バイスが消える。その言葉に大二達は驚きを隠せなかった。そしてバイスは話を続けた。
「今、一輝の中にある俺っちの記憶も殆どなくなってきているんだ。だからこのまま変身を続ければそう遠くない内に俺っちの事も忘れてしまう」
「でもそれって、バイスが家族だって認識されてるからでしょ?」
「ああ。……そして、一輝の事だから俺っちや家族の事を忘れたとしても誰かを助けるために変身を続けてしまう。だから俺っちは考えたんだ。……次の変身で消す記憶を俺っちの記憶のみに集中させる」
それを聞いて一同は目を見開く。それはつまり、他の記憶を残すために自分が犠牲になると言っているような物だった。
「そんなのダメだ。それにバイス。お前の記憶が消えた所で一輝が変身を続ければ意味が無い」
「……まさか!」
狩崎はバイスのやろうとしている事が何なのか。それについて察知すると声を上げる。そしてバイスはそんな狩崎に向けて笑みを浮かべた。
「やっぱり狩ちゃんは天才だな。そう。記憶が消えている原因は俺っちとの契約。だから俺っちの存在そのものが一輝の記憶の中に無かった事になれば契約も無かったことになる。そうすれば俺っちとの契約で失われた記憶は全て戻るんじゃ無いのかなって」
「そんな……それじゃあ、バイス。お前自身は……」
「一輝の中から消えてしまうだろうな」
バイスは一輝の記憶を戻すために自分が犠牲になろうとしていた。一輝の前でこれを言わなかったのは恐らく反対されるとわかっていたからだろう。
「笑顔の無い世界に意味なんてない。兄ちゃんならきっとそう言う。それでもお前はそうするつもりなのか?」
「……その時はよ、俺っちの代わりに皆が一輝を支えて欲しい。それが俺っちが一輝にしてやれる最後の事なんだ」
バイスの覚悟は決まっていた。恐らく、一輝の記憶がどんどんと消えていくのを見た彼は最初からそうするつもりだったのだろう。ただ、今までは戦いが途中だったために投げ出せなかったのだ。しかし変身可能回数が最後の一回となり、いよいよ後が無くなってしまったがためにバイスは動き出したのだ。
「なぁ、バイスよ。お前はそれで良いのか。悪魔として自由に生きたいとは思わなかったのか」
そこに霊体となったベイルが元太から出てきて話しかける。カゲロウも同意見なのか声を上げた。
「お前は初めからずっと一輝お兄様のために動いてたもんなぁ。一度勝手に独立しようとした俺やベイル親父とは違ってよ」
「俺っちは元々存在しない者だ。なのに一輝は俺っちを受け入れてくれた。そして、家族のように信頼してくれてここまで絆を作ってくれた。俺っちは感謝してるしありがたく思ってる。……だから、だから俺っちはその恩を返したいんだ。そして、一輝が幸せに暮らしてくれるのなら俺っちはそれで良い」
「お節介な悪魔だ。まぁ、それでこそ五十嵐一輝の悪魔だって事だろうけどな」
バイスはニッと笑う。そして、話の最後に一同に向けて頭を下げて頼み込んだ。
「一輝のこれからの事を、彼の相棒としてよろしく頼む。今の俺っちにしてやれるのはそれだけだから」
こうして話は終わり、一同は解散するとバイスはスカイベースの別の部屋にいた一輝とすれ違う。
「……バイス。俺抜きで何の話をしてたんだ?」
「別に〜。大した事じゃねーよ!」
そう言ってバイスは普通に振る舞う。そんな中、一輝はそんなバイスの肩に手を置くとバイスへとある事を言った。
「バイス。この後少しだけ待っててくれるか?俺もお前抜きで狩崎さんに話したい事がある」
「え!?嘘やだ何それ?」
「甘えても教えないぞ。お前だってそれをしたんだからな」
「ちぇーっ。わかったよ。その代わり早めにな」
「そんなには長くならないからさ」
それから一輝が狩崎の部屋に入ると彼は翌日の元太の手術のための準備を朱美と共に進めていた。
「一輝……どうしたんだい?」
「一輝君」
「……狩崎さん。聞きたいことがあります」
それから一輝は暫く狩崎と話すとそれを終えてから部屋を出ていく。その顔つきは覚悟を決めたような顔であった。
その日の夜。五十嵐元太は一輝達他の家族が寝静まった後。ぶーさんと共にスカイベースに再度やってきていた。そして、ぶーさんに頼んで元太はビデオを撮ることになる。
「このビデオを皆が見てるって事は俺はもうこの世にはいないって事だ。まぁ、遺言だと思って見てくれ」
元太の話す声はいつものふざけた様子ではなくとてつもないぐらいに真剣であった。
「一輝、もっとお節介に生きろ。バイスがいなくなっても……その気持ちだけは忘れるな。大二、我慢をするな。もしやり過ぎていたらカゲロウがきっと止めてくれる。さくら、今も昔もこれからもお前は可愛いぞ。ラブコフを大切にな。そして、幸実……今まで本当にありがとう」
元太は込み上げてくる涙を堪えながらその話を進めていく。彼にとってこれは自分が家族にする最後の話かもしれない。そう思うとやはり感情的になるのも無理は無い。
「お前達は俺にとって最高の家族だ。ノアから逃げ出して、幸実と一緒に築いたこの幸せ……俺は絶対に忘れない」
その言葉を最後に動画を終えるとそこに若林がやってきた。そして元太へと話しかける。
「お前には狂った同胞たちが迷惑をかけてしまったな」
