ベル君が錬鉄の英雄に憧れるのは間違いなんかじゃない   作:空豆熊

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アストレア戦隊アルゴレンジャー(3)

「炊き出しよ! アルゴレンジャー白黒コンビ主導の美味しい料理、それが今、私達に力をくれるわ!」

 アリーゼが声を上げると、そこには数多もの市民が集い、列を成していた。

 隣にはリューとライラもおり、配膳の手伝いをしている。

 

(こういう役回りも多少慣れてきましたが、やはり私には不向きですね……

 一人裏方へ逃げている輝夜が恨めしい……)

(同感。だがよく見てみろ、アリーゼの奴が妙な持ち上げ方して注目浴びたからか、微妙そうな雰囲気出してるぜ。

 仮面越しだから表情はみえねぇけどな。まあ、良い気味だ)

 小声でそんなやり取りをする二人。

 リューは、輝夜程表に立って人と関わることに抵抗は感じないものの、愛想笑いなど出来ないし、そもそも柄ではない。

 かといって料理も出来ないので、仕方なく配膳を手伝っている。

 ライラは言わずもがな、良い子的善行が苦手で仕方ない。

 どの役だろうと恥ずか死ぬ。

 しかし、小さい桃色のヒーローは必須よ! とアリーゼが勝手に配役してしまった。

 結果、四人の中で一人調理担当に収まった輝夜へは、二人からのヘイトが溜まっている。

 まあ、彼女たちの中で一番料理出来るのが輝夜なので、文句は言えないのだが。

 

 因みにベルは、調理のリードもしつつ市民たちの誘導へも回っている。

 全体の動きを把握して、要所要所で指示を出し、行事を円滑に進めているのだ。

 元の時代でかれこれ一年近く興行を回してきて、すっかり熟練の域である。

 たった一年程度で、とも言えるが、それだけ忙しく動き回って来た証明だろう。

 何度休めと言われてきたかは、もはや数えきれない。

 それでも彼は、笑顔を絶やすことなく動き続けるのだ。

 

 そんな彼を見ていると、リューの中で負けられない、という気持ちが湧き上がる。

 彼のように全てとはいかずとも、せめて目の前のことくらいやり遂げたい。

 そう、彼女は強く思ったのだ。

 今の自分は、戦闘以外であまり役に立っていると言い難い。

 戦闘ですら、素早い状況判断を求められる局面では周りに一足遅れてしまい、フォローされることも多い。

 輝夜から未熟者と言われては、言い返せない自分。

 己が正義を見つけたいリューにとって、そのような状況に甘んじている訳には行かない。

 

 だから、せめて今は不慣れな作業も、恥ずかしいことも、全力で。

 それが、彼女の正義に繋がると信じて。

 リューは、配膳の手伝いを全力で続けた。

 

 

 ─────

(ハハッ、馬鹿な奴らだなぁ。折角規格外の射程を持つアルゴ仮面(アイツ)を、こんなとこで遊ばせとく余裕がてめぇらにあるのか?)

 

 気配を消し、市民たちに紛れようとしながら、笑みを浮かべる女がいた。

 彼女の名前は、ヴァレッタ・グレーデ。

 闇派閥(イヴィルス)の幹部で、二つ名【殺帝(アラクニア)】を冠するLv.5の実力者である。

 彼女は襲撃をかけるため、気配を消しつつ他団員たちと共に炊き出しの現場へ近寄っていた。

 ここを陽動に、別の場所に奇襲をかける計画だ。

 冒険者の目が薄い辺りでひと暴れして、実力者達の目をこちらへ引きつける。

 

 実行するに辺り懸念されていたのは、最も要警戒人物と目されているベルにより、思うように暴れられぬまま狙撃により抑え込まれてしまう可能性だ。

 規格外の射程と、姿を隠せること以外未知数な仮面の少年。

 彼の位置が分かっていない状態で仕掛けるのは、あまりに危険である。

 故に、ベルが炊き出しの手伝いをしているこのタイミングが、襲撃の好機なのだ。

 天気良し、空気良し、和気藹々としたこの雰囲気。

 壊しゃあ、さぞや良い顔するこった。

 それじゃ仕掛けますかね、とヴァレッタが人の密集した地点へ足を踏み出そうとしたその時、

 

「───っぐ!?」

「ヴァレッタ様!?」

 突如として、ヴァレッタは遥か上空より飛来した赤き矢に両足を射抜かれ、転倒してしまう。

 躱そうとはした。しかし、その矢はあり得ない速度、あり得ない軌道で、彼女の足を射抜いた。

 自身の横を通り過ぎるかと見えた矢は、まるで意思を持つかの如く急激に方向転換し、彼女の足へ突き刺さったのだ。

 常識では有り得ない事象。このような芸当を可能とする者が居るとしたら、情報少なきあの仮面の少年しかいない。

 間髪いれず、他の団員達にも矢が降り注ぐ。

 こちらは速度遅めで軌道も普通だが、的確に団員たちを無力化し、行動不可へ陥らせる。

 

「馬鹿な……! あの野郎は確かに地上に居たはずだろうが……!?」

 ヴァレッタは、激痛に耐えながらも、驚愕を隠せず呟く。

 足をやられ、身動きの取れない彼女を迅速に拘束した、正義の眷属たち。

 ヴァレッタの疑問に応えたのは、赤き仮面の少女だった。

 

「あれ、魔道具(マジックアイテム)が生み出した幻のようなものらしいわよ? 

