"ヒーロー"になればモテると聞いて 作:パステルチョコ
「──結局アンタどこ受けるのよ」
「え?雄英?」
夕暮れの時間。2人の人影が河川敷を歩いていた。
制服に身を包んだ中学生の2人。
緑がかった黒髪の女子生徒と黒髪短髪の瞼を閉じてる男子生徒。
「……まじ?」
「え?うん」
「あんだけアタシがヒーロー目指せばいいって言ってたのに面倒いとか言ってたアンタが……どういう気の変わりよう?」
「地元の幼なじみとの約束あったし、何より……通ってる道場のやつからヒーローになればモテるって聞いた」
そんな言葉を聞いてポカンとする女子生徒。
その後、直ぐに彼女は呆れたようにため息を吐いていた。
「そっかぁ……そうだったなぁ……、あんたはそういう奴だったもんなぁ」
「これで合法的にパツパツヒーロースーツを着たナイスバディの美女ヒーローたちとお近づきに「おやめ」あてッ」
ふへへふへへと笑う男の頭に平手が入る。
叩かれたところをさする男はそう言えばと思い出したかのように口を開いた。
「あれ?そっちってもう雄英推薦されてるんだっけ?」
「そうよー?アンタがさぼってる間にあたしは先に行ってるの」
胸を張りドヤ顔の彼女。
それを目にし男は立派に"張られた"胸へ瞼を開け視線を向けていた。
「なるほど、"ご立派"なことで」
「……どこ見て言ってるのよ…!」
「ぺいぺい」
「そういうセクハラは女の子に嫌われるからやめときな」
「何?これくらい健全な男の子なら当然じゃないか?最近の女の子は過敏すぎやしな「やかましい」あへんッ」
男に振り下ろされる一撃。今度は平手ではなく拳。それなりにいい音が辺りに響いた。
「それにしてもアンタが雄英ねー。……ちゃんとしてれば推薦もあったんじゃない?」
「いやー、俺の"個性"ってあったら便利だけど戦いに向いてるかって言われると……うーん」
「そこは工夫でしょ。アタシの見立てじゃアンタの個性はトップヒーローに引けを取らないって」
「うーん。自衛のために道場行ってるけどそれだけだといまいち決め手にかけるしなぁ…」
うーん、うーんと頭を悩ます男。
それを横目に女子生徒は口を開いた。
「というより実技はまだしも筆記はどうなのよ」
「えー?まあ……なんとかなるんじゃない?」
「アンタいつも赤点ギリギリでしょ?どうするの?」
「気合とパッション…?」
危機感を持たない男に呆れと共に多少の苛立ちが募る。
「アンタ、何とか雄英に入れたとして。そこで勉強ついていけなきゃどうするの?」
「うーん……」
「モテたいモテたい言ってるけどさ。そうなったら女子達に幻滅されるよ」
「さて、本屋はあっちかな?参考書を買っていかねばな」
「はぁ……」
高速手のひら返し。男の得意技である。
そんな男に振り回される女子生徒。
「おーい、せっちゃん。はよ行こ」
「あーはいはい。分かりましたよっと」
これが女子生徒【取陰切奈】と、男【
→←→←→←→←→←
「……シュン、あんたヤバいね」
中学3年、三学期期末。
それのテスト返却日。
目の前のクラスメイトは俺のテスト用紙に目を通し驚きのあまり固まっていた。
「なんでこの一週間で赤点ギリギリから満点取れるようになるのよ」
「モテたいって感情はな……最強のガソリンなのさ」
「……なんか腹立つわね」
まあ、普段からの授業はしっかり耳にしていた。
最低限の点数さえ取れればいいかということで毎回赤点ギリギリだった訳だが、しっかり自主勉してガッチリテストやってみたらこれだ。
地頭は良かったんだなって初めて気がついたよ。
まあ、この後カンニングしたやろテメェと担任から愛のこもった自白強要取り調べがあったんだがそこは割愛で。
てなわけで、
「俺モテるかな?じゃ無くて、合格できると思う?」
「どう間違えるのそれ?……いや、まあアンタならいけるんじゃない?」
推薦入学者からのお墨付き。これは勝つる(確信)
「そういえばアンタの幼なじみさんって雄英いるんだっけ?」
「イエス。えーと、今2年か?」
「へー。やっぱり強かったり?」
「いやー、まあ"個性"は強いよ?個性的でもあるけど」
そう言いながら思い出す幼なじみ。
中学に上がる頃を機会に引っ越して離れ離れになった子。
ワイヒーロー目指すから、雄英行くから、お前も来いよ!約束な!的なことを別れ際言われたけど、実際雄英行けてるのかは知らん。
まあ、あの人のことだ。どうせ行けてることだろう。
兎にも角にもアイツは俺の性癖を壊したやつでもある。成長した姿を見てしまったらおそらく俺は死ぬだろう。
"ナイスバディの年上の妹"みたいなやつだ。……言ってて意味がわかんないなこれ。
そういや道場のあの子も雄英受けるんだっけ?まあ、あの子は委員長感あって受かりそうだなぁ。
個性と武術の相性いいし、何とかなりそう。
……くっ!俺もかわいい女の子に負けないよう頑張らなければ!
「──ちょっと聞いてる?」
「ん?夕飯はハンバーグ?」
「そんな話はしてないから。いや、だからなんて言うか入試までの間アタシが勉強とか見てやろうかー?ってことなんだけど…」
ふむ、つまりせっちゃんとマンツーマンでお勉強と?
密室に男女2人?何も起きないはずも無く?俺得シチュ?
「全力でお願い致しましょう」
「……言っとくけどあんたの考えてるようなことにはならないからね」
「なん…だと……!?」
「……ホント変態」
ショックを受ける横で少し照れたようにそう言ったせっちゃんを俺は見逃さなかった。
なんだお前可愛いな。