狩崎が大二を自身の部屋に連れていくと任務を伝える前に大二へとある問いをぶつける。
「……ヘイ、まず君に聞きたいのが……君は五十嵐大二では無いね」
「………」
狩崎の言葉に大二は無言のままだ。しかし、彼の口はニヤリと笑っており大二では無いという事を暗に示していた。
「まぁ、ベルトを渡してそれを使えている時点で君は大二では無いとはわかっていたが」
「それがどうした。そもそも俺が敵だとわかっていてわざわざベルトを渡して何のつもりだ」
「私の研究成果を試してみたいと考えるのは科学者として当然の性だと思うんだけどね」
「まぁ良い。それで、極秘のミッションというのが?」
「……君にはこのままデッドマンズと誼を通じてもらいたい」
狩崎からの言葉に大二は驚く。まさかこのままデッドマンズといても良いと言われるとは思わなかったからだ。
「……良いのか?俺はリバイスと……五十嵐一輝と敵対するんだぞ」
「それで良い。むしろそのままでいてくれれば助かるねぇ。私の目的としてもね」
「ふん。まぁ、なら思う存分デッドマンズ側につかせてもらう」
そう言って大二は出ていくと奥の部屋から若林が出てきて狩崎へと疑問を浮かべた。
「狩崎、何故あの男を泳がせる?わざわざデッドマンズに絡ませるとは」
「私の思惑通りならあの男がデッドマンズの情報を仕入れてくれれば後々元の大二に戻った時に役に立つはずだ。そして五十嵐一輝なら必ず大二を取り戻す」
「……信頼してるんだな。あの男を」
「信頼……ねぇ。私としては色々誤算もあるんだよ?例えば……ギフテクスの力が想定よりも遥かに上回っているとかね」
「その辺りはまだリバイスの実力不足という事だろう。そのために十種のバイスタンプを早く集めて戦いのパターンを増やさなければな」
二人はそれから更に話し込んでいく。その頃、郷田の豪邸に張り込んでいる一輝はと言うと……。
「相変わらずすごい豪邸だな……」
「なるほどねぇ、これが金持ちの家ですか」
この豪邸は幸せ湯からはそこそこ距離が離れている。そのため移動は大変だが調べるためには仕方のない事だ。また、近くに海もあり豪邸からは海を一望できるだろう。
「それにしても、デッドマンズの奴等……いるか?」
「怪しい奴はいないですねぇ……おや?」
バイスが何かを見つけたのかそっちの方向に飛んでいく。するとそこには二人組の男が荷物を持って豪邸の中に入っていく様子が見えた。
「あの二人……どこかで見たことあるような……」
一輝がそれを聞いてその場所に行こうとすると二人の黒服の男に止められる。
「……え?」
「ここは関係者以外立ち入り禁止です」
「即刻立ち去ってもらいます」
「うぇっ!?」
まさかの入り口を守るボディガードの二人に一輝は止められてしまう。それに対して荷物を持った二人組は一輝の方を見るとニヤリと笑った。それもそのはず。彼等は配達員に扮装したデッドマンズのメンバー、フリオとオルテカだからだ。
「ちょっ、ちょっと待ってください!郷田さんが今デッドマンズに狙われていて……」
「はい?そんなわけ無いだろ」
「郷田さんに喧嘩を売るなんて下手な事を言ったら左遷されますよ」
ボディガードの二人はまるで取り合う様子も無く、一輝は完全に足止めをされてしまう。更にその間にもフリオとオルテカは屋敷の調査を進めていた。これは、工藤が乗り込んだ際に素早く中に侵入できるようにするためだろう。
「あぁもう!何でこんな事に……」
一輝が何とか中に入ろうとして暴れるがボディガードに勝てるはずもなくあっさりと追い出されてしまった。
「くそっ……このままじゃデッドマンズに先を越される……」
「……何をやってるんですか」
