ベイルの超進化。その力でジャンヌが圧倒される。その事実が五十嵐家に重くのしかかった。今ここはフェニックスの医療施設だ。何故ここにあるのと言うと元太がベイルの活動の活発化に伴って体にダメージを受けていたからである。
「アイツ、悔しいけど私とラブちゃんが合体した姿よりもかなり強かった」
「……恐らく、私のダディが作ったんだろう」
「狩崎さん……」
そこに来たのは狩崎だ。狩崎は元太の体についてメディカルチェックを終えてそれを三人に伝えに来たからである。
「ねぇ、狩さん。パパは大丈夫なの?」
「ああ。今は平気だ。ただ、ベイルがこれ以上強くなるようだと体への負担も大きくなる」
つまりはベイルのパワーアップに比例して宿主の元太にもダメージが入るという事だ。
「だが、ベイルを倒せば宿主の父ちゃんがどうなるかわからない。どうすれば……」
「そうだ。俺のパーフェクトウィングバイスタンプを使えば……アレならリリスの力でベイルの力を抑え込める」
大二の提案に一度は納得するものの、ある事実に気がつく。それは、仮にリリスの力で元太の中のギフの遺伝子を中和。ベイルの力を抑え込んだとしてもそれはあくまで一時的に抑えるという事にしかならない。
「ダメだ。それじゃあまた時間経過と共に復活してしまう。しかも下手にダメージを与えればベイルが消滅するかもしれない。
「ッ……」
リリスの力による分離もダメとなるとやはり打つ手が無い。そんな中、一人のフェニックスの隊員が入ってくると一通の手紙を持っていた。
「狩崎さん。真澄さんからのお手紙です」
「ダディから!?」
それを聞いた一輝達は驚く。何故敵であるはずのアララトから手紙が送られてきたのか。それがわからなかった。
「……ひとまず読ませてもらおう」
狩崎が手紙を手にするとそれを開いた。そこには真澄からの言葉が書かれている。
“ジョージへ。元気に過ごしているか?多分お前ならわかると思うがベイルを進化させたあのスタンプは私が作った。恐らく君はまた私を恨むと思う。だが、あのスタンプの制作には元々別の目的がある。……それはローリングバイスタンプを例に考えて貰えば大丈夫だ。賢い君ならわかるはずだ。……これは君と私との戦い。ベイルを止めるために君がどうするか。そして、君が私という科学者を超えたかどうかの試練だ。君なら乗り越えられると信じている。真澄より”
それは真澄からの挑戦状のような物だった。狩崎はその文面を見ると何かを思いついたのか部屋から出ようとする。
「狩崎さん?」
「悪いけど少し時間をくれ。……ベイルを止める方法が一つだけある」
五十嵐家の三人と光は目を見開く。それはつまり、どうにかするための方法に気が付いたという事だ。
「頼む。私を信じて欲しい」
「当たり前じゃないですか」
「狩さん、お願い」
「俺達はいつでも待っています」
狩崎はその言葉に頷く。その頃、アララトでは真澄が自身の研究室で無言になっていた。
「………ジョージ」
真澄は体を動かそうとするが、もう既に限界が近いのかまともに動けない。彼は察していた。もう自分に残された時間はそこまで長く無いと。残された時間でやれる事をやらなければならないと。
「私はいつだって過ちを冒してきた。息子を捨て、悪魔の研究のみに気持ちを入れて……。きっとジョージは私を許さないだろう。だからこそ私は全力で償わなければならない」
するとそこにベイルが入ってくる。そして、彼は真澄へと声をかけた。
「おい。このスタンプの力をもっと引き出せ。制作者であるお前にならそれができるはずだ」
ベイルからの言葉に真澄は少し考えてからその答えを返すことになる。
「それ以上の強化は君の体に負担が大きい。それに、今のままでも十分五十嵐家を相手取れるじゃないか」
「確かにそうかもな。だが、確実に葬れるかと言えばそうじゃ無い。だから俺をもっと強くしろと言っている」
ベイルが真澄に詰め寄る中、宿主である元太がまた息を吹き返した事をベイルは感じ取る。
「ふん。どうやらまだ純平は死んで無い。まぁ、そうしてくれないとこちらが困るが」
ベイルがまた出て行こうとするとそんな中、体のエネルギーが切れ始めたのかまたチカチカとし始める。
「チッ……何故だ。このスタンプを使えば消滅のリスクを避けられるんじゃ無いのか?」
「ああ。だが、確実というわけでは無い。力が足りなくなれば消えかける。それに、あくまでそのスタンプは力の不足までの時間を延長するだけに過ぎないからな」
「チッ……流石にノーデメリットというわけにはいかないという事か」
ベイルはそれからバイスタンプを供給するために赤石の元に向かう中、真澄は無言になる。先程の場面。何とかこれ以上の強化の余地は無いと誤魔化せたが、このままではまた来るだろう。やはり息子のジョージが打開策を立ててもらうしか無い。真澄は立場上ここにいるしかない。そのため狩崎に送った手紙もフェニックス側の密偵に手渡す事で何とか狩崎にまで届けさせたのだ。
「ジョージ、頼むぞ」
真澄が祈るようにそう言う。そして部屋を出たベイルは赤石の元に到着。そして、彼へとスタンプを要求した。
