こんなところにもいたとは…」

 

 「生息区域を広げたということでしょうか?」

 

 「どちらにせよ、奴は駆除対象だ。全軍、攻撃開始!」

 

 特務隊の一斉射撃を受けたバジリスクは身体を低くして周囲を蛇行しながら部隊に近付いていき、1機を絞め捕らえ、コクピットに向かって舌を出した。

 その舌はコクピットの装甲すら貫通させる程の力を持ち、中のパイロットを確実に狙っていた。狙われたパイロットは拳銃で応戦したが、縦横無尽に動く舌に翻弄されるだけだったが、 その時、1発の弾丸がその舌を撃ち抜いた。

 

 ギャオォ~!!

 

 舌を失って叫び声を上げ、撃った方向を見ると、狙い撃ちしたのはヤマトのアルケーダだった。目標を変え、襲いかかってくるとすかさずライフルで応戦したが、舌を失った口から酸のような液体が飛び出し、ライフルに直撃し、それを捨てると液体の当たった部分が溶解していった。

 

 「なるほど、強酸の液か…」

 

 その様子を見たデナムは部隊に指示を出し、

 

 「全部隊、目標から出来るだけ距離を取って砲撃しろ! あの酸には当たるようにするな!」

 

 その指示に従い、デナムの部隊と特務隊はバジリスクから離れ、一斉射撃を開始した。それに対しバジリスクは強酸を周囲に撒き散らし、範囲にある建物は次々と溶解していった。

 

 「これじゃ、近付けません!」

 

 周囲に放たれる強酸で近付けない中、1機が突っ込んでいき、

 

 「待て、ハイライト二等兵!」

 

 「俺が奴を引き付けます!」

 

 そう言うと、もう一つのライフルとブレイブソードを取り出し、放たれる強酸を避けながらライフルで牽制し、徐々に近付いていった。

 開いた口にライフルを向けようとすると同時に尻尾が襲いかかって来、瞬時にブレイブソードで受け止めた。その隙に強酸を放とうとすると、機体を回転して回り込み、背中を斬り付けたが、貫通すら出来なかった。

 

 「ちぃっ、背中を狙うのは無理か…」

 

 同時に目の前に尻尾が襲いかかってきてそのまま叩き落とした。クルリと向きを変え、攻撃を仕掛けるが、その隙をついてルシファロイドが背後に現れ、左腕のブレードで背中を突き付けた。

 尻尾で後ろから狙ってきたが、それを掴むとそのまま持ち上げて叩き潰した。負けじと強酸を吐こうとしたが、そうはさせまいと顎の下からパンチを御見舞いし、両腕のブレードで頚部等を斬り付けた。

 

 ギャオォ~!!

 

 悲痛な叫びを上げるとその背後からセラヴィムがブレードメイスを振りかざしてトドメを刺そうとした。

 

 「この間合いなら!」

 

 しかし、バジリスクはクルリと向きを変え、強酸を吐いた。ブレードメイスでそれを防いだが、強酸によって溶解していき、機体にも及ぶと思って捨てたが、バジリスクはそれを逃さず、セラヴィムに噛みつき、建物に叩き付けた。

 

 「ウワァッ!!」

 

 休む暇を与えず、強酸を吐き、直撃してしまうが、セラヴィムの持ち前の耐久力で外装部分のみ溶解した。

 

 「不味い! 更に食らったらコクピットまでやられる。」

 

 部隊は援護のため、一斉射撃をするが、バジリスクはセラヴィムを尻尾で捕らえ、そのままテムズ川に引きずり下ろして潜っていった。

 

 「しまった! 奴め、1機1機を水中に引きずり下ろして確実に潰すつもりか!?」

 

 「しかし、特務大佐! 今の我々には水中戦に対応可能な装備も機体もありません。このままでは我々が不利です!」

 

 「ちぃっ!」

 

 水中でラルドは何度も機体を動かそうとするが、セラヴィムは思うように動かず、水中を優々と泳いで何度も攻撃してきた。

 

