怒れるフリオ 彼の憎しみ
アギレラの消滅がトリガーとなって引き起こされたフリオの暴走。彼は怒りに震えるとフェーズ5へとその姿を変えていく。
その姿は背中に狼の顔を模したマークが描かれた一枚のマントに黒と青の羽織り、更に胸にはDNAのマーク。黒や茶を基調とした体には狼のような毛皮が生えており、しなやかな筋肉が備えられている。また、人間の素体をある程度維持しつつ下半身には黒に近い青の折り紙を模したもので包まれていて、それはまるでフリオのいつもの容姿に上から狼の力が合わさったようだった。頭にはウエスタンハットが被られて、頭部は狼人間のようだ。更に両腕にはガンマンのような銃口に加えて鋭利な爪が備えられており、こちらも他二人の時と同じくフェーズ3の時の容姿によく似ていた。ウルフデッドマン・フェーズ5の登場だ。
「フェーズ……5」
「フリオまでフェーズ5に」
フェーズ5へと変貌してしまったウルフデッドマン。すると咆哮で周囲にいるライダーを吹き飛ばすとそのまま超高速で動いて両腕の爪でダメージを与える。
「「「うぐっ!?」」」
三人が倒れる中、ウルフデッドマンは近くに落ちていたアギレラの形見であるクイーンビープロトバイスタンプを拾うとそのまま叫び声を上げつつどこかへと去って行ってしまう。
「うぉおおお!!」
その場には静寂こそ訪れたが、フリオがフェーズ5に達したことでいよいよ倒すしか方法が無くなってしまう。
それからスカイベースに戻った一同。まずはさくらが涼へと謝罪の言葉を述べていた、
「ごめん……あなたのお姉さんを、アギレラを生きて戻す事ができなくて……」
「良いの。さくらさんはお姉ちゃんの心を救ってくれたから……」
涼は姉を亡くしたものの、フェニックスを恨むような事は無かった。これはさくらが必死に頑張った証拠だろう。
「さて、それはそれとして……これからの事も考えなければならない」
フリオがフェーズ5になった以上、倒す必要が出てくる。しかも厄介なのは倒すと三人のフェーズ5の力が揃ってしまうという点だ。赤石はその力でギフを再誕させるつもりらしい。
「どうにか倒さないで済む方法は……」
「恐らく不可能だね。勘違いとはいえ彼はフェニックスを恨んでしまっている。このままでは彼の誤解は解けないだろう」
フリオからのフェニックスへの憎しみは並大抵の物ではない。このままでは確実にまた襲ってくるだろう。
「どうにか打開策があれば……」
するとそんな中、先程まで口を閉じていた一輝が会話に参加する事になる。
「なぁ大二、さくら。この二人の名前って何だっけ?」
「「……え?」」
その場がまた一瞬にして凍りつく。そして、慌てた様子で大二とさくらが名前を教えると一輝はハッとした様子で謝る。
「すみません!前までちゃんと覚えていたのに……どうしてまた」
「一輝。まさか記憶の残りが殆どないのか?」
「……恐らくそうだと思います」
「五十嵐一輝。この後検査を受けろ。フェニックスの検査機械でお前の記憶の残量を確認する」
「そんな事できるんですか?」
「私が君のために開発しておいたんだ。まさかこんなに早く使う事になるとは思わなかったけどね」
それから一輝は朱美が主導する元、記憶の残りの残量を確認される事になった。
「……これは」
それから結果が出るのを待つ間、一輝は大二、さくらと記憶について話す事に。
「一輝兄の記憶がどんどん無くなってる」
「このままだとギフとの戦いを終える前に記憶が全て消えてしまうかもしれない」
それはつまり、一輝は家族のことさえも忘れるという事を意味している。一輝の記憶が全て消えてなくなる前にどうにか戦いを終わらせないといけないのだ。
「二人共そんな暗い顔すんなって。俺は大丈夫だから……」
「大丈夫なわけないでしょ!このままじゃ、私達の事も忘れて……バイスの事も忘れるかもしれないのに」
「バイスも?」
「ああ。予想だが、お前はもうバイスの事を家族同然に思っている。家族である俺達の記憶を失いつつあるんだからバイスの記憶もまた同様に失ってるんじゃないのか?」
カゲロウの言葉に一輝は絶句する。このままでは何もかもを忘れてしまうということになるというわけだ。
「……あのさ、皆……」
バイスが何かを言おうとして口を開いた瞬間。その時、朱美が結果を持って出てきた。
「結果が出たわ。よく聞いて。一輝君。あなたが家族の記憶を辛うじて残そうと思うのなら変身できる回数はあと四回が限界よ」
たった四回。朱美が話すにはその回数を超えてしまうともう家族の事を覚えていられる保証は無いらしい。
「もう一つ忠告なのが、バイス単独での変身でもその回数は消費されるわ。つまり、リバイスドライバー二つによる変身だと倍の回数が減っちゃうわけ。だからそれはもう禁止。できないものと思って戦う事ね」
それはつまり、咄嗟の時に二人バラバラのゲノムで戦うことができないわけだ。
「本当にそれだけの回数しか変身できないんですか?」
「残念だけどそうなるわ。……あなたが家族の記憶を大切にするつもりならその残り回数を大事に使う事ね」
しかも今朱美が言ったのは家族の記憶に関してだ。家族以外の他の人の記憶に関しては言及されていないが、それも回数を追うごとに消えていくだろう。先程だって若林や狩崎の事を忘れかけていた。それほどまでに記憶が薄くなってきているのだろう。