 凄いわよね、狙撃地点から送られていた声と意思を元に動いてたんですって! 

 フフン、貴方程の実力者が違和感に気付けないなんて、笑止千万ね! 

 喧嘩売る相手を間違えたんじゃないかしら?」

 ヴァレッタの手足を縛りつつ、アリーゼは得意げに語る。

 その仮面で見えないドヤ顔と言葉に苛立ちながらも、最早打つ手の無いヴァレッタはただひたすら発狂するしかなかった。

 

 

 ─────────

 よし、上手くいった。

 今日の事件の事はあまり知らなかったけど、ここで殺帝(アラクニア)を捕縛できるとは思わなかった。

 元の時代のアスフィさんも、随分出鱈目な情報通信魔道具(マジックアイテム)を作ったものだと思う。

 今まで宝具を用いた狙撃を見せてこなかったことも功を奏し、敵の幹部、それも本来の歴史で長らく猛威を振るった相手を無力化できた。

 何より、情報源を潰さずに拘束できるのは、かなり大きい。

 真酒入りの魔剣を使えば、敵の作戦を丸裸にすることも可能だ。

 

 思っていたより、随分有利に大抗争を進められる。

 あったはずの犠牲を、かなり減らせるだろう。

 無論、かなりで満足はしない訳だが。

 それでも、理想の結末が、現実味を帯びてきた。

 ならば、後はそれを実現させるまで。

 この時代で戦うのも、後少しだ。

 力尽きるその時まで、戦おう。

 うん、まるで自己犠牲みたいな言い方だね。死にはしないんだけど。

 

 

 ───────

 大抗争当日。

 情報を元に、各ファミリアの冒険者達が配置に付く中、アーディは密かな怒りと決意を胸に秘めていた。

 

(子どもに自爆特攻させるなんて……)

 怒りの対象は、死神タナトス。

 闇派閥(イヴィルス)側が子どもに爆弾を持たせ、冒険者やオラリオ市民達を道連れにする作戦を立てていた事が、捕虜となったヴァレッタから判明した。

 タナトスが子ども達に、言うことを聞けば転生後会いたい人へ会わせてやる、と持ちかけたらしい。

 死に別れした大切な家族との再会。それを持ちかけられてしまえば、大抵の子どもが言うことを聞いてしまうだろう。

 

 子どもに限った話ではない。どれだけの者が、その誘惑に抗うことが出来るだろうか。

 そんな当たり前の事実を利用し、子ども達を爆弾に仕立て上げ、自爆させる。

 そんなの、絶対認められない。

 表の態度は明るかったが、その瞳の奥には強い決意が見えた。

 現世を諦め話に乗らざるをえなかった子ども達に、笑顔を取り戻させる。

 

(うん、彼。アルゴ仮面のように、私も子ども達に笑顔を届けなきゃ!)

 最近仲が良く、同じ英雄譚について語り合えるようになった新たな友人をイメージし、自らに喝を入れるアーディ。

 彼の事を、アーディは正義の味方としてリスペクトしていた。

 堂々とヒーローを演じ、堂々と笑い、堂々と勇姿を示す。

 場の雰囲気などお構いなしに、自分の力で幸せと笑顔を作り出していく。

 

 自身も同じようにやって来たからこそ分かる、彼の強さ。

 彼からは、目の前の事を何としてでも成し遂げる、実直で真っ直ぐな心根を感じる。

 求める何かのためなら、迷いも躊躇いも全て振り切り、突き進む。

 そうして大きくなったのだと、その仮面の奥にある瞳を見て、アーディはそう感じた。

 だからこそ、自分も負けじと頑張ろうと思えるのだ。

 聞けば、彼はそろそろこの街に居られなくなるとの事だ。

 ならば、彼が去った後、彼の齎してくれたものを自分達が守ろう。

 そう、アーディは決意した。

 そして、大抗争の幕が開ける。




滅茶苦茶久々な上短くて申し訳ございません!
何とか予定が落ち着いてきて、勘も取り戻せてきたので次は早めに、せめて一月後位に更新出来るようにしていきたいです!

書くと決めた番外編は全部書かねば!
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