仮面ライダーオーバーデモンズ。その姿は腕部と下半身は赤いアンダースーツの上から紺色とシルバーの装甲が纏われる。つまり、元々のデモンズのものを踏襲しながらも、胸部にはベイルのそれによく似た右肩から抱きついたクワガタを模したアーマーを装着。そして、それは翅を模した半透明の外套と歩脚部分で表現された飾り糸もベイルと同じだ。頭部は無骨なシルバーのマスクに黄色の複眼が存在するのはベイルと同様である。だが、新たに淡い水色を基調とした2本のクワガタムシの顎のようなパーツが追加。
また、ベイルではカブトムシの眼球にあたる部分がガスマスク型のような呼吸装置として口元に来ていたのに対し、オーバーデモンズではクワガタムシの眼球部分は右肩の鎖骨付近にある。
そしてベイルの顔左側にあるカブトムシの角型レーダーユニットは、クワガタムシの大顎を模したより刺々しい形状の武装に変わっていた。
「仮面ライダーベイルによく似た姿だな」
「フリオ、オルテカ。さっさとアイツを倒しちゃって」
クイーンビーデッドマンの指示で二人が飛び出すとオーバーデモンズへと向かっていく。
「はあっ!」
しかし、二人は揃ってオーバーデモンズのパワーを前に吹き飛ばされると地面を転がる。
「ッ!?」
「僕は長い間、この姿の負荷に耐えるための修練を行ってきた。もうこの力は僕が完全に使いこなしている。そう簡単にやられない!」
「うっひょー!光っち凄え!」
そのままオーバーデモンズが右肩の翼を展開すると空を飛翔。そのまま突進し、直線上にいた敵を次々と薙ぎ倒していく。
「調子に乗らない事ね!」
するとクイーンビーデッドマンがエネルギー型の蜂を大量に射出。それを見たオーバーデモンズはその攻撃をまともに喰らう。しかし、耐久力に物を言わせてそれを受け切るとすかさずスタンプを取り出した。
《Add……!》
《モグラ!》
《Dominate up!》
《モグラ!ゲノミクス!》
その瞬間、オーバーデモンズの右腕に通常デモンズと同じようにドリルが武装。そのままオーバーデモンズはドリルの回転力を使ってそのまま突進。
「はあっ!」
その一撃でクイーンビーデッドマンを吹き飛ばす。クイーンビーデッドマンは立ち上がるとそれと入れ替わるようにダイオウイカデッドマンが伸ばした触手、ウルフデッドマンの両腕にある爪での攻撃を仕掛ける。
《Add……!》
《スコーピオン!》
《Dominate up!》
《スコーピオン!ゲノミクス!》
するとオーバーデモンズはモグラゲノミクスを解除。スコーピオンゲノミクスで展開された蠍の尾を振り回すとダイオウイカデッドマン、ウルフデッドマンを纏めて絡めると締め上げる。
「「ぐうっ!?」」
「……仕方ない。私が……」
「そうはさせるか!」
そこにベイルが参戦しようとするが、それをリバイスが止めた。更にライブがギフデモスを、ジャンヌがヘルギフテリアンをそれぞれ阻止。残ったカブトデッドマンが向かってくる。
「ヒロミさん……今助けます!」
オーバーデモンズがスコーピオンゲノミクスを解除するとまたスタンプを取り出す。
《Add……!》
《キングクラブ!》
《Dominate up!》
《キングクラブ!ゲノミクス!》
それは調整の終わったキングクラブバイスタンプだ。それはオーバーデモンズの両腕に展開。武装されるとそれでカブトデッドマンの腕を挟む。
「その程度のパワーで俺の装甲は……」
「いや、どうかな!」
その瞬間、突如としてカブトデッドマンの装甲にヒビが入るとダメージとして通る。
「ぐうっ!?馬鹿な……俺の装甲で止められないだと?」
「蟹の鋏を侮った結果だ。……ヒロミさん。あなたは僕の憧れ……でも、今のあなたに憧れる気持ちは微塵も沸かない!」
「………」
《キングクラブ!》
《Charge!》
《デモンズフィニッシュ!》
すると両腕の鋏にエネルギーが纏われると巨大化したエネルギーの鋏でカブトデッドマンの装甲を粉砕。大ダメージを与えた。
「ぐああっ!」
「チッ。フリオ、オルテカ!」
すると三人が一斉に襲いかかるべく並ぶ。しかし、オーバーデモンズはそれに怯む事なくスタンプを取り出すと狩崎の先程の言葉を思い出す。
〜回想〜
フェニックスの船内、光が出撃する直前。狩崎は光へとある注意点を伝えた。
「あ、そうそう。ゲノミクスについてだけど、負担を少なくするために前のデモンズよりも起動時間は約半分にまで抑えてある。それと、今の君が使えるゲノミクスは同時に三つが限界だ。それ以上は君が無事であるという保証ができない」
つまり、オルテカが前に見せたクワッドゲノミクスが限界という事だ。しかし、それでも光はやる気だ。
〜現在〜
「光!これを!」
「俺のも使ってくれ!」
「私のも!」
それからリバイス、ライブ、ジャンヌが投げ渡したのはそれぞれレックス、バット、コブラのバイスタンプ。ちなみにコブラのスタンプは狩崎がキングコブラとの差別化ができるように新造した物だ。
「皆さん、ありがとうございます!」
《Add……!》
《レックス!》
《Dominate up!》
《Add……!》
《バット!》
《Dominate up!》
《Add……!》
《コブラ!》
《Dominate up!》
《レックス!バット!コブラ!ゲノミクス!》