 「くっ! 水中戦に対応してないから思うように動かない。オマケにメイスまでないこの状況じゃ…」

 

 水中で身動きの取れないセラヴィムをバジリスクは絞め捕らえ、そのまま絞め潰そうとし、その圧力によってギシギシと機体が悲鳴を上げていった。

 

 「不味い! この状態じゃ、脱出も出来ないし、機体ごと押し潰されるのは時間の問題。」

 

 肩のミサイルポッドで攻撃を仕掛けるが、照準が合わず、難なく避けられてしまい、状況は大して変わらなかった。

 

 「そんな…」

 

 尾は完全にセラヴィムの手足を封じ、ハッチを破壊してラルドを引きずり出すのではなく、機体を押し潰してから炙り出そうとし、力を更に加え、強酸の液や水圧もあって外装が次々と剥がれ、フレームの間接も悲鳴を上げ、押し潰されるのは時間の問題となった。

 ラルドは尚も諦めず、打開策を見付けようとするが、目の前のバジリスクが口を開きながら近付いていき、かつてセラヴィムに初めて乗り込み、機体が動かせなかった時の恐怖を思い出した。

 

 「あの時だ…あの時、セラヴィムに乗り込んで動かせず、何も出来なかったのと同じだ…もう、あの時のような弱い自分に戻りたくないのに、何も出来ないの? そんなのイヤだッ~!!」

 

 その時、セラヴィムの両目が赤く光り、同時にラルドの腕に取り付けられているコントローラーがラルドの意思に反して勝手に作動し、尾に抵抗出来ない機体の出力が急激に上がり、尾を力ずくで引きちぎろうとし、それに焦ったバジリスクが襲いかかったが、脱出した両手で尾を掴んでバジリスクの口にぶつけ、噛ませた。

 その隙に完全に脱出すると、誤爆で尾を噛んだ口を押さえ、そこから脱出出来ないように逆にバジリスクを押さえ付けた。身体をうねりながら抵抗するが、パワーが上がったセラヴィムの力はそれさら上回り、形勢は一気に逆転した。

 

 

 水中での状況を知らない特務隊はテムズ川の周辺でいつでも攻撃出来る体制を取っており、セラヴィムとバジリスクが水中に潜ってから1時間が経つと、水面がゆっくり揺れ、水中から身体中からおびただしい傷があるバジリスクが現れた。

 すかさず、デナムのタイタロスがワイヤーブレードで捕らえ、電流を流し、身動きが取れなくなると、部隊のASが一斉に射撃を開始した。

 必死の抵抗でワイヤーブレードを噛みきるが、その上をブレードメイスを持ったルシファロイドが現れ、口を開けたその隙を狙ってブレードメイスを口の中にブッ刺し、そのまま両断した身体から大量の緑色の血がルシファロイドに掛かり、遂に沈黙した。

 

 「セラヴィムは!? オルスター特務二等兵からの通信は!」

 

 「応答がありません!」

 

 「まさか、奴に…」

 

 「特務大佐! 水中から機体反応が!!」

 

 再び、水面が揺れ、そこからASの手がコンクリートを掴み、外装のほとんどが剥がれ落ち、フレームもボロボロになって目を赤く発光させたセラヴィムが現れ、暫く歩いた後、突然倒れ、機能停止した。

 

 To be continued




 次回予告

 バジリスクを討伐するも、ブロンド総督がバジリスクに喰われたことにより、会談は中止され、護衛部隊は急遽、イギリスを離れ、ベルリン総督府に向かった。
 戦闘でセラヴィムが多大な損害を受けたことにより、ラルドは暫く出撃できず、ドイツ総督と会談するヘレナの護衛のみ任されることになったが、そんな中、ノアが不審な行動を取り、何者かに拐われてしまった。
 
 次回「闇夜の刺客」その機体は少年を戦いの運命へ導く。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。