"ヒーロー"になればモテると聞いて 作:パステルチョコ
その場にいる者たちは困惑していた。
先程までのプレゼント・マイクの
ここまでのバスの移動の最中も爆乳音頭がイヤホンから漏れ出るほどの爆音で聞いて悪目立ちしていたこの男が、会場に着いた途端に閉じていた瞼を開き、試験開始の門の前にて仁王立ち。試験会場をただただ真っ直ぐ見つめているのだ。
何が始まるのか……いや、まあ実技試験ではあるが、この男が次に取る行動は一体何なのか?この場にいるものたちはそれに気を取られていた。
静かに、ただ静かに時間が過ぎていく。
そして、風が男の背を微かに押した。
『ハイ、スタートォォォオッ!』
そんな声が会場に響いた瞬間。
男の取った行動とは……、個性を発動させただけである。
しかし、唐突の開始の合図に気を取られていた他の受験生たちはふと男の方を向いてみたら、そこにはもう誰もいなかった。
→←→←→←→←→←
『目標補足、ブッコ「はーい、ごめんねー」っ!?』
襲いかかってくるロボットに拳を走らせる。
いやー、存外脆くて助かる。殴れば壊れるとか楽チン楽チン楽々チンチンだぜ。
空手やっててよかった。おかげで拳が痛くない。
はっはっはー、まるでゴミのようだぜ!全員スクラップにしてやるよー!
うへへうへへ。俺を止めたければ女性の心を持ったしっかりと膨らみのある女ロボットを用意するこった。
そこから始まるアンドロイドと人間の禁断の恋。この夏あなたは感動を目の当たりにする。映画化希望です。
そういう映画とか作品を知りたい。
ちなみに俺はプラスティックなメモリーズ大好き。箱ティッシュを2桁使っちまったよ。
さて、ここら近辺はあらかた掃除できたな。
あとはあっちの方か。とりあえずロボットさん達の居所は把握しきったし"お目目はもう閉じとくか"。開けすぎてると頭痛くなっちゃう。あとは"耳だけでも十分"でしょ。
「よっす」『っ!?』
背景が変わり空からロボットの脳天へとかかと落とし。
グシャッと鉄がひしゃげる感覚が足に伝わる。
そのまま個性を発動、ロボットに奇襲をしかけ、しっかりとロボットたちの核へと確実に当て一撃で沈める。
「……この試験、ちょっと俺に有利だね」
→←→←→←→←→←
「今年は中々豊作ね」
「そうだね。特にこの子」
とある一室。数人の人影がそこにはいた。
彼らの目の前にはいくつものモニター。そこに映るのは現在試験を受けている受験生たち。
そんな中のある1つのモニター。彼らはそこに目を向けた。
「移厘瞬……、彼か」
「アァ!ノリの良かったリスナーじゃねぇか!」
「個性【エスパー】。透視と超聴覚、更には瞬間移動と念力を扱える複合個性……」
「ただ念力に関しては出力がそこまでだったはずでしょう」
「ええ、資料には使いすぎると酔いが酷いと。さらに3キロ以上のものを動かしたりできないらしいわね」
「その代わり瞬間移動の精度は抜群と……瞬間移動からの奇襲の格闘戦か」
「空手、柔道、合気道……そりゃ動けるわけだ」
「さらには透視と超聴覚による索敵。万能だな」
「透視の方は目を開け続けてると余計な情報が常に頭に入ってくるようで頭痛がするため普段は目を閉じてると」
そんな評価を下す雄英教師陣の彼ら。
概ね好評の移厘である。
件の彼はと言うとモニターの中でしっかりと仮想ヴィランをスクラップにし、時には他の"女子"受験生をサポートし、さらに"女子"受験生を助けていた。
……そして、助けた"女子"受験生からビンタされていた。
「「「「「………」」」」」
「……なんて言うか惜しいな」
「言いたいことは分かる」
「受験動機、ヒーローになればモテるからって書いてるわね」
「いや、うーん、まあ……いや?……うーん」
そうやって移厘の性格に頭を悩ます教師陣。
そんな中、1人の齧歯類が声を張り上げた。
「そこら辺の性格はおいおい矯正していけばいいだけさ!彼という原石は必ず世に必要とさせるはずさ!」
とりあえずその場はそんな言葉にまとめられた。
→←→←→←→←→←
移動しては拳を。
「よっ」グシャッ
背景を変えて蹴りを。
「ほっ」バキッ
飛んで肘を。
「はっ」ゴキャ
たまに女子生徒を。
「大丈夫かいレディ?」バチンッ
もみじが出来た頬がヒリヒリする。
痛てぇや。頬がじゃない。心が。
しかし、この痛みを快感に変えることが出来れば俺は無敵になれる。あらゆる性癖を我がものに。全てを受け入れるんだ。
「キャアアアアア!」
悲鳴は心にくる…。
「変態ッ!」
その罵倒は御褒美です…!
さてと、そういや0Pさんはどこにいるんだろうか。
お邪魔虫と言う割にまだ見てない気がする。
はっはーん?俺は読めたぜ。シャイな子なんだな。恐らく0Pロボットさんはシャイで照れ屋なナイスバディのアンドロイドなんだよ。
確かにそんなお邪魔ロボット出てきてみろ。俺の足は止まり、一目散にそのロボットへ駆け寄りお茶に誘っちまうだろう。流石だ雄英。完璧なお邪魔ロボットだぜ。
「──シュン!」
「ん?」
名前を呼ばれた。この声は美少女の声。俺の美少女センサーがビンビンだ。
pipipipipi……見つけた!
「おー、いっちゃん。同じ会場だった?」
「まあね。ていうかホントに雄英受験するとは思ってなかったよ」
彼女の名は【拳藤一佳】。一緒の道場に通ってたソウルメイトだ。
それにしても、
「……何してんの?」
「相変わらず綺麗な御御足で「ふん」──ぶね」
「テレポートで逃げるな」
「いやー、いっちゃんの当て身はさすがに受けれないよ。気絶したら試験終わっちゃう」
ただしゃがんで足を見てただけなのに。過激なんだからもー。……いいよね、足。
「一緒の会場なら声かけてくれればよかったのに」
「……あんなの声掛けれるわけないだろ、バカ」
ロボットをお互いに壊しながら赤い顔でそんなことを言ういっちゃん。
はて?俺は爆乳音頭を爆音で聞いてただけなんだが?なぜ声をかけられない?コレガワカラナイ。
そんな瞬間だった。
「え?」
「お?」
地面が蠢き出した。