「良いんだ。おかげで俺は今の幸せを手にできた。若林。お前もフェニックスの総司令官を辞めて……本当に良いのか?」
「ああ。これは俺なりのケジメだ。総司令官として俺は自分達の過ちの象徴。デッドマンズ、ウィークエンドと戦ってきた。その戦いに決着が付けば俺を縛る物は無くなる。後は若く強い者達に任せるべきだ」
「……そうか」
こうして、それぞれの夜は過ぎ去っていくと翌日を迎える。そして、元太は手術の時間を迎え、狩崎と朱美の二人にフェニックスの医療チームがサポートとして入る。これにより、五十嵐元太の手術が開始されることになるのであった。
同時刻。幸せ湯で結果を待つ一輝、大二、さくら、幸実の四人。そこにガンデフォンの着信が鳴り響くと若林からの連絡が入った。
『五十嵐三兄妹。ギフが目覚めた』
それを聞いて一同は目を見開くと街に出ていく。そこには数多くのギフジュニア、ギフテリアン、ヘルギフテリアン、デッドマンのフェーズ1が姿を揃えており、大軍勢が人類を根絶やしにするために襲いかかっていたのだ。
「何だよこれ……とんでもないぐらいの軍勢じゃないか」
「たった一晩でこれだけの数を揃えられるなんて」
するとそこに地面が爆発すると一輝達三人が飛び退く。そこにギフが降り立つと声を上げた。
「五十嵐家の者達よ。お前達という存在が我々にとって邪魔であるという事はわかっている。よって、即刻お前達を排除。殲滅する」
それはつまり、最早話し合いは通じないという事だろう。ギフはそれ程までに五十嵐家を危険視しているわけだ。
「兄ちゃん、ここは俺達でやる」
「最後の一回は絶対に勝てる時に使わないとだからね」
するとそこにヒロミと光の二人も到着する。フェニックスの誇るデモンズトルーパー、デモンズウォーリアーの軍団も街への侵攻を食い止めるために交戦を開始していた。
「俺達も戦うぞ」
「ヒロミさん……」
「光さんは大丈夫なんですか?まだ本調子じゃないのに」
「でも、僕一人寝てるだけなんてできません。ゲノミクスさえ使わなければ戦う事はできますから」
四人は光のその言葉を信じるとそれぞれがスタンプを取り出す。そして、そのスイッチを押した。
《パーフェクトウィング!》
《キングコブラ!》
《スパイダー!》
《クワガタ!》
《Confirmed!》
《Deal……》
四人がポーズを取るとそのまま自分達を変えるための言葉を言い放ち、ベルトを操作する。
「「「「変身!」」」」
《FlyHigh!》
《Delete up!》
《Decide up!》
《ハイパーリベラルアップ!》
《パーフェクトアップ!》
《仮面ライダーオーバーデモンズ!》
《(仮面)rider Demons!》
《仮面ライダー!インビンシブル!蛇!蛇!蛇!蛇!蛇!蛇!ジャンヌ!》
《仮面ライダーエビリティライブ!アイムパーフェクト!》
四人が変身するとギフが手を翳す。するとその眷属達が襲い掛かり、乱戦を始めた。そして、一人残された一輝はギフと向き合うとレックスバイスタンプを自らに押印する。
《レックス!》
「バイス。出てこい」
「何だよ。俺っちをここに呼び出して何の用だ?」
「……お前に言いたい事は山程ある。けど、今は目の前にいる敵を倒す。バイス……付き合ってくれるな?」
「おう、当たり前だろ?」
その返事に一輝は笑みを浮かべるとベルトを装着してからスタンプを構える。
《サンダーゲイル!》
「これが家族を忘れないボーダーライン手前の最後の一回だ。絶対にギフを倒して戦いを終わらせるぞ」
「あいよ。相棒!」
そして一輝はスタンプへと息を吹きかけるとそのままスタンプをベルトに押印。待機音が鳴り響く中、一輝とバイスは二人で腕を交差させるようにポーズを取る。
《Come on!サンダーゲイル GO! Come on!サンダーゲイル GO!》
「「変身!」」
二人でそう言ってから一輝がベルトにスタンプを装填。そのままスイッチを押してから倒すとバイスは光共に一輝と融合。一輝の姿がジャックリバイスに変化してからその殻を破ってリバイスとなる。
《一心同体!居心地どうだい?超ヤバいっす!豪雷と嵐でニュースタイル!仮面ライダー!リバイス!》
「これが最後の戦いだ。一気に……一緒に行くぜ!」
それからリバイスはリバイスラッシャーを片手にギフへと走っていく。ギフは目を光らせるとリバイスの周囲を爆破するが、リバイスは構わず突っ込んで行った。
その頃、スカイベースで元太の手術が順調に進む中、彼の体に異変が起きた。突如として彼の容体が悪化し始めたのだ。
「ヘイヘイ……これは不味いねぇ」
「急いで応急処置を!」
狩崎と朱美の指導の元で急いで応急処置が進む中、麻酔がかかって意識が奥深くに沈んだ元太の前にベイルが姿を現した。そして、彼は元太へと声をかける。
「随分と大変なことになったな。元太」
「ベイル。……これはどうなってるんだ?」
「簡単さ。お前の体が死にかけている。手術はかなり難航しているみたいだしな」
「そうか……」
そして、ベイルはある決意を固めるとそれを元太へと述べる事に。それは、ベイルにとって覚悟がいる言葉だった。
「……元太、俺が犠牲になってやる」
「……え?」
ベイルの言葉はいつになく真剣で、そして覚悟を決めたバイスと同じ目であった。
また次回もお楽しみに。