そこに丁度やってきたのかヒロミと光が率いるフェニックスの分隊が到着。調査にやってきていた。
「何って、さっきデッドマンズのメンバーが入り込んでたからそれを止めようと……」
「はぁ、結局ダメだったって訳ですね。一輝さん、狩崎さんからの贈り物が……」
そう言って光がメガロドンバイスタンプを出そうとする……しかし、光は途中でその手を止めると再びしまう。
「いや、まだこれは渡せません」
「え!?」
「おい光!」
ヒロミが狩崎からの指示を守らない光を咎めようとするが一輝はそれを落ち着かせる。
「光……俺が何か不味いことをしたのなら謝る。ごめん……」
「……そういう所だよ。お前はどうしてそんな簡単にプライドを捨てられるんだ……それに、デッドマンズにあんなに良いようにやられてばかりで……くそっ!」
光は一輝に背を向けると離れていく。一輝がそれを止めようとするがヒロミはそれを止めた。
「やめておけ」
「でも……」
「今光が言った言葉……それは自分自身にもよく当てはまる事だとわかっているんだ……。だから、今はそっとしてあげてくれ」
「はい……」
それから一輝は調査をフェニックスに引き継ぐ事になり、一度この日は幸せ湯へと戻る事になる。
その日の夜、一輝と元太が話しながら居間に入るとさくらがカレーを作り、二人の皿に盛り付けていた。
「「カレーだ!」」
「パパ感動!」
「感動のハードル低っ!」
さくらが呆れながらも二人にカレーを差し出す中、バイスはその様子を羨ましそうに見つめている。
「この悪魔的な匂い……これを食べたいよぉ!」
「お前はダメだ!」
「「いただきまーす!」」
「意地悪ぅ!!」
結局バイスは出してもらえずで一輝と元太がさくらのカレーをいただく。そして、口の中にカレーを入れた途端……
「「辛っ!?」」
「えぇ!?普通じゃない?」
さくらはいきなり一輝と元太が辛いと言い出した事に疑問を抱く。さくらは確かにカレーを作った。作ったのだが、彼女にとってのスパイスの適量は普通の人にとってはかなり多めなのである。
「水、水!」
「俺の分もあるかな?」
そこに大二が入ってくると席に座った。それを見た一輝は大二へと話しかける。
「大二、帰ってくるなら連絡しろよ」
「丁度近くで任務をしていたから」
そんな事を言っているとさくらがカレーを盛り終わって大二の前に差し出す。
「はい、大ちゃん。あ、でもちょっと辛いかも……」
「大二はコーヒーも飲めないお子様舌だもんな……」
「甘党の大二には厳しいんじゃないか?」
一輝と元太がそう言った直後、大二はカレーを口に運ぶ。そしてさくらの激辛カレーにも全く動じる事なく全て食べきった。
「「おぉ〜!」」
「誰がお子様だって?」
「大二、大人になったな。パパ、感動だよ」
「だから感動のハードル低すぎ」
「あ、そういえば一輝兄、結局郷田の屋敷は調べられたの?」
「うーん、兄ちゃんに任しとけ」
「いやどっち?」
一応一輝も帰る前に手は打ったので何もしなかったわけではない。しかし、それでも中の様子を探る事ができなかったのは痛手だ。このままでは相手の出方次第では襲撃を止められない。
「バイス……本当に大丈夫なんだろうな?」
「おう。俺っちもちゃんとやる事をやったからよ」
翌日の昼下がり、一輝の元にヒロミから連絡が行くと一輝は郷田の豪邸の近くに待機していたヒロミ達と合流する。
「家の間取りはこんな感じだ。だが、行けるのか?」
「はい。最短で被害を出さずにその場所に向かいます」
それから一輝は工藤が来るのをじっくりと待つ。すると工藤が屋敷のボディガード二人と接触するのが確認できた。
「やっぱり来た!」
それから一輝は工藤の後を追いかけるべく飛び出す。同時刻、工藤はボディガードの二人と話していた。
「あなたは誰ですか?」
「ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ」
「……郷田さんに用事があってね。ちょっと面を貸してもらう」
そう言うと工藤は手にライオンのスタンプを取り出すとそれを押して押印する。
《ライオン!》
すると工藤から昆虫のような緑の下半身に赤と黄色の折り紙を組み合わせたライオンを模したデッドマンが誕生。両腕には巨大な爪が生えている。更にタテガミは赤く、ライオンデッドマンは咆哮を上げるとボディガード二人を簡単に吹き飛ばして中へと侵入していく。
「郷田、前の事件での恨み……晴らしてやる!」
ライオンデッドマンはそのまま玄関を突き破って侵入すると郷田のいる部屋へとまっしぐらに進んでいく。家の構造はフリオとオルテカが予め調べているのであっという間に奥の部屋へと突入。そしてスーツに身を包んだ郷田の元に到達した。
「な、何なんだお前らは!?」
「久しぶりです、郷田さん」
「お前!?」
「裁判の時はよくもこの私を貶めましたね。あの負けのせいで俺の人生は全て狂ったんだ……覚悟してもらいましょう」
そう言って工藤が指を鳴らすとライオンデッドマンが襲い掛かろうとする。その瞬間、何かが物凄いスピードで突入してきた。
《バディアップ!》
《テクニカル!リズミカル!クリティカル!ジャッカル!ノンストップでクリアしてやるぜ!》
そして、デッドマンの真横に回り込むと蹴り飛ばしてデッドマンを外へと叩き出す。そこにいたのはジャッカルゲノムとなった仮面ライダーリバイだった。
「お前は!!」
「実は昨日、バイスに頼んでこの屋敷の構造を調べてもらったんだ」
「はぁ?オルテカ様やフリオ様はお前が入らなかったと言ってたぞ」
「確かに入る事はできなかったさ。けど、俺とヒロミさん達が話していたあの時、霊体の状態のバイスに下調べをしてもらったんだ。霊体のバイスは俺以外には見えない。だから誰もいなかったように感じたんだよ」
「チッ……このガキが。大人を舐めるな!」
憤る工藤へとリバイが諭すように話しかける。それは、今回の工藤の行為を咎める物だった。
「あんた、どうしてこんな事を?」
「言ったはずだ。この世界は不条理でできている。俺はこんな腐った世界を変えるために……」
「だったら、何でさっきコイツを恨むような事を言った。矛先が世界から一個人に変わってるだろ」
「俺はコイツのせいで全てを失った……コイツが裁判で裁判長に賄賂を渡して俺の弁護を不利にするようにしたんだ!だからコイツを俺は許さない。だから俺は!」
「……それなら、もっと他のやり方があっただろ。弁護士ならもっとちゃんとした方法で……」
「努力もそんな綺麗事に頼る方法も……虚しいだけだ。そう思ってる奴は大勢いる」
そう言うと工藤はライオンのプロトバイスタンプを再度押す。これはつまり、フェーズ2への片道切符……人間として姿を捨てる事を意味していた。
《ライオン!》
「やめろ!」
「良いか、勝負って言うのは勝たないと意味が無いんだよ!」
そう言って工藤がスタンプを押そうとした瞬間、後からやってきたスケボー姿のバイスが工藤の腕に体当たりするとスタンプを弾き飛ばした。
「何!?」
「やっと追いつけたぜ。そして、間一髪だったな!」
「おう!ナイスバイスだ!」
「お、それ良いじゃん。今度からそれ、使わせてもらうぜ」
そこにようやくフェニックスの部隊が突入。丸腰の工藤及び今まで法外のやり方で金を稼いできた郷田を捕まえると拘束した。
「一輝、後は任せるぞ」
「はい!」
それからリバイはバイスに乗るとリミックスとなり外に吹き飛ばしたライオンデッドマンを追いかけていくのであった。
また次回もお楽しみに。