「俺にスタンプを寄越せ。エネルギー切れだ」
「わかった……やはり時間が無いか」
「ああ。真澄の奴のおかげでエネルギー切れまでの時間は伸びたがやはりそれでも限界はあるらしい」
「……時間が無いのは我らも同じ事。先程ギフ様と会ったがギフ様は相当焦れている。このままでは人類は滅びる」
赤石はスーツケースを開くと中にあるスタンプを次々とベイルに押印してエネルギーをチャージする。
「ベイルよ。君の肉体はそもそも25年前に死んでいる。今の君は仮初の体を与えられているだけに過ぎない」
「だったらそのタイムリミットまでに俺の目的を必ず果たす」
「ああ。やって見せろ。復讐に燃える悪魔よ」
するとそこにオルテカ、フリオ、アギレラが入ってくる。そして、ベイルを見ると声を上げた。
「ねーえ、さっさとリバイスを潰さないの?私達総出で行けば多分勝てるわよ?」
「いや。ここはベイルがやるべき時だ」
赤石がそう言う中、オルテカは笑みを浮かべる。そんな中フリオは疑問に思った。何故赤石がそこまでベイルにやらせる事に拘るのか。
「長官、何故そこまでベイルにやらせたいんですか?別に我等がやっても何の問題も……」
「どうやら長官も同じ考えですか」
それを聞いて赤石は頷く。アギレラとフリオはオルテカの意図を知らないためにわけがわからない様子だ。そしてベイルが部屋を出たタイミングを見計らうとオルテカは話し始める。
「アギレラ様、フリオ。赤石長官が狙っているのはギフ様の焦れです」
「「……はぁ?」」
「ここまで我らが幾度となく我等はフェニックス側に目的を阻止されている。そこでだ。ギフ様自ら出てもらう事で確実に仮面ライダーを始末してもらう」
それはつまりギフの力を利用するということだ。アギレラは不満な様子である。
「それってさ、ギフ様がいないと勝てないって諦めるって事?」
「舐めてもらったら困る」
「確かにあなた達二人は十二分に強い。だが、それでも確実では無い。だからこそ必ず勝てる場面を作り出せば良い」
「……納得できないな」
フリオがそう吐き捨てる中、アギレラも何だか不機嫌である。許嫁としては夫を断りもなく利用しようとする赤石、オルテカとどうしても相入れることができなかった。
「これでギフ様に苦労をかけるとかだったら許さないからね?」
アギレラがそう言って去っていく。その後に続くようにフリオも行く中、オルテカと赤石はそんな二人を見送った。
「そういえば長官。聞いておきたい事が」
「何だね?」
「……我々は既にフェーズ4という次元にいますが、まだ上はあるのでしょうか?」
それを聞いた赤石は少し考える。しかし、話しておくべきだと思い、答えを返した。
「結論から言えばある」
「ほう?」
「だが、その力は禁断の能力だ。使えばもう悪魔との分離は不可能となる。最も、君達三人にはそのデメリットは無いも同じだがな」
それはつまり、アギレラ、フリオ、オルテカは仮にデッドマンと人間が分離しても人間社会での生活は厳しいという事だろう。
「ふふっ。でしたら私がその禁術、使いこなしましょうか。私は完璧な人間……いえ、悪魔なので」
「君ならそう言うと思ったよ。いつか見せてもらえると嬉しい」
そう言ってオルテカがニヤリと笑みを浮かべるのであった。場面はスカイベース。その研究室では狩崎があるデータを引っ張り出している。
「やはり……今の段階から拡張できるとすればこのベルトしか無い」
正直な所、狩崎の考えとしてはリバイスドライバー、ツーサイドライバー、リベラドライバー、デモンズドライバーの四つは自分でできる強化をほぼ終えてしまっている。つまり、これ以上の拡張性は殆ど無い。そうなると対ベイルとして使えるベルトは限られる。
デモンズトルーパーが使う量産型デモンズドライバーもベイル相手に通用するかといえば答えはNoだ。となると最早使えるベルトはただ一つ。
「狩崎」
そこに来たのは若林である。彼は狩崎が再び研究室に引きこもったと聞いて様子を見に来たのだ。
「総司令官。今は手が離せない。このままでも良いかい?」
「構わん。……ベイルとの決着を付けるためのベルトか?」
「ええ。ダディが残した手紙にあったベイルを封じる策を実行するにしてもまずは奴を倒さなければならない。そのためにはこれの進化が必要だ」
それから若林がパソコンの映像に映ったそのベルトを見ると頷く。
「なるほどな。だが、恐らくそれが使えるのは……」
「ええ。ただ一人ですよ」
すると部屋の扉がノックされる。それから扉が開くと一人の人物が入ってきた。狩崎と若林がその人物を見て声をかける。
「君はまだ養生中だろう?なぜここに」
「……狩崎さん、総司令官、頼みがある」
「何と無く言いたいことはこちらもわかる。だが……」
「それでもだ。これは俺が決着を付けるべき問題だ。そしてそれは一輝にも、大二にも、さくらにだってできない。俺の悪魔との決着は俺が付ける」
そこに立っていたのは五十嵐家の大黒柱にして家長。白波純平の名を捨てた男、五十嵐元太であった。
バイスタンプラリー
四十一話目……クリムゾンベイルバイスタンプ
また次回もお楽しみに。