「……それでも、俺は戦う」
「そんなのダメだよ一輝兄!」
「ここからは俺達だけで何とか……」
「光が、オーバーデモンズが抜けてただでさえ戦力が落ちたのに……これ以上こっちの戦力を落とすなんてできないだろ。それに、俺はフリオをちゃんと救いたい。肉体を救うのはもう無理でも……せめてアイツの心だけでも……」
「そんな……」
一輝の覚悟は決まっていた。その気持ちを変えることはできないと大二とさくらは思ってしまう。
その日の夜。フリオの方では彼が一人廃業となった喫茶店のような場所で一人荒れていた。
「何でだよ……何で俺の大事な人はいつもいつも……」
するとそこに赤石が一人現れる。そして、その瞬間、フリオは気配に気がついて超高速で移動すると赤石を殴ろうとした。
「ッ……」
しかし、相手が赤石だと気づいてその腕を寸止めする事になると彼は話しかけてくる。
「申し訳ありません。赤石長官」
「いや、良いんだ。裏切りによって多くの物を失っている君にとってまた辛い事があった後だからね」
「………」
「確か奥田陽介だったかな。君の一番の親友だったそうだな」
「……アイツはもうこの世にはいない。もうその話をするな。俺はあの時、アイツが苦しんでいるのに何も気づけなかった」
「さぞ辛かっただろうな」
赤石がそう諭すように言う中、フリオの中の憎悪の感情は徐々に高まっていく。
〜回想〜
フリオは人間としていた頃。彼の通っていた高校でフリオとその奥田という人物は親友だった。
奥田はとにかく明るくて元々暗い性格だったフリオに……本名、玉置豪に積極的に話しかけて彼と友達関係を築いた。そんな彼の口癖は前にフリオがアギレラに言っていた“スマ〜イル”である。奥田は暗かったフリオとクラスメイトを繋ごうと奔走。フリオもそれを受けてようやく心を開き、クラスメイトと馴染もうと思ったのだ。その矢先の事である。
フリオが学校に登校するとザワザワと人だかりができているのが見えた。フリオは嫌な予感がしてその人混みを掻き分けて前に行くとそこには自殺した奥田の姿があったのだ。
実はクラスメイトの中に明るい奥田を煙たく思う者がおり、そんな奥田が推薦するフリオの事を受け入れられなかった彼は奥田が屋上に出て景色を眺めていた所、そのタイミングで後ろから彼を突き飛ばして落としたのだ。そして、元々クラスメイトの中にはフリオをよく思わない者も多かったために大半が奥田を殺した生徒に賛同するとフリオと奥田を貶すような言葉を黒板に綴ったのだ。
フリオはその日から学校に通えなくなってしまった。それ以降、一人心を閉じていたがその中では憎しみの炎が燃えたぎっていく。そんな中だった。
「玉置豪君……だよね?」
「……あんたは?」
フリオが一人外に出かけたタイミングでアギレラに声をかけられたのだ。そして、アギレラはフリオの事を見ると笑みを浮かべる。
「ふふっ。やっぱり私の思った通りの男ね」
「……はぁ?」
「……復讐したい?君とその親友を貶めた人達に」
「何を今更……アンタに何ができるって……」
「君が望むならあなたにその力を与えられるよ?それに、こんな偽りだらけの世界も終わりにできるわ」
それを聞いたフリオは最初は信じられなかった。それでも、彼はアギレラと共に歩む道を選んだ。
その日から彼が見る世界は変わった。アギレラは彼にとって人生を変えた恩人だったのだ。そして彼はアギレラのボディガードとして新たにフリオという名前を付けられたのだ。彼がフリオと名乗るようになったのはそこからである。
〜現在〜
「俺はアギレラ様に救われた。アギレラ様がいなければ俺は儚く朽ち果てていたかもしれない。だから俺はアギレラ様の夢を叶えるために必死になったのに……。アギレラ様を殺した奴等が憎い……」
「そうか。ならば、やってしまえば良い。最早奴等からの言葉など届かないだろう?」
「ああ。この俺からアギレラ様を奪った事を後悔させてやる」
それからフリオの元を離れた赤石は笑みを浮かべる。彼にとってフリオなど最早ただただ上手く操ってギフを再誕させるための道具に過ぎなかった。
「これだから単細胞の馬鹿は扱い易い。恐らく奴等との和解はあり得ない。そうなれば奴等はフリオを倒すしか無い。その時こそがギフ様の復活の時だ」
同時刻。フェニックスの司令室では若林と狩崎が話を進めていた。それは、新たなデモンズの装着者についてである。
「さて、どうしたものか」
「オーバーデモンズはベイル抜きにしても体への負担が大きいからね。光ぐらいしか今のフェニックスのメンバーだと扱えない」
「ならば強化した通常デモンズならばどうだ?」
「うーん。確かにそれなら変身はできるけど、光程のレベルで戦うためには時間がかかる。だが今は一刻を争う事態だしね」
一輝の記憶の問題がある以上、これ以上彼を酷使するのは避けたい。だがらどうにかしてデモンズだけでも動けるようにしようとするが、やはりそう簡単に装着者は見つからないのだ。
するとそこに部屋の戸をノックする者がいた。若林が許可を出すと入ってきた人物を見て二人は目を見開く。
「失礼します」
「君は……」
「ヘェイヘェイ……やっと戻ってこれたんだねぇ」
「デモンズの装着者の件、俺に任せてもらえませんか?」
その人物は二人へと頭を下げると装着者にするように頼み込むことになるのであった。
また次回もお楽しみに。