するとオーバーデモンズの両脚がピンクのカラーリングでレックスのように変化。背中から白い蝙蝠の翼を展開。そして尻からは青のコブラの尾を模した武装が生え、五十嵐三兄妹と最も親和性の高いバイスタンプによるクワッドゲノミクスが完成した。
「なっ!?ただの人間で三重のゲノミクスだと!?」
流石にこれはデッドマンズも想定外だ。前にオルテカがやった時とは訳が違う。あの時はオルテカ自身が悪魔との契約を継続し、更にベイルの助力があって可能となった代物。それを光はドライバーの強化機能とトレーニングのみで乗り越えたのだ。
「はあっ!」
それからオーバーデモンズが突撃。蝙蝠の翼で飛びながらレックスの脚力による連続キック。更にコブラの尾による薙ぎ払いで三人纏めて吹き飛ばされる。
「くっ……これ以上は保たないわよ」
「ここは退きましょう」
「覚えとけ!」
三人は堪らず撤退を選択。そのタイミングでオーバーデモンズはゲノミクスを自ら解除。可能とは言っても体への負担は計り知れない。そのため、長時間の運用は避けて無駄な消耗を減らす事にした。そして、オーバーデモンズは残されたカブトデッドマンを見やる。
「舐めるな……我が命を懸けて……お前は俺が……」
その瞬間、突如としてカブトデッドマンの脳が鼓動を示すといきなり苦しみ始めた。
「なっ!?ぐうっ……」
「え?」
「何?」
「ヒロミさん……」
「俺は……何を……」
それを聞いた一同は驚愕する。これはつまり、ヒロミの記憶喪失が戻り始めているという事だろう。
『光!チャンスだ!悪魔とヒロミを分離しろ!そのデモンズドライバーにはフェーズ4までの悪魔と人間の分離機能も搭載されている。ヒロミを君の手で取り返すんだ!』
「そうは……させるか!」
ベイルが再度洗脳するために赤黒いエネルギーを飛ばそうとする。しかし、それはリバイスがスタンプを自らに押印して対応する。
《コング!》
リバイスはコングのパワーでベイルの体を拘束。そのまま動きを封じ込めた。
「貴様!」
「光の邪魔はさせない!」
《ウィンドチャージ!フライングアップ!》
《ウイニングジャスティスフィナーレ!》
《トリケラ!》
更にライブとジャンヌもそれぞれエネルギーフィールドと地面から生やした鋼鉄のツノによるバリケードでギフデモス、ヘルギフテリアンを封じた。
「「「今!!」」」
「はい!」
《クワガタ!》
《Charge!》
オーバーデモンズがクワガタバイスタンプをベルトに押印すると両側からベルトを押し込み、そのまま跳び上がると脚にクワガタの大顎を模したエネルギーが展開される。
《デモンズフィニッシュ!》
「ヒロミさぁああん!」
その一撃が命中すると大顎がカブトデッドマンを挟み込む。そしてそのままエネルギーを注入し、貫くとヒロミとデッドマンが分離。そのままデッドマンは石板に変換されると分離。爆散するのだった。
「馬鹿な……」
このタイミングでベイル達は拘束を解くが、最早勝敗は決してしまう。会見での目的を達成するどころかフェニックスに良いようにやられてしまった。しかも、フェニックスが隠しに隠していた切り札……オーバーデモンズによって。
「人類は余程ギフ様に滅ぼされたいらしい……。だが、必ず我々の目的を達成する」
するとこの様子を見かねたギフが手を翳すと残されたベイル達三人を撤退させる。それから四人は変身解除すると光はクワッドゲノミクスの反動か、ダメージに息が荒くなった。
「くうっ……」
「光!」
「光さん!」
「大丈夫……このくらい平気です」
すると倒れていたヒロミが目を覚ますと一輝達を見る。そして、目を見開くと声を上げた。
「一輝……大二、さくら……光。俺は、俺は今まで何を……」
それは、ヒロミが完全にデッドマンから解放された事を意味していた。そして、そんなヒロミを見て四人は歓喜の声を上げる。
「「「「ヒロミさん!!」」」」
「ヒロミ!ヒロミ!ラブラブ!ラブ〜!」
「心配かけさせやがって」
「でもこれで一件落着だな」
それから数日後。ヒロミと光の検査の結果が示された。それは、二人共目立った外傷や後遺症になるような物は何も見つからなかったそうだ。
「まさか驚いたよ。私の予想だとクワッドゲノミクスをやったら暫くの戦線離脱は覚悟していたからね」
「これもお前の信念が起こした奇跡だな」
「ありがとうございます」
「牛島光。これより君はオーバーデモンズの変身者として正式にフェニックスの仮面ライダーとして認める」
光は若林の計らいで正式に仮面ライダーとなった。そして、ヒロミの方も驚きの結果が伝えられる。
「「「「ええっ!?体の高齢化が殆ど治ってる!?」」」」
それはデモンズに変身し続けた反動で起きるはずの体への負担だ。しかし、何故かそれが殆ど消えているのだ。
「恐らく、理由はヒロミが死にかけだったあの時。奴等はヒロミを利用するためにギフの力でヒロミの細胞を修復。再生していたのだろう」
つまり、幸運にも今のヒロミの体は変身するようになる前の状態へ戻っているという事だ。その事実に一同は安心すると若林が口を開く。
「安心している暇は無い。これから君達にはまだまだ頑張ってもらう」
それを聞いて一同は気を引き締める。まだ戦いは終わってない。これからより一層激しくなる戦いに備えて決意を新たにするのだった。
バイスタンプラリー
三十六話目……クワガタバイスタンプ
また次回もお楽しみに。