"ヒーロー"になればモテると聞いて 作:パステルチョコ
少しだけ移厘くんが真面目にやるだけの話。
さて、戦闘訓練が始まった。
第1回戦目。
Aチーム、イズくんとおちゃちゃコンビ VS Dチーム、ウニくんと天さんコンビ。イズくんとウニくんは幼なじみらしいし、まさに宿命の対決だな。
イズくん達がヒーローでウニくんがヴィラン……なんかしっくりくるね!
と、まあそんな事言ってはいるが、ぶっちゃけ訓練の内容はなかなか気迫に満ちていたものだった。
戦いの様子はモニターに映し出されそれを見学するような形だった訳だが、俺も久しぶりに薄目を開けて見入ってしまったよ。
みんなそれぞれ自分の思いを持ってヒーローを目指してるんだ。俺とは違うね。なまじ"耳がいい"から二人の会話は聞こえていたよ。
──勝って!超えたいんじゃないか!バカヤロー!!
「……カックイーな、ほんと」
そんな俺の呟きは他の人には聞こえていなかった。
さてさて、ウニ君の爆破とイズくんの超パワーで建物がぶっ壊れたため場所を移し2回戦。
「ぃよーし。お二人とも頑張ろーねー」
「あ、うん…」
「目!開けちゃダメだよ!移厘くん!」
さて、早速来ました俺の出番。
相手はBチームの………、
「……対戦相手誰だっけ?」
「轟と障子だな」
ああ、しょーくんとメゾっちね。おkおk思い出したわ。
さて、我々はヴィランチームとしてその2人を迎え撃つ訳だが。
「2人の個性って?」
「この尻尾だな」
「私は透明」
「なるほどなるほど……」
……小細工とか搦手は用意できない。となると正面戦闘か。
つっても相手さんの個性知らんしなぁ。前情報なしにぶつかりに行くのはリスク高ぇー。
「そういや移厘の個性はテレポートなのか?」
「え?透視じゃないの?」
「ん?ああ、俺、複合個性なんよ。瞬間移動と透視。あと、超聴覚と念力使える」
「「すご!」」
「つって念力に関しては出力がイマイチだから。授業とかで板書する時とかにちょくちょく使うくらい」
「それでもすごいじゃん!」
俺の言葉に詰め寄って来るトオルちゃん。
え、そ、そお?美少女ちゃんにそんなこと言われちゃうと……うへへうへへ。
「ま、念力と……あと透視は使わないから」
トオルちゃんと同チームだしね。
「え……あ、ごめんね。私のせいで…」
「大丈夫だ。問題なブシャッ!」(鼻血)
「また目開けたでしょ!」
「……あー、とりあえずそろそろ作戦立てとかない?」
ごめんね
→←→←→←→←→←
「それでは時間になったからスタートしてくれ!」
モニター室。
移厘たちの戦いを見るため緑谷を除いたA組はモニターを見ていた。
「もうこれほぼ轟と移厘の勝負ってところだろ…」
「轟って個性把握テストの時氷使ってたよな。やっぱり氷使う系の個性か?」
「移厘はテストん時は瞬間移動してたし、テレポートの個性か?」
「テレポートvs氷か…」
「ああ、あいつ複合個性らしいぞ。テレポートと透視と超聴覚持ってるって言ってた」
「マジかよ!あんなふざけてる奴なのに!?」
そんな風に移厘や轟のことで盛り上がるA組面々。
そんな中、モニターの中で状況が一瞬にして変わった。
「……うぉ!?ビルが!」
「ビルごと凍結かよ…」
「仲間も巻き込まず核兵器にもダメージを与えず尚且つ敵も弱体化!」
「最強じゃねえか!」
「……なあ、移厘どこにもいなくね?」
「「「「え?」」」」
ビルの凍結。それを為した轟に気を取られている間に移厘がどこのモニターからも姿を消していた。
葉隠が見えないのは透明だから。それはいい。しかし、ここで移厘が見えないというのはどういうことか。
その理由はすぐにわかった。
「……な!おい入口だ!」
そこには障子を確保テープでぐるぐる巻きにした移厘がいた。
「全く、ビルを凍結なんてしてくれちゃって……考えてた作戦全部パーだよ」
「くっ…!」
ゴリ押しにも程がなくて?しょーくんよぉ?
さて、まあ向かった先は恐らく核のある部屋。そこにはさるるがいるけど……どうせ凍らされて動けないだろうしね。
メゾっちの個性は恐らく触手の先に自分の体を複製できる感じだろう。耳を複製して索敵、室内の構造把握。
だからしょーくんも迷うことなく一直線に部屋にたどり着くはず。
……よし、
「とりあえず行くか。トオルちゃん、メゾっちよろしく。手筈通りにね」
「了解!任せて!」
そうして移厘は"氷漬けから回収していた葉隠"と障子を両手にテレポート。
場所は核兵器の部屋の前。
そこに2人を置いていく。
そのまま移厘は1人でテレポート。場所は、
「…!?お前…!」
「はろはろしょーくん」
轟の目の前。ついでに尾白へ手を触れテレポートさせることで氷から脱出させる。
これで2対1の状況を作り出した。
「チッ…!」
舌打ちとともに移厘に迫る氷。
それをまたテレポートして避ける。
「さるる、核と一緒に屋上飛ばすから」
「え?うお──」
尾白からの返答を待たずに核と尾白だけを屋上へテレポート。
「さて、しょーくん。これでタイマンだな」
「………っ」
「とでも言うと思った?」
「!?」
「こっちはヴィランだからね。性格悪くいかせてもらうよん」
そう言って移厘が取り出したのはスマホ。
画面を轟に向け、そこに表示されているのは尾白の連絡先。
「それ以上動いたら核を起動させる」
「……何言ってやがる…?」
「何って……ヴィランだよ?自爆テロ覚悟の凶悪犯だった時もそんなこと言うの?」
「……っ!そういう事か」
移厘のやってる意味を理解した轟は動くのを躊躇った。
コレは訓練、核など爆発しない。でもこれがリアルだったら?不用意にヴィランを刺激する行動なんて取れるわけが無い。
訓練と現実の差。その違いをあえて移厘は指摘することで動きに躊躇いを持たせたのだ。
さらにここでダメ押し、
「よし、トオルちゃーん!」
「はぁーいッ!さあ!動くなヒーロー!動いたら仲間の命はホショーできないぞー!」
「…っ」
「す、すまない轟」
人質作戦である。
「……性格悪ぃやり方だな…!」
「今はヴィランなもんで」
「そっちの方が天職なんじゃねぇか?お前」
「あらヤダ失礼」
いやらしい笑みの移厘。そんな移厘を睨む轟。
二つの人質を取られて打つ手なし。
コレは訓練、そんなもの無視して攻撃すればいい。そうは思うが、この戦いが始まる前。爆豪と緑谷の戦いの講評で八百万が放った言葉。
──"訓練"だという甘えから生じた反則のようなもの
その言葉が残っている中で轟は動けない。
それをしっかり理解してるからこそ移厘は悠々と確保テープを片手に轟に近づいていった。
「俺の勝ち?」
「チッ…!次はねぇぞ」
そうして轟の腕に確保テープを巻いたのだった。